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第四章第四話 少女と狼の物語

今回は、私『リリー・ネック』が語らせていただきます。

今回は前回の翌日の話であり、第二章第一話の続きです。忘れてしまった方は読み返されると話の内容がつながり、よりわかりやすいと思います。

前語りはこの辺で。

それでは本編をどうぞ。


----------------------------


「私は、彼に育てられた」


「彼って誰だ?」

彼女の話を聞いてみる。


「二人とも見ていたのだろう?殺された大きな狼だ」


「あの狼に育てられていたんですか!?」


「あぁ、彼は他の動物と話すことができる力を持っていた。人間はもちろん、鳥やリスなど動物となら誰とでも話せた。もちろん普段はその能力は使わない。いつも自らの命にかえてい


る動物たちと仲良くなることなどできないからな。

だが、捨てられていた私とは話してくれた。動物の狩り方や人間の常識など彼が知っている限りのことを教えてくれた。そしてこの名前を与えてくれた。彼の名前は教えてもらえなかっ


たが、とても感謝している。・・・・・・父親だ」

そういってレイナは泣き出してしまった。


「泣かないでくれレイナ。そんなことをしても仕方がないだろう?」


「ジン。なだめ方が下手だね。でも止めちゃダメだよ」


「え?でもリリー、」


「いいから泣かせなさい。あなただってあの時泣いたでしょう?」


「それがものすごく恥ずかしかったから、二の舞いを踏ませたくないんだよ」


「いいから、頭を撫でてあげなさい」


「お前何考えてんだ!?」


「いいから。・・・・・・泣かせてあげなさい」

ジンは訳がわからないといったふうだが素直に私の言うことに従って、ベッドにいるレイナの隣に座り、頭を撫でてあげた。


「私のせいだ。私があの時、人質に取られなければ・・・・・・私のせいで警戒心を失って、不意を突かれて、彼は・・・・・・」


レイナ。

悲しいときは泣けばいいんだよ。

悲しみを噛み締める時に出す涙。

それは人を強くするから。

でも一人じゃダメ。

泣く場所がないと。

悲しみを受け入れてくれる人がいないと泣けないから。

私もジンも経験している。


ジンは信じていた国に裏切られたとき。

私はそのときの人の恐ろしさに気づかされたとき。


お互いがお互いの胸で泣いたのはいい思い出、ではない。

死ぬほど恥ずかしい思い出でしかない。

でも、今の彼女には必要だと思った。

ジンのほうが私よりも、泣き心地がきっといいと思うからこれでよし。

んー。でもなんか少しだけ、ほんのちょっとだけ、もやもやしてきたような気がする。

気のせいだね。でもあとでジンの足を軽く踏んでおこう。



その時、ドアの扉が開いた。

「兄貴、今日のノルマ終わったから手合わせしてく・・・・・・」

クリアがドアの前で固まって何を考えているのかは後できちんと問い詰めるとして、今は状況説明。


「クリア。静かにしなさい。起きたばかりだけどショックなことで頭がいっぱいなんだから」


「あ・・・・・・ああ!そ、そうか、なんだ!わかった。はは・・・・・・」


「ちょ!ちょっと待て!その子は誰だ!余計な勘違いをするな!やましいことじゃない!」


「落ち着けレイナ。クリア、この人は『レイナ・チェスト』だ。だが詳しい話は後だ。とにかく、今の俺にはあの男の事でレイナに言わなきゃいけないことがある」

空気が変わった。ジンがあの男の人から言われたことを伝えるようだ。

私たちも聞いた。

レイナを説得してもう彼らを襲わせないようにすること。

そしてこの一件は他言無用なこと。

ジンは一体どうやってレイナを説得するのだろう?

