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第四章第一話 新しい仲間

私はそのあと王子に事細かに質問を受け、出来る限りの受け答えを返しました。詳しいことは前回あたりを読んでください。

あの頃のジンは、子供のように知りたがりだったなぁ。・・・・・・今のほうが子供っぽいかもしれないけど。

質問の中には、『その人ごみの中に見覚えのない者はいなかったか?』なんてのもあったんですよ?犯人でも見つけ出そうとしていたのでしょうか?

もうあの人には関係のないことです。

確かに犯人が見つかれば王子は国に戻れるかもしれませんが、今は一刻も早く遠くへ逃げなければいけません。

国の心配をしてどうするんですか。



そのあと、彼ときちんと話合いをして、その後のことを決めました。

あの国へはもう近付かないこと

一緒に行動すること

王子の持っている不思議な力のこと

実は私も持っている不思議な力のこと(隠していたつもりは無いんですが)

王子の偽名のこと

王子が変わりたいと考えたこと

これからどうやって生活するか

そしてお互いこれから何がしたいか、などなど


そしてこれは、三ヶ月前のお話。時は今へ戻ってきます。

それでは、ここから先は、私たちの旅をお楽しみ下さい。




---------------------------



俺は一人、街中を歩いていた。

あまりでしゃばった真似はしない。

容姿と顔、名前が割れてしまうことは国に追われている身には厳しい。


国を出てから、二ヶ月ほど前に新しく友人ができた。

クリア・フリップという男だ。14歳の子供だが、俺より強い。

だが、なんだかんだで兄貴と呼ばれて慕われている。

悪くはないが、複雑な気分だ。

因みにリリーのことは姉扱いだ。


今、クリアとリリーは一緒に買い物に行ってる。関係ない話だが、実は最近リリーとほんの少しだけ距離があるように感じる。気のせいかもしれないが、いや気のせいなんだがな。


俺たちは今まで、冒険者の一人として、いくつかの国を回り、探し物や少しばかり危険な場所にある素材、薬草を取ったりしてお金を稼いで生活していた。


二ヶ月ほど前に、お金にちょっと余裕ができたので遠出してみたら、クリアと出会って、なんやかんやあって一緒に過ごすになった。

俺達についてくることも無かったと思うんけどな。

その話はまたいつか、俺が語ることにする。

・・・・・・たぶん。


とにかく今は情報収集しているところだ。世の中、金より情報のほうが大切なときもあるからな、俺は酒場に向かった。俺は酒は飲めないが酒場は情報が集まる。俺たちの登録している冒険者のギルド、正式名【冒険者個別協力団体】・・・・・・だったかな?忘れた。

だが、大量の情報が集まるが表向きの情報が多い。

一方、酒場はもう少し危なげな情報が集まる。

そういう情報が大切なこともある。

知らなかったで済まされることと済まされないことがある。

だが二人には最低限の必要なことだけわかっていればいい。

それで十分だ。


というわけで、酒場まで着いた。

掛け合いは省略しようか。始めは軽い世間話からはじめ、よくわからない酒のうんちくも情報として聞いておくから、文章にするとお互いの心理描写を含めて丸一章を費やしてしまうかもしれない。

こうなると、作者の負担が普段の倍近くになってしまうので気を使って省略しよう。


そして聞いた情報だけ簡潔に話しておこう。

・能力を持った冒険者のパーティーがこの近辺にいるかも知れないこと。

・とある国が行っている戦争が激しさを増していること。

・近くで山賊の被害があったこと。

・この店で働いている入荷担当の男の息子が食中毒で倒れていること。


などなど。

これ以外にも一昨日隣国にあるギルドに新人が入ったことや明日新しい酒を入荷すること、最近夜遅くに女が来ていることなどいろいろな情報があった。

あまり、重要でないものもあったが・・・・・・


・・・・・・さて、それでは先に宿に戻っておこうか、あの宿は居心地がいいからな、二人に今後のことを話したいし、主人もいい人だし。秘密は絶対漏らさない。

あんな人も珍しい。身元もわからない厄介者は泊めず、売れる情報があれば高く売る、それが普通なのにそれをしない。

いつかその優しさが首を絞めることになってしまうだろう。少しぐらい、悪いところがあってもいいと思うのだが・・・・・・

いらぬお節介だな。とりあえず戻っておこう。




二人が戻ってきた。


「「ただいまぁ」」


「おかえり、二人とも。ちょっと話したいこと・・・・・・」


「兄貴!今日はリリー姉さんが晩御飯を作ってくれるってさ!」


「!!」

来たかぁ・・・のっけから来たかぁ!まったく、何でクリアはなんであんなに嬉しそうなんだよ。

お前も俺と同じであの地獄を味わったことがあるのに。


とりあえず、閑話休題。

リリーお姉さんの作るお料理はとてもとてもおいしいです。ただしお量も多いです。ものすごく!

