第30話
感想有難う御座います!!
ホント感謝感謝です。
皆様とのやり取りが、私の活力となっとります。
「あぁ、来たね。先に邪魔になりそうな和志の荷物は避けておいたよ」
「ありがとうございます」
「運び込む順番とかはあるのかな?」
「後で片付けるから気にしなくてもいいと思うわ」
「じゃあ適当に運んでしまうから」
「御願い。ユキちゃんは細かいものを纏めておいて。終わったらこっちに来て片付けましょう」
「わかりました」
増えた荷物も、まだ未使用の物が殆んどだから運びやすい。
運ぶのも修さんがやってくれるし、受け取った荷物もみちるさんが仕分けていくから、あまりやることがない……
「あっ、ユキちゃん。洗濯物御願いできる?」
「了解しました」
そういえば、忘れてました!
やることが無くなって、どうしようか悩みだした瞬間にみちるさんが良いタイミングで助けてくれる。
…自分で思い出せ!!
「使い方は――」
「大丈夫です」
「そう?じゃあ、浴室乾燥で干しておいてくれるかしら?」
「はい」
よし!やれる事はやりますよ!!
……………
洗濯って……洗剤を投入してボタンを押せば………
干すまで時間がありますね…
何しとけばいいんですか?
閃いて浴室も洗ったけど…しゅーりょー!
そもそもわたしの荷物なんだから、みちるさんのとこに行って片付けの手伝いをすればいいんだけど、さっき行った時に修さんとみちるさんが何か話しをしてたみたいで、ちょっと、行きづらくなってしまった……
和志さんは、こういう時どうしてたのかな?
蘭さんも三人の関係を理解してたみたいだし、どういう生活をしてたのか凄く不思議なのですが……
取り合えず、二人の時間は邪魔しない方向で……
……………
…………………
どんなこと話してるのかな…
……………
…………………
こんなややこしい関係になってまで一緒に居るって凄いね……
……………
…………………
お互いに強い思いがないと……
…………………
…好き……なんだ……
「ユキちゃん」
「えっ?あ、みちるさん」
バスタブの淵に腰掛けてボーっとしてたら、みちるさんが脱衣所に入ってきた。
「ど、どうしたの?」
「何がですか?」
「なかなか戻ってこないから何かあったのかと思って……何か嫌なこと思い出してしまった?」
えっ?
別に、何も……お二人の事をボケーっと考えてただけで…
「そんなに暗い顔で」
「く、暗い顔してますか?」
「何か悩み事があるなら言いなさい。一人で思い詰めては駄目よ」
「は、はい」
特に何もないけど……
「あぁ、お風呂も掃除してくれたのね。ありがとう」
「いえ、これくらいしかお手伝い出来なくて」
「あまり、気負う必要はないのよ。何かあれば御願いするから」
「はい」
「もう洗濯物が上がるわね。終わったら一度休憩しましょう。部屋の話しもその時ね」
「分かりました」
みちるさんの背中を見送って、洗濯物を手早く干していく。
浴室乾燥のタイマーをセットしながら、鏡に写る自分の顔を見る。
暗い顔……?
…自覚はないけど……してたらしい。
何考えてたっけ…?
……二人は……愛し合ってるんだなーって…
…………………
なんだろう…
確かにちょっと……
……………
…もやっと……
なんでなのかな?
………
Color coating《補色》したら独占欲とか……?
はぁーーー
うまくコントロール出来ない感情が気持ち悪い。
「あ!」
こんなことしてる場合じゃない!
話しがあるって言ってたんだから、ちゃっちゃと行かないと。
「すみません。遅くなりました」
「急がなくてもいいのよ。洗濯物ありがとう」
「いいえ。あっ、何か飲み物でも入れましょうか?」
「大丈夫よ。向こうで和志が用意してるでしょうから。呼ばれるまで部屋を見ておきましょう」
「はい」
そんなこまで和志さんがやってるんですか……
「ユキちゃんの荷物なのだけれど、こっちのウォークインクローゼットを空けたから使って」
「あ、あの。そこまで荷物も無いですし…」
「無理して空けたわけじゃないから気にせず使っていいのよ。チェストの届け先をこっちに変更して貰うから」
「…分かりました」
「それで…部屋なんだけれど」
「部屋…ですか??」
「ユキちゃんの部屋よ」
わたしの部屋とかいらいないですよ!!
「部屋は必要ないですよ。あ、あの以前使用させて貰ったリビングのベッドを使わせて貰えれば……」
「あそこは部屋ではないでしょう?ユキちゃんも来ることだし、パーテーションを外して模様替えをしようかと思っているから」
「で、ではソファーをお借り出来れば――」
「却下よ」
却下ですか……。
でも、部屋を用意して貰うのは申し訳ない気がする。
「部屋は余ってるのだから遠慮しないで使いなさい」
そうですか。
まぁ、隣と同じ間取りだから…確かに部屋は余ってるのですね……
「ありがとうございます」
「隣で使っていたのと同じ部屋を用意したわ。必要な物は……また買い物に行きましょう」
う……ま、また行くのですね…
「……了解しました」
「隣と同じで客間としてベッドしか入れてないから、不便を感じたら言いなさい」
「はい」
「………眠れないなら………………」
「なんですか??」
「なんでもないわ。行きましょう」
???
