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御前試合[後編]

剣先と剣先を打ち鳴らして試合が始まった。


ダン『アレと魔法剣は使うなって言われてたよな……』


イシツブテを消し飛ばしたアレや、鎧ごとカカシを消し飛ばした魔法剣は禁止。

剣の実力だけでやらないといけない。片手剣の少年はラウンドシールドを前に突き出して、盾の陰に隠れて体を見えなくしている。明らかに自分より上級者だ。


旅人A「盾持ちは太刀筋が読みにくいんだよなぁ……」


何かを思い出すように旅人Aはぼそっと呟き、試合を観戦していた。

少年は飛びかかって袈裟斬りしてきた。ダンはソレに反応して中段から首元めがけて刺突を繰り出したが、盾に塞がれた。


ガッン!


木が打ち合う音が手に響く。


ダン「ッチ!」


少年の片手剣がダンの腕に振り下ろされるが、ダンは下がってやり過ごした。

その一幕に歓声がわく。


少年「やるじゃん。さすが騎士見習い。」


ダン「君も、どこでそのやり方教わったんだよ?」


少年「俺に勝ったら教えてやるよ。」


2人は構え直した。


ダン『守勢で待ってちゃ、相手の思うつぼかな?』


今度はダンが上段から切りかかった。


ガツッ!ガン!


それも盾に弾かれ、カウンターで体の正中をめがけて刺突が来る。


ダン『うわ、あぶないなぁ!』


ダンはたまらず距離を取った。攻めてもだめっぽかった。少年の実力は確かなものだった。固く守っている。


旅人B「今さっきの傭兵の戦いを思い出すな……」


その時、ダンに内なる声が、囁いてきた。


『……雲。コンメイの雲……触れる……』


ダン『?何のことだろう?』


少年「何をボーっとしている!もらったぁ!」


ガチン!


片手剣を剣で防ぐも少年のシールドバッシュでダンは弾き飛ばされた。


ダン「グッ!やるなぁ!」


ダンがよろめいた隙に少年は斬り込んでくるだろう。会場の皆がそう思っていた。


しかし、少年の様子がおかしい。頭を抱えて何やら、もがいている。


少年「……お前、な、にを……」(ドサッ)


ダンも会場も含めて、一体何が起こったのかわからず、少年が起きるのを待った。が、倒れたまま、ぐったりしている。さすがに会場全体がざわつき始め、控えていた救護班に少年は運び出された。


王の付き人「た、ただいまの試合の勝者は騎士見習いのダン!」


ドヨドヨ……


突っ立っていたダンは大人たちに下げられ、わけが分からずに試合は次に移っていった。




サヤ「ダンは、いったい何をやったのじゃ?!」


王族席で試合を観覧していたサヤ姫は興奮した様子で声を上げたが、それに答えられるものは居なかった。

サヤ姫の後ろに控えて座っていた、魔法使いの爺さんも首を傾げた。


魔法使い「……あれは、いや、しかし、あの子が?どこで覚えた?」


剣の確かな実力でダンを圧倒していた少年は急に体調を崩して倒れ、ダンの勝利。

答えは出ないまま、試合は進み、再びダンの番が回ってきた。




剣先と剣先を合わせ試合開始。

ダンは同じ型の相手に安堵した。さっきよりはマシに立ち回れると思っていた。

しかし、その少年は急にえづき始めると吐いてその場に崩れた。


魔法使い『間違いない!接触発動系の魔法剣だ!』「彼の出場はコレで最後に!」


魔法使いはサヤ姫に詰め寄った。


サヤ「う、うむ。そうじゃな。父上に掛け合おう。」


ダンは剣をカチッと合わせただけで死んだように動かなくなった相手をただただ、見下ろしていた。

会場も静まり返っていた。


ダン「……僕は何をしたんだ?」


王の付き人「対戦相手が体調不良のため、この試合は騎士見習いダンの不戦勝となります!」


ダンは大人たちに両脇を抱えられ控室に戻された。




控室には魔法使いの爺さんが待ち構えていてダンを外まで引っ張っていった。


ダン「なんだよー?僕はまだ負けてないじゃないか!」


魔法使い「お前さんではもう試合にならんのさ。」


闘技場の外、ダンは人の居ないところまで連れてこられると、魔法使いと向き合った。


魔法使い「ダンが使ってるのは魔法剣じゃ。お前さん、それは自覚しとるか?」


ダン「なにそれ?」


自覚がない。


その答えに魔法使いはため息をついた。


魔法使い「やっぱりか。ダン。内なる声を聞いたな?お前には魔女の血が混ざっている。」


ダン「……けど、うちの母さんは魔法なんて……」


魔法使い「とりあえず、お前は当分ウチで預かる。野放しにしていては、危なすぎる。」


ダンは自分の運命を呪った、普通に生活ができない。

普通がいい。そう思っても、そういくら願っても、その夢を得られないのだと知ったからだ。

会場からは再び歓声が上がっていた。




騎士見習いの少年が魔法剣を使う。その報告にジュリアスは耳を疑った。昼下がりでもあまり明るくない部屋にジュリアスとスパイ活動から戻った傭兵と旅人達が話し合っていた。


ジュリアス「それ以降、その少年は?」


旅人A「二度と会場には現れませんでした。」


旅人B「あそこの騎士はみんなこうなんですかね?」


旅人A「いやいや、そんなことはなかろう?」


話を壁にもたれて聞いていた傭兵も口を開いた。


傭兵「対峙した騎士達に魔法剣を使ってくるやつは居なかったぞ?」


ジュリアス「とりあえず、ごくろうさま。帰る時に、執事から、報酬はもらっていってくれ。」


寡黙な傭兵と二人であーでもないこーでもないと議論する旅人達は部屋をあとにした。


ジュリアス『なにはともあれ、大臣たちの対立構造にくさびを打ち込めば、あの国を削り取れるか?』


パンパン。


ジュリアスが手を叩くと執事が入ってきて、ジュリアスに深々とお辞儀をした。


ジュリアス「武器商と会いたい、アポイントメントを。」


執事「かしこまりました。」




村を焼きだされ、難民キャンプに独り身を寄せて、騎士団長に見いだされて剣の修行。ゆくゆくは騎士になって活躍する。そんな夢、サクセスストーリーを思い描いていたダンは王宮の一室で魔法使いの授業をボーッと聞いていた。


コツン!


ダン「あいた!」


額に魔法使いが投げたチョークがクリーンヒットする。それに逆に魔法使いは驚いた。


魔法使い「チョークが消えない?」


ダン「いてて……全部が、全部、消し飛ぶわけじゃないし……」


魔法使い「けどなぁ、大事だぞ?魔法の授業は。ちゃんと認識して、対処法を身に着けておかないと人間社会でワシらは生きていけないんじゃ。」


ダン「僕は普通が良かったよ。」


その様子をサヤ姫が興味津々で中をのぞいていた。

それに気がついた、魔法使いは手招きして姫をダンの隣に招いた。

ウキウキして、目を輝かせてサヤ姫は席についた。


ダン「君も魔法が使えるの?」


サヤ「いいや?じゃが、興味はあるぞ!(ブツブツ)」


最後のところは恥ずかしそうに小声になった。


ダン「ふーん?」


ダンは聞き取れず、隣で目を閉じ顔を赤くして、スましたフリをしている姫を不思議そうに眺めた。

そんな中、魔法使いの魔法の授業は進んだ。




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