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Last color  作者: 蒼井 紫杏
24/44

第23話

皆様、メリークリスマス!!

ほらっ!驚きのリアルメリークリスマス!!!

これはですね……予定通りです!

…ごめんなさい。

「奏音ちゃん……」

「うん?どしたの??なになに???」

「…………」


いつもより無駄にテンション割り増ししてません?


「何をしに来たのかしら?」

「やだなー。今日のクリスマス会のお誘いに決まってるじゃないですかー。あっ、矢原先生も来ます?」

「行きません!」

「もう、ユキちゃんとの逢瀬を邪魔したからって怒らないで下さいよー」

「お、怒ってないわ!!」


うーん、二人の相性は悪いようです。

普段の奏音さんなら、そんなに酷くはならないんだろうけど……


「って、あれ?奏音さん、なんでその喋り方?」


みちるさんには奏音さんの本性?はばれてるでしょう?


「そうよね。あちらの話し方も腹立たしいけれど、今の話し方の方がより腹立たしいわ。元に戻しなさい」

「矢原先生も普段とは話し方違いますもんねー。ユキちゃんの前ではデレデレだったりしてーー」

「貴女、何が言いたいの!?」


あれ?みちるさんがお怒りになってます。

これは拙いのでは…


「奏音ちゃん、何かあった?」


ちょっと、いつもより酷いですよ?


「昨日あの後姉妹喧嘩が拗れたとかではないの?八つ当たりなのかしらね」

「…………」


あ、あれ?正解?


「か、奏音ちゃん?」

「……申し訳御座いません」

「ご、ごめんなさい。……わたしも少し言い過ぎたわ」

「……いえ。取り乱してしまい、矢原先生に突っ掛かってしまった私に非が御座います。失礼致しました」

「奏音ちゃん、大丈夫?」

「はい、ユキ様にも御不快な思いをさせてしまい申し訳御座いませんでした」


きっちり喋り方を戻してきた奏音ちゃん。この喋り方の時の奏音ちゃんは表情も

あまり変化しないから、取り乱す程落ち込んでるようには見えないけど…


「昨日……あの後琴音さんと――」

「大丈夫です。御心配をおかけして申し訳御座いません」

「でも――」

「ユキちゃん」


みちるさんに遮られた言葉はうやむやのままぼかされる。

まだ…聞くべきじゃないってことなのかな……


「有難う御座います…」

「それで?奏音さんは何故ここに来たのかしら?」

「いえ。ですから、先程も申し上げました通りクリスマス会のお誘いに伺いました」


あっ、それは本当なんだ。


「それと…」

「……何でしょう?」

「前髪、非常に良くお似合いです」

「は、はぁ…」


なんですか、それ。


「でしょう?」

「矢原先生が御提案されたのですか?」

「そうよ。それに、わたしが切ったの」

「Goodjobで御座います」


た、確かにこっちバージョンでもテンションがおかしい……


「そうよね!」

「素晴らしい。ユキ様の知性に溢れた魅力ある瞳が遮られる事も無く光を湛えております」

「そ、そうね」


ほら、みちるさんも若干引いてるって!


「はい。それで、もうみんな集まってると?」


話しは無理やり修正しましょう。


「はい。実は2時間程前から集合しておりました」

「……………」

「…今日は、何時からの予定だったかしら?」

「夕方ですが?」


何か疑問でも?みたいな反応ですね……

現在14時前ですね…

13時くらいかなーとか言っといて更に早く集合しちゃってたわけですね……


「………」

「…はい。じゃあいきましょう」


ここは、もう抗わずに行きますよ。


「じゃあ、これね」


あっ、お重。ちょっと忘れかけてたし……


「私がお持ち致します。…………重っ…」


うん、小さく聞こえた重っていうのは心の声として聞かなかった事にしとこう。


「こ、これは何で御座いますか?」

「差し入れ?」

「そうね。蘭にでも渡してくれれば分かるから」

「左様で御座いますか。承知致しました」

「じゃあ、行って来ます」


さぁ……行きますかーー




◆―◆―◆―◆


「たっだいまーーーー」

「お邪魔します」


勝手に入っていいの?


