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アリシアと小さな庭の奇跡  作者: ちょこだいふく


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蒸留酒

商業ギルドとの提携が決まってから、領内は急速に活気づいた。


まず、教会の公式な後押しも得て、広大な荒地にハーブ農園が作られることになった。

元々、岩が多く農耕に不向きと言われていた場所だったが、ハーブなら問題ない。

ラベンダー、ローズマリー、カミルレ、レモングラス、エキナセア…。

香り高い草花が広がる土地は、見る者の心すら癒す景色へと変わっていった。


「ここ、もともと誰も使ってなかった土地だよね。」

アリシアが感慨深そうに呟く。


細々と内職で生計を立てていた領民たちは、新しい仕事に大喜びだった。

農園だけではない。安眠枕やポプリを作るための工場も新たに建設され、縫製や香りの調合を得意とする人たちが次々と雇われた。

さらに、薬草からエキスを抽出するための蒸溜所まで設けられ、専門の技術者も雇われることとなった。


ある日、アリシアは蒸溜所を視察に訪れ、興味深げに蒸留釜を眺めていた。


「薬草の成分を濃縮する技術…これ、もしかして……!!」


アリシアの頭に、ふと前世の知識がよぎった。

薬草の抽出ではなく、アルコールを蒸留する——つまり、蒸留酒を作る技術へ応用できるかもしれない。


「お父さん、お兄ちゃん、みんな、ちょっと聞いて!」


急いで家族を集めたアリシアは、目を輝かせながら言った。


「蒸留って、実はお酒も作れるんだよ! ワインとか発酵酒はあるけど、もっとアルコール度数が高い“蒸留酒”っていうのができるの!」


家族たちは顔を見合わせた。


「アルコール度数が高いってのはつまりより強い酒ってことかい?そんなものが作れたら、冬でも体が温まりそうだな!」と父が腕を組んで感心し、

「旅人たちにも需要がありそうね!」と母も目を細めた。

兄も「今の領地なら、輸出品にもできるかも」と乗り気だった。


「でも、最初は少量で試してみよう。」

アリシアは慎重に付け加えた。

「強いお酒だから、正しく使わないと危ないかもしれないし。」


家族たちは頷き、試験的に蒸留酒を作る計画が始動することになった。

領内の新たな可能性に、誰もが胸を躍らせていた。


こうして、ハーブ農園、枕工場、蒸溜所、そして未来の蒸留酒開発へと——

アリシアの夢はまた一つ、大きな広がりを見せ始めたのだった。


そして新たに建てられた蒸溜所で、ついに蒸留酒の試作が始まった。


アリシアは前世の記憶を頼りに、ワインをもとに蒸留釜に火を入れる。

時間をかけてゆっくりと熱を加えると、透明な液体が一滴、また一滴と集められていった。


「…できた!」

慎重に集めた液体を小瓶に詰め、家族のもとへ運ぶ。おそらくワインを蒸留したのでブランデーかな?とにかく上手くいったと思う。


最初はおそるおそるだったが、父が一口含んだ瞬間、目を見開いた。


「これは…かなり強いが、旨い!」


母も少しだけ舐め、「体が一気に温まる感じがするわね」と笑顔を見せた。

兄も「寒い日の夜勤に最高だな!」と、頷いていた。


アリシアは家族の反応に安堵しつつ、続けて話した。


「それにね、これ、ただ飲むだけじゃないの。怪我をした時、これを直接かけると消毒になるんだよ。」


家族たちは一斉に目を丸くした。


「消毒……?」

父が不思議そうに眉をひそめる。


「そう。傷口の菌を殺して、化膿するのを防げるの。前世では戦場でも使われてたよ!」


説明を聞きながら、家族たちは次第に納得していった。

これまで傷口にはただ布を巻くか、薬草を貼るしかなかったこの世界では、消毒という概念そのものが新鮮だった。


「これは本当にすごいな……!」

父は感心しきりで、早速教会にも知らせようと提案した。


蒸留酒の可能性に胸を躍らせたアリシアは、さらに思いつく。


「そうだ、薬草をこの蒸留酒に漬け込んで、薬草酒を作ろう!」


母が目を輝かせた。


「香りも良くなるでしょうし、薬効も高まるかもしれないわね。」


アリシアたちは早速、ローズマリーやタイム、カミルレなど、体に良いとされる薬草を選び、瓶にたっぷり詰めた。

そこへ、透明な蒸留酒を静かに注ぎ込む。


「完成には時間がかかるけど、じっくり待とう。」

兄が瓶を手に取り、光に透かして眺めながら言った。


こうして、蒸留酒、そして薬草酒の開発が本格的に始まった。

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