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第四章第二話 森へ、



というわけで、

いや、何が、『というわけ』なのかは分からないのだが。

俺は今、リリーと二人だけで森へ向かっている。

実は、昨日森へ向かう予定を立て、食料等を買ったのだが、謎の集団食中毒に仲間が巻き込まれてしまった。


「兄貴、俺はいいから二人で先に行っておいてくれ、下見して戻ってきたときには治ってると思うから」

と言われ。


「いや、お前を置いて行く事なんてできない。体調が良くなってから改めて全員で行こう。そのほうがいい」


「時間がないってこの前言ってたのはどこの誰っすか?いいから、二人で行ってきてください。帰ってきたときには絶対治しておきますから」


「絶対ってそんなわけ・・・・・・」


「ギンジ。腐っても男の子なんだから大丈夫だよ。宿のご主人たちに面倒見てもらうことにして、すぐに行って帰ってこよう?」


「腐ってもってどういうこと!?」

というわけで、俺たちは、正確には俺とリリーは、二人で森に向かっている。

一応分かっているとは思うが『ギンジ』は今の俺の偽名だ。本名なんて名乗ってたらどこかから怖い人がやってきて面倒なことになりかねないからな。

混乱するかもしれないが、我慢してくれ。


しかし、久しぶりに二人きりになったな。

いつ以来だろうか?・・・・・・二ヶ月くらい前か。

なんというかいきなり二人だけになっても話す内容とか得にないから、時間つぶしに、現在ちょうど食中毒で苦しんでいる最中のあいつとかの話をしてもいいのだが、それはまた別の機会にでもするとしよう。

今そんな話をしても、ボーっとしてたとか言われてリリーに蹴られるかもしれないしな。はは。

というわけで、二日間ほど何もせず作品の大幅カットをし、作者の苦労を少しでも減らそうかと考えていたとき。


「どうしてあんなことになったんだろうね。皆苦しそうだったし。変なもの食べたとかにしては村の人の間でも結構、流行ってたみたいだし。私たち二人だけが大丈夫っていうのも不思議だし」


「ん?あぁ、食中毒か。衛生状態が悪かったとかが考えられるんだけどな。俺達が大丈夫なのは単に運がいいからかもな。戻ったら看病と同時にそっちの情報も集めてみるかな」


「うん・・・・・・」


・・・・・・なんというか、気まずいな。

他に誰でもいいから人の気配でもあれば、もう少し気がまぎれるんだが、こう・・・・・・本当に二人だけだと落ち着かない。

こいつ、なんか最近妙に女っぽくなってる感じもするしな。

気のせいだよな。

うん、気のせいだ。

こんなこと口走ったら、馬鹿にされたと勘違いしてこいつに蹴り飛ばされるだろうしな、口が裂けても黙っておこう。


ホント、俺って女に耐性がないんだなって実感するよ。

生まれてからずっと厳しく・・・・・・はないがたくましく育てられたからな、よく女心が分かっていない、とリリーたちに言われることがある。




で、夜。


「大丈夫か?今日はあまり休まずに歩いたからな」


「ごめんね。ギンジ一人だったら今日中にでも着けたかもしれないのに」


「気にするな。だが、お前もあいつらと一緒に残ってよかったんじゃないか?介抱が宿の主人たちだけだなんて心細いだろ。リリーは手当てがうまいんだからさ。あいつ等の心の支えにもなるだろうし」


「まぁ私は、それくらいしか取り柄がないからね。でもギンジを一人にするほうが、私はずっと不安だよ?」


「そんなことはないさ。とても心強いさ」


「私たちのためならなんでもするって感じがすごく嫌で、心配だよ」

抱えたひざに頭をうずめるリリー。


「わ、わかったよ。すまなかった。特に心配されるようなことをしていたつもりはなかったんだが、以後気を付ける」


「・・・・・・真夜中に帰ってくるとかダメだよ?」


「あ、あぁ」

もしかしたらこいつは、たまにある俺の朝帰りとかのほうが危険だと考えているのかもしれないと、ふと思った。

いやいや、確かに全く興味がないと言えば嘘にはなるが、だからといって、そこらの女を誘っておいそれとなんだかんだなんてしなぞ!!