いくらでも食べられちゃうけど、食べ過ぎたら腹が痛くなるのは、当たり前だよな。

というわけで、俺にとっては恐怖。

食が止まんないってある種病気だろ!

クリアは育ち盛りだから一晩寝たらケロッとして治るようなので大丈夫なのかも知れないが、それでも痛いもんは痛いだろう?

若いっていいな。



結局その後、腹痛で寝込み、話をしたのは次の日の昼だった。

クリアは朝になったら治っていて、早朝トレーニングを始めていたらしい。

俺は腹痛でそんなことは知らなかったが。

とりあえず、酒場で聞いた情報を踏まえて今後の予定を二人に告げることにした。


「「森で生活!?」」


「いや、反応するとこ少し間違ってる。山賊狩りをするために、山で何日か生活するんだよ。山賊狩りに反応してくれ」


「でも、どちらにしてもいきなりなんでだ?ここ来たのだってつい数週間前なのに。もう少しゆっくりしたほうが思うよ。確かに二人はあれだけど・・・・・・」


「だからだよ。能力のある冒険者のうわさが立ち始めている。珍しいから、何らかの拍子にしられてしまったら国伝いで一気に広まる。ばれてからじゃ遅い。腹立つことにあいつらはまだ俺たちのこと探してるみたいだしな。それに、その森の居心地が良かったら隠れ家にもなるだろう?どちらにしても損はない。リリーはどう思う?」


「え?私は・・・・・・そうだね。私は・・・・・・どこでもいいよ?」

なにやら手をいじりながら下を向いて、独り言のように言った。最後のほうは少し聞き取りずらかったが聞き取れてよかった。

どこでもいいじゃなくて、どうしたいか聞きたかったんだけどな。


「・・・・・・リリー姉さんが賛成するなら、もう異見はないよ。俺はリリー姉さんが大丈夫かどうか心配なだけだから」


「ありがと、クーちゃん。心配してくれて。でも私のことは心配しなくても大丈夫だよ」


「で、俺はどうでもいいと?」


「いやいや、兄貴はどうせ、どーんなに大きな津波が襲ってきたとしても微動だにしないだろ?そもそも尊敬する兄貴を心配するなんてそこまで馬鹿じゃないっすよ。俺は」


「津波で死に掛けたこと、あるんだけどな・・・・・・ま、そんな昔のことどうでもいいか。とにかく、満場一致で明日は森に向かう。移動に二日は掛かるから、今日は午後から必要なものを買い揃えておく、以上! 昼飯と晩飯は俺がお腹にやさしい何かを作ろう」


「いいよ。ジン。私、作るから」


「いいや!昨日は作ってくれたし、さっと食べて早く買い物に行こう!あ、気持ちは嬉しいからまた今度作って欲しいな!また今度作って欲しいなあ!」

頼む!作らないでくれ、リリー!!


「・・・・・・うん」

笑いかけると少し顔を紅くしてうつむくリリー。その後すぐ、「私、お掃除するね」と言って部屋の掃除をせわしなく始めた。



と、その時クリアが話しかけてきた。

「なぁ兄貴。山賊狩りって山賊見つけたらすんの?」


「ん?いや、それはない。地の利もないのに戦うことはしないよ。明日以降は森の地形とかをいろいろと調べに行くつもりだ。行き帰りと探索の合計で6日間分の食料等を持っていく。さっきはすぐこの町を離れるみたいなことを言ってたけど、実際はもう数週間ぐらいいても大丈夫だろう。ただ、いきなりこの町は離れられない。そもそも金欠ぎみだし離れるとしても山賊を捕まえて報酬金をもらってからでも遅くないからな」


「やっぱ帰ってくんのか。なるほど・・・・・・」

なにやらあごに手を当て考えごとをしているようだ。



こいつと一緒にいるのはまだ短い間だけなんだが、俺の背中を見て成長してなきゃあいいが。




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