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Last color  作者: 蒼井 紫杏
34/44

第33話

英語はね…適当に書いたからあんまり深くつっこまないで!

サラッとね、サラッと!

「あっ、おはよー」

「おはよう」

「おはようございます」


結局、帰ったのが明け方とも呼べる時間になってたから、そのままみちるさんと部屋に戻り順番にお風呂に入った後、宛がわれた部屋に戻った。

力を使ったからか疲労感はあったけど眠る事はなかった。

部屋を移動したその日にみちるさんを起こしてしまうのが嫌だったから………


「ユキちゃん、ちゃんと休めた?」

「あ、はい。みちるさんは?」

「大丈夫よ」


と言っても、寝室に入ってから4時間も経ってないから休めたとは言えないでしょう。


「昨日、結局何時になったのですか?」

「帰ってきたのは4時前くらいだったかしら」

「おそっ!」

「逸れたのはすぐに気がついたから駅の改札前でしばらく待っていたんだけどね」

「そうそう。何してたの?」

「境内にいるかと思ってぐるぐるしてたのよ」

「そうなんですね。行き違いになってしまったと……」


まぁ、実際は行き違いどころの話しじゃないですけど。


「そっかそっか。次からは連絡が取れない事も想定しないとね」

「そうだね」

「取り合えず、立ってないで座ったらどうだい?」

「そうね」

「ユキさんも」

「あ、はい」


昨日と同じ席。修さんの向かいでみちるさんの横に座る。


「では、改めまして………あけましておめでとうございます」

「「「「あけましておめでとうございます」」」」

「メインはお雑煮だよ。取り合えずすましね。御餅は2個にしてあるから、足りないなら言って。後は御節。はりきって作ったからいっぱい食べてね」


おぉ、日本のお正月だ!


「和志、白み――」

「白味噌はまた後でね。今はすまし!」

「……分かったわ。いただきます」

「あっ、いただきます」

「「「いただきます」」」


お雑煮。当たり前なんだけど和風だー。


「ゆきちゃん。御節にはそれぞれの料理に意味があるんだよ。知ってるかい?」

「少し知ってますよ。昆布巻きは喜ぶ。なんですよね」

「そうそう」

「ユキさん、これは御存知ですか?」


えっと……?


「海老…?」

「そうです。これにも意味があるのですよ」


へーーー!


「みちるは意味分かるのかい?」

「えっ?」

「最近料理覚えようとしてるんだろう?」

「……御節は作れないわよ。意味は分かるわ………海老って腰が曲がったように見えるでしょう?だから腰が曲がるまで長生きするという意味を込めてあるのよ。長寿祈願ね」

「お、よく知ってたね」

「それくらい知ってるわよ……作れないだけで…………」

「いずれ作れるようになるさ」

「なるほど。色々考えられてるんですね。あの、わたしも作れるようになりたいです。和志さん、教えて下さい!!」


色々な願いが込められた食べ物。

美味しいだけじゃなく、なんだか暖かい食べ物だなーと感じる。


「もちろん!みちると一緒に教えたげるよ!」

「はい!御願いします」

「あっ、和志さん。私もよろしいですか?」

「あれ、蘭ちゃんも?いいよいいよ」

「御願いします」

「みちる、そろそろ?」

「あっ、そうね」


あれ?もう出発の用意するんですか?

席を立ったみちるさんが、ソファーの上にあった紙袋を持って戻ってくる。

出発では……ない………?


「ユキちゃん」

「はい?」

「今日は夜もバタバタしているでしょう?」

「そのようですね」


あまり乗り気ではないですが………


「だから、改めてやるつもりではあるんだけど……先に渡しておくわね。はい」

「えっ?」

「おめでとう」


これは?綺麗にラッピングされた包み。


「あ……りがとう…ございます?」


取り合えず、受け取ってみました。


「ユキちゃん。僕らからも。はい」

「おめでとう」


これもまた、綺麗にラッピングされた包み。


「ありがとうございます……?」

「ユキさん。私からはこれを」


えっ!蘭さんも?


「………ありがとうございます」


えっと………お年玉ってお金を貰うものだと思ってました。

危ない危ない。これもママのルールだったのか………


「開けてみて」

「はい」


そうですよね。子供にお金を渡すなんてどうかと思うもん。

ある程度の年齢ならともかく、小さい子にお金を渡すなんて、今思うと不思議だよね。

そっか、お年玉って本来はプレゼントなんですね。


「パジャマ……ですか?」

「はい。どのような物が良いか悩んだのですが、着心地に拘ってまで自分のパジャマを選ぶ事はなかなかありませんし、そういった物の方が遠慮なく使って頂けるかと……どうでしょう?」

「凄く嬉しいです!ありがとうございます」


でも、大人から子供に渡すのがお年玉でしょう?

あー、ママルールだったのかなー。

わたし蘭さんに用意してませんよ?


「これは……食器?」

「そうそう。ランチプレートのセット・マグカップ・味噌汁椀からお箸まで一揃いね」

「プレゼントに適してないかもしれないけれどね。こっちで使っている物は皆で統一しているからいいけれど、これからみちると家で食べる時にみちると違う物だとなんだか寂しいだろ?」

「ありがとうございます。使わせて貰います」


確かに御客様みたいな感じがするなーとは思ってました。

しかし………旦那様からお年玉って貰うものなんですか?

