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Last color  作者: 蒼井 紫杏
39/44

第38話

お気に入り登録有難う御座います。

投稿を待って下さっている皆様、有難う御座います!

ブブッブブッ………


[件名: 話しの続き]


うん。前にも見たことがあるなーー。

というか…使いまわし?


[差出人: 白崎 奏音]


うん。分かってたよ?


[どもーーー!]


やっぱり、このノリでいくんですね。


[今何してんのー?

私は外にいまーす。ちょっと肌寒い!!!www]


意味が分からない。


「奏音さんから?」

「そうです」


リビングのソファーで突っ込みを入れそうになりながらメールを読んでたら、丁度お風呂上がりのみちるさんが入ってきた。


「なんて送られてきたの?」

「まだ、最初の方しか読んでないですけど……先に読んで下さい」

「いいの?」

「むしろ…どうぞ?」


疲れるの覚悟で!!!


「ありがと」


わたしが手渡したホットミルクをふーふーして飲みながら、メールに目を通す。

みちるさんは猫舌ですね。


おっ……眉間に皺が寄って来てます…


「ねぇ、ユキちゃん……彼女は何が言いたいの?」

「さ、さぁ?なんて書いてます?」

「そうね…長いメールのくせに一言で表すことが出来るわね」

「……その一言でお願いします」

「寒さに強くて暑さに弱いそうよ」

「……………」

「………」


そりゃ、基本が狼ですもんね?

で?


「それだけですか?」

「それだけよ……」


…………どうしたらいい…?


ブブブブッブブブブッ………


電話?

あれ?でも、わたしのじゃない。


「あ、わたしね」


あー、みちるさんのか。


「ねぇ……ユキちゃん」

「はい?あの、出なくていいんですか?」


みちるさんの手の中でずっとブルブルしてますけど……


「彼女は何がしたいのかしら…?」


わたしに向けて見せられたスマフォの画面に出ている着信表示……


「……さぁ?」


[通話着信  奏音ちゃんだよ♪]


というか!こっちでもやってたのか!!!

みちるさん……直そうよ…


「もしもし……あれ?」

「どうしたんですか?」

「切れたのよ」


ピーンポーン…


「…………」

「……………」


わかりますか?

非常に嫌な予感…

いいえ、不愉快な予感がします……


ピーンポーン…


「ふぅーーーー」

「みちるさん。わたしが行きます」

「……はぁ…」


みちるさんの返事が溜息です……


「大丈夫よ、わたしが行くわ。いいユキちゃん、決めつけは良くないわ。きっと偶然……偶然なのよ…」


最後の方は、完全に自分に言い聞かせてたけど…


「あっ……」


みちるさん、もし本当に来客だった場合どうするの!?

お風呂上がりです!っていう格好のまま行っちゃったし!!!


「み、みちるさん!」

「えっ?」


ガチャ


「はい、ごんばんわー!」

「………」

「奏音ちゃん…」

「はい。呼んだ?」


うん。結果オーライ!

このセキュリティーの高いマンションで、まずありえないと思うけど、夜遅くに不審者とか、変な勧誘のおじさんとかが来たんだとしたら……

みちるさんの御風呂上がりの姿を見たのが奏音ちゃんで良かった。


「呼んでない。どうやって入って来たの?」

「うん??死角をついて?」

「……」


意味が分からない。

取り敢えず、セキュリティーの甘い所からって事にしとこう。


「今度から来る前に連絡しなさい。そうすればきちんとコンシェルジュにも連絡しておくし、正面から堂々と入れるでしょう?」

「へーい。事前に連絡する時は正面から入るってことで!」

「……毎回事前に連絡するのよ」

「はーい」


きっと、次も突然現れるな……


「いやーー、それにしても…二人でお風呂?ラブラブだよねーーー」

「「はぁ??」」


何言ってるの!?


