九蹴 キャッスルあかばね
空久貴央
「家が、欲しい」
と貴央先生は切に願った。別に家を買って思う存分オナニーしまくりたいとか、そういう話ではない。幻野大地。そう、彼には家がない。言うなればホームレス状態なのだ。それゆえ、今は保健室で貴央先生と二人暮らしをしている。しかし、
「甲斐性、かあ」
そう、貴央先生は幻野くんに家を買って、甲斐性を見せてやりたいのだ。貴央先生の給料はそこまで多くもないが、しかし散財もしない上に保健室暮らしのため、毎月こつこつそこそこ貯めてきているのだ。それゆえ、アパートを借りるくらいならば出来るはずだ。
「ボロアパートで幻野くんと二人暮らし。悪くないな」
もうボロと決めているが、貴央先生はそこまで衣食住に拘るタイプでもないのだ。彼女の大部分は知識欲と性欲で占めている。
「ここが新しい我が家だ‼」
「おお」
幻野くんは貴央先生に招かれ、『キャッスルあかばね』と書かれたボロアパートへ来ていた。
「僕のためにわざわざありがとうございます、貴央先生」
「い、いや、私もさすがにいつまでも保健室暮らしは、うら若き乙女としてどうなんだ? と疑問符でキャッチボールする日々だったからな」
貴央先生は少しテンパり、少々意味不明な言動を口走る。まずい。幻野くんに引かれてしまう。しかし、幻野くんは涼し気な、そして嬉し気な表情で
「行きましょう、貴央先生」
と気乗りした様子で貴央先生を誘導する。意外な積極性だな、と貴央先生は少し彼を見直す。しかし、教師と生徒ゆえに節度は必要だ。と貴央先生はこの作品に似つかわしくない、非常に淑女的な思考を展開させる。
幻野大地