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Last color  作者: 蒼井 紫杏
36/44

第35話

間が開きました……

次回は頑張ります………きっと…

コンコン


「お時間がかかっているようですが何かありましたか?」


控え目にノックされたドアの向こうから蘭さんの静かな声が聞こえる。


「あら、大丈夫よ。心配を掛けてしまってごめんなさい。もう少しで行きますと伝えて貰えないかしら」

「わかりました」


ドアから遠ざかる気配。鏡越しに京香様を見ると少しだけ赤くなった目と目が合い、気まずくなる……


「ごめんなさい。いい年をして恥ずかしいわ」

「い、いいえ」

「はい。髪の毛はこれでいいと思うわ。あとは御着物を整えましょう」

「はい」


言われた通りに鏡の前に立ちながら、さっきの話しを思い返す。

パパが天涯孤独なのは本当。

でも、家族として受け入れてくれる人は居たんだ……

なんで、自分から拒否したの?

感情を押し殺しながら生きて相容れる人を拒否して………何を隠していたの?

そんなの……

そんなのまるで…わたしみたいだ…………


「わたしたちはジョシュの事を愛していた。わたしたちのことを愛してくれているジョシュの気持ちも感じていたわ」

「父はみなさんを家族として愛していたと思います。みなさんの愛情も受け取っていたと思います」

「………それでも笑って欲しかったわ。怒って欲しかった。泣いて欲しかった。我儘を言って欲しかった。……あの子の背負っているものを一緒に共有したかったわ」

「……………」

「茜さんと出会って貴女が産まれて、やっとジョシュに家族が出来たのね」


パパ……ここにも貴方の家族が居ます。

みんなパパの事を愛してくれています。


……嬉しいですね。


「本当はユキさんもこちらで引き取るつもりだったのよ」

「はい?」


……なんですか?


「けれど、ほら…千草様がいらしゃったでしょう……」

「…………」

「実はね千草様から修さんへの御縁談の御話しがあった時嬉しかったの」

「嬉しかった…ですか?」

「そうなの。まるで孫が帰ってくるみたいでしょ?実際は御嫁さんだから娘になるのね。うふふふ」

「……………」


穏やかに笑う京香様。


「ユキさんの意志も確認せずに御話しを進めてしまってごめんなさい。ジョシュの時みたいに待てなかったのよ。御婆様ではなくて御母様だけれど……やっぱり嫌だったかしら…?」

「いえ。嬉しいです」


素直に嬉しいと思える。

だけど、やっぱり…


「………何を背負っているのかしらね」

「えっ?」

「いいえ…なんでもないわ。なんでもないのよ」

「………………」

「みちるさんとの生活はどう?」

「とても優しく――あれ?」


わたし、修さんと結婚したんですよ?

まさか、みちるさんと暮らすっていうのも知ってるんですか?

いやいや……結婚したら普通結婚相手と暮らしません?

そっか、みちるさんと修さんの関係を知ってるから。

いやいやいや……だとしても、普通みちるさんと修さんが一緒に暮らすって思いません?

いやいやいやいや……わたしが和志さんと住んで、みちるさんが修さんと住んでしまったら当人はいいのかもしれないけど、夫婦がそれぞれ異なる異性同士で住んでたら、余りにも世間体が悪いから………

いやいやいやいやいや…………


「あら、難しい顔をしてどうしちゃったの?」

「あの……京香さ――御義母様はどう思っておられるのですか?」


ここは、ストレートに聞いてみよう!


