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第八章第二話 俺の予定、私の一日

今日は奇襲作戦の一ヶ月前。

よかった!まだ一ヶ月ある!

それともあと一ヶ月しかないのか?


と思っていた矢先、レイナが告白などをしてきた。

結果的に俺はレイナを傷つける答えを返しが、帰り際のレイナは笑っていた。

だが、それはむしろ俺の罪悪感をつつくだけの行為だった。

後々判明したことだが、レイナはクリアにあれこれ吹き込まれながら色々と努力をしていたそうだ。

お陰で相当動揺したよ。

クリアの奴め・・・・・・貸しが出来たな、五十倍くらいにして返してやる。

というのは置いておいて、その日俺はリリーに思いを告げる勇気を手に入れた。


だがそれは戦争が終わって平和になってからだ。

最期の言葉をそんな恥ずかしい言葉にはしたくないからな。

もちろん死ぬ気なんてさらさらないが、戦うということはそういうことだ。


今回の出来事が一段落して、クリアに貸しをきちんと返してから、思いを告げるつもりだ。


そして「ありがとう」と言ってやる。

覚悟してろよ。





打って変わって、現在の情報報告をしよう。

俺とリリーの居た国はちょうどに六つ目の国を降伏させて、航海手段を手に入れたそうだ。

このままだったらレイナの居た森にも被害が及ぶだろうな。

フレイの見立ては正解だった、と言うことだ。


作戦の根回しは順調で、今のところは城内にいる兵士の三分の一近くは戦わないということになっているそうだ。

作戦決行の日取りは先月の話し合いの後、すぐに決まった。

今日から一ヵ月後の昼、十二時〇分十秒に決定された。

計算上、神父ならば十秒あれば十分先の未来まで見ることが出来る。

これ以上の先延ばしは出来なかった。

一秒でも早ければ、対策されてしまう。

遅すぎれば対応されてしまう。

フレイの知り合いには天文学を専門に学んでいる者もいるようで、正確な時間は一応わかる。

それでも不安だが。

そしてメメは「この調子なら、半数近くの兵を問題なく退けられると思う」と言っていた。

それにしても、よくばれないな。

まぁ、シュシュがうまく調整しているからこその所業だな。



当日の詳しい内容はこうだ。

まず俺が前に声をかけたクリアの居た村の者達やフレイが声をかけた協力者が、町の人間の振りをして誘い込めなかった兵士達を町のあちこちに連れ出して行く。

百人も誘い出すことは出来ないだろうが、何もしないよりはずっとましだ。

因みにクリアの村はあの宣教師に半分洗脳された形だったので、クリアとリリーが寝ていた間、きちんと話し合いをしたら自分達の犯した過ちをわかってくれた。

何人か物理的に交渉したが。

やはり宗教というのは恐ろしい。

そして宣教師はあの後、島を追い出された。

手当てはされたようだが、今は生きてるかな?

とにかく、少しでも向こうの戦力を削ることにした。


そして俺は先陣を切ることになっている。

もちろん城の裏側から。

誰が正面から突っ込むもんか、まぁ俺は力を使って城内をかき乱すことぐらいしか出来ないからな。

そして、神父を見つける。

見つけるだけだ。戦う必要はない。

どうせその頃には未来は十分見終わってるだろうからな。

ばれたらうまく話し合うか逃げていいということになっている。

いい落とし所だ。

シュシュとメメと一緒に三人で潜入するが、途中で分かれて行動するから動きやすいし、なかなかうまくいくかもしれない。

ポジティブに考えよう。


正面はヘンリーがフレイの部下を率いて軍隊の気を引くそうだ。

そしてクリア、レイナ、フレイがド派手に力を使うらしい。


・・・・・・考えただけでもおぞましい。

下は大火事、上は洪水、中は深緑。これなあに?

まさに地獄。

死人が出ないことを切に願う。

こういうときに限って神様は願いを叶えてくれるんだろうから、ホントに気まぐれだよな。

怪我人が出た時のためにリリーはクリアに守られつつ、正面にいる事になっている。


「かすり傷一つ負わせる度に、お前の骨が一本なくなると思えよ?」

と優しく忠告をしてあるので多分大丈夫だろう。


今回の最終目標は軍隊の鎮圧、神父の降伏、そして拘束。

この三つだ。


だがいくら奇襲をかけるからと言っても、神父は未来が見える。

軍隊を動かす時間はないが、自分ひとりが生き残ったり逃げ出したりすることは容易だろう。

だから俺達はそうさせないように『圧勝』しなければならない。

例を出すなら、依然話していたメメの不意討ちの件だ。

確かにメメ一人ならば、未来を見るだけで不意討ちを防ぐことは簡単だ。

だがそれが百人単位だった場合はどうだろうか?

