4話
「船長。夕食の準備が出来ました」
「分かった。ありがとう」
ミネルバの声を聞いて、ゆっくりと目を開いたマックスはミネルバに答えた。
ふと、疑問に思ったマックスは声を出さずにミネルバに呼びかけた。
『ミネルバ』
『はい。船長』
予想していたのだが、実際にミネルバの応答が聞こえたのでマックスは吃驚した。
音声ではなく頭の中に直接声が響いたように思えた。
『テレパシー能力があるのか?』
『一般的なテレパシー能力とは異なります。船長は私のマスターと認識しましたのでシンクロプログラムを実行しました。
船長の魂と精神が同調された結果、距離に関係なく何時でもコミュニケーションが図れますが、残念ながら完全に同調した訳ではありませんので能力が制限されています。距離の限界は1パーセク以内です。
船長の自我が覚醒すれば、私との同調はもっと進化します。
船長の生体バランスが歪んでいましたのでバランスの調整をしておきました。その結果、精神領域次元でのコミュニケーションが可能になったのではないかと思われます』
『良く分からない、説明してくれ』
『現在、船長は殆ど覚醒していない状態です。このため、詳細に説明しても理解できないでしょう。
時間が経てば能力が少しずつ拡大していき、自然と理解できるようになりますので、気長に待ってください』
『そうか、……納得できないが仕方が無い。ところで、ヴァンの方はどうなんだ? 俺と同じように同調してるのか? ヴァンは何処まで知ってるんだ?』
『私と同調しているのは船長だけです。ヴァンにはミネルバ号に関する情報を全て伝えてありますが、技術的な知識は制限しています。
ヴァンにはどんなことでも話して大丈夫でしょう。船長を裏切るようなことは絶対にありません。
そろそろ、談話室に向かうことをお勧めします。ヴァンは談話室で船長が来るのを待ってます』
『そうだな、分かった』
マックスはミネルバに上手に誤魔化されたように思ったが、ミネルバに対して思考を閉ざすと、ベッドから降りて談話室に向かった。
マックスが談話室に入ると、ヴァンがテーブルに座って待っていた。
「やぁ、お待たせ」
マックスがヴァンの反対側に座ると、すぐにシオンがワゴンに食事を載せて運んできた。そして、、食事をテーブルに並べると静かに厨房に戻った。
マックスとヴァンは待ち構えていたかのように同時に食べ始めた。
「船長。今後の予定はどのようになってますか?」
食後のコーヒーを飲んでいるマックスにヴァンが話しかけた。
「船の準備はどうだ?」
「必要な物資は多すぎるほど積まれてます。燃料を補給すればいつでも出発できる状態です」
ランカスター少佐達3人には、宇宙船を宇宙港に回航してから連絡をする約束になっている。宇宙軍を退役して3,4日は経っているはずだ。待ちくたびれていることだろう。
「そう言えば、あの3人に連絡をしないといけないな」
「そうですね。もう、退役手続きが終わって何日も待ち続けてますね。後で連絡しておきます」
商売に慣れた乗組員を雇えば準備が完了だ。
宇宙港の中心施設には管制塔と貿易センター、宇宙港管理事務局、星間経済局、船長協会がある。そして、宇宙船の乗客、乗組員相手のレストランやバー、食料やお土産などを売る店、観光案内会社の窓口に宿泊施設がある。
ドッキングしている宇宙船と宇宙港の間には、通信リンクが結ばれているので、宇宙船の端末から、積荷の売り買いなどの処理が可能だ。乗組員の募集も宇宙船から処置できる。
しかし、交渉する場合は端末で処理するよりも、直接、出向いた方が良い結果が得られる。
母は商売は足で稼ぐものだと言っていた。
「それじゃ、連絡を頼むよ。明日、船長協会に行って商売に慣れた乗組員を募集するよ。それから、貿易センターを少し見学してみる」
「分かりました。私も一緒に行ってよいですか?」
「もちろん。明日の朝食後に一緒に行こう」
「ありがとうございます。船長」
「俺は部屋に戻って、瞑想してから寝るよ」
「船長。瞑想ばかりしてますが、調子が悪いのですか?」
ヴァンは、余り感情を表に出さないが、マックスは長年の付き合いで、ヴァンが心配していること分かる。
「特に調子が悪いわけじゃないけど、落ち着かない感じがするんだ。何となく、心と体がしっくり来ないと言う感じだ」