一筋縄でいくとは思えない。

ジンはレイナの手を取り、優しく語り始めた。


「レイナ。君を傷つけた炎を操る男の名前は『フレイ・バック』と言うらしい。15年ほど前まで、彼は遠くの国の貴族の一人だったそうだ」


「ジ、ジン。お前一体何を?私は女だぞ」


「だが彼は15年前のその時、親族が不祥事を働いてしまったそうだ。そのせいで彼を含めた家系は称号を剥奪されてしまった。それほどまでに罪深いことをしたんだろう。

そして彼には当時、生まれて間もない赤ん坊もいたそうだ。生きていれば今の俺たちほどの歳だ。称号の剥奪と同時に、その後の処罰も決定していたそうだ。彼は子供を捨ててまで逃げ


出したあと。その親族は濡れ衣を着せられていたと聞いたらしい。そのせいで、他人を信じられなくなってしまったそうだ。

だが彼は俺たちに手を下すことはしたくないと言った。しかし、山賊として仲間を守っている故、命を狙ってくるのなら返り討ちにしなければいけないとも言っていた。

俺は彼に同情するし、仲間を守ると言う点において同意する。

君にだって、戦わなきゃいけない理由はあるだろう。例えばあの狼の敵討ちだ。

だが私は、彼がわざわざ地の利が悪い場所で自ら進んで戦うことはしないと思った。だとしたら君たちから仕掛けたのではないかと考えた。それがどうなのかをまず、きちんと話してく


れないか?」


ジンのこの問い掛け方。私は嫌いだ。

女の人に質問するとき、たまにこうして語りかける。

クリアはこれを口説いているみたいと言っていたけど、私にとっては拷問のようにも思える。

だってなんか、手を握られながらじっと見つめられて、一気に話しかけられると、他の事考えられなくなって素直に答えちゃう感じがするから。

本人曰く、「女の人って押しに弱いかなぁと思って、でもリリーにしかうまくいったことないな」ってナニソレ、ドウイウコト?


「・・・・・・あの人たちは、森へ来る前に彼の同胞を一匹殺して」


「殺した?」


「仲間の狼を一匹、統率が行き届いていなかった自分のせいもあるけど、仇は討つって言って」


「・・・・・・彼に、あの人にそれをきちんと話そうか。話し合える相手だから、きっと自分たちがどれだけ君たちを傷つけたか分かってくれる。彼はそれをきちんと教えてほしいと言


っていた」


「・・・・・・うん」

ジンの口説きもとい、拷問はあっさり事を解決し、レイナを説得した。


襲われれば反撃するのは当たり前。

だけれども、何者であろうとも死を悲しむ仲間や友人がいる。

それが起こした、殺したものが殺されていく負の悪循環。

レイナもその環に入ってしまいそうになった。

だが、ジンのお陰でそれは免れた。

レイナはジンに感謝するだろう。

そして同時に、最愛の者の死を忘れることはない。

敵討ちというのは、何も残らない。

仲間も、敵も、そして大切な思い出さえも同時に消し去ってしまう。



その後、クリアには勘違いの種を植え付けないよう。じっくりと日が沈むまでお説教をした。

三人で。

その間、何度かジンの足を踏んでおいた。



------おまけ------

時間がない方は飛ばしてください。ただの世間話(台詞のみ)です。




「それにしても、あのときの兄貴はすごかったな」


「あの時っていつの時のこと?クーちゃん」


「そう言われると、兄貴っていっつもすごかったような気がする。えぇとほら、その・・・レイナさんを負ぶって帰ってきた時さ」


「あれか?まぁ俺の力を使えば、リリーとレイナを一緒に抱えても二日かかる道のりくらい半日くらいで往復することなんて簡単だよ。っていうか。お前こそ何で食中毒にかかった、な


んて嘘ついたんだよ」


「兄貴の背中を見て育ったからだよ」


「なんか、よくわからないけどごめんなさい。俺が悪かった」


「ジンも力を持っているのか!?」


「そうよレイナ。実は私も持ってるの。癒しの力なんだ。切り傷はすぐ治るし、時間をかければ骨折とかでも治せるよ。この力があってよかったよ。もしなかったら、ジンの手足を縛っ


てでも二度と戦わせるつもりはないからね。ふふふ」


「あぁ、リリーのお陰でいざという時、すっごく安心して戦えるよ。ははは」


「兄貴は感謝して笑ってるけど、リリー姉さんは怒ってるな。ものすごく」


「その力で私の首の傷を癒してくれたのか。で、ジンの力って一体どんなものなんだ?」


「俺は、なんと言うか説明が難しいな。簡潔に言うなら身体能力が4,5倍になるってところだな。ただ、筋力が強くなるだけじゃなくて、体の強度とか体力とか視力とかそういったも


