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今日もファントは空を飛ぶ

作者: inu

 太陽キラめく空の下、子供大泣、母オロオロ。一体何があったやら。

 どうやらそうなる原因は、枝にかかって取れなくなった赤い風船にあるようだ。

 子供は「取って!」と母に言う。 だけれど母には遠すぎる。

 太陽キラメく空の下、そんなやりとり続いてた。


 そこへ突然、象耳少年、耳をパタパタ空を飛び二人の元へやって来た。

 彼は象耳ファント君。

 ファントは木の方飛んでって、赤い風船捕まえて、フワリと地面に着地した。

あんなに泣いてた男の子、風船受け取り泣きやんで笑顔いっぱいに「ありがとう!」

母もペコペコありがとう。

 ファントはいっぱい感謝され、謙虚に「いえいえ」テレ隠し。


 そんな彼を妬む顔。柱のカゲから妬む顔。

 その人そこから歩み出て、ファントはそれに気がついた。

(あれは猫耳ミーコちゃん…。キラワレ者で有名だ…)

それでもファントはつくろって、挨拶しようと駈け寄った。

「おはよう猫耳ミーコちゃん!今日も青空いい天気!」

猫耳少女のミーコちゃん、それを無視をして通り過ぎ、子供の方へ歩み寄る。

 すると風船無理矢理取り上げて、たくさん持ってた風船と一緒に空に飛んでった。

空の彼方へ飛んでった。


 突然起こった出来事にしばらく呆然、しばしの間。

だけれど子供が泣き出して、困った空気が流れ出す。

ファントはそれをチラリと見て、青い空に目をやった。

(ミーコはあんなに空遠く…。いくら僕でも間に合わない…)

風船は遥か遠い空。子供の泣き声増すばかり。

 困った顔のままだけど、ファントはついに決意して泣く子の両肩掴んでは、

「必ず取って戻って来るよ!」

そう言い、空へと飛んでった。                         

(追い着くこと、できるかな…)

ファントの不安は増すばかり。

(それでも僕がやらないと…!)

自分自身に言い聞かせ、今日もファントは空を飛ぶ。

(僕が風船取り返し、そして誉めてもらうんだ)


 すると突然後ろから、大きな鳥の体当たり。

あららゴツンとぶつけられ、ファントは一気に加速した。

 白い雲たちすり抜けて、遠くの人影、ミーコちゃん。

それにどんどん近づいて、ミーコの顔も近づいて、二人の距離は1センチ。

ファントはギリギリ立ち止まる。危うく顔面ごっつんこ。

(やった!なんとか追いついた)

少し間に距離を取り、冷や汗を片手でぬぐい取る。

ミーコは無言でそれ眺め、風船片手に空の中。

「その風船を返してよ!」

ミーコは無視してそっぽむく。

 そこでファントは考えた。

だったらハサミで風船の糸を切ろうと思いつく。

ハサミをチャキンと取り出して、ファントは特攻準備した。

 だけれどそこで気がついた。

(風船取ったらミーコが落ちる、そしたら僕は人殺し…)

それはダメだと悩みだし、悩んで悩んでとにかく悩んで、違う方法思いつく。

(ミーコの事はほっといて、同じ風船買いに行こう)

そうしようと決意して、くるりとミーコに背を向けて風船屋さんに着地した。

 子供が持ってた赤風船、それと同じの買ってきてファントは子供に手渡した。

「取ってきたよ」と手渡した。

だけれど子供は泣き出して、「僕のじゃない!」と悲しんだ。

(やっぱり取り返してこよう…)

 気まずい気持ちになりながら、ファントは飛び立つ準備した。

だけれど母親それを止め、お礼を言って去ってった。              

迷惑そうな顔をして、お礼を言って去ってった。

(良いことをしたハズなのに…)

ファントの心はキズ付いた。


 次の日に学校は、「ミーコが居ない」と騒いでた。

 キラワレ者で有名な、猫耳少女のミーコちゃん。

居なくなって喜んで、騒ぐ人もいるけれど、女子の殆ど集まって心配そうに話してた。

 そこでファントは昨日の事、みんなに説明してあげた。

男子は全員それを聞き笑い転げていたけれど、女子のみんなは怒ってた。

「ミーコはキラワレ者だけど、あなたのやった事もヒドイ!」

ミーコはきっと降りられず、空の上で困ってる。

女子はみんなでそう言って、ファントをとても困らせた。

 生まれて初めてブーイング。

あんなに笑った男子さえ、黙ってそれを見つめてた。

非難の声は増すばかり。

(いつもはみんな嫌うのに、どうして今は保護するの?)