というか、何歳までが子供とみなされるのでしょう。


「ユキちゃん、開けてみて」

「はい。これはお財布と……」

「キーケースね。部屋の鍵を付けておいたわ」

「ありがとうございます」


凄い嬉しいですが、こんなに高そうな物いいのかな…


「お財布なんかは、本当は春にプレゼントするのがいいらしんだけれど…」


あー、お年玉の季節に合わなかったから仕方ないですね。

嬉しいですから、季節なんて関係なく使いますよ!


「ありがとうございます。全部大事に使わせて貰います!」

「うん、使ってねー。今日はバタバタしているから先にプレゼントだけ渡したけど、ちゃんとケーキとか御馳走は三箇日が過ぎたら用意するからね」


ん??あぁ、えっと、今日は遠野家の方で御馳走食べるから、内々では別の日を設けるってことか。

で?蘭さんへのお年玉は?プレゼントが見当たりませんが?


「で、こっからは例年通り。蘭ちゃん。はい、お年玉」

「ありがとうございます」

「蘭。わたしからも」

「ありがとうございます。大事に貯金します」

「そんなこと言わずに、たまには使いなさい」

「ふふふ。そうですね」


あれ?


「ユキちゃん。はいお年玉」

「ユキちゃん。どうぞ」

「ありがとうございます…?」


もしかして……


「あの、さっきのプレゼントはなんですか?」

「何って…誕生日プレゼントのつもりだったんだけど?」

「ユキさん、誕生日今日ですよね?」

「そう…です……ね」


よく御存知ですね。結婚する相手の情報…知ってるか。

正直、わたし自身が覚えてなかった………


Happy New Year ! And Congratulations on your birthday ! May this year be happy and fruitful .


毎年言われてたのにね……


「誕生日おめでとう」

「おめでとう」

「おめでとうございます」


こうやって、わたしの誕生日を祝ってくれる人はもういなくなったから……


「……ありがとうございます」


わたしが存在しているという事が……いいことなはずがない………

祝っていいはずがないのに……


「ユキちゃん、あなたにとって今年が幸せで実り多き年で……今年はきっといい年になるわ。あなたは幸せになっていいのよ」

「…………………」


幸せになる?誰が?

……幸せ?

どうしよう……ここに住むようになって、みんなと過ごすようになって安心してる自分がいる…

幸せ……?


「ユキちゃん?」


みんな幸せそうだ。


「ユキさん?」


あぁ、わたしに安心を与えてくれる人たち……


「ユキちゃん?どうしたんだい?」


家族……幸せな家族たち…

ダメ!ダメダメダメ…怖い……

その幸せは簡単に崩れる!

あっけなく、一瞬のうちに消えてなくなる。

ある日、予想もしなかった化け物が現れて幸せを奪うんだ……


……その幸せを奪う化け物は…きっと……


「ユキちゃん、こっちを見なさい」

「……大丈夫です」


大丈夫。大丈夫です……

これ以上近付きませんから。

わたしが死ぬ方法を聞いてちゃんと教えますから。

いつ殺してくれてもいいですから……

だから………もう少しだけ一緒にいてもいいですか?


「どうしたの?」

「ごめんなさい。ちょっとボーっとしちゃってただけです」

「ユキちゃん?」

「それよりも修さん、出発の用意とかで、何か必要な物はありますか?」

「い、いや…何もいらないけれど……」

「そうですか。わかりました。じゃあ、服装だけ気を付ければいいですかね」

「…そうだね。みちる、用意しているんだろう?」

「えぇ。少し早いけど準備しましょうか?」

「そうだね。一時間後に出発しよう。和志と蘭もそれでいいね?」

「いいよ」

「はい。問題ありません」


あっ、年始の挨拶って言ってみんなでゆっくり食事してたのに勝手に切り上げさせちゃいましたか……

お二人ともごめんなさい。


「片付けはしておくから。はい、かいさーん!」

「ありがとうございます。お願いします」


みちるさんの後ろについて、蘭さんと三人で玄関に向かう。


「ユキさん」

「はい?」

「あの……大丈夫ですか?」


……………


「何がですか?」

「先程、誕生日の―――」

「やっぱり寝不足ですかね。折角お祝いして貰ってるのにボーっとしちゃって、ごめんなさい」

「いえ、あの…――」

「もう一回顔でも洗ってしゃっきりして来ますね」

「………はい。では後程…」


うん??……後程?何があるの?

見送りとか??


