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Last color  作者: 蒼井 紫杏
25/44

第24話

長らくお待たせ致しました!

待ってへんわい!とおっしゃらずに…

「な、何かアルコールじゃない飲み物を用意しますね」

「あっ、手伝いますよ」

「いえ、皆さんはゆっくりなさって下さい」


残されたメンバーを見て下さい…

ゆっくり出来る空気じゃないですよね?


「是非、手伝わせて下さい!」


そこは、無理やりにでも!!


「は、はい」


蘭さんが紅茶をの準備をしている後ろから、カウンター越しに白崎姉妹の様子を伺う。

何の話しをしているのか、二人とも険しい顔をしていた。

……のだけど……何故か琴音さんとばっちり目が合ってしまいました………

泣きそうです…

琴音さんが……?

えっ?な、なんで人の顔見て泣きそうになるの!?


「琴音さんに、何かなさったのですか?」

「…何もしてません」


いつの間にか隣に立っていた蘭さんが人聞きの悪いことをおっしゃる。


「では、奏音さんに何かなさったのですか…」


えっと…


「…………」

「何もおっしゃらないのですね」

「あの…」

「私は全て蚊帳の外なのですね」

「えっ??」

「ユキさん…私では相談役に不足しておりますか?」

「な、何がですか?」

「…………いえ…なんでもありません」


何故、あっちでもこっちでもこんな重い空気になるのですか…


「…蘭さん?えっと……どうしたんですか?」

「…知らなかったのです」


えっと、それは……


「何をですか?」

「ユキさんがいつの間にか引越しをしていたことをです」


あぁ、そっちですか


「誰から聞いたんです?」

「和志さんにお聞きしました」

「…そうですか」


ど、どこまで聞いたのでしょう…


「黙っておられるつもりだったのですか?」


えっと、引越しくらいなら言っても良かったんですけど…

で?どこまでお聞きに……??


「…………」

「みちる姉さんからも修さんからも何も聞いてませんでした……ユキさんからも…」


あーーー、ということは…?


「私が何も知らなければユキさんの引越しも気付かないまま、知らない振りをして同じマンションから学校に通うおつもりだったのですか?」

「そんなことは――」

「私に何も気付かせないような振りをして、修さんと暮らしていたということですね」

「…………」


蘭さんが……険しい顔をしている…


「何もおっしゃらないのですね…」

「蘭さんに隠してたわけじゃないです」

「では……何故?」

「わたしが、未成年で学生だからでしょう。きっと皆さんもわたしの事を考えて黙ってくれていたんですよ」

「私が…偏見を持っていると……?」


何故!?


「そうじゃないです。きっと、蘭さんにはわたしに普通に接してくれる友達として―――」

「そのようなことで、私がユキさんに対して特別視することはありません!」

「あ、あの……」


えっと、だ、だから……

うーん…

そっか……みんなはわたしから蘭さんに言わないなら黙ってた方がいいと判断したのか…

それこそ……わたしの為に…


「ユキさんが何か悩んでおられるのは感じていました。…こんなに身近な事でしたのに私ではユキさんのお力になる事は出来ないのですね」

「そうじゃないですよ。そうじゃないです…」

「ユキさん、私は怒っているのではありません…ただ……憤っているのです」


…………!?…怒ってるんですね……


「蘭さん……貴女といい、みちるさんといい……貴女達には御人好しの血でも流れているのですか?」

「はい?何をおっしゃっているのですか?」

「…ありがとうございます」

「ユキさん、私の話しを聞いておられましたか?」

「蘭さん、わたしと修さんはお互いの家庭の事情もあり結婚しました。正確に言うと、1月に籍を入れることになっていますので婚約ですね。それに伴って、今回引越しをしました」

「……どういうことですか?」

「家庭の事情というのは……単純に家名の問題ですね」

「そういう意味ではありません。急になんですか?と聞いているのです」

「友達でも話せないことはあります」

「……そのようですね」

「でも、話しておくべきこともありました」

「はい?」

「わたしが学生の間は隠しておくつもりですが、修さんと結婚します」

「は、はい…」

「わたしが結婚しても、蘭さんは友達でいてくれますか?」

「それは…当たり前です!」

「今は……言えないことが沢山あります。それでも友達でいてくれますか?」

「………私でお力になれる事であれば話して下さいますか?」


蘭さんはいい人だね。


「はい」

「分かりました。では、これだけは約束して下さい。今回のように私の事を軽んじる判断はしないで下さい」


か、軽んじる?


「そんな、軽んじるなんてっ――」

「私は、そのように受け止めました。ユキさんが私に話しをする事で私の気持ちが揺らぐという不安を感じたということですから」

「そ、それは…」

「私は揺らぎません。何があってもユキさんの友達としてお傍にいます」


わたしの周りにいる人は強い…

わたしが弱いだけなのかな……


「…じゃあ、友達でいて下さい」

「もちろん、喜んで!」


あれ…?これ、なんの話しだったっけ?


