9話
そして、翌日、ついにミネルバ号の処女航海出発の日が来た。
朝9時から全員参加のシミュレーション訓練が行われ、出航とジャンプの操作が何回も誰もミスをしなくなるまで繰り返され、やっとヴァンが出航しても問題なさそうだと判断を下した瞬間。船長のマックスを含めブリッジに集まっていた乗組員が一斉に安堵の溜息をついた。
ブリッジのやや後方の高い位置に設置された船長席にマックスが座り、ブリッジの一番前に設置された操縦席にルーカス、ブリッジ中央の航法用の席に副長のヴァン、そして右側の通信と索敵用の席にテレサが座っている。ルイスはロビーを連れて機関室だ。
「皆。ご苦労様」
船長席に座ったマックスが乗組員に言葉を掛けた。
「ミネルバ号の出発は13時0分の予定だ。遅くとも5分前に所定の席についてくれ。後50分程しかないが、それまでに昼食を取って、英気を養ってくれ。
それでは、解散!」
マックスの号令で、ルーカスとテレサは各々の席から立ち上がってブリッジから出て行った。ロビーを連れて機関室に待機していたルイスも談話室へ引き上げたようだ。
船長席から降りたマックスにヴァンが近づいた。
「船長」
「何だ?」
「今のままでは緊急事態に対応することは難しいでしょう。ハイパースペース航行中に特訓したいと思いますが、よろしいでしょうか?」
「ミネルバが居るから大丈夫だが、確かに、普通の商船なら海賊に奇襲されたらひとたまりも無いかもしれない。訓練しておいた方が無難だろうな……。
分かった。訓練の事は任せる。しかし、ミネルバ号は民間の商船だ。しかもルーカス、ルイス、テレサの3人は軍人じゃないからな。程々にしとけよ」
「アイアイサー」
マックスが了承するとヴァンが軍隊調の敬礼で答えた。
ヴァンの目が輝き出したのを見たマックスは3人を気の毒に思ってしまった。
出航予定時間の少し前に全員が所定の持ち場に待機した。
マックス、ヴァン、ルーカス、テレサはブリッジに、ルイスは機関士なので、ロビーを連れて機関室に待機した。
「これからミネルバ号を発進させる。朝のシミレーションとまったく同じことをやるだけなので、みんな、落ち着いて操作してくれ」
船長席に座ったマックスが皆に声を掛けた
「アイアイ・サー」、「了解」..と各自は返答した。
「よし、外気換気口を閉鎖、貨物室搬出入口およびエアロックをロックせよ」
「外気換気口、閉鎖しました。貨物室搬出入口、ロックしました。エアロック、ロックしました」
マックスの命令にパイロットのルーカスが素早く対応した。
「外部遮断を確認。船内生命反応および、船体質量を確認せよ」
「外部遮蔽を確認しました。システムオールグリーンです。船内生命反応は8、船体質量も予定値。問題ありません」
テレサもルーカスに劣らない素早さでマックスの命令に答えた。
「核融合エンジンを起動せよ」
「核融合エンジン、起動しました。エネルギー充填中」
機関室のルイスの声がブリッジに響いた。
マックスはジェネレータ補充ゲージがグリーンの線を越えるのを待った。
「生命維持装置。反重力装置、重力補正装置を起動せよ」
「生命維持装置、反重力装置および重力補正装置を起動しました」
「テレサ。管制塔に通信。発進許可を貰ってくれ」
「はい。船長。
管制塔。こちら自由貿易船ミネルバ号。応答を願います」
「こちら管制塔、ミネルバ号どうぞ」
「ただ今から発進します。発進許可をお願いします」
「了解しました。発進を許可します。グッドラック、以上」
「ありがとう。以上」
通信が終わるのを待っていたマックスが、乗組員への命令を継続した。
「ステーションリンクを切断」
「ステーションリンクを切断しました」
「連結パーツを解除。ドッキングポートを切り離せ」
「連結パーツを解除しました。ドッキングポート切り離しました」
「側面ジェットを噴射。ポートから離脱せよ」
「側面ジェットを噴射します」
訓練された軍艦並みの手際のよさに、マックスは密かに感心した。流石にヴァンが鍛えただけのことがある。
