最強の力! 最強パンチを放て!
俺は冒険者ギルドに向かうため、森をズンズンと進んでいた。
目の前にある邪魔な木はへし折り、砕き、真っ直ぐと進んでいた。
「きゃああああああああああ!」
女の子のそんな叫び声が、森中で響き渡った。
やれやれ、なにが起きたんだ?
俺はそんなことを考え、その声の方へと向かった。
すると、そこにいたのは金色の髪を輝かせる美少女。
おっさん……というか盗賊たちに絡まれているようだ。
「あ! た、助けて!」
女は俺に気付いて助けを求めてきた。やれやれだ。
仕方ない助けてやろう。
やれやれ。
「おい、おっさん。やめてやれよ、女が泣いてんじゃねえか」
「あん? お前誰だよ」
「はっ、俺はお前をぶっ倒すヒーロー様に決まってんだろ。因みに名前はゼリウルスだ」
「ヒーローだあっ? なめてんじゃねえ。俺はなぁ……ここら辺じゃあ有名な盗賊なんだぜ? 俺の炎魔法を使えばこの森を焼き払うことが出来んだ。もし、そんな炎魔法をお前みたいなガキに使ったらどうなると思うぅ?」
盗賊はニヤリと笑いながらそう言った。
どうなるんだろうか? 俺には効かないと思うけどな……なんていったって最強だし。
「そうか、じゃあ一度だけ俺に攻撃を与えるチャンスをやるよ。燃やせるもんなら燃やしてみやがれ」
「はっ! 馬鹿め。死んで後悔しろ!」
言うと盗賊は詠唱を始めた。
「詠唱すんのかよ。面倒臭えなぁ……」
やれやれだ。そのくらい無詠唱で放ってほしい。
俺は15年間の間、仕方なく魔法を学んだりもしてやったが、無詠唱ごときなら二歳になる前に習得したぜ? やれやれ、これが才能の差か。
「燃え盛る死の熱炎を我が右手に…………デスフレイド!」
すると、盗賊の右手から炎魔法が放たれた。
デスフレイド……か。やれやれ、がっかりだ。
そのくらいなら一歳の時に習得している。やれやれ。
「おお、あっつい、あっつい…………あぁ、慣れた。もう暑くねえわ」
やれやれ、さすがの俺でも最初は日差しくらいには暑く感じてしまった。
今は全く暑くないがな。やれやれである。
いやぁ、もうマジ慣れた。
これ本当に炎放たれてるのか?
「貴様っ! なぜ死なない!」
「いや、そんなこと言われてもなぁ……お前、まわりでそよ風がふいてたら死ぬのか?」
「死ぬわけないだろ!」
「だろ? 俺もそんな気分。まあお前の炎なんてそよ風未満だけどな」
「そよ風未満だと……俺の炎をそよ風未満だと!」
「そう、攻撃ってのはさ。こうやるんだよ」
俺は炎を片手で吹き飛ばし、ズンズンと盗賊の方へと向かって歩いていく。
「ひっ⁉︎」
「まあまぁ、そう怯えんなよ」
「だ、誰か助けて……」
「くれる訳ねえなぁ。はっは、まあ運が良けりゃあ死にはしねえよ」
「ああああああああっ!」
「叫ぶな。耳障りだ」
俺は盗賊の顔を殴った。
「あがっ⁉︎」
盗賊はそんな声を出しながら飛んで行った。
頭だけ。
あちゃー、やり過ぎた。やれやれである。
やれやれ、あれじゃあ運とか関係なく死んじゃってるな。
殺すのって初めてしたけど最強になったせいかそこまで罪悪感にも陥らねえなぁ。やれやれだ。
「あ、あの」
「なんだよ。嬢ちゃん」
「あ、ありがとうございました!」
「最強としてとうぜんのことをしたまでさ」
「わ、私、実はこの国の王族の者なんです。どうかお礼をさせて下さい」
「んー、そうだな。じゃあ冒険者ギルドまで案内してくれねえか?」
「冒険者ギルド……ですか。わかりました」
「あ、嬢ちゃん名前は?」
「名前ですか? えーっと、ツキノリアと言います」
「ふーん、じゃあツキノちゃんでいっか。それともノリアちゃん?」
「ではツキノで」
「わかった。じゃあこれからよろしくな。ツキノちゃん」
こんな感じで異世界初の仲間が出来た。