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第七章第一話 三か月後と三か月前

前語りです。

改めまして、前回は真に申し訳ありません。

はしたないところをお見せしました。

それでは、今回は私、さっきジンと部屋で丸二章分の話をしていた『レイナ・チェスト』が物語らせていただきます。


舞台は今から三ヶ月前、私とジン達が初めて出会ってから三ヵ月後の物語です。

それでは詳しくは本編で。

お楽しみに。


-----------------------



最近は果物や野菜がよく実る。

狼達は主に肉を食べるので、こちらは食べ放題のようなものだ。

自分の能力を利用して、無理に果物の木を育てることなどはしない。

そんなことをしては森を冒涜しているのと同じだ。

自然に感謝して過ごす。

これが私の生き方だ。

そんなことを考えながら昼食を平らげた時、懐かしい顔ぶれを見つけた。


「あぁ、これは珍しい。と言ったところか?」

口元を軽く拭きながら話しかける。


「久しぶりだな。レイナ」


「ただいまって言ってもいいかな?」


「あぁ、遠慮しないでくつろいでくれ。久しぶり。と言っても三ヶ月ほどしか会っていないだけだがな」

そこにいたのは三ヶ月前に目的を持ってこの森から旅に出た友人だった。


「色々『あって』な。ちょっと急いで戻ってきた。他の皆も元気か?」


「あぁ、フレイの仲間のことか?皆、ジッとしていられないと言って出て行ってしまったよ。やはり彼らも旅人だったようだ。ところで『会った』と言うのはその木の陰に隠れている、恥ずかしがり屋さん二人の事かな?」

軽い冗談を言ってみる。

因みに私の前に居るのはフレイとヘンリーだけだがもう二人、後ろの木の陰に男と女が居る。

あの時は見たことのない者達だった。


「そういう意味じゃない。あの二人はもともと俺と知り合いだったんだよ。色んな情報を大量に集めてくれるもんだから、普段は別行動を取ってもらっている。あの時いなかったのはちょっと遠くに行ってもらってただけだ。ま、男の方は食中毒で倒れてたそうだがな」


「そうか。では名前を教えてはもらえないだろうか?先ほど私が言ったように、本当に恥ずかしいから出て来ないわけじゃないだろう?」


「あいつらは相当用心深い奴らでな、信用できると思った奴以外には顔も覚えられたくないそうだ。名前は知ってるが、俺は勝手に喋るつもりはないからな。しばらくしてから、あいつらに聞いてくれ」


「そうなのか?フレイにそこまで言わせるとはとんでもない者達だな。色んな意味で」


「どういう意味だ?」


「まぁまぁフレイ。今回ここに来たのはそんな笑い話をするためじゃないだろ?ホントにやばいことが起こってんだからさ。なんだったら俺がさっさと用件話しちゃうぜ?」


「・・・・・・お前本当にヘンリーか?ずいぶんと雰囲気が変わったようだが」

長かった髪をばっさりと切って、短い袖からは短い間に鍛えられた腕が見える。

顔に傷跡があるのは実戦を経験したからだろうか?

体も一回り大きくなったような気さえする。


「まあね。人間一日もあれば十分変われると思うよ?ジンとかも変わったって言ってたじゃん」


「・・・・・・そうだな。確かにそんなことを言ってたような気がする。だが、ヘンリー。私はお前は少し無理してやってるように感じるが気のせいか?」

雰囲気の問題ではなく、ただ単に口調が変だ。


「気のせいだ。それより早く説明しちゃってくれよ。フレイ」


「いいのか?時間はあるから、もう少し話していても構わないんだが。何なら俺達は全員で席をはずそうか?」


「な!何言ってんだよフレイ。変な事言うなよ・・・・・・」

やはり変わってなかった。

フレイと軽く口論するだけでも尻すぼみになって、口どもるのは以前と同じだ。


「私もヘンリーと同じ意見だ。フレイ、時間はない。早急に事を進めていただきたい」


「そうッスよ、兄貴。俺ッち達の持ッてきた情報は本当に笑えないんスから。あと俺ッちの紹介酷くないスか?不注意で食中毒とか超恥ずかしいんスけど」

向こう側の木の陰に隠れていた二人が出て来ていた。

どうやら私のことは一応信用されたらしい。

何がきっかけだろうか?