ブリッジの窓から見えるステーションのドッキングポートが徐々に遠ざかって行くのが見える。隣のドッキングポートに係留している宇宙船も窓から見えていた。
「ポートから離れました」
「駆動ドライブ起動せよ」
「駆動ドライブ起動しました」
「10秒間、逆噴射を開始」
「逆噴射を開始しました」
ブリッジから見える景色が前方に流れて行った。乗組員はステーションから十分に離れるまで、徐々に全貌を現していくステーションの景色を眺めた。
時速100km以上の速度が出ているのだが、ステーションが巨大過ぎるため、物凄く遅い感じがする。
「宇宙港からの距離5kmです」
ミネルバ号はステーションの全貌が見えるほど離れた。
「方向転換。コースをジャンプ領域に設定。」
「方向転換します。コースをジャンプ領域に設定します」
「方向転換完了しました」
「よし、ミネルバ号の処女航海に向けて発進する。ルイス! 駆動ドライブ出力50%!」
「出力50%、発信します」
ミネルバ号は急激に加速したのだが、重力補正装置により地上の建物にいるかのように全く重力の変化を感じられなかった。
「現在、加速3Gです」
「このまま、コース維持、オートパイロット設定せよ」
「オートパイロット設定しました」
「よし、ミネルバ号の発進操作は終了だ。ジャンプ可能距離到着時刻は?」
「ジャンプ可能距離到着まで、約16時間です」
「では、16時間後にジャンプする。30分前に各自所定の位置についてくれ。それまでは当直以外は解散だ」
「アイアイ・サー」、「了解」..と各自は返答した。
ジャンプ予定時刻の30分前にマックスは再び、ブリッジの船長席に座った。ヴァン、ルーカスはすでに、自分の席に座っている。ルイスも機関室に待機中だ。
乗組員は皆、経験者のため、全く緊張した様子はなく、ルーカスを中心にジャンプ予定時刻まで雑談で過ごした。
「そろそろ時間だ。皆、用意しろ」
ジャンプ予定時刻の5分前にマックスが命令した。途端にブリッジの乗組員がシャキッとして待機した。
「ルイス! 核融合エンジン、ジェネレータの状態はどうだ?」
「核融合エンジン、安定しています。ジェネレータ充填100%、問題ありません」
「ヴァン! フォーニス星系へのジャンプコースを設定してくれ」
「ジャンプコース、設定しました」
ヴァンが答えると、マックスは画面に表示されている数値をチェックした。
「ジャンプドライブ起動せよ」
「ジャンプドライブ起動しました」
「よし、ジャンプスイッチ・オン」
「ジャンプスイッチ、入れました」
一瞬、空間が歪んだような感触がした。ジャンプ特有の現象だ。マックスは今までの経験でジャンプ突入が成功したことが分かった。
ブリッジの展望窓から見えていた星が後ろに直線を引きながら流れたと思うと、一面がオレンジ色の空間に変った。
「ハイパー・スペースに突入しました」
「亜空間変動値、0.87、、0.94、、1.00、……安定しました」
ブリッジに漂っていた緊張した空気が消えた。
初めてのジャンプが成功した。ハイパースペースの航行期間は7日間だ。ハイパー・スペースを航行している間はブリッジに待機する必要はない。
軍艦の場合、規定上、ブリッジ要員が必ず1名以上待機する必要があるが、商船はブリッジに誰も待機しないのが普通だ。特にミネルバ号の場合、何か異常があればミネルバがすぐに報告する。
「よし、初めてのジャンプは無事終了だ。皆。ご苦労さん。
しかし、今のままでは緊急事態に対応することは難しい。海賊に襲われたらひとたまりも無いだろう。ヴァンに訓練スケジュールを作成して貰った。かなりハードなスケジュールだとは思うが、がんばってくれ。俺はルイスの記憶装置を調べる。明日にはデータを取り出せると思う……。
何か質問は?」
マックスは皆を見回した。
「それでは、解散!」
マックスの号令で皆は席を立つとブリッジから退出した。
