怪しい動き
真夜中──すべてが静寂に包まれたころ。
アリシアの枕元で静かに気配を消していた影の護衛、カインの感覚が鋭く反応した。
窓の外、微かな殺気。
一瞬で立ち上がったカインは、迷いなく窓を開け放ち、潜んでいた侵入者を捕らえ、手際よく縄でぐるぐる巻きにする。
すぐさま領主をそっと起こし、アリシアのそばを一時離れる許可を得ると、不審者を担ぎ上げ、夜の街を教会へと走った。
教会の奥、サミュエル神父のもとにたどり着いたカインは、不審者を地面に降ろす。
「アリシア様のもとへ侵入を試みた者です。念のため拘束魔法も施しています」
サミュエル神父は険しい顔で頷き、急ぎ追加の封印をかけた。
神父とカインは、不審者の顔をじっくりと見つめるが──すぐには身元がわからない。
「……組織の人間ではないな。だが、動きは素人ではなかった」
「はい。育成された間者の可能性が高いです」
カインは静かに応じた。
自らもかつては暗殺組織に属していた身、訓練を受けた者の匂いは敏感にわかる。
結局、牢に収容し、調査を進めることにする。
──翌朝。
カインは領主館へ戻り、アリシアたちに事の次第を報告した。
「侵入者は捕らえ、教会の牢に収容しました。アリシア様、ご安心ください」
アリシアはカインに向き直り、そっと微笑んだ。
「ありがとう、カイン。……あなたがいてくれて本当に良かった」
カインの胸に、温かいものが広がった。
あの日、安眠枕とお茶に救われた自分が、今こうしてアリシアを守っている。
それはただの仕事ではない。命を賭してでも守りたい、大切なものだった。
「俺は、アリシア様に救われました。だから、これからは命にかえても、お守りします」
カインは誓いのように言った。
その一方で、教会では捕らえた不審者の正体が明らかになりつつあった。
──領外の貴族家の間者。目的は「奇跡の少女」アリシアの確保。
その報告が領主一家にもたらされ、彼らはさらなる対策を講じることを決意する。




