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第五章第六話 浄化の制裁

前回のあらすじ


歴史上、稀に見る最低な男に馬鹿にされて、プライドがいろいろとずたずたにされました。

あ、どうも『クリア・フリップ』です。

このころの俺はまだ、荒れっぱなしの性格だったので、口調が悪い等のみだらな所を見せることになると思います。

というかこのときは兄貴が悪いと思うんだけど・・・・・・

まぁいいか、もう気にしてないし。


それじゃあ、本編をお楽しみ下さい。


---------------


「まぁあれだ。二人ともそう怒った顔するなよ。はは・・・・・・」


「おかしくなったんじゃないかって心配してたくらいなんだけど・・・・・・」

リリーがクリアの怪我を治しながら俺を睨みつける。


「あんなに馬鹿にされたのは初めてだ・・・・・・」

クリアはリリーに怪我を治されながら俺を睨みつけてくる。

ちょっと落ち着いたのか、大人しくリリーに怪我を治してもらっている。

治ったら殺されるかもしれないけど。

俺だけ。


「ちょっと待てよ二人とも。俺だって落ち込んでんだからな」


「落ち込んでるの?どうして?」


「・・・・・・あいつらか?俺の殺した」


「お前ちょっと強すぎるんだよ。あの船に乗ってたやつ全員見殺しにでもしなきゃあ、リリーは助けられなかったんだから」


「・・・・・・」

正直、リリーを悲しませないために少し無理して明るくしてたんだけどな。

俺もそろそろ限界だし、クリアも我慢の限界みたいだし、あれから時間が経った今ならショックも少ないかもしれない。と思ったんだが。

あまり意味は無かったようだ。


「リリー、大丈夫か?」


「うん・・・・・・ちゃんと皆のことは供養しているよ。と言っても、一人で部屋に居た時に安静をお願いしてたくらいだけだけど。だから後できちんとお墓も立てたいと思ってる。でも、どうしてクリア君はいきなり船や船に乗ってた人たちに襲い掛かったの?」

ずっと疑問だったことをリリーは質問した。


「・・・・・・半年前、この島に盗賊がやって来たんだ。この島は大陸を渡る途中にあったり、大陸からほとんど離れていないところにあるから、そういう奴らが年に何回か来る。だからまた盗賊が来たと思って・・・・・・」


「俺達の船、沈みかかってて困ってただろ・・・・・・っていうか、だからって問答無用で殺しにかかられるのは大変なんだけど」


「半年前のやつらは酷かった。船を治す材料が欲しいとか嘘をついて、村に来るなり食料をかき集めて抵抗する人も抵抗しないで逃げる人も見境無く殺していった。俺はその時この悪魔みたいな力を望んだ。こいつらを殺す力が欲しいって」


「人を、殺めることはいけないことだよ。でも、その時のあなたは頭に血が上っていたからそんなことを願っただけで、本当は優しい子でしょ?」


「な!?何言ってんだ!?今さっき、あんたらは俺に殺されかけただろ!」


「訳があったんだから仕方ないよ。そんなことがあれば人を信じられなくなるのは当然だから。でも村の人を今でも守ろうとしているんだから、クリア君はやっぱり優しい子だよ」


「お前・・・・・・馬鹿だな」

クリアが顔を伏せる。表情はよく見えないが何かの水がクリアの足元に落ちていた。


「リリーのせいでかなり強引に丸く収まりそうだな。しかし、もう一波乱起こりそうだぞ」


「え?どういう意味?」



「ジンさんとリリーさん・・・・・・でしたね?」

気づくと村にいた人間の何人かがいた。

その中には村長や宣教師だけでなく、斧や槍そして剣と盾を持っている男たちが何人かいる。


「ま、あれだけ騒げば嫌でも来るよな」


「あなた達も力を持っていたのですか。お二人なら我々と同じ道を歩むことが出来ると思ったのですが」

宣教師が悲しそうな顔をする。


「出て行け!二度と村へ近付くことは許さん!クリア!貴様もだ!さっさと出て行け!」

村長が怒鳴りつけてくる。


「どうする?クリア。村長はあの通りご立腹のようだ。お前の力さえあれば、ここから近くの大陸に行くのにそんなに時間はかからないぞ?俺達とどっかに行かないか?」


「・・・・・・俺は」


「クリア君。もしこの村にあなたを必要としてくれる人がひとりでもいるのなら、私達と一緒に出て行かないほうがいいよ。その人があなたを支えてくれるから、だからあなたはこの村を守ろうとしたんでしょ?」