ファントは疑問でしょうがない。

そしてとてもキズ付いた。

 いっぱい困ってキズ付いて、ファントはついに腹立てた。

「助けに行けばいいんだろっ!!」

大きな声を張り上げて、窓から外に飛び出した。

(誰も感謝しないなら、二度と親切するもんか!)

 ファントは宛なく空飛んだ。

(ミーコの事も助けない。困った人も無視しよう)

怒りはまだまだ治まらない。


 しばらく空を飛んでると雲が太陽を隠しだし、雨がザーザー降ってきた。

ついでに風も吹き始め、街は台風に包まれた。

 ファントはそれでも気にもせずに、まだまだ空を飛んでいた。

 洗濯物が宙を舞い脇をかすめ通っても、気にせず空を飛んでいた。       

 荷物を風に飛ばされて追いかける人が見えてても、気にせず空を飛んでいた。

 町の被害に目も向けず、ファントは空を飛んでいた。

 怒りも治まる気配がない。


 それから少し経過して雨はだんだん治まって、太陽がまた顔出した。

 晴れた天気が照らす町、だけれどとっても荒れ模様。

 そろそろ疲れてきたファント。降りて歩く事にした。

 煉瓦や草木で散らかって、地面は歩き難かった。


 しぶとく立ってる木が一本。 そこに割れた風船と、ミーコが共に掛かってた。

ミーコは必死にもがくけど、そこから抜け出す気配はない。

 ファントの怒りはまだ止まず、そんなミーコを見つけると煉瓦を一つ手に取った。

そしてそれを思い切り、ミーコ目掛けて投げつけた。


 煉瓦は勢いよく飛んだ。

 だけれど力み過ぎたため、ミーコに当たらず木に当たり、枝がボキリと折れだした。

同時にミーコは落下して、地面に一気に急降下。

 だけれど猫耳ミーコちゃん。華麗に空中一回転。 スタリと無事に着地した。


 ファントのおかげで助かった。

 ミーコは少し間をおいて、照れくさそうに近づいて、

「ありがとう……」言い残し、ササッとどこかへ駆けてった。


 静かな時間が流れてた。

 あんなに腹が立ったのに、今度はたくさん泣き出した。 なかなか涙が止まらない。

(助けるつもりなかったのに、ありがとうって言ってった……)           

今までたくさん聞いたけど、こんなに嬉しくなったのは初めて感じた事だった。



 次の日の朝になり、ファントは元に戻ってた。


 太陽キラめく空の下、子供が一人泣いている。一体何があったやら。

 どうやらそうなる原因は、枝に掛かって取れなくなった赤い風船にあるようだ。

 ファントはそれを見つけては、バサリと耳で空を飛び掛かった風船を捕まえた。

そして見事に着地して子供に渡そうとした瞬間、突然大きな風吹いた。

それに飛ばされ風船が、青い空へと飛んでいく。

 ファントも飛ぼうとしたけれど、横から誰かがジャンプして風船捕まえ着地した。

それは猫耳ミーコちゃん。

 照れくさそうに風船を子供の手の中押しやると、お礼も聞かずに去ってった。

 ファントはそれ見て微笑むと、ミーコの背中を追いかけた。

 そして横に並んでは、「ありがとう」と声かけた。


 おわり

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― 新着の感想 ―
[良い点] ファントが悪役に転じて、ミーコに悪意を抱いたところはよかったです、そして最後には仲良くなれたのもよかったです。 [気になる点] ミーコを、間違いで助けたのはいいのですけど、その悪意が最後ま…
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