秋の収穫祭
季節が夏から秋へと変わった。
領内に訪れた秋の気持ちの良い風が、祭りの賑わいをさらに盛り上げていた。
広場には色とりどりの布が張られ、出店の屋台がずらりと並ぶ。
年に一度の「収穫祭」領地の民だけでなく、周辺からも多くの商人たちが集まる一大イベントだ。
アリシアたちは、この絶好の機会を利用して、開発した新商品を破格でお披露目することに決めた。
「今日一日限り!安眠枕、ポプリ、薬草茶、コーヒー、カカオ製品――特別価格でご提供します!」
兄が威勢よく呼び込みをし、母と父が後ろで商品の準備を整える。
屋台には、香り高い薬草茶とカスカラティーが並び、試飲コーナーには人だかりができた。
安眠枕とポプリには、試しに顔を埋めてうっとりする客たち。
さらに、料理長が気合いを入れて作ったスイーツも大人気だった。
「食べ歩きチョコレートクレープ、できたてですよー!」
「チョコレートクッキーも焼きたて!甘くてほろ苦い、大人の味です!」
甘い香りに誘われて、子どもたちや女性たちが列を作る。
一方、薬草を練りこんだ「傷を癒すクリーム」も、旅の商人たちから興味深そうな視線を集めていた。
「このクリーム……試してもいいか?」
「もちろん!怪我にも、乾燥肌にもいいんですよ。」
実際に塗った旅の護衛騎士が、「……おお、本当に痛みが和らいできた!」と声を上げ、たちまち人だかりができる。
祭りは大成功だった。
アリシアたちの屋台は、他の領地から来た商人たちの店とは比べ物にならないほどの活気に包まれ、領内でも評判が広がっていった。
そして、夕暮れ時。
立派な装束を身にまとった使者が、屋台にやってきた。
胸元には「商業ギルド」の紋章が刻まれている。
「失礼する。私は領内商業ギルドの使者、エルマーと申す。今日、そちらでお披露目された商品に大いに興味を持ちまして……」
エルマーは、深々と頭を下げ、丁寧に続けた。
「ぜひ、我らギルドの場で正式に、商品を取り扱う話を進めさせていただきたい。ご都合のよい折に、ギルド本部へお越しいただけますでしょうか。」
アリシアたちは顔を見合わせた。
家族も、料理長も、皆、興奮を隠せない表情をしている。
アリシアはにっこりと笑い、しっかりと答えた。
「こちらこそ、ぜひよろしくお願いします!」
こうして、アリシアたちは正式に、商業の世界に足を踏み入れることになったのだった。