「・・・・・・父さんと、母さん」


「お父さんとお母さんはあなたを裏切らなかったのね?」


「優しかった。力が使えるようになってしまったから自分から村を出て行こうとしたときでも、唯一呼び止めてくれた」


「二人はもういませんよ。悪魔に魂を売った血族は天災をも呼び寄せますから」


「・・・・・・島を追い出したか?それとも、処刑したのか?」


「いいえ。浄化したのです。全身の血を抜き取り、魂には神のお言葉とご加護を捧げて土に還し、血は聖水と混ぜて火にくべます。そうしなければ、天災を招く悪魔の血と邪悪な魂は浄化されないのです」


「ッ!・・・・・・酷い」

リリーは目を見張り、口に手を当てて頬を涙で濡らした。


「クリア。俺達と来い。もうただをこねても無駄だぞ。俺の居た国よりもずっと酷い信仰だ。例えお前に大切な誰かがいたとしても無理やり連れて行くからな」


「・・・・・・どうして?」


「何だかお前とは友達になれそうだからな」

境遇が同じで、友達になれると思ったから、クリアのことをちょっとからかってしまったのかもしれない。

後できちんと謝っとこう。


「は?」

クリアは呆けている。そんなに意外だったか?

いや、俺の態度のせいか。嬉しくなってはしゃぎ過ぎたな。


「とにかくリリー。お前は大丈夫か?休みたいなら負ぶっていくぞ?」


「私は大丈夫。それより、早くこの島出て行こう。」


「そうだな」


「待ちやがれ!俺達が何のために来たのかわかってんのか!てめぇらをとっ捕まえて浄化するために来たんだよ!そう簡単に逃がすか!」

猿どもがぎゃーぎゃーわめいているな。


「へぇ・・・・・・じゃあ来いよ。どうせお前ら、俺達が戦って疲れたところを狙いに来たんだろう?こいつ(能力者)相手じゃあ、相当戦いなれてなきゃすぐに殺されるだろうからな。だが俺達を甘く見るなよ?そこから五歩以上こっちに来たら、怪我するぜ」


「なんだとこのッ! うわぁ!!」

男達は俺達に向かって武器を構えて襲い掛かってきた。

そして五、六歩進んだ先で悲鳴を上げて姿を消した。

そこには俺が掘った、深さ幅ともに二メートルほどの円形の落とし穴があった。


それはもともと、俺が隠れるために掘っていたくぼみだったが、リリーが『癒す力』を使って土と草で隠していた。

本来ならリリーのこの『癒す力』はクリアに対して使ったように怪我を治すものだが、植物の成長や卵のふ化などを促すこともできる。

もちろん触れていなければ力は使えない。

『癒す力』というより『代謝を高める力』というほうが合っているかもしれない。

分かりにくい者は『時間を進める力』と考えると分かりやすいかもしれない。

決してそんな能力ではないがな。

あくまで『癒す力』だ。


そしてリリーはその力をうまく利用し、穴が見えないように隠してあった。

時間がなかったので俺が見たらすぐ分かるような雑なカモフラージュだったが、地面が荒れていたせいかそこまであやしまれずに落とし穴としての役目を果たしてくれた。

クリアはくぼみがあることを知っていただろうからそもそも引っかかるとは思えなかったが、即席で用意できる罠と言ったらこれくらいしか思いつかなかった。

無いよりはましだからな。

冷静な三十歳過ぎの熟練した炎を操る能力を持つ冒険者とかなら先回りして用意していても気づかれるだろうが。


ま、結果的には大いに役立ったってことで。


そして俺はその上から切り倒された大きな木を使って蓋をする。

もちろん横に倒して。

誰だ?落とし穴に縦に差し込むのかな?とか思った奴は。

俺はそこまで鬼じゃないし、悪魔じゃないよ。

リリーが居なかったら墓標の代わりとして木を(立て)ても良かったけどな。


「さて、それじゃあ行くか。クリア、最後に何かやっておきたいこととかあるか?無いならこの島を出るための舟作りとリリーの面倒をちょっと見ててくれないか?俺はやりたいことがあるから」