「別々で入ってるし!」

「どこをどう見たらそうなるのよ!」

「どこをどうって…だって、ユキちゃんも矢原先生も髪の毛濡れてるし……完全な風呂上がりーーーって格好だし?」


えっと……確かにみちるさんの事言えない格好ですね。

みちるさんの先に入らせて貰ったんだけど髪の毛乾かすのが面倒で、つい自然乾燥を狙ってしまう。

でも……


「そういえば…ユキちゃん?」

「はい。……なんでしょう?」

「髪の毛が乾いていないようなのだけれど?」

「…みちるさんとお揃いですね?」

「…………」

「……………」


みちるさんが許してくれないんです。


「わたしはお風呂から上がったところなの。ユキちゃんは時間があったはずよね?」

「……ほら、もう、ほとんど乾いてますよ?」

「そんなわけないでしょう……ユキちゃん、貴女の髪は綺麗なのだからきちんと手入れしなさい」

「分かってますけど……」

「ほら、あちらを正面に座りなさい」

「いえ、あの…みちるさんから先にど――」

「却下よ」

「……はい」


結局、こうやってほぼ毎日みちるさんに髪の毛を乾かして貰う羽目になる。


「ユキちゃんの髪はサラサラね」


そう言って、手櫛しをかけながらドライヤーで乾かしてくれる。

ちょっとくすぐったいけど、なんとなく落ち着くというか……


「はい。乾いたわよ」

「あっ、じゃあ次は代わります」

「…そう?ありがとう」


やってもらった事は、きちんと返す。

これ、人としての常識ですよね。

いくらわたしが人でないとはいえ、感謝していることは行動で伝える事が出来るんです!


「みちるさんの髪は綺麗ですね」


ドライヤーを当てながら手で梳くと良く分かる。

癖がない。

真っ直ぐで癖が無いというのもそうだけど、色が変わらない。

例えば、日に焼けて毛先の方が変色していくというのがない。

だからと言って毛が太い分けでもなく、どちらかといえば細いのに…

なんだろう、芯が通った髪の毛?って感じ。

そんなわけないけど、髪の毛にまで人格が表れてる?って思ってしまうくらい…


「ふふっ」


髪の毛に人格が表れるって…!

自分で考えておきながら思わず笑いが漏れる。


「急に笑ったりして、どうしたの?」

「なんでもないですよ」

「思いだし笑い?」

「違います」

「そう?」

「そうで――ふははは」


ドライヤーを止め振り返ったみちるさんの髪の毛が、笑ったわたしを咎めるように顔を掠めてまた笑いが溢れだす。


「もう…なんなのよ」


そう言いながらも、みちるさんが柔らかく微笑むからつい…――


「ねぇ、私出直した方がいい?」

「「…………はぁ?」」

「いや、だからさ…お邪魔なようなんで、出直してきた方がいいんじゃないかなーって」

「奏音さん…」

「はい」

「…………」

「……………」


声にならないみちるさん。そうですよね。

このパターン前にもありました!

でも、今回は違いますから!!!!!!

覚えてます…覚えてましたよ!!!


「はい!!みちるさん!ありがとうございました」

「イ、イイエ。ドウイタシマシテ」


頑張れ、みちるさん!


「あーーー、帰ろっか?」

「大丈夫です!」

「いやーー、二人の世界っぷりが凄かったから止めなかったけどさ……」

「そんなことしてないわ!」

「髪の毛の乾かし合いっこ?」

「アレハ…」

「髪が長いからお手入れが大変なので。手伝いですよ」

「へーーー。毎日?」

「まさか!毎日じゃないからね?」


ほぼ毎日なだけです…


「っていうか、もう二人で入っちゃえばいいんじゃない?って思ったんだけど」

「二人で?意味が分からないんだけど…」

「いや、だから――」

「で、奏音さんは何しに来たのかしら?」


あ、みちるさんが復活した。


「うん?話しの続きじゃないの??」

「……その喋り方なのかしら?」

「ユキちゃんはどっちがいい?」


チラッとみちるさんを見る…

眉間の皺が……


「素の方で喋って下さい」

「はい。承知致しました」


切り替え早っ!