「うん?何をかしら?」

「修さん、みちるさん、和志さん……わたしも含めた4人の結婚に関してです」

「そうね……ユキさんは、そういう関係は道徳的ではないと思う?」

「道徳的…分かりません。何が許されて何が許されないのか」


まず、人でもないわたしが道徳を語るべきじゃないでしょう。


「あの子たちが何か悪い事をしているのかしら?」

「何も……何も悪くはないです」

「………私は、あの子たちに甘いのでしょうね。あの子たちの幸せを一番に考えてしまうわ」

「結婚という形を取らなくても幸せならいいということですか?」

「そうね。結婚することだけが全てではないでしょう?結婚という繋がりが無くても家族になれるわ。あの子たちが考えて出した答えだから認めてあげたいのよ」

「家族…ですか……」


確かに、みんな家族みたいだ。

誰と誰が結婚してて、してないとか関係なく全てを受け入れてる。


「でもね本当は少しだけ……少しだけみちるさんのことが心配だったのだけど、貴女が来てくれてよかったわ。うふふ」

「はい?」

「あぁ、だからと言って無理する必要はないのよ?嫌な事は嫌と言っていいの。それでも言い難いことがあるのなら御母様に言いに来なさい。ユキさんは何があっても私の家族ですからね」


えっと…


「はい」


って、答えていいんでしょうか?


「さぁ、そろそろ行かないといけないわ。ユキさんの時間を独り占めしていたら怒られてしまう。慣れないと思うのだけれど歩けそうかしら?」

「あっ、はい。大丈夫です」


歩幅を小さくして歩くんですね。

しずしず……


「ユキさん」

「はい」


なんでしょう?


「おかえりなさい」

「えっ?」

「……………」


パパの家族。パパを愛してくれた人たち。

わたしを待っててくれた人たち……

………ありがとうございます。


「…た……ただいま…」

「うふふふ。おかえりなさい」


もう一度おかえりなさいと言った京香様が開いた扉の向こうに、女神様がい―――

違う!

えっと!!いつものかっちりじゃない華やかな着物を着たみちるさんが振り向いて、驚いた顔でこっちを見てる。

うん?

何を驚いているんですか?


「わぁ、ユキさん!とてもお似合いですね」

「本当に。その着物の色もいいね」

「似合う似合う!」

「あ、ありがとうございます。修さんと和志さんも、とても落ち着いた雰囲気で格好いいです」


わたし似合ってます?

めちゃくちゃ外人です!っていう見た目のわたしが和服とか着ちゃってもいいんですか!?

それに……


「あら、みちるさんどうなさったの?」


みちるさん、こっちをみたまま動かないですし!


「な、なんでもないわ」

「なあに?感想は無いのかしら?」

「い、いえ!あの変だと思いま――」

「似合っているわ。その着物の色に貴女の髪色がとても映えて……き、綺麗よ」

「ありがとうございます!」


確かに、この着物の色は吸い込まれそうな赤でとても綺麗だと思う。

髪の色との対比が更に美しく見えるのかな。

うん!変じゃなくてよかった。


「うふふふうふふ」

「お、御母様。何かしら?」

「いやあね、みちるさんったら。なんでもないのよ。ふふふ」

「………ふん」


うん。本当に仲が良いと思う。

全てを受け入れた。これが家族の形なんだろう。


「そういえば母さん、何がおかえりなんだい?」

「うふふ。ユキさん」

「ユキさん??おかえり…ですか?」

「蘭ちゃんにはわからないかしら」

「わたしにも分からないのだけれど?」


京香様、今まで話してた流れが分からないのに誰に理解して貰おうとしてるんですか!?

そんなエスパーみたいな人――


「ジョシュ……かな?」

「!?」

「あら、さすが修さんね」


怖い!修さん、怖いです!!!


「あぁ、確かに。おかえり……うん。いいねぇ」

「うふふ。陽季さんも嬉しそうね」

「嬉しいね。孫が帰って来たみたいだ」

「あらあら。陽季さんも同じことを仰るのね」

「ははは。修と結婚したんだから娘なんだけどね。やっぱりジョシュの方が息子みたいなものだったから、感覚としては御爺ちゃんだね」

「あの……ジョシュさんという方は…?」


そうですよね。香山家の人たちじゃないと分からない会話でしょう。


「ユキちゃんのお父様よ」

「はい。そうです………って!!」


あれ!?なんでみちるさんが知ってるんですか??