のも強化されるのが一番の利点だな」


「なのに俺との手合わせでは、兄貴は本気出してくれないんだよなあ。それじゃあ俺が強くなれないのに」


「お前は俺よりずっと強いって言ってるだろ?」


「否定はしないよ。普段からの集中力とか精神力の強さは俺のほうが兄貴のよりも優れているかもしれない。でも、勝てる気がしないんだ。相性とかそういう問題でもないのに、手合わ


せしていつも勝ったとしてもたまたま勝てたとか兄貴が手を抜いたとしか思えないんだよ。」


「そんなことはないんだけどな。毎回必死だぞ?」


「そうかなぁ?何かむしろ兄貴みたいな能力のほうが強い気がしてきた。」


「そうか?お前の能力のほうが便利だと思うぞ」


「便利じゃあんまり意味無いんだけど・・・・・・あぁもういいよ!早く手合わせしよう!そのために来たんだから!」


「あぁ、そういえばそうだったな。よしそれじゃあ行こう」


「でもクーちゃん。クーちゃんならいつも、ジンと手合わせしてるんだから、こんなこと改めて驚かなくてもいいんじゃないの?あとジンはいつもクーちゃんとの手合わせ渋ってるのに


こんな夜に自分から行こうだなんて、どうかしたの?」


「ギクリ」


「どうしたんだ?ジン。そんな顔をして。まるで、私のことが女だと気づかずに親切にきれいな服に着せ替えさせてやろうとしたところ、あらぬ所を目に焼き付けてしまい。私にばれな


いようにひた隠しにしていたが、クリアとリリーの発言によりばれそうになって動揺しているかのような顔だぞ」


「・・・・・・あれ?これ言い逃れができない」


「クーちゃんは手伝うの面倒だって言ってたから、見たのはジンだけだよねぇ?」


「待て、リリーだって例外じゃあないだろ?」


「私とジンとじゃあ、罪深さが違うでしょ?ごめんなさいね。レイナ。でも安心して、ほとんどジンが着替えを終わらせちゃったてから、私は全部は見てないよ」


「嘘言うなぁーーー!!!」


「リリーは許す。お前は殺す!!!」


「ちょっと待て! あぁ!しまった!木!木が!木製のベッドがぁ!!!あああああああああああああああああ」


「なるほど、レイナさんはこんなふうに木を操ることができのか。兄貴たちに聞いて、予想してたのよりずっとすごい力だな」


「お前助けろよ!俺はお前の兄貴だろ!!」


「俺、兄貴のこと心配してないから、あと死にたくないし」


「ああああああああああああああああああ」




----------------------


今回、作者の悦楽のせいで主人公が全治二か月ほどの大怪我をしたため、主人公交代が行われました。

新主人公の活躍する次回をお楽しみ下さい。


それでは次回作、これが運命ならば、第四章第五話


新主人公『クリア・フリップ』


兄貴分『ジン・ステイル』


ヒロイン要素『リリー・ネック』

      『レイナ・チェスト』 

※新主人公のヒロインではありません。


ラスボス要素『フレア・バンド』

      『リリー(仮)』

      『大きな狼(既死)』

※本物のラスボスではありません。あと、このうち誰かはしばらく空気です。


をお楽しみ下さい。


読んでいただいた方にはわかるかもしれませんが、国や狼などには名前がありません。

主要人物以外には名前を付けないほうがいいと考えているからです。

名前を付けたら悪いのかと言われれば、そんなことは思っていません。

ただ、作者がろくな名前を思い浮かべることができず、格好悪いイメージを作り出してしまうと考えているので、名前があったほうがいいとの注意がない限りはこの調子で続きます。

気になる方がいらっしゃるかもと思ったので、あとがきを書かせていただきました。

それでは次回をお楽しみください。


あと主人公は本当に変わります。


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