「それで、話しの続きをしてくれるのよね?」

「はい。そのつもりなのですが……」

「どうしたの?………やっぱり、わたしには教えられないのね?」

「いいえ。ユキ様が御望みですので、矢原先生にも御話し致します」

「そう」

「ユキ様。以前にも申し上げましたが、本来であれば協会《Box》の者が全ての説明を致します」

「聞いたけど……」

「それは、今は教えられないということよね?いつまで待たせるの?ここまで待たせるその協会《Box》?本当に教えるつもりがあるのか疑問だわ」

「協会《Box》がお待たせしていることに関しては私も非常に憤りを感じております。ですがユキ様へのコンタクトを慎重にならざるを得ない理由もあるのです……」


理由……


「その理由というのは教えて貰えるのかしら?」

「私ではお教え出来かねます」

「結局、そうやって隠すのね」


理由………


「秘匿しているのではありません。私も存じ上げないのです」

「どういうこと?」

「まず基本的な事なのですが、全ての主ヴァンパイアを一括りにヴァンパイアと纏めて言うことは出来ません。例えて申し上げますと、一番一般的なヴァンパイアをA、次に多いB、その次のCというように――」

「つまり、ヴァンパイアというのは何種類も存在するということかしら?」


理由……………


「端的に申し上げますと、そういう事で御座います」

「それと、協会《Box》がユキちゃんとコンタクトを取らない事に関連があるの?」

「……確証があるわけでは御座いません。私的な意見とお思い下さい」

「ええ」

「恐らくユキ様は、非常に珍しいタイプなのではないかと」

「それは……ヴァンパイアとしての種類が、ということよね?」

「はい。あくまで私の予想ですが」


理由……


「……本当にそうなの……かな………」

「いえ…あの、あくまで私のよそ―――」

「協会《Box》はわたしの何を知ってるの……?」

「何を…ですか?」

「わたしの知らない何を知ってるの?」

「ユキちゃん?」

「わたしがこうなった理由って何…?どうしてわたしだったの…?誰が何を知ってるの…?誰も止められなかったの…?どうして……どうしてパパとママが死ななきゃいけなかったの!?…………どうして……なのかな…」


協会《Box》が知っている事。わたしとコンタクトを取らない理由……

全てが悪夢の……あの日に関係してるんじゃないのかな……


「ユキ様……。もう少し…もう少しだけお時間を頂けませんか?一ヶ月…いえ、半月以内に協会《Box》側とコンタクトを取ります。協会《Box》側から必ず説明の者を来させます」

「奏音さん、貴女にそんなことが出来るの?」

「必ず…どんな手を使っても……」

「……………」

「…ユキちゃん」

「分かってます…」


奏音ちゃんは言った事はきっとやる。


「待ちます。奏音ちゃんを責めたいわけじゃないから……無理はしないで」

「……はい」


真実……

それが分かる日が来る?

大丈夫………待てる…


「ところで奏音さん」

「なんでしょうか?」

「協会《Box》が説明するっていうのは分かったのだけれど、じゃあ奏音さんは何を話しに来たのかしら?」


あぁ、確かにそういえば。


「はい。ですので私が話せる範囲で……といいますか、基本的に誤解を生んでいるであろうポイントを修正せねばと思いまして」


誤解を生んでいるポイント?


「つまり?」

「結論から言いますと、私とユキ様の関係、及びColor coating《補色》に関してです」


えっと……それって今更説明が必要なのでしょうか?


「………それは必要な説明なのね?」

「と判断します」

「分かったわ……」


そうですか。


「まず、私とユキ様の関係ですが…――」

「分かってるわ」


契約守護獣と主ヴァンパイアの関係ですね。


「いえ、分かっておられないかと……。念の為におっしゃって頂けますか?」

「……付き合っているのでしょう」

「はぁ!!?わたしと奏音ちゃんって付き合ってましたっけ?」

「付き合ってません」

「えっ????」


ど、どこからそんな情報が?