「奏音ちゃん、ほんっと馬鹿だよ!!」


あぁ、そうそう。姉妹喧嘩中なんですよね。


「だから、ちゃんと説明してるでしょ!!」


しかも、なんだかヒートアップしてる模様…


「止めた方が良いでしょうか?」

「うーん…」


わたしが行くと、もっとややこしいんですよね……


「奏音ちゃんが、遠野さんを選んだのは分かったってば!だけど、なんでそうなる前にあたしに言ってくれなかったのって言ってんの!!奏音ちゃんのは全部事後報告!!」


さっき、わたしも同じような事で責められた気がする…

しかも、横から視線を感じる……


「ユキさん?」

「は、はい?」

「言えない事ですか?」

「い、言えない事というと……」


奏音ちゃんの事は…なんて説明する?

うーん…


「無理に聞き出そうとは思いませんが…お付き合いされているのですか?」

「は?」


だ、誰と誰が?

お付き合い?

どういう意味ですか??


「どういう経緯なのか分かりませんが私にそういった偏見は御座いません。ですから、変に隠し立てされるより言って頂いた方が――」

「付き合ってません!」

「そうなのですか?」


偏見を持たないのは良いことですが、何故みんな、そんなにあっさりくっつけたがるの!?


「誰ともお付き合いした覚えはありません!」

「では…ユキさん………。人の意思は無視をしていいものではありません。まして、遊びでそういう行為をなさるのはどうかと――」

「ちょ!!どういう勘違いですか!!!」


その勘違い酷い!

何故、わたしが奏音さんを襲ったみたいになってるんですか!?


「違うのですか?」

「全っ然!違います!」


発想が偏りすぎですよね!?


「そうですか。えっと…何があったのですか?」

「そ、そうですね…あの………」

「あぁ、失礼しました。聞き出そうとしてしまってますね」

「…いつか、言える時が来たら……」

「……はい。そうですね」


結局、蘭さんに伝えられた事は最初と変わってないけど、それでも蘭さんの表情から怒りは消えてるみたいだ。

問題は………


「奏音ちゃんのバカ!」


…あれですね


「取り合えず…紅茶で落ち着いて貰いましょうか」

「そうですね」

「ユキさん、空いたグラスを下げてきて頂けますか?」

「分かりました」


しかし……


「遠野さん!」


うん、絡まれるよね。


「はい?ってぇぇ!!」


琴音さんが、めちゃくちゃ泣いてますけど!?


「……これは気にしないで。唯の…涙だから」


た、唯の涙って何!?というか唯じゃない涙ってなんなの!??


「か、奏音ちゃん?」


話しはどうなったの?一体どういう経緯でこの状態?


「ユキちゃん、ごめん」

「はい?」

「蘭ちゃん、5分くらいでいいから隣の部屋借りていいかな?」


ちょ、ちょっと待って?どういう展開?

なんだかよく分からないうちに、蘭さんに許可を取った琴音さんに手を引っ張られリビングの隣の客間らしき部屋に連れてこられる。


「で?」

「力を見せて」


説明を求めたわたしに、琴音さんが答える。

けど………


「どういう意味ですか?」


何の経緯も分からず、どうしたらいいのか判断出来ない。


「ユキちゃん、取り合えず今回の契約守護獣のことに関して琴音に納得――」

「契約守護獣のこと”だけ”に関してね」

「……に関しては納得してくれるらし――」

「納得”する努力をしたいと思ってる”から」

「………から、力を解放した姿を見せて貰えないかな?」

「……………」


取り合えず琴音さん……泣きながら睨まないで下さい。


「琴音は主ヴァンパイアの力をちゃんと見た事ないの。っていうか話しだけだったから、主ヴァンパイアを見た事もないし…」

「遠野さんがヴァンパイアだっていうのも、奏音ちゃんと契約したことで分かったんだよ」

「はぁ」


で?


「ちゃんとユキちゃんの力を確認したいんだって」

「ここで?」

「何も、ここでColor coating《補色》しろと言ってるわけじゃ――あれ?そういえば遠野さんってColor coating《補色》してるの?」

「それは、まぁ――」

「力の安定感から言って、あまり定期的にしている感じではないかな」

「ちょ、ちょっと!奏音ちゃん、何のんびり言ってんの!?命に係わる大問題だよっ!!」

「あ、あのColor coating《補色》出来ないわけじゃないから、大丈夫だと思うし……」

「そうそう、いつでもColor coating《補色》出来る状態にいるくせにユキちゃんが渋ってるだけだし」

「はぁ?」

「い、いや……渋ってるってわけじゃ…」

「ちゃんとColor coating《補色》はしてよね!なんなら、あたしから説得してあげる…けど……あれ?対象って誰?」

「大丈夫で――」

「蘭さん……とか?」

「違います!」

「えっ?でも最近遠野さんと親しくしてるのって――」

「ホ、ホントに大丈夫で――」

「あっ!もしかして矢原先生だったり?――なんて、そんなわけないかーー」

「…………」

「………………」

「あ、そ、そうなんだ…」


咄嗟に嘘がつけませんでした…

同じように正直者のmy wolfさんが固まってます……


「えっと、記憶弄ってるの?」

「弄ってないです」

「あっ、そうなんだ。じゃあパートナーなんだね。安心した」

「パートナー?」

「琴音…矢原先生は協力者って感じだと思うよ…………今は…」


うん?最後の方なんて言った?