「・・・・・・結局俺はあんたら二人と一緒にこの島を出るんだな。まぁ、こうなった以上もうこの村を守ってやる義理もなくなったわけだから別にいいけど。ここ以外ならどこへでも付いていくよ。だがその前に一つだけやっておきたいことがある」


「何だ?」


「あの村長をぶん殴って目を覚まさせてくる」


「じゃあ俺はあの隣にいる宣教師を殴っていいか?」


「ダメだ。二人とも俺がやる」


「それは構わないが、今のお前じゃあ体力無くて返り討ちにあうかもしれないぞ?」


「それでもいい。俺の気が収まらないだけだ」


「・・・・・・そうか」


「クリア!気が狂ったか!この私に暴力を振るなど!」


「黙れ糞ジジイ!本当なら騙されてばっかのその目ん玉を潰してやってもいいところだが、後味が悪いから一発ぶん殴るだけで許してやる!たぶんな」


「やはり、穢れた魂を持っているようだ」


「てめぇもだ!何が浄化だ・・・・・・俺の父さんと母さんは関係ねぇだろうが!!」


「何を言うのですか?神のお告げにしたがって正しいことをしたまでですよ」


「惨殺とはいい趣味持った神サマだな!」


「神を侮辱するものは私が制裁します!」

そのようなやり取りが行われた後、クリアは水の塊を宣教師と村長に向けて打ち付けた。

殴りつけてないような気もするが、そのあたりはあまり深く考えないことにする。

村長はかわすことも出来ず、もろに攻撃を受けて気絶した。


だが宣教師に水がぶつかったとたん、さながら熱した鉄に水滴を垂らしたかのように水が消え去った。

蒸発したのなら俺もこれほどまで動揺はしなかっただろう。

だが、消えたのだ。

水が、初めから無かったかのように消えた。


「な!何が、何が起こったんだ? 何をした!宣教師!!」

クリアが激しく動揺する。


「私に能力は効きませんよ。私は生まれながらに力に対して耐性を持っていますから。力を帯びたものが私に触れると物体ごと悪魔の力が浄化されるのです。私は宣教師という重役を任されているのですよ?神により、強い御加護を請け負っているからこそこの思想と神の素晴らしさをお伝えすることができるのです」


「・・・・・・その話を聞いたところよぉ。それってあんたの生まれ持った能力じゃないのか?」


「また何を言うのかと思えば・・・・・・これは力などではありません。神によって決められた、私の運命です。力の持ち主を浄化し、神の素晴らしさを伝えていくという定めなのですよ。宣教師としてこの地で一年ほどの経験を積み、より広い領土へ私達の思想を広げていくことが私の使命、運命なのです」


「運命、か。何か俺の居た国を思い出すこと言われちまったな。もし『お前に浄化される』。これが運命ならば、俺は・・・・・・」


「俺は運命なんて信じねぇぞ!そんなの誰かの都合で勝手に作った言い訳じゃねぇか!俺の一番嫌いな言葉だ!」


「はぁ、クリアに台詞取られちまったな」


「あなたは浄化されなければなりません。これほどまでに神に対して反抗的な者は他にいないでしょう」


「さぁ?それはどうだろうね?思想の内容がないようだし、これなら俺の国にあった歴史の浅い宗教のほうがずっとましだだからな」


「やはりあなたもですか。説教を聞かれていたいらしたときから何となく気づいてはいましたが、仕方ありません。後ろで眠っているその女性も含めて全員を浄化しましょう」


「クリア。俺がこいつを殺してもいいか?どうせお前、もう水なんて使い切って持ってないんだろ?どこかから持って来なきゃいけないし、そもそも今のお前じゃあろくに力も使えないだろうからな」


「待てよ。リリーに手を出されそうになって怒るのはわかるが、俺には秘策があるんだからな」


「秘策?」


「あぁ。とっておきの秘策だ」


「・・・・・・どんな秘策なんだ?」

少し嫌な予感がする。


「それはな・・・・・・」



そろそろ書き溜めが無くなってきてしまったので、更新が遅くなってしまうと思います。

おそらくは来週になってしまうかもしれません。

不甲斐ない限りです。

それまで忘れられずにいていただけると幸いです。

それでは。


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