第五章第四話 争い
「あんたみたいな奴らからな!」
そう言うと、クリアが持っていた筒から水を取り出した。
『水』というのは意外と危険だ。
もちろん器官を塞がれて窒息ということもあるが、以前のように塊をたたきつけるだけでも相当の威力がある。
例えば、空気でさえ台風が起これば家の屋根を吹き飛ばし、巨木をなぎ倒す。
では水は? 津波は城壁を壊し、水圧だけで肺は容易く潰すれる。
細く鋭く強く飛ばせば、物質を『切る』事ぐらい簡単だろう。
それにしても筒にいい思い出が出来ないな。トラウマになりそうだ。
あれ?いつの話だ?
そもそも筒でいい思い出なんか出来るか?
なんて事を考えながら、クリアが筒を取り出した時点で既に背後の森へ逃げてそのまま隠れていると、ものすごい光景を目にしてしまった。
簡潔に説明すると。
森がなくなった。
もう少し正確に説明すると。
クリアの正面およそ九十度、距離にして七、八十メートルくらいまでにあった木が全て切り倒された。
気持ちはわかる。
自分の手の内がばれているからこそ、初めから全力で決めにかかるのはわかる。
が。
俺が何の対策もしていないとでも思ったか?
俺だぞ?
この俺が罠を張ってるんだぞ?
と言うのはまぁ別にどうでもいいか。
要するに俺は今、予め地面に掘っていた穴の中に身を潜めていた。
下手に隠れたら盾にした物ごと潰されたり、切り裂かれると考えていたからな。
津波のように水で襲い掛かってきたとしても、くぼみに入っていれば直撃はしないから問題ない。
波や雪崩というのはぶつかる瞬間が一番危険らしいからな。
見たところ、一度水に触れなければそれを操ることは出来ないようだ。
そして、量と距離と速さに比例して集中力がより必要になってくるタイプの能力だろう。
平均的だが、シンプルイズベスト、最強の能力だ。
それにしても、さすがにこれだけやったら相手もばててるだろ。
能力は集中力と精神力に依存する。
俺の能力は割と長く持つほうだが、リリーの癒す能力は燃費が悪い。
切り傷擦り傷は案外簡単に治せるようだが、深い怪我や骨折は治したあと倒れこむように眠ることさえある。
少し外の様子を見てみる。
元気に探し回っていた。
あいつ化け物か?
周りに相当気を配りながら歩いている様子が見て取れる。
しかし予想外だな。
もちろん、いきなりあれだけの力を使われることも考えていなかったし、使ったとしても疲れていないのが予想外だ。
ちょっと木が伐採されるくらいだと思っていたのにな。
おかげで、森の中に仕掛けてあった他の罠がほとんどなくなっちゃったよ。
木陰になっているところには草結びまでしてあったんだけど、あれじゃあばればれだろうな。
柔よく剛を制すとはよくいったもんだな。
圧倒的な力の前に小細工は無駄、か。
さてどうするか、こんなやつに罠や不意打ちをしないで勝てるとは思えないし・・・・・・
・・・・・・よし、帰ろう。
と言うわけで俺は宿に帰ることにした。
村の宿に着くとリリーに愚痴をたらした。
「いやー勝てないなあれは。さらっと殺されちゃうよ」
「私が寝てる間にどこ行ってたの!!」
「そう怒るなって。ちょっと散歩だよ」
「今勝てないって言ったよね!誰に!?あの子!?」
またリリーをなだめることになってしまった。
毎回毎回面倒くさい。
そのあと状況をきちんと説明をした。
話が終わっていないというのに四、五回蹴りを入れられた。
話が終わった後、さらにもう一度蹴られた。
「・・・・・・じゃあ私達が今、こうしている間、あの『クリア』っていう子はずっとジンを探し回っているって事?」
「まぁ、そういう解釈も間違いじゃないかな」
「かわいそう。本当にかわいそう」
「いやいやいや、さすがにもう俺がいないことわかってるだろ。でも今ならちょっとは力が落ちて勝ち目が見えてきてるかもしれないな。そこでリリーにも協力して欲しいことがあるんだ」
「何?」
リリーにこれからの作戦内容を話し、昼ご飯を食べてからクリアの下へ向かった。
さぁ、最終決戦だ。
前回と今回はもともと二つで一話として書いていたので、どちらも中途半端に短くなってしまったと思いますが、大目に見てほしいです。
物語は書き溜めてあるので、しばらく早めの投稿が続けられると思います。
ショートショートも上げました。
何のためにもならないので、暇な方だけ目を通していただきたいです。
それでは。




