第四章第五話 ジンとリリーとレイナとフレイの話し合い
一昨日は兄貴がレイナさんの説得に成功した。
あ、すいません。
新主人公の『クリア・フリップ』です。
前回のおまけで、俺の兄貴かつ元主人公の『ジン・ステイル』が主人公権を剥奪されてただのレギュラーの一人に成り下がってしまったので、今回からは俺が主人公として話を進めることになりました。
でも、登場して少ししか経ってないのになぜこうなったのだろうか?
・・・・・・たぶん、兄貴が俺よりも女心が分からないアホ男だからだろう。
あーきっとそうだ。
でも、俺に主人公が務まるかどうかすっごい不安だなぁ。ちょっと緊張してきちゃった。
いざ本番!となるとやっぱりプレッシャーが違うな。
やっぱ兄貴は只者じゃないよな。ああ、なんかおなか痛くなってきた。
というわけで皆さん。今回は、レイナさんと戦っていた相手『フレイ・バック』と『レイナ・チェスト』の話し合いがメインになります。
それでは本編をお楽しみ下さい。
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「食中毒ね」
クリアはベッドで腹を抱えながら寝込んでいた。
「そんな~。リリー姉さん。姉さんの癒し力で一昨日の兄貴の大怪我みたいに治らない?」
「駄目よ。自然治癒力が上がるから代謝がすごく激しくなって、下痢のせいで一気にミイラになっちゃうから。病気はゆっくり治すものだからね。無理せず安静にしてなさい」
因みにリリーが風邪の治癒を行うと、熱がどんどん上がっていってせきと鼻水が止まらなくなる。
以前体験したことがあり、死ぬかと思った。風邪なのに。
「昨日、きちんと準備したのにな。お前何か変なものでも食べたか?」
一昨日は夜遅くまで起きていたので、明日準備をしてゆっくり休んで明後日に出ようと決めていた。
「一昨日昨日と、ご飯は毎回ジンを作ってくれていたが・・・・・・何故クリア一人だけ食中毒なんかになったんだ?」
「毒草でも食べたか?」
「食わねぇよ!!・・・・・・買い食いならちょっとしたけど。兄貴の金で」
「じゃあ自業自得ね。それが原因だろうし、今日はお休み。私達だけでフレイさん達に会ってくるから。クーちゃんはここで安静にしててね。ここのご主人にはいろいろと言っておくからきちんとお世話になってなさい」
「ううう。痛たたたた。そんなぁ、二人が心配だよ」
「そんなに俺が信用ならないか?ていうか相変わらず心配性なやつだな。」
「明後日とかにしてくれれば、俺もこれくらい治すのに」
「すまないクリア。私のわがままだ。すぐにでもあの男と会って話がしたいんだ」
「・・・・・・わかった。レイナさんがそういうならもう止めはしないよ。俺のことは心配要らないから。あ、でも贅沢言うなら栄養になるものでもあれば欲しいな」
「ふふ。では町では売ってない森のご馳走を持って来よう。だが、クリアだけでなく二人にも、これ以上迷惑をかけるつもりはない。これは私達の問題であって、君達には関係がないのだから」
「確かにそうかもしれないが、もう少し手助けしとかないと、あとでクリアにいろいろと言われそうで面倒だからな」
そう言うと、リリーに腰の入ったローキックをされた。いたいいたい。
「これはジンの照れ隠しだから気にしなくていいよ。私達は好きでお節介を焼いているだけだから。むしろ、私達がレイナに迷惑をかけていないかちょっと不安」
「いや、これ以上なく心強い。ありがとう」
「ああ、じゃあさっさと行って問題解決してくるか。」
「本当に・・・・・・ありがとう」
というわけで、クリアを宿の主人に任せて、俺はリリーと一緒にレイナの行く末を見届けについて行った。
もちろん俺が二人を負ぶって。
だってクリアはまだ子供だからな。なんだかんだでまだ甘えたがりだ。
だから早く終わらせて戻ってこないとな。
この前だってレイナの膝の上で寝てたこともあったし。
・・・・・・なんか今度の手合わせで負ける気がしない。いや、負けるんだろうけど。