翌日。朝のシミュレーション訓練が終わってからマックスはルイスを船長室に呼んだ。
マックスが船長室の応接間で待っているとドアがノックされた。
「入れ」
マックスが声を掛けるとルイスが部屋に入ってきた。
「船長。何の用ですか?」
部屋に入ったルイスがマックスに聞いた。
「まず、そこに座ってくれ」
マックスは反対側のソファーを指差した。ルイスは言われた通りにソファに腰掛けた。
「預かった記憶装置からデータを取り出すことができた。記憶キューブにコピーしたから、記憶装置とキューブを渡そうと思って来て貰った」
マックスは銀色の円筒とキューブをルイスに差し出した。
ルイスは差し出された記憶装置とキューブを受け取り、記憶装置を胸にキューブをポケットにしまった。
「記憶装置の方はアスラン人の古い記憶装置だった。大体、1000年ぐらい昔だ。考古学的には新しすぎて価値はない。入っていたデータが問題とは思うがデータはまだ見ていない。データを取り出せば円筒は必要ないから返しておこうと思って来てもらった」
「そうか、船長。改めて、礼を言う。ありがとう」
ルイスは、頭を下げた。
「礼はまだ早いよ」
マックスは答えた。
「さて、データはキューブに入れたから、誰でもデータを見ることができる。どのようなデータなのかは解析しないと分からない。
一応、念のために断っておこうと思うが、どうする? このまま調査を続けるか? それともデータは自分で調べるか?
俺に見られるのがいやなら、取り出したデータはちゃんと消去するから、どうするか言ってくれ」
「勿論、このまま調べてくれ。船長に任せる」
ルイスは即答した。
「分かった。信頼して貰えたと言うことだな」
「あぁ、船長を信頼するよ。この記憶装置は古代遺跡への手がかりだと聞いてる。どうしても古代遺跡を見つけたい」
「何か、事情があるのか? もちろん、言いたくなければ言わなくてもいい」
「事情と言うほどじゃない。この記憶装置は親友の形見だ。親友が死ぬ時に俺の代わりに古代遺跡を見つけてくれと頼まれた。古代遺跡を見つけることが親友の夢だったんだ。俺は親友が死ぬ時に古代遺跡を見つけることを誓った」
ルイスは思いつめた様子で言った。
「そうか。分かった。俺も全力を尽くして協力する」
マックスは立ち上がって右手をルイスに差し出した。
ルイスは差し出された右手をしばらく見つめていたが、すぐに立ち上がって右手で握った。
「それじゃ、調査を続けるよ」
手を離してマックスは言った。
「よろしく頼む」
ルイスは答えると船長室から出て行った。
記憶装置から取り出したデータの解析は意外に早く終了した。
簡単なメッセージと3次元図表と平面写真だ。3次元図表は星系を示す座標であることがすぐに分かった。平面写真は惑星表面の地図だった。古代遺跡の場所を示していることは明らかだ。
マックスは夕食後に再びルイスを船長室に呼び出し、ミネルバ号の乗組員に協力して貰うことで合意した。
宇宙軍の部下3名の治療が終了する予定時間に、マックスはヴァンと一緒に医療室に向かった。
医療室には医療カプセルが6人分、一列に設置されている。その内の3人分の医療カプセルがカーテンで閉じられて中がみえないようになっている。
マックスは医療室に入ると、3人を仕切っているカーテンを全開にして、3人の医療データを確認した。
体温、脈拍など、殆どの数値は正常値を示している。
昨日までは体温39.8、脈拍数92だった。ミネルバによると順調らしいが、マックスには苦しそうに顔が歪んでいるように見えた。しかし、昨日までの様子が嘘のように、今朝は落ち着いた表情をしている。
「ミネルバ。順調か?」
マックスの医学知識によれば、ウィルスの安定化、遺伝子パターンの安定化、ヒュノプ処置の除去は順調に終わっている。ミネルバに確認しなくても分かりきっている事実だ。
「はい。船長。治療は無事に終わっています。覚醒プロセスを実行しますか?」
ミネルバがマックスに聞いた。
3人は診察服を着せられて、医療カプセルの中に寝かされている。
