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Last color  作者: 蒼井 紫杏
12/44

第11話

奏音の喋り方が普通…

普通って素晴らしい!めっちゃ書きやすいやん!!

こうなったら、誰か関西弁喋らしたろうかな…( ̄ー ̄)



「で、どうする??」


月曜日、まだ登校してきた生徒の少ない教室。本を読んでいたわたしの目の前の席に座った生徒が、唐突に声を発した。


あー、今日は前の席の子何か用事なのかな?いつもより大分早いご登校だわ。


「おーい、遠野さーん」


えっ?わたしに話しかけてたの!?

なんか、前にもこんなことがあったなーと思いながら顔を上げると……


「………白崎…奏音さん?」

「はい、そうです。おはようございます。しかし、なんでフルネーム?」

「あっ、おはようございます」


目の前に座った生徒は、先週生徒会室で話しをした白崎姉妹の姉の方の奏音さんだった。


「えっと、白崎さんだけだと御姉妹なのでどうしようかと」


まさか、白崎(あね)さんとか白崎(いもうと)さんなんて言えるわけないし。


「それなら、私の事は奏音で妹は琴音っていう名前があるんだから、名前で呼んでよ」

「わかりました」


人見知りしない性格なんだろうなー。わたしが出してる話し掛けないでオーラを突破してくるし…そういえば蘭さんにも通用しなかったし、生徒会のメンバーって凄いな。


「それで…あれ?前の席??」

「えっ???」

「………」


あぁ、どこかで見たと思ったら!


「…まさかと思うけど……覚えてなかったとか?」

「……そんなことはないですよ」

「…うっわ…マジか…」

「………」

「…………」


誤魔化されてくれませんか??


「………」

「…………」

「ごめんなさい」

「いや、ホントびっくりだわ。この席になって2ヶ月くらい経つんだけど?話ししたこともあるよね…」


クラスメイトとの距離感を間違えてたかもしれない…

結論から言うと、名前と顔くらい覚えておくべきだった。


「あの、人見知りが激しくて、なかなか顔と名前が一致しないんです」

「それ、人見知りとかいう問題?……クラスが一緒だったのくらいは分かってた??」

「うん…?」

「破壊的に人との繋がりを無視してきたってのは分かったわ」


は、破壊的って言いすぎじゃ!?


「い、いえ会話したのは覚えてますよ!確か情報通とかおっしゃってましたよね」

「いや、確かにそんな会話したけどさ、会話覚えてて本人の記憶無いとかさ…ちょっと凹むわー」

「ごめんなさい…」


破壊的ですね…もう受け入れときます。


「まぁ、取り敢えず名前は覚えて貰ったみたいだし、ちょっとは進歩してるか…」

「だ、大丈夫です。もう覚えました!」

「いや、そりゃね。ここまで話して忘れられたら救われないし……取り敢えず、なんでも出来る遠野さんの意外な弱点って事にしといてあげる」

「は、はぁ」


今度こそ忘れないために、もう一度奏音さんの姿を見る。

身長はわたしの目より少し高い…165cmくらいかな?

日本人女性としては十分高いんじゃない?

あっ、でも彫りの深い顔立ちと黒というより紫黒色のくすんだ髪色は、もしかしたら日本以外の血が流れてるかもしれない。

あれ?そういえば双子の琴音さんは、背がもっと低かったようなきがするし、髪色も少し異なった…赤が入った黒色だったような。

彫りの深い感じは似てるといえば似てるけど、一般的な双子みたいに凄く似てるって感じではないなー。


「で?」

「えっと?…なんでしたっけ?」


結局、何も話しが進展してなかったけど、声を掛けられたんだった。


「先週話したお手伝いの件なんだけど」


まぁ、それしかないよね。


「今日お答えしないといけませんか?」

「ううん。今週中でいいんだけど、もう決まったかなーと思って」

「もう少し考えさせて下さい」


気持ち的には断る方向に傾いてるけど…


「わかった。んで、それとは別件なんだけど安東会長が直接挨拶するって聞かなくてさー。今日の昼休みか放課後に時間作ってくんないかなー??」

「きょ、今日ですか?」


随分と急じゃないかな。


「安東会長って、思い立ったが即行動の人でさー。休みの間に進捗報告の電話してたら自分が挨拶するって言い出してね。ホント言うと、今この時間に教室くるって言ってたんだけど、それだと目立ちたくないって言ってる遠野さんがめちゃくちゃ目立つからって説得して回避したんだよね」

