商業ギルド長との握手
祭りの翌日、アリシアたちは恒例の家族会議を開いた。
テーブルには、簡単な地図とギルドからの招待状、試作品のメモが並んでいる。
「まず最優先は、アリシアの身の安全だ。」
父が真剣な面持ちで口を開くと、家族全員がうなずいた。
「それに、儲けよりも、領民のみんなの幸せを大事にしたい。」
「うん。無理な値上げは絶対にしたくないな。」
「既存の商売の邪魔にならないように……領民たちの仕事が増えるようにするのも大事だね。」
誰か一人が言い出すまでもなく、みんなの心は同じだった。
だからこそ、この領地は、領民たちに深く愛されているのだ。
アリシアは力強くまとめた。
「私たちの目指すのは、誰かだけが得をする世界じゃない。みんなで少しずつ幸せになれる道を作ること。その想いを、ちゃんと伝えよう!」
全員の顔に、決意の色が浮かんだ。
そして、ギルド本部。
重厚な扉を抜けると、そこには商業ギルドの幹部たちが並んで待っていた。
中心に立つのは、ギルド長のハーゲン。
白髪まじりの大柄な男性で、見るからに歴戦の商人といった風格だ。
アリシアたちは、丁寧に挨拶を交わし交渉の席に着いた。
まずはギルド側から、商品の評価と期待の言葉が続く。
そして、アリシアは家族を代表して、落ち着いた声で話し始めた。
「私たちは、ただ利益を求めているわけではありません。
この領地で暮らす人々が、少しでも暮らしやすくなること、笑顔が増えることを一番に考えています。」
「ですから、商品は出来る限り良心的な価格で。
そして、領民たちに新しい雇用機会を生み出せるようにしたい。
今ある商売や生活を脅かすのではなく、支え合う形を作りたいのです。」
場に、一瞬静かな緊張が走った。
だがすぐに、ハーゲンが笑みを浮かべた。
「……なるほど。これはただの商いではないな。」
ハーゲンは席を立ち、アリシアに手を差し出した。
「あなたたちの信念に、心から敬意を表する。
ぜひ、我ら商業ギルドとしても、全力で支えさせていただきたい。」
アリシアは、少し戸惑いながらも、しっかりとその手を握り返した。
家族たちも、誇らしげに頷く。
こうして、アリシアたちは正式に商業ギルドと提携を結び、領地全体を巻き込んだ新たな一歩を踏み出したのだった。