話は変わるが、昨日のうちに『フレイ・バック』の情報を集めようとした。
だが貴族を追い出された身、そう易々と自分のことを他人に知られるとは考えにくい。
結局は居場所などの情報が集まらなかったので、一度森へ向かうことにした。
その後、その場にいないようなら反対側にある村にも様子を見に行こうとしていた。
まぁどの道、森で会えたから村には行かなかったんだが。
朝早くに出かけたお陰で、その日の昼過ぎにはレイナの森にたどり着いていた。
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最悪の展開だ。
見渡せば、赤、紅、朱、赫。
見上げれば、森が火事になっている。
見下ろせば、血の海が出来上がっている。
その中に横たわる焼け焦げた狼の躯の一つには、折れた剣先が深々と刺さりこんでいるのもあった。
そしてその奥には、二つ目の剣を携えて怒りに震えるフレイ。
そして襟元を噛み千切られて倒れている少女。
確か獣は単独行動をするものは少ないと聞く。そして集団で動くからこそ、リーダー格の者が必要となってくる。おそらく、そのリーダーがリリーを育てた大きな狼だったのだろう。そして、そのリーダーが亡くなった今、新たなリーダーはあの狼が大切にしていたレイナなのかもしれない。
そのレイナが帰ってきた気配に気づき、今まで大人しかった狼達が活気を取り戻し、フレイに襲い掛かったというところか。
森の火のまわり具合から見ても、それほど時間がたっているとは思えなかった。
レイナは一応落ち着いている。
とりあえず、また怒りに任せて襲い掛かるということはないようだ。
だが
「フレイ落ち着いてくれ!」
「黙れ貴様ら!!何故戻ってきた!二度と顔を見せるなといっただろうが!」
フレイが動揺していて、周りが見えていない。
これじゃあ本当にまずい!
そして予想通り、炎が俺達に向かって襲い掛かってきた。
「リリー!時間がない!!俺に任せろ!」
「ジンのバカぁ!!」
一言だけリリーと言葉を交わし、フレイに向かって突撃する。
俺の力は身体能力をおよそ五倍に出来る。詳しくは一昨日のおまけを参照してくれ。
相手との距離は二百メートルもない。普段の俺は百メートル走るのに約十五秒弱。五倍の速さなら、二百メートルを六秒ほどで駆け抜けられる。
フェイントはいらない。一気に突っ切る。
フレイは俺の速さに驚いたようだが、すぐに炎を使って俺を攻撃してきた。
だが俺の能力は体や肌の丈夫ささえも強化される。
炎を振り払うように動けばいくら強い炎でも軽い火傷で済む。
半分ほど進んだところでフレイは剣を投げつけてきた。腕で振り払う。この程度の刃物で怪我はしない。
だが突然腹の辺りに強い衝撃を受け、体が吹き飛んだ。
「ごはっ!」
「ジン!!」
「大丈夫か!?」
リリーたちが駆け寄ってきた。
「落ち着け。気にするな、吹き飛ばされただけだ」
腹を押さえながら立ち上がり、吹き飛ばされた場所を見ると何かが落ちていた。
根元から折れた剣の柄だった。先端のほうはさっきの狼の骸に刺さっていたやつだ。
フレイは剣の鞘をこちら側に向けて抱えている。
なるほど、俺が投げ飛ばされた剣を振り払ったときに、同時に構えてられていたのか。
そして筒に火薬をある程度詰めて、炎を操って引火させれば折れた柄の部分を台砲のように吹き飛ばすことも可能か。
なんて力技だ。普段なら攻撃の手段には使わないだろう。
だが威嚇や牽制には使えるかもしれない。
俺は運悪く直撃したようだが。
「貴様らが狼をこいつにけしかけたのか?たとえ狼でも害さえなければいいと楽観的になっていた。畜生俺のせいだ。俺のせいでリリーが! てめぇら全員ただじゃおかねぇ!!!」
「・・・・・・フレイ。あんたは俺と似ているな。あんたの境遇を聞いたとき俺とそっくりだと思った。そして性格まで似ていると今、確信した。俺も大切な人を傷つけられれば、あんたみたいに怒り狂って周りにあるものに見境なく八つ当たりするだろう。だからもしそうなった時は、ぜひあんたに止めてもらいたいな。でなきゃあ・・・・・・」