「そうですか。学習プログラムの影響でしょうか? 私は以前よりも体の調子が良くなりました」
「あぁ、それは俺も同じだ、前よりも体が軽くなって若返ったような感じだし、頭もすっきりしてる。しかし、心と体が一致していないと言う感じだ。
体の変化に慣れていないだけだ。そのうち慣れると思う」
「そうですか、分かりました」
ヴァンは答えた。とりあえず納得したようだ。
マックスはヴァンに頷くと、席を立って船長室に向かった。
マックスは目覚めるとベッドから起き上がり、簡単にシャワーを浴びて談話室に向かった。
談話室にはシオンが待機していた。
「おはようございます。ご主人様」
黒と白のメイド服を着たシオンがお辞儀をした。
「あぁ、おはよう。シオン。コーヒーと朝食を頼む」
マックスはシオンに挨拶をして近くのテーブルに座った。シオンはすぐにコーヒーをお盆に載せて運んできた。
シオンがマックスにコーヒーを渡しているとヴァンが談話室に入ってきた。
「船長。おはようございます」
「おはよう。ヴァン。」
ヴァンはマックスの反対側に席についた。
「船長。3人に連絡を取りました。明日、乗船するそうです」
「そうか、ありがとう。」とマックスはヴァンに礼を言った。
「ただ、二日前にやっと許可が出たそうで、退役を申請しても最初は許可が出なかったそうです。船長に付いて行くことを話したら、やっと許可が貰えたと言ってました。どういうことでしょうか?」 ヴァンが不思議そうな顔でマックスに聞いた。
「さぁ、何だろう。何か問題でも起きたのかな?」
マックスも首を傾げて答えた。どんな問題が起きたのか見当もつかない。
マックスが考えているとシオンが2人分の朝食を運んできた。
トーストにベーコンとスクランブルエッグだ。
「後で、詳しく聞いてみるよ。冷めない内に食べよう」
マックスは答えると朝食を食べ始めた。ヴァンも無言で食べ始めた。
マックスは食べ終えるとヴァンが食べ終わるのを待って、コーヒーを飲み干した。
「ヴァン、着替えたら船の出口で集合だ」
マックスは立ち上がってヴァンに言った。
「了解しました。船長」
ヴァンも椅子から立ち上がって答えた。
マックスは部屋に戻ると外出用の服装に着替え、船長協会の登録カードなど準備して出口に向かった。船外気密室に着くとヴァンが待っていた。
一緒に船外気密室を出てドッキングチューブを通ってポートに出た。
宇宙港の中央施設までかなりの距離がある。マックスはポート内移動用のカートを呼び出して、宇宙港の中央施設に向かった。
貿易センターは中央施設のレベル2にある。
貿易センターの中は広いロビーになっており、ロビー中央の頭上に置かれた電光表示板には貿易品の価格が表示されている。
電光表示版が見える位置に長椅子が数列置かれており、そこには、中年の男女が携帯端末を広げて座り、熱心に電光表示版を見つめている。
ロビーの周りは端末ボックスが並んでおり、半分近くが使用中になっていた。
ここに船長協会の窓口がある。マックスは船長協会の窓口を見つけてヴァンと一緒に向かった。
「こんにちは。御用は何でしょうか?」
マックス達が窓口に近づくと、中で待機していた女性がにこやかに挨拶した。
「宇宙船の乗組員を雇いたいんだけど、紹介して貰えないかな?」
「船長協会の登録メンバーしか乗組員の紹介は出来ません。会員証をお持ちですか?」
「あぁ、ここにある」
マックスはポケットから船長協会の会員証カードを取り出して女性職員に渡した。女性職員は端末に会員証を読み込ませて情報を表示させた。
「マックス・トウゴウ様ですね。了解しました。希望者のリストをお渡しできます。記録キューブはお持ちですか?」
女性職員は会員証をマックスに返しながら答えた。
「あぁ、持ってるよ。ちょっと待って」
マックスは会員証をポケットにしまい、違うポケットからキューブを取り出して女性職員に渡した。
女性職員はマックスからキューブを受け取り、端末にセットしてから端末を操作した。
「データをロードしました。最寄の端末を使って内容を確認してください。雇いたい希望者が決まりましたら、希望者のIDを教えてください。こちらで面接の手はずをします」
受付嬢は端末からキューブを取り出してマックスに差し出した。
「ありがとう。」
