第五章第七話 帰還
「どんな秘策なんだ?」
嫌な予感がしながらも聞いてみた。
「それはな・・・・・・あいつを直接ぶん殴ることだ!!」
そういって宣教師のほうへ駆けていった。
「アホかお前は!!」
俺は罵倒しながらクリアを追いかけて、首根っこを引っつかんで後ろへ連れ戻した。
「何するんだよ!」
「お前こそ武器を持たずになんで特攻してんだよ!!」
「元はぶん殴るつもりだったし、力も使えないし、いい作戦だと思ったんだけどな」
「あの野郎が丸腰なわけがないだろ!どっかに短剣でも隠し持ってるに決まってる。仮に持っていないのなら、俺達を素手で倒す自信があるってことだ!それにあいつは用心深い、こっちに来ないのはまだ罠があるかもしれないと思っているからだ。俺はあんな奴とまともに戦うなんてごめんだ」
「戦うのは俺だ!」
「それもごめんだ」
「だったらどうすんだよ!」
「俺が戦う」
「・・・・・・今、戦うのはごめんだって言ったよな?」
「まともに戦うのがごめんなんだよ。だからまともには戦わない」
「言ってる意味が分からん」
「こういうことだ」
そういって俺は、近くに落ちていた木を持ち上げて肩にかけた。
「あ~なるほど、分かったよ。結局俺は『力の無い』ただの餓鬼ってことか」
「そんなことはない。お前は俺よりもずっと強いよ。ただ、少し経験を積んだほうがいい。そうすれば何があっても冷静さを保っていられるし、騙されたりしなくなる。相手の弱点を見つけることが出来るようになったり、その場での最善の行動が出来るようにもなる。さて、それじゃあ話を戻してこれであの宣教師をボコるか」
「ま!待ちなさい!何を持っているんですか!!」
「木の棒だけど?」
「木の幹の間違いでは!?」
「俺にとってはどっちも同じだ」
俺は『木の棒』で宣教師を遠くからぶん殴って憂さ晴らしをした。
能力が防げても、叩きつけられたただの木は防げないからな。
宣教師は三十メートルくらい飛んだかな?
詳しい距離は目測なので分からない。
怪我は・・・・・・治療されなければ死ぬくらいかな?多分。
「で。それで?クリアは俺達と一緒にこの島を出るのか?」
話題を戻す。
「当たり前だろ。どうして俺がこんな島に残らなきゃいけないのさ・・・・・・」
「そうだな。だがその前に、リリーを起こしてお前の親とお前に殺された奴らの供養をしなきゃいけないな。宣教師の分もやっといてやるか」
俺はリリーのほうへ向かった。
今すぐに起こすのは悪いから少し時間を置いてもいいだろう。
穴に落ちた村の人たちがうるさいから少し場所を離れるためにリリーを抱き上げる。
お姫様抱っこで移動する。
「・・・・・・なぁ」
「ん?何だ?」
「俺はあの船にいた人たちを殺したし、あんた達も殺そうとした。それでも俺とこの島を出ようって思えるのか?」
「・・・・・・お前はそう思えないのか?俺が、例えば乗客を殺して、お前を殺そうとしたら」
「絶対思えない」
だから聞いてんだろうが。
と。さも当たり前のように言ってくる。
静かな場所に着いたのでリリーを起こさないようにゆっくりと下ろして、クリアと二人でリリーから少しはなれたところで会話を再開した。
「かわいくないな、お前。いくつだよ?俺は十七だぞ?もう少し年上を敬え」
「いきなりなんだよ?うるさいな。関係ないだろ、歳なんか。反抗期だよ、反抗期。いいから答えろよ」
「はあ・・・・・・俺はお前と友人になれそうな気がしただけだ。あとはリリーが、何がなんでもお前の面倒見てやる!的なオーラを出してるからまぁ面倒くらいなら俺も見てやってもいいかなとか思って。それだけだな」
「・・・・・・ジンはリリーのことが好きなのか?」
「その話は今関係あるか?」
「ない。だから正直に答えろ」
「ないなら答える必要もないと思うんだが・・・・・・別に」
「別に、何だ?」
「別にっつったら別にだろ」
「『はい』か『好きだ』で答えろよ」
「別に」
「おい!二択にねぇよ!」
「二択にねぇのは拒否権だろ!」
「まぁいいや。嫌いじゃあないようだな。あ、因みに俺の歳は十五だ」
「そのくらいの歳になると他人の恋愛沙汰に興味身心ってか?女の子かお前は」
「あんたにはなかったのか?興味」
「その頃は誇り高い父親の背中ばかりを見ていて、女の事はよく覚えていない」
かっこよかったなぁ、あれは。
王子としての立場は捨てたが、今だ追い続ける俺の理想像だ。
「あ、そう。・・・・・・え?王子!?」
「あれ?そういえば言ってなかったっけ。まぁ説明はめんどいし、今はもう関係ないことだから割愛してもいいかな?」
「ちゃんと話せよ!」
やれやれ。
昔話を一から話すことになってしまった。
といっても一ヶ月前を少し振り返るだけなんだけどな。
