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テンカン キ

ダンが騎士団の詰所に来るのを夜通し待っていたブリッジはダンを詰所の入り口で捕まえると王宮の魔法使いに会わせてくれと懇願した。


ブリッジ「俺が魔法剣を使えなくなった理由がわかるかも知れないんだ!」


ダンと共に出勤して、隣で2人のやり取りを見ていたアレスが口を開いた。


アレス「そういうことなら、俺からも頼むよ、ダン。」


ダン「分かったよ、けど、今日は授業が無いから……」


どこにいるのか、多分、いつもの勉強室か?図書館か?

ダンは極端に人付き合いを嫌がっていた。あまりいい思い出がない。人にモノを尋ねるのをためらっている。

そんな思いが顔ににじみ出ていた。


アレス「俺も王宮に呼ばれてるから途中までなら一緒についてってやるぞ?」


アレスはそんなダンに過去の自分を重ねているところがあった。一般人と違う魔法剣使いとはそういうものなのかもしれない。




一行は王宮を訪れると、手分けして図書館と魔法の勉強に使っていた教室を探した。


ブリッジ「いたか?」


ダン「いいや?教室には居なかった。」


図書館にいたブリッジのところにダンが合流する。


ブリッジ「ここも居なさそうだ。魔法使いの爺さんは普段どこにいるんだろう?」


2人は腕を組んで唸った。そこへ近衛兵に話を聞きに行っていたアレスも合流した。


アレス「魔法使いの爺さんはさっき、西の塔に向かったってさ。」


西の塔?


ブリッジ「そこ?物見の詰め所くらいしかないけど?」


アレス「とにかく行ってみよう。」


西の塔のらせん状の階段を登り、物見の詰め所に着いた一行の前に調度、魔法使いの爺さんが扉から出てきた。


魔法使い「ふぅ。」


ダン「あ、いたいた!」


魔法使いの爺さんは3人の姿に度肝を抜かれたようにびっくりした。


魔法使い「ワシは、な、何もしとらんぞ!?」


3人はきょとんとした。察したアレスはブリッジに耳打ちする。


アレス『なぁ、ここって……』


ブリッジ『見れますね、王宮の女風呂が。』


ご老人の性癖なんて、興味もない。それよりも。


アレス「魔法に関する質問いいですか?」


魔法使い「お、おう……どうぞ?」


ブリッジ「俺が魔法剣を使えなくなった理由が知りたいんです!」


魔法使いは、ほお?っと片眉を上げた。


魔法使い「お前さんの魔女の血は遠い。そして、人間と魔女は寿命が違う。」


アレス「と言うと?」


魔法使いは咳払いし階段を降り始めた。それに一行も続いた。偏屈でマイペースな魔女が入った者同士なので、その魔法使いの行動は3人にはさほど気にならなかった。


魔法使い「人間の成長に魔女の成長がついてこれてないんじゃろう、たぶん一過性なものじゃろうて。」


もう一度、魔法剣が使えるようになるかもしれない!


ブリッジは長年の苦悩してきた疑問が晴れて、顔が明るくなった。ブリッジはダンに向き直るとその手を両手でつかんだ。


ブリッジ「ありがとうよ!ダンのおかげだ!」


ダンはそこまで喜ばれるとは思ってなかったので面食らった。




昼過ぎの宿屋、アッシュはデリヘルの予約で呼ばれてきた嬢に、


アッシュ「……チェンジで。」


といって、次の嬢が来るのをベッドに腰かけて待っていた。


アッシュ「いてててて。」


平手打ちされて赤くなった左の頬をさする。


コンコン。


アッシュ『あれ?早くないか?』


どちら様?と、聞く前に顔を目深にかぶった帽子で隠した男が扉から静かに入ってきた。


アッシュ「!」


身のこなしからして、同業者だ。脱いでいた上着に手を伸ばす。瞬間、上着と手の間の床に小刀が突き刺さる。


暗殺者「おっと、うごくなよ。自慢の入れ墨が駄目になるぞ?アッシュ。」


居場所も名前もバレてる!?


アッシュ『紋章魔法のことまで?!』


アッシュの脳裏に自分が長年、用心棒をしていた商人の顔が浮かぶ。


アッシュ「あの野郎、俺を売りやがったな?!」


暗殺者「まぁまぁ、そうカッカしなさんな。とある国のとある大臣様からお前に仕事の依頼さ。」


アッシュは暗殺者の帽子からちらりと見えた鋭い目線に冷や汗をかいた。とりあえず、アッシュは暗殺者に向き直り、ベッドに座り直した。


アッシュ「……へぇ、用件を聞こうじゃないの?」


暗殺者「お前の追ってる星を今日中にやれとよ。しかも、無給で、だとさ。泣ける話だねぇ。」


暗殺者は肩をすくめていったが、その動作に銃を抜く余地はなさそうだ。帽子から見える口元だけがアッシュのいくすえを想像したかのように笑って歪む。


アッシュ『暗器か。』「命があるだけ、ありがたく思えってか?」


暗殺者の上げたうでの服が少しだけ盛り上がっていた。


暗殺者「用件は伝えたぞ?同業者のよしみだ、忠告しといてやる。成功してもあんまり、長居しすぎるなよ?」


暗殺者の男は静かに扉の向こうに消えた。歩く音はなく、気配だけが遠のいていった。


アッシュ「……No.1の娘と遊びたかったなぁ……」




夕暮れ

アレスは亡き妻の墓前に手を合わせていた。


アレス「ローザ。今日はいい報告があるのさ。ブリッジの奴、また、魔法剣が使えるようになるかもしれないんだ。」


ふーん、嬉しそうね?あなたのその顔


キラッ


アレスは向かいの丘の上がキラリと光った気がしたが、見間違いと思って妻とのおしゃべりを続けた。


アレス「そしたら、魔法剣使いが3人になる!騎士団も安泰だよ!」


そうなの?2人じゃなく?


???


アレスがその幻聴に疑問を持った瞬間、胸に熱い衝撃が走った。赤い激痛が噴き出す。


アレス「え?」


ほら、2人じゃない


ドサッ


アレスは前のめりで倒れた。ローザの墓の後ろが弾ける。




アッシュ『ちっ、次弾は間に合わなかったか!』


スコープから見る墓場に騎士風の若者と騎士見習いがアレスに駆け寄ってくるのが見えた。


アッシュ「つくづく、運のいいやつだぜ!」


素早く、ライフルを解体してケースにしまうアッシュの耳に聞き慣れない音が聞こえてきた。


ブブブブブブ!


ゾワッ!


身の危険を感じアッシュは咄嗟に丘から飛び降りた。


ゾフッ!


聞いたこともない音とともに、スナイパーライフルがケースも含め、丘のてっぺんごと消えて無くなった。


アッシュ『うっわ!なんだこりゃ!魔法剣か?!』


見たことも聞いたこともない魔法剣に恐れをなしたアッシュは不可視魔法インビジブルも忘れて、走ってその場を離れた。




ダンが持っていた剣が粉々に砕けた。


ダン「……」


ブリッジ「何やってんだ!飲み会は中止だ!アレス団長!しっかりしてください!」


胸から大量の血を流したアレスは気を失っていた。


ブリッジ「!まずいぞ!ダン!応急措置魔法は使えるか?!」


ダン「うん!」


ダンの魔法で血は止まったが、まだ危険な状態だ。アレスは失血による全身の震えとチアノーゼが始まっていた。


ダン「アレス!」


ブリッジ「こんな形で団長に昇進とか嫌ですよ!」


2人はアレスを抱えて近くの医者の診療所まで運んだ。

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