未来が見えていたとしても一人で対応することはとても無理だ。

逃げ出すことさえままならない。

俺達はそういう勝利をしなければならない。


そして午後一時頃に近隣の国の情報部隊が来ることになっている。

俺達があの国を堕とすことが出来たら、敗退国での争いを行わない契約を結ぶことになっている。

皆、よい報告が出来るように作戦を遂行するだろう。

俺は適当に与えられた仕事をこなすだけだ。

死人が出ないようにな。


それじゃあ一ヵ月後までゆっくりとクリアのお仕置きを考えておこうかな。

何がいいかな?


あと、リリーにどうやって気持ちを伝えるかも考えとかないと。

あれ?案外やることあるな。

これはもしかして、また時間が早く進むパターンか?


-----------------------





あれからさらに一ヶ月近くが経った。





兵の収集は順調だ。

このままいけば来週の計画もうまくいくだろう。

風呂で体を洗った後、私は長い髪を拭きながらベッドに座り、星の輝く夜空を見上げた。

常に気を張っていても仕方がない。

時にはこのような休息も必要だ。

特に最近は色々と騒がしいからな。

静かな時が欲しい。


私は毎晩、日課となったストレッチを欠かさない。

両足を揃えて前に出し、爪先に触れ、膝に額をつける。

次にベッドの上で足を百八十度開き、上体を胸がベッドに付くまで息を吐きながら前に倒す。

一度起こして、次に体を横に曲げて左手で右足の爪先に触れる。

逆も行う。

呼吸はゆっくりと。

最後にうつ伏せになり、背中を反らして自らの足首を掴む。

ストレッチのポイントは『遅さ』と『脱力』そして『負荷』だ。

しかし私は、元から体が柔らかいせいもあり、このようなことをしても大した負荷にならない。

なので「今日もこれだけ曲がるな」といった確認のような行動になってしまっている。

だが、緊張した筋肉をほぐすには十分な運動だ。

若さを保つ秘訣。とでも言っておこうか?

なんら根拠は無いが、お勧めする。

風呂上りにストレッチをすると温まった体がより熱を帯びて、より気持ちよく眠りにつける。

その後、少しだけ本を読んだ。

これも日課だ。

それが終わると私はベッドに横になり、眠りについた。



目を覚ました。

窓から入ってくる朝日が眩しく、眠気が吹き飛ぶようだった。

素早くベッドから降りて、軽装に身を包んだ。

部屋で軽く食事を取り、黒いコートを羽織り、本を持って部屋を出た。

そしてまた城のとある部屋へ向かった。

ここは王の書斎だ。

主に王が仕事を行うときに用いる部屋だ。

今、その王は居ないが。

私はしばらくその部屋に居座った。

私の目的はこの部屋に居ることではない。

この後だ。


昼の十二時、ちょうど五分前になった。

私はある場所へ向かう。

誰しも一度は『未来を見ることが出来たらどれほどよいだろう?』と思ったことがあるだろう。

私は思ったことがある。

そして私は、その能力者を見つけたとき「まさかこんなところにそんな人が居たのか!」と驚愕した。

最初にそのことを知ったときには、驚愕と同時に高揚感さえ覚えてしまった。

だが私は、彼は力の使い方を間違っているのではないか、と感じた。

私の個人的な意見なので、もしかしたらあれが正しい使い方なのかもしれない。

しかし、たとえ正しくても私ならあのようには使わない。

もっと有意義に使う。

たとえば・・・・・・







この国をより豊かにし、領土を広げること。

かな?


私はこの力を手に入れたとき、初めて未来を見た。

この国の王子を処刑する未来だ。

だがその時は未熟だったせいか、十数時間先の未来までしか見えなかった。

そのせいで『王子は死なずに王国を逃げ出す』という未来は見れなかった。

見たのは『私が王子の処刑宣告をする』未来だ。

確かに一度見た未来は、何一つ違わずに実現する。

ただ、私は未来の自分が体感することを『見る』ことしか出来ない。

しかし記憶力は悪くない方だ。

日記として文字や簡単な絵にまとめる日課さえつければ、その日に何があったのかを寝る前に『見る』ことができる。

それで十分だった。

聞く必要は無い。

嗅ぐ必要は無い

味わう必要は無い。

感じる必要は無い。

見るだけで十分すぎることだ。

今日は私は何をするだろうか?