「ユキちゃん、どうしたの?」

「あ、あの…みちるさんは父の事を知って…る………?」

「もちろん知ってるわよ」

「え?」


もちろんなんですか?


「みちるさんったら、ジョシュの事を実の兄だと信じてたものね」

「そ、そんな小さい時の話しを持ち出さないで!」

「そうだよ、母さん。みちるだって小学生に入ってからはちゃんと疑問を感じてたんだからね」

「まぁ!ではそれまでは信じていたのね?」

「あ、あのね――」

「はいはーい!ちょっと質問なんですが!!!」


わたしも聞きたい事があるんですが!

何故、みちるさんも当たり前にパパの事を知ってるの??

しかも話しを聞いてる限り、誰かから人づてに聞いて知ってるとかではなく、みちるさんが小さい時に実際に親しく接して知ってたみたいな感じなんですけど?


「和志君、どうしたんだい?」

「さっきから話題になってるユキちゃんのお父さんのジョシュさんって、あのジョシュさんですよね?」

「あのジョシュさんだね」

「和志も良く相手にして貰ったから覚えてるだろう?」

「覚えてるよ。文哉さんにもジョシュさんにも遊んでもらったし」


ちょ……っと待って下さい!

全く整理が出来てません!!

ここに、和志さんまで絡んでくるんですか???


「お父様?」

「はい。えっと、さっきもみちるさんが言いましたが、わたしの父です」


ほらほら!わたしだけじゃなく蘭さんも話しについていけてませんから!!!

ちょっとは、収拾して説明して下さい……


「あぁ、いえ。そうではなく……――」

「ユキちゃんが混乱しているわ」


わたしも混乱してますが、場も混乱してると思うんです!


「和志さんまでジョシュと面識があるのが不思議なのかな?」


あっ、そうですね。というかみちるさんの会話からパニックは続いてますけど……


「和志とわたし達は幼馴染なのよ」

「幼馴染?」


あぁ、そういえば和志さんとみちるさんが幼馴染っていうのは聞いてたけど、修さんもってことなのか。

小さい時に修さんの家に遊びに来てパパに会ったってこと?


「……なるほど」


いや……でも…………


「なんで、みちるさんは実の兄だと…?」

「そ、それは小さい時の話しなのよ!それまでも文哉兄さんとジョシュ兄さん、同い年で双子なのに似て無いなーとか、ちゃんと疑問には思ってたのよ!」


いやいやいや、そもそもパパは正真正銘の外人さん。

似て無いとか、そういう問題じゃない気がする……

…って……あれ?


「文哉兄さん……ジョシュ兄さん……???」


みちるさんって、小さい時は周りの人が全員家族に見えてたの?

友達のお兄さんだよ?

あっ、そうか。そうじゃなくて、親しみを込めて―――


「お父さまですね」

「はい?」


いやいや、蘭さん。お父さまじゃなくて……親しみを込めてお兄さまって呼んでるって事で―――


「私の父と、ユキさんのお父様ですよ」

「……………はい?」

「はい?」


えっ!あの……どうしたんですか?っていう顔で見られても困ります……


「どうしたんですか?」

「……………」


言われても困ります………


「ちょっと……頭の中を整理させて下さい」

「えっ、あ、はい…」


不思議な顔をしながらも、みなさんで会話を再開して貰います。

わたしは、その間に今までの会話を纏めましょう。


……………

……………………

あのですね……

……もしかして

いやいやいや………


確認……して…みますか……?