「黙れ!もう許さん!あの世で後悔しろ!!」
そう言うとフレイはどこから持ってきたのか、もう一本の剣を構えてこちらに駆けてきた。
「・・・・・・でなきゃあ。目の前にある、小さいけれど微かに、そして確かにある命の輝きを見逃してしまうから・・・・・・
なんてな。レイナ!やれ!!」
「わかった!!」
もともとフレイと戦ったりするつもりはなかった。
だが話し合いが通じない時、もしくは今回のように出会ってすぐ問答無用で攻撃される可能性も考えていた。
その時のための保険もかけておいた。
植物の種。
炎では自らの懐にはうまく攻撃ができないと考えたからだ。
俺が手に握って相手の足元にばら撒き、そこでレイナが成長させることが出来れば防ぐことは難しい。
本来ならフレイの足元に撒く予定だったが中間ぐらいでばら撒いてしまった。
まぁ、彼がこちら側に向かってきてくれたお陰で罠にかけることができたが。
彼がいつも通り冷静なら、あの場所から近付かずに炎で攻撃していただろう。
「くそっ!!離せ!!」
そういって、こちら側に炎を飛ばしてくる。
だが、レイナが持っていた種から植物を成長させ、包み込むようにして消火した。
「何!?」
「ジンが教えてくれた。この世界には『耐火樹』という火に強い種類の樹があることを。樹皮が厚く、水分を多く含んでいれば火に対して強い耐性を持つそうだ」
「くそっ!! おい!てめぇら!そいつに触るな!ただじゃおかねぇぞ!」
レイナが話している最中、俺はリリーを担いで倒れている女の子の元へ連れて行っていた。
「リリー急いでやってくれ」
リリーは倒れている少女に触れた。
「はいはい。もぅ、信じられないよ。自分の体まで張って。話し合えば分かる人だってずっと言ってたのに結局こうなっちゃったんだから。本当に私の力が怪我を癒す力でなかったら絶対戦わせないんだからね。まったく」
「あれだけ怒っていれば話は聞いてくれないよ。それぐらいわかるでしょ?それに一回ぐらい力ずくで大人しくされたほうが頭も冷えるだろうしね」
「リリー!ジン!そんな事言ってないで早く治してくれ!私はリリーがすぐ治すと思ったからフレイを拘束しているのに!!」
「触れた時点でもう治してあるよ」
「お疲れ様。本当に疲れたんだろう?もう大丈夫だから寝て休んでてもいいよ。レイナ、フレイももう頭が冷えただろう。離してやってくれないか?」
そういうと、レイナはすぐにフレイを解放した。
そしてリリーは俺に寄りかかって眠り始めた。
「お前達は、全員力を持っているのか?」
少女の怪我が治ってもう大丈夫だとわかったフレイが尋ねてきた。
「フレイさん。と言うそうだな。いろいろと疑問に思うところがあるだろうが、私はあなたに話がある。・・・・・・だが、先ずこの森に付いている火を消してもらいたい。大丈夫か?」
「あ。あぁ、わかった。お前の質問にも答えよう。だがその後ででもいいから俺の質問にも答えてもらいたい。」
「もちろんだ」
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体調がかなり悪いけど、一応主人公だしね。ちゃんとまとめさせてもらおうかな。
と思ったけど。
あれ?フレイさんと話し合い、してないよね?
次かな?
ちゃんと話し合いをしました。めでたしめでたし。
だと思ったんだけどな。
っていうか、また俺がいないときに限って危なっかしい目にあってるし、心配だホント心配。
でも兄貴はやっぱり、いざって時はやり遂げちゃう人だからすごいと思うんだよな。
えぇと、今回は結局、俺の欠席とフレイさんとの短い戦闘描写を兄貴が語っただけでした。
ああ、またお腹痛くなってきた。
それでは皆さん、俺が限界なので申し訳ありませんがこの辺で。
またお会いできることを願っています。