「よし、始めてくれ。」
マックスはミネルバに命令した。
医療カプセルの扉が開き、両サイドに引っ込むと患者が寝ているベッドが上に上がってきて、普通の医療ベッドの形に変形した。
最初、何の動きも無かったが、暫く、じっと待っていると、エドワード・ランカスター中佐が目を開いた。暫く、目は焦点を結ばなかったが、やがて、マックスを見た。
「エドワード。大丈夫か?」
マックスは声をかけた。
「はい。船長」
エドワードは答えると上体を起こしてベッドの上に座った。まだ、ぼんやりとしているようだ。
「あぁ、そのまま落ち着くまで座ってろ」
マックスはエドワードに言うと隣のリックの様子を見た。
すぐにリックとリズも目を開けた。2人とも上体を起こしてベッドに座った。
エドワードは、はっきりと目覚めた様子でマックスの様子を見ていたが、マックスはリックとリズが落ち着くのを待った。ヴァンはマックスの後ろで黙って控えている。
「船長。私はどうしたんでしょうか?」
エドワードがマックスに聞いた。リックとアキラは黙ってマックスの様子を見ている。2人とも落ち着いたようだ。
マックスは3人を一度に見える位置まで下がった。
「大分、落ち着いたようだな、これから説明するから聞いてくれ」
マックスは3人を見ながら話し始めた。
「診察した結果、お前達が非常に危険な状態であることが分かった。例の8年前に受けた処置が原因だ。投与されたウィルスが非常に不安定な状態だった。今まで生き延びたのは非常に幸運だったと思う」
「船長。前と比べて体の調子が変わったように思いますが、治療が上手くいったのですか?」
リックが聞いた。
「あぁ、リック、その通りだ、知能も相当アップしたはずだ」
マックスが答えた。
「筋肉バカが治ったと言う事ですね」
リズが冗談を言った。ヴァンが後ろで噴出した。
「その通りだ」
マックスも笑いながら答えた。
「お前達には申し訳ないが、ウィルスの影響は不可逆だった。ウィルスを消去することができなかったため、逆にウィルス構造を調整して完成させた」
「船長。なんだか、若返ったように調子が良いです。これがウィルスの影響ですか? それなら大歓迎ですよ」
リックが答えた。リズも頷いている。実際に3人とも5,6歳ほど若返ったように見える。
「そうか、確かに個人差はあるが、知能が2倍、身体能力は3、4倍ぐらいになったはずだ。回復力は数倍、老化も抑えられている。寿命が何年になったかは分からんが、相当、長生きできる。しかし、俺と同調させたため、俺に対する忠誠心が植え込まれた」
マックスは正直に説明した。
「ずっと船長に着いて行くつもりでしたら問題ありません」
エドワードが言うと他の2人も頷いている。
マックスは複雑な心境だった。そもそも、ウィルスの影響で3人はマックスに着いて来ようとしたからだ。しかし、そのことには触れないことにした。
「そうか、改めて礼を言う、ありがとう」
マックスは頭を下げた。
「さて、治療している間にミネルバ号の知識を頭脳に直接学習させた。今ならミネルバ号のことが分かっていると思うが、俺とヴァン、執事のロバートとシオンは大丈夫だが、俺達以外には、絶対に秘密だ。他の乗組員に情報が漏れないように気をつけてくれ」
マックスは命令した。
「アイアイ・サー」
3人が同時に返事をした。
「さて、今の状況を説明する。実は、あれから3日が過ぎている」
マックスが説明すると、3人とも、きょとんとした表情をしている。
「現在、ミネルバ号はフォーニス星系に向かってハイパースペースを航行中だ。
何か質問はあるか?」
マックスが聞いたが、誰も質問をしなかった。
「それじゃ、当分は休養してくれ、まずは体に慣れること、毎日1時間ぐらい瞑想することを勧める」
マックスが言うと3人が頷いた。
「それじゃ、ヴァン、みんなの世話を頼むよ」
マックスはヴァンに言った。
「はい、船長。」
「それじゃ、3人とも部屋に戻って、着替えてくれ、いつまでも診察服のままだとかぜを引くぞ」