「ユキちゃん」

「はい?」


蘭さんと別れて部屋に戻ったところで、みちるさんが振り向いた。


「言えない?」

「……何がですか?」

「誕生日だから――」

「睡眠不足ですよ」

「……さっき蘭も言おうとしていたでしょう?分かってて遮ってるのよね?」

「……………」


それを分かってるのなら聞かないで下さい。


「誕生日に何かあるの?」

「…そんなことないです。ちょっと……自分の誕生日を忘れかけてたので、みなさんに祝って貰えたことにびっくりしただけですよ」

「御家族とはユキちゃんの誕生日のお祝いはしなかった?」


……家族


「して貰いましたよ。新年のお祝いは朝、夜はわたしの誕生日のお祝いをしてくれてました」

「日本に来てからはなかったのね…」

「そうですね」

「それは寂しいわね」


別に、お祝いされたかったわけじゃないですから。


「寂しくないですよ。誕生日を喜ぶ年齢でもないですから」


年齢なんて関係ない……

毎年……毎年…わたしだけが誕生日を迎える………

存在していいはずの無いわたしだけが…


「これからは、わたしたちがいるわよ。ユキちゃんの誕生日もみんなが祝ってくれる。生まれてきてくれてありがとうって、みんなが祝福してくれ―――」

「止めて下さい!!」

「ユキちゃん?」

「あ……ご、ごめんなさい…」

「ユキちゃん……何かあるなら言ってくれないと分からないわ」

「………………」

「ユキちゃん?」

「何もないです…」


だから……もういいでしょう?


「ユキちゃん聞きなさい」

「………?」

「ユキちゃんがわたしに何も言わないから、ユキちゃんの気持ちを想像することは出来ても分かることは出来ないわ。さっきユキちゃんが言ったように、何かしらの理由でユキちゃん自身が誕生日を迎える事、あるいは誕生日を祝われる事を嫌だと思ってるんでしょうね。どう?」

「……そうかもしれませんね」

「じゃあ、ユキちゃんは、わたしの誕生日を祝う事に抵抗はある?」

「ないです」


みちるさんの誕生日なら心からお祝いします。


「そう。じゃあ、わたしはわたし自身の心情に従って貴女が生まれた日を祝います。覚えておいてね」

「え?」


いえ、あの……

……え?


「何かしら?」

「えっと…わたしの誕生日は喜ばしいことなんかではなくってですね…――」

「ユキちゃんはわたしの誕生日を祝ってくれるのでしょう?」

「はい、もちろんです。凄く大切な日ですね」

「……わたしはユキちゃんの誕生日を喜ばしいことだと思っているから祝うわ」

「…………」


えと……


「以上。さぁ、用意するわよ」

「………はい」

「堅苦しくする必要はないけれど親族が集まるから顔合わせも兼ねているでしょうし、少しかっちり目に…フォーマルだけれど大丈夫かしら」

「はい…。ちなみにどんな感じなんですか?」


フォーマルって…スーツ?


「こんな感じね」

「…スカート?」

「スカートね」

「……スーツじゃない…?」

「ユキちゃんの言ってるのはパンツスーツの事かしら?これはワンピーススーツみたいなものよ」

「…これをわたしが?」


似合いませんよ!


「ユキちゃんの瞳の色と髪の色を考えた結果、ダークグリーンにしてみたの。髪の色も瞳の色も映えるわよ」

「あ、ありがとうございます」


制服以外のスカートが久しぶり過ぎる。

なんだか…足元がスースーして頼りないんですが……こんな感じでしたっけ?

首元に嫌味にならないネックレスを掛けられ、胸元にシンプルなブローチを付けられ……

もう…よいでしょうか……


「あぁ、ユキちゃん。似合う似合う」

「衣装に負けない華やかさが、羨ましいです」

「うん、可愛いね。みちるが本気出して選んできただけある。よく似合ってるよ」

「そうでしょう?今までの格好だけではもったいないわ。普段からもっともっと磨いていくわよ」


……勘弁して下さい。


「それに比べて……みちるは何故そんな地味スーツにしたのさ」

「あら、それを言うなら蘭でしょう?」

「みちる姉さん、私のは制服という立派な正装です」

「まぁ…そうだね」


あの……気になっていることがあるのですが………


「こっちのネクタイとこっちとどっちがいいと思う?」

「和志の?」

「修の」

「うーん、右手のかしらね」

「そうですね。今日のスーツだと、そちらの方が良い気がします」

「ほら、言っただろう?」

「えーーー。ユキちゃんはどう?」

「……み、右手の…」

「ぶーぶー」

「ほら、諦めて渡して」

「へーい」


あのですね……


「信号待ちの時間じゃなくて、着いてからの方がいいんじゃないかしら」

「そうだね。そうするよ」

「和志さん、左手のネクタイは和志さんが使われたらどうでしょう」

「えっ?」

「あぁ、確かにそれもいいね」

「和志、換えてみなさい」

「はいはい」

「どうですか?」

「さっきのよりもいいかもしれないわね」

「和志、こっち向いて。うん、いいね」

「ホント?」


あ、和志さんがこっち見てる。

頷いとこう……


「じゃあ、こっちにしとこっと」


そうじゃなくって!


「ユキちゃん、どうしたの?気分でも悪い?」

「体調が悪いのかい?もうすぐ着くから我慢出来る?」

「元気ですから、大丈夫です!」


けど、なんでみんなで香山家に行くんですか!?


ユキちゃん……誕生日迎えられてよかったねー。

ホンマは年末やったって噂もあるけど………

思い出して貰えてよかったよかった!わはは!!

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