「…ありがとうございます」


うわ…何その熱血……


「って、わけで教室に乗り込まれる前に顔合わせしときたいんだけど?」

「わかりました。ではお昼…――いえ放課後に生徒会室に行きますね」

「そっか、放課後の方がより生徒が少ないか」

「そういうことです」


分かってるんじゃないですか。


「昼休みは教室でこそっと一人でパンを食べて、残りの時間はさっさと図書館。放課後はどこの部活にも参加しないで一人でギリギリまで図書館」

「えっ?」

「以前までの遠野さんの行動パターン」

「はぁ」


突然どうしたんだろう?


「昼休みに蘭さんが教室まで迎えに来て、そのまま保健室で矢原先生と蘭さんとお昼を食べて、昼休み時間を保健室で過ごす。放課後は、図書館に寄って本を借りることもあるけど、今までみたいに閲覧室で読んだりせずに保健室」

「えっと…?」

「現在の遠野さんの行動パターン」

「…そうですね」


何が言いたいの?


「今までは、図書館に入り浸りだったのに、今は保健室に入り浸りってことかー」

「…流石、情報通ですね」


思わず嫌味っぽく言ってしまった。


「あぁ、不愉快にさせたならごめんね。別にこそこそ嗅ぎまわったわけじゃないよ。遠野さんは目立つから、嗅ぎまわらなくても情報は入ってくるしね」

「…甚だ不本意なのですが」

「情報は…情報は入ってくるんだけどね…私の鼻が鈍ったのかな……」


結局、嗅ぎまわってるって言いたいの?


「仰りたい意味がわからな…――」


ガタガタガタ


教室内の生徒が椅子を整えた音で周りを見ると、朝拝の放送が流れ出す。

奏音さんと話してるうちに、いつの間にか予鈴も鳴ってたらしい。


奏音さんを見ると、もうちゃんと前を見ていた。

なんだか、話しが中途半端で消化不良気味…

はぁーーーー

雑念だらけのお祈りになりそう……




◆―◆―◆―◆


あの後、休み時間の度に奏音さんに話しかけようか悩んだけど、何を言えばいいのか自分の中でもまとまらなくて、うやむやのまま午前中が終わってしまった。

奏音さんの方からも特に接触がなかったから、わたしだけが気にしてるんだと思うし、もう忘れることにしとこう。


「遠野さん。蘭さんがきてるよ」

「あっ、ありがとうございます」


今まで感じなかったけど席が前だという認識が出来てしまうと、なんか油断出来なくて、気が抜けない…


「はぁーーー」

「ユキさん、どうかされたのですか?」


思わずついてしまった溜め息を、蘭さんにばっちり聞かれたらしい。


「なんでもないですよ」

「また顔色が悪いですし…」

「そうですか?体調が悪いわけではないですよ?」

「体調がということは、何かあるのですね?」

「む…」


引っかかっちゃったのか。


「ふふ…そんな顔なさらないでください」

「そんな顔って…」

「悔しそうな?拗ねているような?」

「も、もういいです。」


からかわれてるし!?


「顔色が悪いというのは本当ですよ。お悩み事ですか?」

「悩み事というほどでもないですけど…」


コンコン

ガチャ


「お待たせしました」

「みちる姉さん、お久しぶりです」

「そんなに待ってないから大丈夫よ。そうね、確かに一週間会わないとなんだか久しぶりな気がするわね」


うん。一週間しか経ってないのに、随分長く会ってなかったように感じる。

でも、よく考えたら矢原先生と出会ってまだ一ヶ月も経ってないのか…

蘭さんとも全く話したこと無かったのに、いつの間にかこうして一緒にいることが当たり前みたいになってるなー。

前みたいに拒絶して離れようとは思わないけど、少し距離のとり方を考えたほうがいいのかもしれない…


「もう用意してあるから、入っておいて」

「はい」


予備室のドアを開けた蘭さんに続き部屋に入る。

以前までは、保健室で昼食をとってたんだけど保健室利用者がいた時のことを考えて予備室でお昼を食べるようになった。

予備室は教室の半分程の広さで、冷蔵庫・電子レンジ・卓上コンロ・洗濯機なんかの日用家電のようなものから、予備の衣類が収納されている造り付けの壁面収納、机と椅子、簡易ベッド、そして何故かシャワールームまである。