「そうか。お前、国の王子だったのか」
「見えなかったか?」
「全く。口調のせいか、それとも服装のせいか?」
「変わろうとしていた俺へのほめ言葉として受け取っておくよ。とりあえず、木を削って舟を作れるのならこの島を出るのはすごく簡単なんだけど」
「俺の力を使えば難しくないな。だが、さすがに少し休んでからじゃないと無理だ。疲れたせいで、とても力なんて使う気にはなれない」
「そういえば、よくあんだけ力を使っても倒れなかったな。全快の状態でもあれだけのことをするのは大変だろ?」
「別に、でもあれを四、五回やればさすがに疲れてくるかな」
「・・・・・・お前、俺が帰った後どんくらい力を使いながら俺のこと探してたんだ?」
「罠に引っかからないように常に足元とか木の陰とかを力を使って確認してたからな。あといない相手を探すのは精神的にもきつかったし、集中力もさすがに一時間近くはもたなかったからな。ははは」
「ははは。そうかそうか」
「やっぱりお前のこと信じられねぇわ。絶対。」
「わかったわかった。落ち着け、悪かったって、疲れてんならその固く握った拳を下げて早く休めって。それで小さいボートのような舟でいいから作るのを手伝ってくれ。最悪、お前とリリーの二人乗りでも構わないから。俺は力を使えば、泳ぎながら舟にしがみついて行けるかもしれないからな」
「それでいいのか?まぁ、休ませてはもらおうかな。村にいる奴らがいつ来るかも分からないし、さっさと休んでさっさと舟作って出て行くか」
そう言うとクリアは横になり、すぐに眠りについた。
やっぱ精神的に堪えてたのかな?
起きたらもう一度謝っとこう。
二時間ほどが経った。
クリアの目が覚めたので二人で舟を作り、三人で俺とリリーの居た大陸へ行くことにした。
結果から言うと、クリアの力を使って舟を水で推し進めることが出来たので半日ほどで着いてしまった。
途中、作り方が悪かったのか舟に水が入り込んでしまった。
「やば!底にひびが入った!リリー早く治してくれ!」
「分かった!材料と工具貸して!」
「・・・・・・ん?」
「どうしたの?ジン?」
「工具なんてないぞ。ついでに木材も」
「ないのに治せるわけないでしょ!」
「え!?『癒す力』とかでなんとかなるんじゃないの!?」
「私の能力の説明はさっきジンがしてたでしょ!あくまで『癒す』ことしかできないんだよ!治すことなんて出来ないし、時間なんて戻らないよ!当たり前でしょ!」
「なんだあんまり役に立たないな・・・・・・痛!痛い!蹴るな!落ちる!」
「ジンが落ちれば浸水がゆっくりになるとは思わない?」
「だからって蹴落とすな! あ。」
「あ~ 落ちた。頑張って泳いでこいよ。俺の力で水が入ってこないようにしておくから舟のほうは心配ないよ」
「クリア少しぐらい助けろよ!てかそれでいいじゃん!何で気づかなかったんだよ!」
「気づいていなかったのはジンだけなんだろうけど。まぁ、リリー姉さんが結構楽しそうだから泳いどけば?」
「何でだよ!俺をオールで押すなよ!っていうかクリア!お前何でリリーのこと『姉さん』って呼んでんだよ!」
「いいだろ別に。世話になったんだから尊敬の念を込めるのは当たり前だ。敬語は苦手だから使わないけど」
「別に無理してそんなふうに呼ばなくたっていいよ。クーちゃんだって怪我してる人がいたら手当てとかしてあげるでしょ?」
「何でお前らそんなに仲良くなってんだよ!そのせいじゃないのか?俺が今、海で泳がされてるのは」
「普通にしてたら誰とでも仲良く慣れるでしょ。ほらほらジンはもっと早く泳がないと置いてかれちゃうよ~」
「急げよ。ジン」
「二人は俺のこと嫌いか?それとも大嫌いなのか!?」
「「別に嫌いじゃないけど」」
「じゃあもう少しぐらい優しくしろよ!!」
「「だって信用してはないし」」
そういえば、目を覚ましたクリアに謝ろうとしてたのに忘れてた。
おまけに、今回リリーを色々と心配させたのにきちんとしたお詫びさえも言ってなかった。
元王子だから、そういうのに鈍感なのかな?
どちらにせよ今すぐ治さないと後々絶対後悔するな。
結局俺は舟にしがみつきながら半日の間、死ぬ気で海水浴を楽しむことになった。
ちゃんと謝ったのに・・・・・・
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「これが俺達とクリアとの出会いの物語だ」
今思い出すと最初はリリーとしか仲良くなかったんだよな。
何故そんなことを思い出しているのかって?
別にこんな気分の悪くなる物語を語りたいなどとは思っていなかったのだが、ちょっと聞かれてしまったから手短に語ることにしただけだ。
まぁ、詳しいことは次章の物語りを読めば分かるだろう。