歩き出したみちるさんを追い掛けて修さん家のリビングに入る。
「あぁ、丁度呼びに行こうと思ってたんだ」
「どう?少しは片付く目処がつきそうかい?」
「そうね…まだ色々買い足したい物があるけれど、今日のところはなんとかなるわ」
「お二人ともお疲れ様です。目処がついたのでしたら、少しゆっくりされたらいかがですか?」
「そうね。後は家具を揃えてからでいいかしら」
「そうなの?じゃあさ、買い物に行ってきてくれない?」
か、買い物!?
「いいわよ。何が必要なの?」
「おもちーーー。この前使っちゃったのを忘れててさ」
あぁ、普通に食品か。
「お雑煮用ね。……白味噌?」
「分かってるよ。白味噌はちゃんと用意してるから」
「なんで、みちるは生まれも育ちもこっちなのに……白味噌って…」
お雑煮…?
「どちらも好きよ?でも、一年に一度しか食べないのだから、どうせならどちらも食べたいでしょ?」
「そうだね。わたしも嫌いではないよ」
「ユキさんはお雑煮、どちらですか?」
どちらって?
「あの……」
「あれ?雑煮が分からないとか?」
それくらいは……!
「お餅の入った汁物?ですよね?」
「そうそう」
「ユキちゃん、食べたことが無いの?」
「あるような……ないような……?」
「えっと、すまし派?白味噌派?」
「第3の選択肢はありますか?」
「「「はっ?」」」
「というと、なんだろう?」
「母のオリジナルだったので、洋風?コンソメ風味?」
パパがお餅が苦手で眉間に皺を寄せて食べるから、ママがパパが食べれるように作ってたんですよね。
日本に戻ってからは、食事は自分で管理させられたし……
お雑煮…興味あります!!
「コンソメかー。なんとなく美味しそうだけど、僕が作るのは一般的なものだけどいい?」
「はい!楽しみです!!」
「うん。楽しみにしといて。じゃあ、その為にも買い物よろしくねー」
「はい!」
「じゃあ一緒に買い物に行きましょうか」
「いいですか?」
家に残ってても、何もすること無いし…
「もちろん、いいわよ」
「あっ!待って待って。じゃあ、もうちょっと買い物足してもいい?」
「メモで書き出しといて。その間に用意してくるわ」
「OKー。今日の晩御飯は大晦日だからすき焼きだからね。あんまり遅くならないように帰ってきてよ」
「えぇ」
大晦日はすき焼き?
年越しそばじゃないの??
まぁ、すき焼き嫌いじゃないし嬉しいですけど。
「お二人とも、お気をつけて」
「二人が買い物に行ってる間に、玄関飾りはやっておくよ。行ってらっしゃい」
「「行ってきます」」
◆―◆―◆―◆
「普通のスーパーだけれど・・・ユキちゃんは何か買いたい物は無い?」
信号待ちで止まった時、運転してるみちるさんが前を向いたまま質問してきた。
「特にはないですね」
「ユキちゃんは、今までどういう物を食べていたの?」
「……今まで?」
「そう。料理も出来るみたいなのに学校でのお昼を見ている限り、あまりまともな食生活を送っているとは思えなくて」
「そうですね…。まぁ、日本に来てからはまともな食生活は送ってないですから」
「どういう事かしら?」
どういうって……
「そのままの意味です。食事をしなくても…死にませんから……」
経済的ですねー
「……家の方に注意されたりはしなかったの?」
「家の方…?」
というと、遠野家の皆様でしょうか?
「一緒に食事をしたり―――」
「無いです無いです。一緒に食事とか……」
例えば、御婆様が急に御飯を一緒に食べようと言ってきたと想像しましょう…
怖っ!!
無理無理!
「向こうに居た頃は?」
昔は、そりゃ…ちゃんと……
「…食べてましたよ」
「何が好き?やっぱり日本食よりも向こうの料理の方が好みなのかしら?」
「日本食は好きです。よく…母が作ってくれましたから……」
みちるさんは、どこまで知ってるんだろう。
修さんに、どこまで聞いてるんだろう…
「そう。じゃあ、ユキちゃんが作る料理も日本食が多いのかしら?」
「そうですね。もしかしたら母のアレンジが入ってるかもしれないですけど…」
ママが作ってたのが日本料理だと信じてるけど……変なアレンジがしてあっても判断のしようが無い。
「…………がんばらないと…………」
「へ?」
何か??
「得意な日本食は何?」
あぁ、得意料理ですか。
「ぶり大根」
「ぶ、ぶり大根?ぶりと大根を煮込んだ?」
えっ?それ以外にあるの?
「そ、そうです」
まさか、あれもママのアレンジ!?
ぶり大根なんて名前がついてるくせに、ぶりと大根使わないとか!??