今日はこの国に何が起こるのだろうか?

明日はどのような未来を見るのだろうか?


そんなことを考えながら歩いていると目的の場所へ着いた。

書斎の真上にあるバルコニーだ。

より高いところから、より遠くまで、遮る物なく街を見渡すことが出来る。

ここでいつも『未来視』を行っている。

・・・・・・いや、違う。

今更になって気づいてしまった。

これは『未来視』ではないな。

私の今持っている聖書には『未来、そして過ぎ去った過去は全て神によって予め運命付けられている』とある。


ならばこれは『運命視』だ。


そして私の見るこれが運命ならば、私はそれに従おう。


たとえ、自分の命が尽きていようとも。

私は目を閉じる。




私は目を開ける。

私はこの風景が好きだ。

国で最も高い場所から見渡す、この街並みをいつまでも見ていたい。

毎日、名残惜しくこの場所を去る。

私には二十四時間しか時間が無い。


今日の私はいつもどおり、王の代役として書斎で業務をこなし、今後の隣国との交渉内容を見直していた。

秘書に『午後五時二十七分、視察途中の黄色いレンガで赤い屋根の家の影に二人』と書いた紙を渡した。

おそらく、今日行う予定だった国の視察の最中に私が襲われるのだろう。

私には、それを『防ぐ運命』つまりこのように手紙を書く未来が見えたのだろう。

それをただ真似しただけだ。

犯人の服装も性別さえも今後、知ることはないだろう。

実にいつもどおりの事だ。

手洗いには五時と夜の十一時の二度しか行けず、午後二時に取った遅い昼食は干した肉とトマトを挟んだだけのサンドウィッチを移動しながら二切れだけ。

サンドウィッチを食べながら、揺れの酷い馬車に三時間乗って一ヶ月前に制圧した近海の国に一時間ほど視察しに行く。

馬車の中で秘書に視察する場所を教えられていたのだろう、歩みを止めることなく町中を一通り見終わった後、すぐにまた馬車に乗り国に戻ってくる。

何事もなかったので、秘書に私があの紙に書かれたことはひそかに遂行されたのだろう。

帰ってくる途中、三十分ほど空を見上げている。

疲れているのか、もしくはあの国は海や山に周りを囲まれていたので制圧には一苦労したと考えているのかはわからない。

日記にも書いていなかったことだ。きっとどうでもよいことなのだろう。

その後、秘書と話をしているのか彼女の顔ばかりが視界にあった。

城に戻ると、いつもどおり書斎に籠り、業務を淡々とこなしている。

目に留まった書類の内容は国民の税金の大幅削減の審議書だった。

私はそれを破り捨てた。

その他はいつもどおりの街中で起こった小さな問題や他国との交易の報告書などであった。

よく精錬された鉄製の剣、盾などさまざまであった。

特に問題もないのでサインをし、床に投げ出す。

それほど机が埋まっており、置く場所が無い。

十一時になったので手洗いに行き、また業務を始めた。

王子の行方を捜す小隊を三つほど送り出しているのだが、彼らの報告に見つけたというものは一度もない。

やはり数を増やした方がいいのか?

その後、秘書が床に落ちていた書類を集め、軽く一礼してから部屋を出て行った。

今日の仕事が終わった。

私は自分の部屋に戻り、風呂に入って日課のストレッチをしてから時間を見つけて書き込んでいた日記を読み、眠りについた。


明日の私はいつもどおり、素早く軽装に身を包み、朝食を食べた。

そしてまたいつもどおり、書斎で時間になるまで仕事をして、その後バルコニーへ向かった。

そこで私はいつもどおり、目の前に広がる広大な風景を見渡した。

私は目を閉じた。




私は目を開けた。

私はバルコニーを名残惜しそうに降りた。

その後、私は昼食を食べた。

内容は干した肉とトマトを挟んだだけのサンドウィッチを二切れだけ。



私のこの能力は『運命』を『見る』ことしかできない。


ベッドでのシーンはバスローブや寝間着を着せる描写をし忘れたので、裸のままで想像してもかまいません。

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