「さてそれじゃあ本題に入るが」


「って俺ッちの事は無視かい!兄貴!」


「ところで二人とも名前は本当に教えてはもらえないのか?呼べないというのはなんとなく歯痒いからな」


「俺ッちは構わないよ。『手々(シュシュ)』ッて呼んでくれ。歳は二十五ちょッと位だ。あ痛!」

シュシュは女の人に後頭部を叩かれた。

上段後ろ回し蹴りで。


「いきなり何を言っている!お前と双子なのだから私の歳までばれてしまうだろ!」

ばれても困らないと思うのだが。


「痛い痛いごめんごめん許して許して。兄貴には言わないから。ごふッ!」

シュシュの腹に膝蹴りをかまして、地に伏せた女性が名乗ってきた。


「大変失礼した。私も名を名乗ろう。私の名は『目々(メメ)』だ。以後よろしく頼む。レイナ殿」


「ん?殿?なんだそれは」


「私達のもと居た国での敬称です。ここからは遠くの国なので存じないかもしれないが」

私に向けて頭を下げている。

信用されたせいか、フレイの知り合いだからなのか年上なのに私に対して丁寧に対応している。

私よりも背が高いので、というかこの人足が長いから腰を曲げても私のことを見下せるのではないか?と思った。

そしてスタイルがいい。


「敬称などいらない。年上のようだが私は敬語はあまり得意ではないからな。貸し借りもないし、普通に話しかけるぞ?」

堅苦しいのは嫌いだ。

リリーには何度も言い聞かせてようやく治してもらった。

懐かしいな。

頑固で優しい性格だった。

そしてスタイルも良かったな。


「それでは私もそうさせてもらおう。そして私が今回の用件を話させてもらおう。とりあえず三人はベッドの下で腕立てでもしていろ」


「何それ!?ちょッとちょッと!俺ッちが何をしたッてのさ。ヘンリーはともかく兄貴までそんな扱いして、姉ちゃんらしくない!」

しぶとく生きていたシュシュが叫んだ。


「俺はともかく、なのか?レイナもそう思うか?」


「さぁ?」

付き合いが短いからよくわからない。

何故私に聞く?


「メメ、俺が何かをしてしまったのなら謝るぞ。言ってみろ、次から気をつける」


「フ、フレイ!すまない!つい当たってしまった。悪いのは全部シュシュだ。こいつは後で埋めておくから」

必死になってメメはフレイに謝っていた。

こんな光景を一度見たことがあるような無いような・・・・・・

あぁ、ジンとリリーか。


「おい!それッて俺に八つ当たりしてるんじゃないの!?」


「話題を戻した方がいいんじゃないか?双子さんのせいで話がなかなか進まないぜ?」


「双子さんと呼ぶなヘンリー。 そうだな、長くなるから、まずは結果だけを先に言っておこうと思う」


「結果?どういう事だ?」


「私達『フレイ・バック』をリーダーとする山賊一味は、」

その次に発したメメの言葉に驚愕した。

まるで目を瞑って底なしの沼を渡りきろうとするような、無謀な行為に思えたからだ。


「戦争を始める」


「・・・・・・な!何!? 戦争!?何故そんなことをする?そんなことをしなきゃいけない理由があるのか!?」

驚きのあまり、一瞬言葉を失ってしまった。

だが、直後に言葉があふれ出した。


ありえない。

フレイがそんな危険なことをするなんてありえない。

そもそも彼らは山賊とは名ばかりで、普段は依頼をこなす冒険者のような立場の人間だ。

そんな人たちがわざわざ戦争なんてするとは思えない。

ましてやリーダーがフレイなのだから。

フレイが意味も無くそんなことをするはずがない。

理由があるはずだ。

もしあるとしたら・・・・・・何だ?