正直、わたしの部屋より居心地がよさそうなんですけど…


「ユキさん、またパンだけなのですか?」

「えっ、はい」

「そのような食生活では身体が持ちませんよ!」

「燃費がいいので大丈夫ですよ」

「もう!前々から言わせて頂いていますが、何故改善なさらないのですか!」


あれ?珍しく蘭さんが御立腹ですね。


「い、いやホントに大丈夫で…――」

「大丈夫ではありません!!!みちる姉さんも、ユキさんの食生活の改善の為になんとか言って下さいませんか!」


ちょ、ちょっと怖かった…


「…明日からパンも持ってこなくていいわ」

「はっ?」


どういうこと??

燃費がいいんなら食べる必要ねぇんだろーってこと?


「みちる姉さん、それはどういうことでしょうか?」

「和志が、ユk…遠野さんのお弁当作りたがってたから」

「えっと??」

「和志さんのお弁当でしたら安心ですね。栄養面もしっかり計算されておりますし」


つまり?


「わたしと同じお弁当になるけど、持ってくるから食べなさい」


えぇぇ!


「そ、そんなことまでして貰うなんて出来ません!ホントに栄養とかちゃんと摂れてるんで気にしないでください」

「わたしと和志の自己満足よ。付き合いなさい。…乙女弁当だけど」

「ユキさん、折角の御厚意です。頂いておくのが良いのではないですか?」


断り辛くなってしまった…


「…わかりました。御厚意ありがたく御受けいたします」


乙女弁当ですけど…


「それにしても……一週間しか経ってないのに、また顔色が悪いわね…」

「みちる姉さんも、そう思われますか?」


そんなにですか?

顔色が悪いのは、もうデフォルトですよ。御心配なく。


「元気ですから大丈夫です」

「…あまり信じられないのだけど。あれ?……誰か来たみたい。先に食べておいて」


保健室に誰かがきたようで、矢原先生が戻って行った。

…と思ったらすぐに戻ってきた。


「遠野さん、貴女にお話しがあるという方がお見えになっています」


矢原先生の話し方が蘭さんっぽい。これが公私の公の方の喋り方なのかな。


「どなたでしょうか」


わたしに会いに来るなんて蘭さんくらいしかいないけど、その蘭さんが目の前にいるんだから思いつかな……

いや…ちょっと待って…


「あなたが遠野さんね」


コバルトブルーのネクタイ=二年生

あー、はいはい。


「…そうですが?」

「安東先輩、どうされたのですか?」


…そういうことですよねー。


「蘭さん、お食事の邪魔をしてごめんなさいね」

「いえ、それはいいのですが…」

「安東さん、何かお話しがあるのであれば、食後にされてはいかがですか?」


確かに…なんでわざわざ食事中に…


「御挨拶をしにきただけなので」


だから、なんで食事中に?

放課後に行くと言ったでしょう…


「あっ!やっぱりここにいるし!奏音ちゃーーーん、会長いたよーー!」


また、なんか来た…


「安東会長!何してるんですか!?」

「御挨拶よ?」

「だから、放課後に時間作ってもらうって言ったじゃないですか。聞いてました??」

「私から御挨拶に行くべきだと思っただけよ」


聞いてませんね…


「あー、会長らしい発言だね」

「じゃあ、もう顔合わせは済みましたね。はい帰りましょう!」

「まだ御挨拶はしていないわ」

「大丈夫ですって。もう十分会長の事は分かってくれたと思いますよー」


はい、良く分かりました。我が道を行く人ですね。


「ほら、食事の邪魔です。帰りますよー」

「あっ、ちょっと待っ――」

「待ちません。お邪魔しましたーーー」

「遠野さん、ごめんね。矢原先生、蘭さんもすみません。お騒がせしましたー」


白崎姉妹に連れて行かれる生徒会長…

なんだったの??