「入って入って」


いや、だから…


「なんで鍵ななんて持ってるの?」

「へっ?そりゃ、蘭ちゃんから預かったからに決まってるよね?」

「……で?蘭さんは?」

「琴音と買出しーー。だけど……帰ってきたかな?」


言われて耳を澄ませればドアの外に気配がする。


「おかえりーーー」


奏音ちゃんが勢いよくドアを開くと、そこには驚いた顔で固まる蘭さんと

ドアにぶつかりそうになったのか、大きく後ろに仰け反る琴音さんの姿があった。

……奏音ちゃん…危ないから……


「こ、琴音…ごめん………大丈夫?」

「大丈夫だから……」


………うん

仲直りは出来てないのですね…


「蘭さん、勝手にお邪魔してごめんなさい。あっ、荷物持ちますよ」


まだ、驚きの表情のまま固まってる蘭さんの手からコンビニのビニール袋を持つ。


「あっ!有難う御座います。ユキさん、いらっしゃいませ」

「琴音、荷物持つか――」

「寒いし入ろ」


こ、琴音さん…あからさまですね……


「そ、そうだね」


奏音ちゃんの勢いもなくなってます。


「ユキさん、これはなんでしょうか?」


それは……玄関を入ってすぐの廊下の端に寄せておいた大きな荷物ですね。


「和志さんからの……頂き物です」

「作って下さったのですね。どうりで既視感が……」

「蘭ちゃん、和志さんって誰?」

「親戚の方です。今日の為に料理を用意して下さったようです」


親戚……うん間違ってないですね。


「なんで遠野さんも知ってるの?」

「えっと、わたしも体育祭の時にお弁当を頂いたので?」


って感じで誤魔化せてる?


「ふーん、そうなんだ」


……うーん、昨日の話しのせいなんだろうけど………


「琴音。ちょっと、ユキちゃんに対して態度がわる――」

「ほら、寒いから入ろうよ」

「………」

「……………」


琴音さん……何も隠す気がなかったりします?


「そ、そうですね。片付いてはいないですが、どうぞお上がり下さい」


楽しい会話なんかもなく、ただ蘭さんの後についてリビングに入る。

みちるさんの部屋や修さんの部屋がある最上階とは異なり、ワンフロア下の

蘭さんの部屋は……3LDKかな?…普通に広いです。

ここに一人暮らし、流石に寂しい気がしますが?。

あぁ、でもみちるさんも和志さんも毎日のように来るって言ってたっけ。

リビングは、広さは異なるものの最上階と同じ対面式のカウンターキッチンに面していて、開放感のある明るい作りだ。

そこに落ち着いたクリーム色の毛足の長いホットカーペットが轢いてありその上に長方形の大判でブラウンの布団が掛けられたコタツが置かれていた。

テレビから離れた位置にソファーもあるから和洋折衷みたいになってるけどミスマッチ感はなく、意外といい雰囲気で纏まってる。

…が……しかし……さっきから会話がないんです。


「いい部屋ですね」


会話……頑張る…


「有難う御座います。あっ、上着はこちらに掛けて置きますので」

「蘭さん、私もいいかなー」

「はい、もちろんです。どうぞ」

「琴音、上着かし――」

「蘭ちゃん、ありがとー」

「………」


この空気のなかクリスマス会をすると?


「と、取り合えずテーブルの上に料理とか広げてしまいませんか!」

「そうですね!」


今回のお重の中身は、お弁当ではなくオードブル。

和志さん…何故医学の道に進んだ……

あっ、でも医学界でもエリートだったんだ。

うーん、見た目は料理界の方が…いや、教育界……保育…


「うっわ!これ何!?」

「すごっ!!めっちゃ高そうなんだけど!?」

「いえ、全て手作りだと思いますよ」


間違いなく手作りでしょうね。


「ちょ、食べていい?」

「そうですね。頂きましょう」

「か、奏音ちゃん……これすっごい…」


おっ?琴音さんが、あまりの事に険悪な雰囲気を忘れてる?


「どれどれ?うっわ、こんなの家で作れるんだー」


いや、こんなの普通は作れませんよ。

というか、作ろうと思いますか??


「あたしも料理出来るようになれないかなー」

「琴音も下手なわけじゃないじゃん」

「そうだけど、こういうの出来たら格好良くない?」


美味しい料理の力!?

スムーズに会話が成立してる!


「お弁当等から始めてはいかがですか?」

「うーん、お弁当は奏音ちゃんが作ってくれるから……」

「琴音が作るなら、私食べるよ?」

「……考えとく」


…あれ?

うーん、料理の奇跡は終了しました。


「あっ、私達は飲み物持って来たから!飲んで飲んで」

「有難う御座います。遠慮なく…」

「飲んで飲んで?」


これって……


「呑んで呑んで?」


ですか??


「あ、あの……これはアルコールでは?」

「えっ??アルコール?わぁ、ほんとだね!間違えちゃったのかな」


琴音さん…棒読み過ぎる……


「まぁまぁ、お酒は15になってからって言うでしょ?」

「えっ?いつの間に法律が改正せれたのでしょう?」


いやいやいや


「蘭さん……されてません。奏音ちゃん、悪乗りし過ぎ!」

「あっ、あーーーで、でも…」

「遠野さん、かったいなーーー!いいじゃん、別に強制してるわけじゃないんだから。飲みたい人だけ飲む感じで!!」

「こ、琴音!」

「何っ!?奏音ちゃんだって飲むんでしょ!」

「わ、私は別に無理に飲まなくても…」

「ほんっと、優柔不断なんだね!あたしは飲むから!!!」


あーーーー、そんな一気に……


「琴音!」

「好きなもの飲めばいいでしょ!?」


あーーー


「そうですね。じゃあ、頂きます」


わたしお酒強いからね?知りませんよ??