マックスはキューブを受け取りながら答えた。
空いている端末ボックスを捜してヴァンと一緒に中に入り、データを画面に表示してみた。
乗船希望者のリストは約800名分あった。顔写真と公式な資格、簡単な履歴書が表示される。
「どんな乗員を雇うのか、考えはありますか?」
一緒にデータを見ているヴァンがマックスに聞いた。
「そうだな。管理とブローカーの資格があって、運輸会社か商船で働いた実績のある奴がいいかもしれないね」
「分かりました」
マックスとヴァンは黙ってデータを確認した。
管理とプローカーの資格を持っている者は、殆どが年も取っている。さらに年齢を30歳まで、学歴を大学以上で絞ってみると、3名しか残らなかった。
その中の一人は宇宙開発局出身だ。開発局でブローカーの資格を得るのは珍しい。
名前はルーカス・フォレスター。パイロット、管理、ブローカーの公式資格があり開発局の通信部に所属していたらしい。
マックスはこの3人と面接してみようと思った。
端末ボックスから出て船長協会の窓口に行ってみると、休憩中の札がかかっていた。トイレにでも行ったのかもしれない。
マックスとヴァンは取引所のベンチに座って電光掲示板を見ることにした。
周りのベンチで電光掲示板を熱心に見つめる人達は自由貿易船の船長達だと思われる。儲けを出すために必死の様子が伺える。
個人で所有する自由貿易船は200tクラスが一般的だ。しかも、大抵は480回払いのローンで購入される。必死になっている人達の大半は月々の支払いに追われながら宇宙船を運航しているのだろう。
「他星系の相場は二つの星系しか表示されていないね。二つの星系はここから1パーセクの距離だ」
マックスは電光掲示板を見ながらヴァンに話し掛けた。
「商船のジャンプ能力は1パーセクが標準なんでしょう」
ジャニアス星系は技術レベルが高く、ハイテク製品が安く手に入る。投機品の購入にもってこいの星系と言える。
「そうかもしれないね。相場の数値だけじゃ、いいのか悪いのか、全然、分からんなぁ。ヴァンは分かるか?」
「さぁ、私も全然分かりません。誰かに聞いてきましょうか?」
いつものことだが、まわりの中年男性の何人かがヴァンをちらちらと見ている。ヴァンが聞けば親切に教えてくれそうだ。
「そうだな、それが、いいかもしれない」
「相場の見方が分からないのかい? 何なら、教えようか?」
先ほどからヴァンをちらちらと見ていた30ぐらいの男性がこちらに近づいてきて話しかけてきた。
マックスが一緒にいるので下心があるとは思えないが、マックスは警戒するように男を観察した。
隣で同じように、ヴァンが警戒の視線を送っている。
「あ、いや、怪しい者じゃない、二人の話が小耳に入ったもんだから、別に、騙そうと思ってる訳じゃないよ。
俺は元開発局に勤めてた。貿易が好きでね。ここで数値を見て、どれだけ利益が出るのかを考えるのが好きなんだ。何と言うか男のロマンを感じると言うのかな」
男は必死な様子で弁解した。
「開発局の仕事で星系間の移動がちょくちょくあってね。大抵は複座型偵察艦だから積める量は2tしかなかったけど、自腹で投機品を購入して、仕事の合間に売り買いをしてるんだ。
何倍もの値段で売れると嬉しくてね。何と言うか、『やった』と言う達成感があるんだ」
男の声は次第に熱を帯びてきた。悪い人間ではないようだ。
「実際、仕事とは関係ないけど、ブローカーの資格も取ったよ。まぁ、ちょっとした事件があって、開発局を辞めさせられたけどね。あはははは・・・・・・。」
少し、お調子者のようだ。まわりの人が何事かと言う顔してこちらを見ている。
「そちらに、座りませんか?」
マックスはヴァンの隣を指差して言った。
「あぁ、ありがとう」
男はヴァンの隣に座った。少し間を空けてある。そして、ヴァンの顔を、どちらかと言うと耳を見つめた。
「その耳は本物だよ。飾りでも移植したのでもない」
「どうも失礼しました。いや、ちょっと気になったもので」
男は少し顔を赤らめて謝った。
「あそこに、表示されている数値は高いのですか?」
ヴァンは気にした様子を見せずに質問した。
「そうですね。どちらかと言えば安い方かな。普段なら、もっと高い数値になるでしょう」
「そうなんですか、でも、あの数値は2倍になってますよ」