「今度作ってくれる?」
「……いいですよ。美味しくないかもしれないですけど」
へ、変なアレンジだったらごめんなさい。
もうちょっと、アレンジしようが無い物言っとこうかな………
「あ、やっぱりスクランブルエッグが得意料理とか……」
どうだ!
「………日本食でもなんでもないじゃない…ぶり大根ね」
むーーー
「はい」
「じゃあ、その時はわたしも何か作るわ。そうね……親子丼にしましょう」
「親子丼…ですか……?」
「そうよ。…………それなら…れる……」
……親子丼
親子丼なんて………
「ユキちゃん?」
「えっ?」
「大丈夫?酔った??」
「大丈夫です。ちょっとボーっとしてただけで……」
「そう?ならいいけれど、隠さずにちゃんと言うのよ」
「はい」
あぁ……そうだ…
今のうちに、みちるさんに言っておかないと…
「あ、あの」
「何?」
「修さんとはお話ししましたが……えーと…」
なんて言えばいい?オブラートに包んで言いたいんです。
「……何?やっぱり一緒に住むのは嫌?」
「そうじゃなくて!お、お二人が……その…」
「二人?」
「お付き合いされてるの……わたし知ってます…から」
「……え?」
「あの………」
「知っていたの…」
「はい…」
「……いつから?」
「引越しをする前に……」
「…そう。ごめんなさいね」
「いえ……」
「今回、わたしと一緒に住むという話しも……二人に気を使ったから?」
「…もっと早くにみちるさんに言えば良かったですね……」
そうしたら、みちるさんも隠そうとせずに二人の時間を主張出来たかもしれない…
「……気を使わせてしまったのね」
「ごめんなさい…」
「何を謝るの?謝る必要は無いわ」
「………」
「…嫌じゃない?」
「何がですか?」
「二人の関係……かしら。嫌悪感を持たれる事も嫌がられることもあるわ。でも受け入れて貰えれば…家族として嬉しいわ」
そんなこと思いません!
二人が……お互いを大切に思っていると知ってますから…
みちるさんが家族だと言ってくれたから。
こんなわたしでも家族だと……
「家族ですから。お二人が幸せならば…」
「わたしと暮らすのは……?」
「へ?」
「気を使ったからというのを抜きにして…一緒に暮らす事は嫌ではない?」
「嫌なんかじゃないです」
自分の事を隠さなくてもいい人が傍にいてくれるのは心強いし。
「このまま…一緒に暮らす事になっても問題ない?」
「……!?みちるさんはいいんですか?」
折角、修さんと一緒に住むことが出来る良い機会なのに?
「ユキちゃんが、それでいいの――違うわね。わたしはユキちゃんと一緒が良いわ」
そうですね……
確かに、相手が異なる夫婦同士で生活するのは、明らかにおかしいですから。
偽装結婚する意味が無くなってしまう。
まだ、同性同士で暮らしている方が誤解を招かなくて済む…
「宜しく御願いします」
「……ええ」
二人が一緒に暮らせるように……なんて考えてたのは大きな御世話だったのかな…
今までうまくまわっていた生活が、わたしが入った来た事によって乱してしまってるのかもしれない。
蘭さんみたいに、わたしも一人で部屋を借りたほうがいいのかな…?
でも、みちるさんとかが考えて今の形を提案されてるんだから、これが全員にとってのベストなのかもしれない…
今更、変な提案をしてかき回す必要もないですよね。
それなら、ちゃんと伝えよう!
「わたし、みちるさんと一緒に暮らせるの嬉しいです!」
「え?」
えっと……
「上手く言えないですけど…誰かと一緒に居て落ち着くというのは……良い事だから…」
「…………」
…あれ?良い事だよね?
あれ???
で、でも、このままじゃまずくないか?
Color coating《補色》の対象者が傍に居る……
ど、どうしよう。またみちるさんが食べたくなるような衝動が起きたら…
血だけじゃ満足出来ないなんて、最近の自分がおかしくなってるのかな。
ちゃんとColor coating《補色》して、力自体は安定してるはずなのに……
力の暴走………
もし、自分がそうなった時一番最初に襲ってしまうのは…きっとみちるさんだ……
みちるさんが傍に居る事で定期的なColor coating《補色》が可能になる。
その事が暴走の危険を減らしてくれるはずなのに、もし暴走してしまった時に傷つけたくない人が一番危険な所にいるなんて……
本当にColor coating《補色》してたら暴走の危険はないの………?
「ユキちゃん」
「はい?」
「わたしもよ」
「え?」
「一緒に暮らせて嬉しいわ」
「………」
もっと、ちゃんと自分の力の事を知らないといけない……
「わたし……奏音ちゃんと、きちんと話しをしますね」
「え?……あ、着いたわ」
「はい。あの…その時は一緒に聞いて貰ってもいいですか?」
「……いいわよ」
「御願いします」
もし、暴走した時にみちるさんが自衛する手段があるなら……
…………わたしを殺してくれてもいいです…
ユキちゃん……誤解を解いたつもりなのにね…
どうしようもないね………