見当がつかない。

食料が欲しいならば、森などで採ればいい。

お金が欲しいならば、依頼をこなせばいい。


「理由はある。とても大切な理由が二つ」


「二つ?二つもか!?戦争をしなければあなた達に何か不都合なことがあるのか?」


「少し違うな。理由の一つは、現在隣の大陸で行われている戦争が激しさを増していき、より広い範囲に被害が及ぶと考えたからだ。この森とて例外では無い。食料が豊富故、拠点のひとつにされる可能性もある。それを止めるためにフレイは戦争を起こそうと決めた。だがもう一つは少々、個人的な理由だ」


「個人的な理由?」


「今行われている争いの中心にいる国、正確には世界的な規模の戦争を起こして今も尚戦い続けている国が、」


「まさか・・・・・・」

悪い予感というのはことごとく当たるものだ。

特にこうした大切なことに関しては。


「そう。フレイとヘンリー、そしてあなたの恩人。『ジン・ステイル』の居た国なのだよ」

私は初めて頭痛というものを体感した。


----------------------------------



「戦争・・・・・・か」

説明から相当な時間が経った。

日は傾きかけている。

どれだけ呆然としていたんだ?

メメは用事があったようで、今はこの場にいない。

確かにショックは受けた。

だが、納得もした。

フレイが何故そんなことをしようとしたのか。

そして今の状況。

自分達がいかに危険な状況なのか。

ボーっとしてたら殺されるような状態だった。


「こいつらの集めてきた情報は当てになる。可能な限りの情報を集めて、関連付けて、確認も取っているからな。そして、大切なことだからな。早く伝えたかった」


「それがもし本当なら、相当頼りになる人たちだな。フレイが知りえない情報をたくさん持っているということか」


「全くだ。いくら貸しがあるからってここまでしてもらっちゃあ悪いと思ってるくらいだ」


「何言ッてんスか?兄貴。兄貴は俺ッち達の命の恩人なんスから、死ねッて言う命令以外ならなんでも聞くッスよ」


「・・・・・・本当に頼れる、自慢の仲間だよ」


「ずいぶんと嬉しそうだな、フレイ。ところで、メメも他の仲間も何故ここにいないんだ?」


「あぁ、ちょっと根回しをしてもらっている。いきなり戦争なんて起こすわけがないだろう?そもそも俺達の目的は戦争を『止めること』であって『始めること』じゃないからな。ただ、止める方法がジンの国はずっと勝ちっぱなしなせいで、話し合いじゃ解決できない。力での行使が必要になっちまった」


「『戦争』と言うよりは『殴りこみ』か?それも準備万端で奇襲をかけて行う『殴りこみ』。だからこその『下準備』でなく『根回し』、と?」


「そうだな、ちょっと違うが。だが説明するには戦争が一番わかりやすいだろ?」


「全くだ。ところでフレイ。さっき気になったんだが、今の話で『勝ちっぱなし』ってのはどういうことだ?」


「それは言葉の通りの意味ッスよ。半年前から負け知らずなんスよ。色んなところで確かめたから間違いないッス」


「・・・・・・あの国は大きな国ではなかったはずだ。確かに軍隊はあったし、金属や食料は他の国よりは多少豊富で困らなかった。だがそれでも、『勝ちっぱなし』ってのはどうなんだ?何度も戦っているってことだろ?俺が知っている限りでは少なくとも二つの国とは戦ったようだし」


「半年で、最も近くにあッた五つの国が敗退したッスよ。それらを率いてどんどん勢力を伸ばしてるッス」


「何!?五つだと!?近くには軍事力の高い国もあったはずだ!半年で堕とすことなんて出来るわけがない!」


「それが出来ちゃッたから大変なんスよ」


「落ち着け、こうなったことにはきちんとした理由があるんだからな」


「だからって!」


「落ち着いて、ジン。話を聞こうよ」


「兄貴。リリー姉さんの言うとおりだ。落ち着いて。フレイ、理由って言うのが俺も気になる。早く話してくれないか?」


「それは俺ッちが話すよ、クリア君。長くなりそうだけどね」



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