統一性のかけらもなく集められたアルコール飲料の中から、カップ酒をチョイス。

半分程を一気に飲み干す。


「なーんだ、遠野さんも飲めるんだ。ほら、ガンガン飲んでーーー」


うん。絡み酒ってやつですね。


「琴音――」

「奏音さん、いいですよ。わたし酔わないので」


困った顔の奏音さんにこそっと囁くと、申し訳なさそうな顔をした後諦めたのか、溜息をついて料理に手を伸ばした。

お姉さんも大変なんですねー。


「蘭さんはソフトドリンクにしますか?」


机の端に寄せてあったジュースやお茶のペットボトルに手を伸ばしながら聞いてみる。

まぁ、他のメンバーがアルコール飲んじゃってる事には目を瞑ってもらうしか――


「あっ、ではビールを頂きます」

「ビールですね。はい…………って!!?」


ちょ、飲むの??


「何か?」

「い、いえ。蘭さんがビールを飲んでる姿があまりにも……」


……似合わなくて


「イメージが合いませんか?」

「そうですね」

「こう見えても強いのですよ?和志さん達に鍛えられましたから」


医療従事者……なにやってるんですか………


「らーんちゃーん、氷ーーー」

「ご、ごめんね蘭さん」


既に御機嫌な琴音さんと、振り回されてる奏音さん……


「いいですよ。アイスペールで用意してきた方がよさそうですね」


そんなのもあるんだ…イメージが……


「ホントごめんね」

「構いませんよ」


うわー、しかしクリスマス会という名の単なる飲み会になってる。

料理の匂いよりもアルコールの匂いが強い部屋は、女子会なんて呼べるものじゃなく間違いなく飲み会ですね。

空き瓶や空き缶が積み上がる室内。

お重の中身が少なくなって、室内の様子はどんどん学生らしさから離れていく。


「ほらーーー!飲んで!!」

「分かった分かった、飲むから」

「うむ。あっ、遠野さんも飲み終わってるーーー!ほら次はこれだよこれ!」


何も薄めてないストレートの焼酎が注がれたグラスを手渡して、また奏音さんの方を向いてしまった。

折角用意したんだから、氷を入れません?


「琴音さん、荒れておられますね」


横から、伸ばされた手がグラスに氷を入れていく。


「そ、そうですね」

「姉妹喧嘩でしょうか」

「そ、そうですね」


うーん、姉妹なような姉妹じゃないような……


「私は一人っ子でしたので、実は少し羨ましい気もしているのですが」

「羨ましいですか?」


わたしも姉妹はいないけど、羨ましいかな?

喧嘩ですよ??

奏音さんが大分参ってるみたいなんですけど?


「そうですね。相手がいないと経験しようがないことですから……」

「…みちるさんがいますよ」

「そうですね。みちる姉さんと姉妹喧嘩でもしてみましょうか」


……酔ってます?


「こ、琴音!」

「だーかーらー、奏音ちゃんは駄目駄目なんだよー」


あー、あそこに完全なる酔っ払いが・・・


「遠野さん、そこんとこはどうなのさ!!!」

「琴音、何絡んでんの!?大人しく飲もうね。ほら、これ食べる?」

「奏音ちゃんには聞いてませーん」


いやいや、わたしも聞いてませーん。


「で!遠野さん!?」

「はい?」


どういう話しをしてたのですか?


「ちゃんと奏音ちゃんの事大事にしてんの?」

「!!!ぶっ!!ごふっごふっ!」


焼酎が気管に!!


「あぁぁ、琴音!」

「ユ、ユキさん。大丈夫ですか?」


大丈夫じゃない!

大事にって!?


「琴音!あんた飲み過ぎ!!ちょっと頭冷やしな!!!」

「えーーー!まだまだだよぉ!これだけは聞いとかなきゃいけないんだから!」

「えっと、だ、大事にって……」


3年とか言ってる時点で駄目な気が…


「琴音!大丈夫だってば!」

「奏音ちゃんには聞いてないですーー」

「大事に…大事に……」

「はい?なんてーーー?」

「えっと…」

「……もしかして、何も考えずに手を出したのっ!?」

「琴音!だから昨日も説明したでしょ!」

「だから!奏音ちゃんには聞いてないってば!!」


あー、どう答えればいい?


「琴音!」

「奏音ちゃんは分かってないよ!後戻り出来ないんだよ?全ての責任は遠野さんに取って貰うべきなの!!」

「琴音……怒るよ…」

「怒れば良いじゃない!そんなこと言っても怒れないんでしょ?だって、奏音ちゃんは正面からあたしと向き合おうとした事もないもんね!」

「琴音、ユキちゃんや蘭さんに迷惑になるから……ね」

「ほら、またそうやって有耶無耶にするんだよ!」

「琴音!いい加減にしなっ!!」

「ふんっ!」


ど、ど、どうすればいいのでしょうか………

蘭ちゃん、呑んじゃうの!えっ、呑んじゃうの!!?

ら、蘭ちゃん…人にはイメージというものがありまして……

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