第九章第一話 クリアの暴走
潜入開始まであと五分。
あれ?おかしいな?
前回は俺、十二時ちょうどに寝た記憶くらいしかないな。
いつの間にか一ヶ月も時間がが経っていたのだろうか?
「どうした、ジン?ボーっとしていたら機を逃すぞ。集中しろ」
「体調悪いんなら少し休んだ方がいいんじゃないッスか?と言ッてもそんな時間はもうないッスけどね」
シュシュとメメが声をかけてきた。
「お気遣いどうも。だが心配はいらない」
俺達の目的は内部からのかく乱。
俺とメメは誰にも見つからないように城内の兵の数を減らしていき、武器庫をシュシュがフレイ達の騒動に紛れて爆発させることになった。
全員別行動だ。
因みに、協力者の皆はうまく城にいる兵の数を減らしているらしい。
「気をつけろよ。二人とも」
「言われなくてもわかっている」
「ジンさんこそ、いざッて時に逃げ出さないでくださいよ?」
「まぁ、今回ばかりは仕方がないな。 少しだけ、命を懸けるか」
「・・・・・・いや、やッぱ逃げてもいいッスよ?そこまですることじゃないッスし、俺ッち達の目的はあくまで武器庫を壊すことなんスから。そもそもジンさんには戦ってもらうつもりもなかッたんで」
「元は俺の国だ。けじめを付けさせてくれ」
「わかった。だがシュシュの言うとおり撤退することも考えてくれ」
「後二分だな」
「やッぱ、リリーさんがいないとうまく言うこと聞いてくれないね。姉ちゃん」
「シュシュ。静かにしろ。そろそろ秒読みを開始する。私達は正面でフレイ達が騒ぎを起こす前に潜入しても構わない。だが騒ぎを起こす前に気づかれてはいけない。いつものことだ。わかっているな?」
「もちろんだよ」
「よし。あと六十秒、五十九、五十八・・・・・・」
メメは潜入までの秒読みを始めた。
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作戦決行まであと十分を切った。
俺達は今、城の比較的近くにある家に立て籠っていた。
もちろん合法的に立て籠っている。
この家を買っただけだが。
ジンとメメ、シュシュの三人は俺達が攻め込む一分前に潜入することになっている。
武器庫を爆発させるときにこちら側の騒動と紛れ込ませるため、準備をする時間が必要だからだ。
因みにこの話はリリーには伝えていない。
危ないから駄目とか言われそうだからな。
「フレイ。こっちは大丈夫だ。いつでも行けるぞ」
「出るのはもう少しあとだ。そのときまで緊張を解かないよう言ってきてくれ」
「わかった」
ヘンリーはそう返事を返して隣の大部屋で控える仲間の元へ向かった。
「リリー姉さん。絶対に、絶ぇぇっ対に。怪我しないでよ!」
「どうしたの?クーちゃん?それ何回目?気持ちは嬉しいけど、無理はしないでね?」
クリアがまた同じ事をリリーに言い聞かせている。
「絶対しないからリリー姉さんも絶っ対怪我しないで!かすり傷一つもだよ!」
「それは無理だよ。必要なら私も前に出なきゃいけないでしょ?でも大丈夫。怪我しても自分で治せるから。でもどうしてそんなこと言うの?」
「リリー姉さんがちょっとでも怪我したら一本と言わず二本も三本も無くなりそうだからな・・・・・・」
「何が?」
「なんでもないよ。ま、もともとこんなこと言われなくても守るつもりだったし別にいいか」
「何のこと?」
「なんでもないよ」
「ちゃんと言いなさい」
「兄貴が言うから大丈夫」
「何を?」
「なんだろうね?」
「二人とも、そろそろ時間なんだ。話したいことがあるのなら今回のことが全て終わってからにしたほうがいいぞ」
レイナが二人に喝を入れる。
「わかってる。今日の体調は最高だ。今までで一番だよ。これなら俺一人でもド派手に特攻かけられるぜ?」
「水はきちんと持ったのか?」
「樽五十杯分持ってくよ。フレイの仲間が持つの手伝ってくれるって」
「そ、そうか。気合入れてるな」
レイナがその話を聞いて引いている。
俺も引いた。
樽五十杯の水を使う気なのか?
津波って自然災害じゃなかったか?
「大丈夫なのか?そんなに使えるとは思えないが」
気になったので聞いてみる。
俺は広い範囲に火の手を進めることは出来るが、一度に操れる範囲は狭い。
「大丈夫だよ、軽い軽い」
どうやらジンの言っていたことは本当のようだ。
クリアの力を見せてはもらったが、全力はまだ見たことがない。
『クリアを敵に回すって事は自然災害を敵に回すと考えた方がいいよ。ははは』
と言っていたジンの苦笑が思い起こされる。
「そうか、なら心強いな。・・・・・・クリア、ちょっと無理を頼まれてくれないか?」
「まかせとけ!大船に乗ったつもりでいてくれよ。ま!大船くらい沈められるけどな!」
やはり、ジンの背中を見て旅をしていた男だ。
冗談にならないことを言ってくれる。
「・・・・・・すまないが作戦を少し変える。クリア、レイナ、ヘンリーと一緒に城の正面はお前達に任せる。俺は単独で別行動を取ることにする」
「フレイ。そんなことをして大丈夫なのか?」
レイナが食らいついてくる。
最もな意見だ。
「問題ない。ヘンリーがいる限り統率に乱れは起こらない。そういうのは得意だからな、あいつは」
「それじゃあ、フレイは俺達にこっちを任せて何をするつもりなんだ?」
「教会を押さえようと思う。俺の能力なら火事を起こせば注意を大きく引くことも出来るからな」
「なるほど。神父は城にいるから教会に戦力はない。そして宗教で統治している国だから教会が火事など起こせば大きな混乱を起こすことが出来るということか」
「問題は国民まで騒ぎ出すことだが、まぁ実際には燃えていないんだからすぐ落ち着くだろうな」
「いいんじゃないかな。ようは俺がいい仕事をすればいいってわけだろ?」
「そうだな。レイナもいいか?」
「・・・・・・クリアとフレイはうまく分かれて力を使わなければならないし、悪くはないと思う」
「そろそろ時間だ、フレイ。もう出よう」
ヘンリーが戻ってきた。
作戦の変更は移動しながら伝えておこう。
「よし、それじゃあ行くぞ!気合入れろよ!」
作戦決行まであと数分