「おかしいと思っていたのです……ユキ様は矢原先生に何か説明されましたか?」

「何を?」

「契約守護獣などです」

「して……ない?」


だって、わたしだけの話しじゃなかったから奏音ちゃんの許可も得ずに勝手に話すのはどうかと思って……


「契約守護獣?それはなんなの?」


そっか、そこからだったんだ……


「えっと、守護獣と主ヴァンパイアの一対一の契約……だったよね?」

「そうで御座います」

「つまり、主ヴァンパイアであるユキちゃんの契約守護獣がwerewolf《人狼》である奏音さんということかしら…?」

「そうで御座います」

「契約守護獣……それは、ユキちゃんにマイナスになるようなことはないのね?」

「御座いません」


おぉ、言い切った。

三年は死ねないというのは……

まぁ、マイナスじゃないといことで。


「つまり……どういうこと?」

「つまり、矢原先生が懸念されているような関係では御座いません」


付き合ってません!!


「でも、あの……ホテ…ル…」

「やはり、あの日気付いておられましたか。確かにホテルには入っておりますが、そういった用途で使用したわけでは御座いませんので御安心下さい」

「な!そ、そういった用途って!御安心って!!」


あ、みちるさんが真っ赤だ。


「はい。セックス目的では御座いません。主従契約する為に使用したのです」

「セ………」


みちるさん……医者なのに初心ですね。

というか、落ち着いて思い出して下さーい。

同性ですからね?


「あと、Color coating《補色》に関してですが……矢原先生…話しを進めても大丈夫でしょうか?」

「だ、大丈夫よ」

「Color coating《補色》は以前にも御話しさせて頂きました通り、主ヴァンパイアとして必ず必要な行為です」


…………


「どれくらいの間隔で必要なの?」

「そうですね……主の感覚次第なのですが、契約守護獣がいて適度にお力を使い、食事睡眠を取ったとすると、週に二度程であると思われます」

「そんなに!?」

「ユキちゃん――」

「10日に一度…」

「週に二度なのよ」

「週に一度…」

「却下よ」

「…………」


今の感じでも問題があるようには感じないのに…


「ユキ様、急に週に二度にとは言いませんが、増やすよう努力して頂けませんか」

「……分かった」

「Color coating《補色》は矢原先生以外でされないのですね?」

「みちるさん一人にしない方がいいの?」

「いえ、そんな事は御座いません。Color coating《補色》で貧血になるような事は御座いませんし、健康に負担を掛けるような事は御座いません」

「じゃあ、わたしは問題ないわよ」

「ユキ様は、矢原先生一人がよろしいでしょうか?」


みちるさん以外にColor coating《補色》する?

イメージがわかない……


「そう……ですね。みちるさんには申し訳ないですけど………」

「矢原先生、嬉しいですよね?」

「そ、そうね」

「奏音ちゃん、無理に言わせないで」

「ユキ様……」

「言わされたわけでは無いわよ」

「そう…ですか?」

「そうよ」


わたしもColor coating《補色》をしたことで、みちるさんに対して独占欲が強くなってる。

みちるさんもわたしが他の人にColor coating《補色》をすることがイヤ?

Color coating《補色》には独占欲が強くなるような要素があるの?


「ユキ様、基本的な事を申し上げますとColor coating《補色》は……誰でも良いのです」

「は??」

「誰でもというと語弊がありますが、記憶操作が可能なので人を固定する必要も御座いませんし、主にも血液の好みが御座いますから飲み比べなど――」

「しません」

「はい。つまり矢原先生はユキ様の好みということなのでしょう」

「他の人にColor coating《補色》した事がないから知らない……」

「そうですね……例えば、以前蘭さんが怪我をした事が御座いますよね?覚えておられますか?」


そういえば、クリスマス会?の時に……


「覚えてますね」

「奏音さんの血の匂い……矢原先生の血の匂い…」

「ふぅ………」

「御自覚頂けましたか?」

「……確かに、みちるさんの方が惹かれますね……………」

奏音ちゃん、どうやって忍び込んだ!

みちるさんの気持ちはダダ漏れなのに、ユキちゃんが鈍すぎる……

奏音ちゃん、フォローしたげて!!

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