「だ、大丈夫ですか?」

「大丈夫ですけど…」

「生徒会長って、いつもあんな調子なの?」

「そうですね…普段は仕事の出来る方なのですが…」


なかなか残念な人ですねー


「生徒会役員選挙で選ばれたのよね?まぁ生徒からの支持はあるってことなんでしょうけど、生徒代表としては心配なところね」

「会長は人心掌握が必要ですから。安東先輩はカリスマ性があるので適任なのですよ」

「周りで支える人が大変そうですね」

「……そ、そんなことはないですよ」


…御苦労様です。


「で、あれはなんだったの?」

「ユキさんの勧誘ですね」

「生徒会?」

「先週、生徒会入りは拒否されてしまいました」

「じゃあ、なんのために?」

「正式な生徒会役員ではなく、お手伝いでというお話しでしたね」

「ふーん。ユk…遠野さんはどうするつもりなの?」


あの生徒会長の下で動くのは大変そうだなー。

お手伝いしてるだけでも、思いっきり引っ掻き回されて目立ちそうだし…


「まだ、検討中です」


まぁ、きっと断るけど…




◆―◆―◆―◆


「と言われましても…」

「遠野さんの言い分も分かってるんだけどさー」


放課後の保健室で、何故か奏音さんに説得されてます。

昼間ので顔合わせは終了したという認識で、放課後は保健室に逃げ込んだのに…既に先回りした奏音さんが、保健室で出迎えてくれました。


「回答期限は今週中じゃなかったんですか?」

「いやー、今日安東会長見ちゃったでしょ?唯でさえ断られそうなのに、あの暴走見ちゃったら絶対断る方向で固めちゃいそうだし」


確かに、断る予定だったんだけど……


「何故わたしなんですか?」

「うーん、前から話しがあったってのは言ったよね?」

「お聞きしましたけど…」

「少数精鋭の生徒会で必要だと判断したからってのが理由」

「はぁ…」

「譲歩はするってば。生徒会役員とかにはしないし、他のメンバーとなるべく絡まなくてもいいように一年メンバーの補助って形にするから、必要最低限のお手伝いって感じで」


別に忙しいわけでもないから、断る必要はないけど…


「…そこまでして、わたしにこだわる必要が分かりませんね」

「……優秀な人材は、貴重なんだよ」

「………」

「ダメ??」


なんか、納得できないけど…


「…分かりました。生徒会役員じゃなくお手伝いですからね」

「おっ!ありがと!!」

「本当に、裏方でお願いしますよ」

「うんうん、りょーかい!まぁ、来週からテスト週間だし、当分何もイベントないしねー。学期末くらいまで何もないと思うから」

「では、何かあれば事前に教えてください」

「はいよー。でもさ、蘭さんだけじゃなく、私とか琴音とも親睦深めといてね」


いや、だからそれは拒否したいんですってば。


「…分かりました」

「そんなに嫌がらなくてもいいのに…」

「えっ、あの別に嫌ってわけじゃ…」


ないとは言えないけど…


「はぁーーー…まぁ気長にいくわ。あっ、邪魔してごめんね。じゃあ、また明日」

「はい、…また明日」


少し慌てた様子で保健室を出て行く奏音さん。この後、生徒会室に行くのかもしれない。



「…生徒会の手伝いをするの?」


机で事務作業をしていた矢原先生が手を止めて、わたしを見てる。

いつから見てたんだろう…


「そういうことになりましたね」

「そう…あまり無理をしないようにね」

「はい」

「引越しもあるんでしょ?」

「えっ!?」

「え??」

「な、なんで…」


知ってるんですか!?


「12月に引越しと聞いてるけど、違った?」


そっか、学校には連絡してあるんだ。


「…そうです。2週目ですね」

「もうすぐじゃない。引越しの準備もあるんでしょうけど、無理せずにね」

「引越しと言っても荷物はあまりありませんし、大したことはないです」

「そうなの?まぁ、面倒そうなものは全部旦那さんにやってもらいなさい」


そっか…矢原先生は知ってるんだ……


「そうですね…」

「取り敢えず今はその顔色ね。少しでも横になって体力回復しなさい」

「はい…」


わたしが結婚することを知っても、いつもと変わらない矢原先生。


「矢原先生………」

「うん?」


わたしは、何を聞こうとしたんだろう…


「なんでもないです」

「そう」

「…はい、おやすみなさい」

「おやすみ」


わたしは、何て言って欲しかったんだろう…


ユキ…会話した相手くらい覚えようね。

安東会長…めっちゃ残念な人になりつつある。カリスマ性があるのに…

頑張りなはれよ!



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