「確かに、ブロディなら約2倍ですね。相場は2から3倍ってとこです。ジャニアス星から1パーセクしか離れていないのでブロディとモーランの相場は、若干、安めになります。
それと、気をつけないといけないのは、宇宙船が到着するのは1週間後です。実際に行ったら、相場が激変していたと言うことはよくある話です。
それに、ブロディは市場の規模が小さいですから、せっかく持って行っても買い手が付かないことが有り得ます」
「そうですか」
「ジャニアスの製品はご存知のとおり、技術レベルが非常に高いですから、本当はどこの星系に持って行っても高く売れる訳です」
「確かに」
今度はマックスが相槌を入れた。
「基本的に仕入れ元の星系と売り先の星系の技術レベルと人口に依存してるんですよ。
つまり、ジャニアス星系のように技術レベルが高い星系ではハイテクノロジーの製品が安く買えます。そして、技術レベルが低くて人口の多い星系へ持って行けば高く売れるわけなんです」
マックスとヴァンは男の話に引きこまれたかのように真剣な顔で聞いている。
「あの数値は宇宙服の数値ですね。ジャニアスの宇宙服はとても優れた製品と言えます。ブロディの技術レベルでは絶対に作れない訳です。
だから、ジャニアスの宇宙服なら高い金を出してでも手に入れたいと言う訳です。そして、人口が多いと言うことは、それだけ、手に入れたいと思う人も多くなる訳です」
「しかし、ブロディはジャニアスから1パーセクしか離れていないので、ジャニアスの製品が他の星系と比べると手に入りやすくなります。
それで、そんなに高いお金を出さなくても、もっと、安く売ってくれる商人がいると言う事になるんです」
「なるほど、つまり、ジャニアスからもっと遠くて技術レベルもブロディぐらい低いところなら、もっと高く売れると言うことですか?」
「まさに、その通りです。今度は逆を考えて見ましょう。
ブロディで作成された製品、例えば、宇宙服は作れないけど、そうですね、トラクターならあるかもしれません。それをジャニアスに持ってきてもまったく売れないことになります。
ここでは、もっと高性能でもっと安い製品があるからです。
ですから、ブロディからジャニアスに運ぶ時は農作物や織物とか運ぶんですよ。これでしたら、ブロディで安く買えてジャニアスでは、それなりに高く売れますからね。
特にブロディの織物は人気がありますから、購入するなら織物にすべきですね。
安く仕入れて高く売るのが商売の基本です。その星系の特産物を購入するのがコツですね。
行き先を自由に決められるなら、それなりに儲けがでる航路が幾つかあります。まぁ、それが、商船の定期航路になる訳ですが、大抵は行き先は自由にならんもんです。私はそうでした」
「そうなんですか」
「何せ、本業は開発局の仕事ですからね」
男が答えた。
「ところで、商船見習いの方ですか? 使いの途中とか?」
「実は、私は船長なんです。相場の様子を見に来たんですよ」
マックスが正直に答えた。
「へぇ、船長さんでしたか、これはお見それしました」
男が驚いて答えた。
「私の両親が船を用意してくれたので、これから、商売を始めようとしてたところです。よかったら、商売のイロハを少し教えてもらえないですか、昼食をおごりますよ」
「えぇ、いいですよ。どうせ、暇ですから」
「私は、マックス・トウゴウ。こちらがヴァネウス・オリンピア」
マックスが自己紹介をした。
「私は、ルーカス・フォレスターです。よろしく。」
ルーカスは自己紹介をすると立ち上がって右手を差し出した。
マックスとヴァンも立ち上がって順に握手をした。
ルーカスと言う名前は、先程、3人に絞った候補者の中にあった。
名前はルーカス・フォレスター。30歳だった。しかも、開発局出身だ。
本人であることは、間違いないだろう。マックスは、もっと、話を聞いて人柄も悪くなければ、雇ってもいいと思った。
ルーカスがレベル1に手ごろな店を知っていると言うので、その店に行くことにした。
ルーカスは繁華街に二人を案内した。
飲食店、バー、商店が建ち並ぶ繁華街を15分ほど歩いたところで、食べ物と飲み物を安く提供することで有名なチェーン店の前で止まった。
「この店ですが、いいですか?」