マックスが言うと3人は笑いながらベッドから降りて自分の部屋に戻って行った。
翌日、午前のシュミレーション訓練が1時間程早めに切り上げられて、ミネルバ号の乗組員全員が作戦会議室に集まった。
マックスは、集まった全員を眺めた。
皆は集合した理由を分かっているのか、期待に輝いた顔をしてマックスを見ている。
「さて、全員そろったな」
マックスは立ち上がって話しを始めた。
「集まってもらった理由は、もう分かっていると思うが、一応説明する。
ルイスが持っていた記憶装置からデータを取り出し解析が終わった。分析結果が出たので、これから発表する」
ルーカスが真っ先に拍手し、続いて皆が拍手した。マックスは手を上げて静になるのを待った。
「さて、分析結果を発表する。
入っていた情報はテキスト情報、二次元の情報と三次元の情報だった。
つまり、メッセージと惑星地図、宇宙地図だ。アスランのある科学者が古代種族の手がかりを見つけて、その情報を円筒に記録したと言っている。これが翻訳したメッセージだ」
マックスはスクリーンに翻訳したメッセージを表示した。マックスが説明した通りの内容だ。
「そして、手がかりとなるメッセージがこれだ」
マックスは、次のメッセージを表示した。
『遥かなる偉大な種族が残したる聖戦士、聖なる棺に至る道。
その道へ通じる道は、聖なる山の中にある。
しかし、聖なる山は、神聖なる神々の住居、
侵略する者には、ことごとく、神罰がくだろうだろう。
けっして、聖なる山に足を踏み入れてはならぬ』
マックスは次に惑星地図を映し出した。
「中央にある丸のしるしが聖なる山を示していると考えられる。まぁ、どこかの惑星の航空写真だな。写真の脇に数字が書かれている。これは緯度と経度だと思う。どの惑星か分かればこの位置はすぐに特定できると思う。」
次に3次元スクリーンに宇宙図を表示した。
「さて、こちらが問題の宇宙図だ。この印が問題の星系を示していると思われる。
そして、この星系がどこになるのか検索したみた。
これが一番時間がかかたが、問題となる星系はバイレット星系だ。
勿論、間違っている可能性はある。古い形式のデータだったので精度が少し低い。
このアリシア星域でないかもしれない。しかし、バイレット星系に行って確認すれば分かるはずだ」
「船長」
ルーカスが手を上げた。マックスはルーカスに頷いた。
「それじゃ、次の目的地はバイレット星系と言うことですか?」
「そうだ、フォーニス星系の次にバイレット星系に行く。皆で古代遺跡を見つけに行こうと思う。
ただし、この情報の持ち主は皆が知ってる通り、ルイスだ。
ルイスと相談した結果。ミネルバ号の乗組員で古代遺跡を捜し、見つけた物は山分けで良いとルイスが言ってくれた。 まぁ、必ずしも、お宝が見つかるとは限らない。有用な情報かもしれない。
もし、知識とかの情報なら、皆で共有することになる。勿論、強制はしない。嫌なら断ればいい。しかし、嫌だと言う者は、一人もいないだろう。
念のために、確認するが、嫌だと言う者。手を上げてくれ」
マックスは、誰かが手を上げるのを待った。
「誰もいないな。もし気が変ったなら、後で相談に来てくれ。
分かっているとは思うが、念のために言っておく、古代遺跡についてはミネルバ号の乗組員以外は誰にも話さないようしてくれ、ミネルバ号の外で話題にしなようにしてくれ、仲間同士の会話も禁止だ」
皆。黙って頷いた。
「よし、それじゃ、解散!」
マックスが宣言すると、皆、わいわいと言いながら作戦室から出て行った。
午後のシュミレーション訓練で、皆は集中力に欠けていたが、ヴァンの一喝で、何とか正常に戻ることが出来た。
ハイパー・スペースの航行中、ヴァンにより軍人並みのかなりハードな訓練が実施されたが、意外なことにルイスとテレサは文句も言わずに黙って従った。どちらかと言うとルーカスが一番、愚痴を言ったが、ヴァンの命令にはちゃんと従った。