「そっか。うん、でも無理矢理とかじゃないないらいいよ」


あぁ、こういう感覚は奏音ちゃんとは違ってるんだ。

奏音ちゃんなら、無理矢理だったとしても記憶操作で力押ししてでもColor coating《補色》してくれって言う感じだった。

そういうのは、やっぱりwerewolf《人狼》としての年月の違いなんだろうか…。


「はい。じゃあ、遠慮なくどうぞ!」

「はぁー。ユキちゃん、ちょっとだけ力を解放し――」

「”ちょっとだけ”とか意味の分からない制限付けないでね!」

「……力の解放を御願いしても良いかな?」

「…………」


あぁ、琴音さんは泣き腫らした顔で、奏音さんはもの凄く申し訳ないっていう悲壮感漂う顔……


「……どうしたらいい?」


別に隠さないといけない相手じゃないし、サクッと終わらせた方がいいね。


「ごめんね。じゃあ、出し惜しみせずに力の操作をして貰おうかな。私のなかのユキちゃんの力を感じられる?」


奏音ちゃんのなかに流れる自分の力……うん


「分かるよ」

「あっ、わかるんだ」

「えっ?」


いや、奏音ちゃんが出来るか聞いたんじゃないですか!?


「じゃあ、それに少し力を足してみてくれないかな」


足す、足す…足す……足す…………


「足す?」

「あー、ごめん。端折り過ぎたね。まず、契約の時みたいに力を解放してみてくれる?」


えっと…開放はColor coating《補色》でのみちるさんを思い出せばスムーズに出来たはず。


「OK。じゃあ、改めて私の中の力を感じる?」

「うん、感じる」

「同じ流れをユキちゃん自身の中に感じれない?」


あぁ……


「…これかな」

「多分それであってる。そこに血を足すイメージで流せない?」


血…これは動かせるはずのもの……流す………


「こう…かな………?」

「う…くぁ……」

「す、凄いね」

「うん?って、何それ!」

「ユ、ユキちゃん……ストップ…力流すのゆっくり止めて………」


金髪・赤目の奏音ちゃんが苦しそうに言う姿に、慌てて流していた力を慎重に止める。


「か、奏音ちゃん大丈夫?」

「はぁ…大丈夫だよ。ここまで強い力だと思わなかった……」


元の姿に戻った奏音ちゃんを琴音さんが支える。


「ごめん!大丈夫??」

「大丈夫。体調が悪いというより、力が漲り過ぎて獣型になるのを止められそうになかったってだけだからさ」

「そうなの?それならいいけど……びっくりした」

「それにしても…やっぱり主ヴァンパイアの力は凄いね」

「うん…凄い……」

「そ、そうなのかな」


別に嬉しい事でもないけど………


ガチャーーーーン


「うん?」

「蘭ちゃんかな?どうしたんだろう」


リビングの方から聞こえた何かが割れる音……?

慌てて3人でリビングに戻ると、散乱するグラスとグラスの破片を拾ってる蘭さんの姿があった。


「落とした?」

「あっ、お騒がせしてすみません」

「ごめん、お盆に載せたまま放置してたわたしのせいだね」


回収してくれと言われたグラスをそのままに隣の部屋に行っちゃってたから……


「違います。ちょっと無理して空き瓶も運んでしまおうと横着をした私が悪いのです」


えっ、あのお盆に更に不安定になる空き瓶を足したの?


「蘭ちゃん…無茶だよね」

「は、はい。そのようで……」

「………」

「……………」

「ほら、蘭さんストップ。手でやったら危ないから、箒と塵取りある?」

「あぁ、ありますよ。っいた!」

「あぁ、言った傍から!」

「蘭ちゃん、切ったね?」

「き、切ってないです」

「……………」

「………」


こっち見ないで下さい!二人とも鼻が利くんだから分かってますよね?


「………」

「……………」

「ふぅ……切ってますよね」

「切ってな――」

「切ってます」


はい。もう間違いなく。血の匂いぷんぷんしてますし。


「ほら、蘭ちゃん。諦めて見せなよ」

「そうだよ。サッサと治療した方がいいし」

「蘭さん、大丈夫ですか?」

「き、切ったと言っても指先を少しです。ほら」


あーーーーーー血……

血だ…………


危ない!

そんなところで奏音ちゃん獣化しちゃったら……

ふ、服が…

よ……よかったね!!

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