ルーカスがヴァンに聞いた。ヴァンは、意見を求めるようにマックスの方に向いた。マックスは軽く頷いて見せた。
「えぇ、いいですよ」
ヴァンはルーカスの方を向いて答えると、ルーカスが先に店の中に入った。
店内はかなり広い。昼食の時間であるためか、食事をしている客が多い。すぐに、店の制服を着た店員が近づいてきた。
「いらっしゃいませ。3名様ですか?」
「あぁ」
ルーカスが答えた。
「では、こちらにどうぞ」
給仕は入り口から少し離れている窓際の席へ案内した。
ルーカスの反対側にマックスとヴァンが並んで座った。
3人はビールとランチを注文した。ルーカスは約束通り30分ほど初歩的な説明をしてくれた。とても分かりやすい内容だった。
「ところで、フォレスターさん」
説明が終わって、一息入れたところでマックスが話しかけた。
「なんですか?」
「先ほど、乗組員の乗船希望者リストを貰ったのですが、その中にルーカス・フォレスターと言う名前がありました。あなたのことですか?」
「驚いたなぁ、その通りですよ。」
「私は400tの自由貿易船ミネルバ号の船長です」
「ほぅ。400トンですか、私は200トンの自由貿易船かと思ってました。あっ、これは、失礼。続けてください」
「私とヴァンは最近まで帝国宇宙軍にいましたが、両親が私のためにミネルバ号を用意してくれました。
乗客用個室が24部屋、積荷積載量が192tあります。
『黒猫運輸』と言う会社名で会社登録もしてあります。
船の行き先を決めるのは船長である私ですが、貿易の許可証がありますので、星間貿易をやって行きたいと思います。
貿易で得た利益は会社の資金として船の運営費にします。乗組員は全て会社の社員として給料を出します。
あなたをパイロット兼営業係として雇いたいと思います。給料は2600Cr。貿易で利益が多く出た時は一時金と言う形で分配します。
この条件でよければ、ミネルバ号の乗組員になってください」
「いやぁ、願ってもない条件です。こちらかお願いしますよ」
とルーカスが即答した。
「200tクラスの貿易船に乗れれば良いと思ってましたが、400tクラスの船で、しかも192tも積載量があるとは凄いです」
ルーカスは興奮して続けた。
「それでは、新しい仲間に対して乾杯しましょう」
ヴァンがビールジョッキを掲げて提案した。
マックスとルーカスもビールジョッキを掲げた。
「フォレスター殿の前途を祝して、乾杯!」
3人はビールジョッキを空にした。
マックスはすぐに給仕にお代わりの合図をした。
「ところで、宇宙軍のトウゴウさんと言いますと、あの、『グリフィン号』のトウゴウ大佐ですか?」
「えぇ、そうですよ。ご存知なんですか?」
「いやぁ、驚きました。開発局でも、トウゴウ大佐のことは、噂になっていますよ。それにしても、若いですね。何歳なんですか?」
「これでも、30歳になります」
「30ですか……20歳ぐらいにしか見えませんよ。私と同い年じゃないですか」
とルーカスは驚いた。
「あれっ、ひょっとして18歳の最年少で最多博士号を獲得したと言うあのトウゴウ博士ですか? 同じ年で随分と出来が違うなぁって思ってました。たしか、ご両親も有名でしたね」
とルーカスがさらに驚いて尋ねた。
「えぇ、その通りです。フォレスターさんもここの出身なんですか?」
マックスも驚きながら答えた。
「えぇ、ここの出身です。それと、私のことは、ルーカスと呼んでください」
とルーカスは答えた。
「分かりました。貿易に関することはルーカスに全て任せますから、自由に仕切ってください。と言っても部下はいませんけどね」
「分かりました。船長。安心して私に任せてください。自分の給料がかかってますから全力で儲けさせていただきます」
とルーカスが敬礼をしながら答えた。
マックスとヴァンはそれを見ながら大声で笑った。
「それじゃ、ミネルバ号に戻ろう。乗船の準備が出来たらミネルバ号に来てください。いつ頃になりますか?」
「そうですね、荷物の整理はすぐに終わりますから夕方には行けそうです」
「分かりました。ミネルバ号はV28ポートにドッキングしてます。荷物を持って乗船してください。夕食はミネルバ号で食べてください」
マックスとヴァンは、ルーカスに別れを告げると、マックスが支払いを済ませてミネルバ号に戻った。