「あの……御食事中すみませんが…」

「どうしたのかな?」


代表して陽季様がにこやかに答えてくれる。

楽しく話しをしながら食事をしていた皆様の視線を受けて少し怯むけど、この話しを有耶無耶のまましておいては拙い気がする。


「皆様にお願いが」

「いいよ。言ってみて」

「はい」


では、まず快く快諾してくれた修さんから…


「修さん、この場の皆様に、それぞれ普段の呼び方で呼び掛けて頂けますか?」

「えぇと、つまり。ユキちゃん…とかでいいのかな?」

「はい。そうです」

「分かった。では、座ってる順で。ユキちゃん…みちる…蘭…母さん…父さん…私…和志」

「ありがとうございます」


はい。修さんの場合は分かってました。


「和志さん。いいですか?」

「えっと。ユキちゃん…みちる…蘭ちゃん…小父様…京香小母様…修…僕」

「ありがとうございます」


和志さんも…はい。


「何故、和志君は昔から京香小母様なんだい?なんだったら、私も陽季小父様にするかい?」

「なんででしょうか…自分でも意識してではないんですが……」

「二人とも話しは後でね。取り敢えず今はユキちゃんの御願いからだよ」

「そうだね。では私が。ユキさん…みちる…蘭…私…京香さん…修…和志君」

「ありがとうございます」

「次は私でいいかしら。ユキさん…みちるさん…蘭ちゃん…陽季さん…私…修さん…和志さん」

「ありがとうございます」


問題は…ここからなんです。


「ユキさん。普段の呼び方ですよね?」

「はい」

「では、私からで宜しいですか、みちる姉さん」

「どうぞ」

「はい。ユキさん…みちる姉さん…私…御爺様…御婆様…修さん…和志さん」

「……ありがとうございます」


ほら、きちゃいましたよ……やっぱり…


「じゃあ、最後はわたしね。いいかしら?」


あー、聞きたいような、聞きたくないような……

正直、もう蘭さんで分かってしまいましたが…


「はい。………お願いします」

「ユキちゃん…わたし…蘭…お父様…お母様…修兄さん…和志」

「……はい。ありがとうございます」


つまり……


「修さんとみちるさんは御兄妹なんですね?」

「えっ?そうだよ?」


今更?みたいな顔で言われても……

兄妹恋愛なんて重い話だと思ってなかったから…

まさか、そこまでだとは想像出来ないでしょう!!???


「蘭さんのお父様が文哉様…」

「そうです。と言いましても、私が生まれる前に亡くなりましたので私は父の事を記憶してはいないのですが」

「あの…香山の性ではないのですか?」

「父と母が籍を入れる前に父が亡くなったので」

「その後、蘭の母親自身は養子縁組を嫌がったんだよ。というより遠慮したのかな」

「蘭ちゃんのお母様が亡くなって蘭ちゃんは養子として引き取ったのよ。公的には香山なのだけれど、蘭ちゃんの意向で対外的にはそのままの性を名乗っているの」

「そ、そうですか」


ややこしいです!

分かり易く、香山蘭!って言ってくれれば途中で気付いたかもしれないのに。


「えっと…分かりました。みちるさんはわたしから見て……義妹?で、蘭さんが姪??」

「そ、そうね」

「そうですね」

「あら、みちるさんの方が妹になっちゃうのね。ふふ」

「…ユキ義姉さん……ないわ……ダメ…―な…――よ……」


み、みちるさんがぶつぶつ言いだしたけど大丈夫でしょうか?


「みちる。ちょっと面白いけど、ユキちゃんがびっくりしてるから戻ってこーい」

「えっ!だ、大丈夫よ」

「あの…ユキさんは今まで気付いていなかったのですか?」

「……はい」


だって、誰からも聞かされてませんでしたし…


「みちる言ってなかったのか」

「兄さんが説明してると思っていたのだけれど?」

「いえ。気が付かなかったわたしが…」


確かに、まるで本当の家族みたい……って家族だし当たり前!!!


「うふふ。ごめんなさいねユキさん。少し抜けた子供たちで…誰に似たのかしら」

「…………い、いえ」


うん。確かに家族です……



修さんとみちるさんが結婚できない理由が凄くはっきりと分かりました。

禁断過ぎます………

き、近親相姦!!

まさかの展開やん……

京香様も陽希様も親として受け入れちゃっていいの????

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