プロローグ
この物語は、高校一年の男女五人を中心とした、エゴとわがままの物語です。異能の力が出てきますが、それは随分先の方になっています。三章まで我慢してください。
※作中、私の技量不足もあり、少し理解が難しいと思われる部分が、主に三章以降あります。ご了承ください。
女の子が一人倒れていた。その娘は血まみれだった。うつぶせで、顔は右側(俺のほう)を向いており、左手は右のわき腹あたりを押さえている。目はきつく閉じられていた。小学生だと思われる小さな体は微妙に震えている。元は白だったと思われるシャツは真っ赤。ポニーテールの黒髪も血まみれ。息遣いは小刻みで荒い。大丈夫かと聞くのも無意味なことだと思わせるほど苦しそうである。
正直怖い。バイト帰りの夜道で血まみれの人間が倒れてハアハア苦しそうに息してたら、心配より恐怖が先に来るだろう。それでも、これをほっとくほど俺は冷たい人間ではないぞと気を奮い立たせ、とりあえずきっかけとして、無意味な質問から入る。
「大丈夫か。」
……返事はない。しゃがんで口に耳をかぶせてみたが、息をするのがやっとのようだ。代わりにさっきまで閉じられていた瞼の片方が開き、鋭い眼光をもらった。とにかく救急車だなと常識を働かせ、おととい買ったばかりのケータイを取り出した。が、ボタンを押そうとした瞬間、さっきまで健在だったはずの俺のケータイはいつの間にか半分になり、俺の手の平の上で分解した。
「は? れ?」
いやいや、いくら俺がケータイ初心者だからって、ケータイがいきなり半分になるわけないだろう。つーかこれはいわゆる鋭利な刃物で切られたっていうキレイな切り口だし。説明書に分解機能は書いてなかったよな。なら、これは壊れた、と見て間違いない。
「……いやいやいやありえんありえん! なぜに分かれた俺のケータイ!」
いや待て冷静になれ俺。とにかくケータイはおいといて、119が先だろう。周りに人は見当たらないし、あの民家に駆け込むしかないな。
「ちょっと待ってろ。」
俺は立ち上がり、小走りですぐそこの民家に向かおうとした。が、何かに足をとられ、こけそうになった。振り返ると、女の子の細い右腕が俺の右足を掴んでいた。
「不要です。」
か細く聞きとりづらい声だったが、確かにそう言った。
これが、三月二十三日の出来事。中三と高一の間の春休み。