あ、噛んだ。

しないぞ!!


実際、そんなことはする気も起きない、あくまで情報をくれる女性となら酒、(俺は水だが)を交わして朝まで話すことはある。だが、そううことはもうしない。これは本当だ。

「まだまだ若い」とか言われても、理性ぐらいあるんだからな。

それに俺には大切な人が、守らなきゃいけないやつがいるからな。とてもそんな気分にはならないだろう。

きっとこれからも。


「それじゃあ寝ようか。明日早く起きるんでしょ?」


「ん?あぁ。そうだ・・・・・・! まて、お客さんの登場だ」

気がつくと一匹の狼が近付いてきていた。

少し森に近付きすぎたか?

俺としたことが、失態だ。

だが幸運なことに辺りを見回しても今、野獣はこの狼一匹だけのようだ。


「肉食の獣の肉はあまりうまくないんだが、明日の朝食にしてもいいんだぜ?」


そういうと、狼は素早く、そして無駄なく一直線に掛けてきた。

俺は、いつも安い剣をいくつか身に着けている。それを一本引き抜くと、「こっちだ!!」と声を上げて誘導するようにその場を離れる。

そうしてそのままの勢いで追いかけてきた狼の噛み付きをかわし、心臓めがけて剣を強く突き出した。

荒い突きは、狼の胸元を貫くと言うよりは、押しつぶすと言う表現が似合うほど激しく血飛沫を撒き散らし、狼の命を奪った。


俺は自分の力が少しばかり強いせいで武器がすぐ駄目になる。

ならば、複数本持っていればいいのではないか?使い捨てなどの用途も広がる。

そう思い至ってからは、何本かの安い剣を持ち歩くようになった。

そのほうが、きっぱりと使い捨てることもできる。今回は三本の剣を持ってきていた。

同時に剥ぎ取りなどのための質のいい短剣も持ち歩いている。

主にリリーの護身用に持たせているのだが。


「これでよしと、明日の朝はこの狼の肉を焼いて食べるぞ」

狼の肉を剥いでそういうと、リリーは顔を少し歪めて「えぇ~」と言った。


その後、俺たちは一眠りし、早朝に狼の肉(超硬い)を食べ、森に向かうことにした。

その間、昨日のうちに慣れたこの状況であまり気まずくならない程度に話をしていた。

ゆっくり歩いても昼前には着くことができた。


「さてと、うまく果物でも見つかってくれれば昼に食べられるな」


「果物がなくてもいいから何か野菜が食べたいな」


「探してみよう」


結局野菜も見つからず、持ってきていた保存食を食べた。


「よし、それじゃあこれから本格的にこの森を散策しよう」

そういって、森を歩き回り探索を始めた。


しばらくして、森の浅いところや川瀬の位置などは把握することができた。

しかし、これから森の奥に入ろうとする途中で、背後から叫び声が聞こえた。

リリーと共に声のした方向へ駆けていった。


声のした方向は俺達が来た方向だった。


走っていると、目の前から俺の身長の倍は裕に超える大きな狼が山のように木々を倒しながらこちらに走って来るのが見えた。

驚きのあまり一瞬体が硬直してしまったが、リリーと共にその突進をかわすことは出来た。


あのときの狼の敵を討ちに来たのか?

狼にそんな感情があるとは思えないが、それにさっきの叫び声は一体・・・・・・

気づけば森の木々が俺達を囲っていた。


俺と、リリーと、狼を囲っていた。


木の上に一人の青年が立っていた。


なんだあの青年の声か。納得した。


そして同時に嫌な予感もする。

あいつ、もしかしてこの木々を操ることができる能力者じゃないか?

俺はどんなことをしてでも生き延びなきゃならない。

守らなきゃいけない奴がいるんだからな。

目の前に。


逃げられないなら、戦わなきゃならない。

俺は剣を抜いた。

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