改良を重ねる
恒例となった家族会議が開かれた。アリシアたちは、コーヒーやカカオの試作と並行して進めていた安眠枕の成果について話し合った。
「やっぱり、ただの安眠効果以上のものがあるみたいね。」と母親が言った。
「うん。特に、怪我や魔物との争いで心に傷を負った人たちにも効果があるって、…正直ただ事じゃないと思う。」アリシアも真剣な表情になる。
「それなら、教会に相談してみたらどうだ?」父親が提案した。「アリシアの前世とは違って田舎では教会が病院の役割も担っている。正式な後ろ盾になってもらえれば、枕を広める時にも安心だし、何よりアリシアの身を守るためにもなる。」
「うん、私もそう思う。」アリシアは大きくうなずいた。
こうして、まずは孤児院や使用人たちから得た体験談をまとめ、試作品の枕と一緒に教会へ持ち込むことに決まった。
それは同時に、「アリシア」という才能を、正当に認めてもらうための第一歩でもあった。
一方、カカオの加工も着々と進んでいた。
媚薬効果があると言うことで警戒しながらカカオ豆を慎重に乾燥させ、焙煎し、すり潰していく。
カカオからは、リッチな香りが広がった。
カカオマスを湯に溶かし、ミルクと砂糖を加えると、濃厚なココアができあがった。
初めて口にした家族は、驚きと喜びで顔を輝かせた。
「これが…ココアというものか!身体の中からあったかくなるな!」
さらにチョコレート作りにも挑戦した。
カカオバターを分離し、そこに砂糖を加え、何度も練ってなめらかに仕上げると、甘く香ばしいチョコレートが完成した。
「すごい…チョコってこんなに手間がかかるんだね。」とアリシアは感心する。
「…なんか、妙に幸せな気分になる。」兄がぼそりと言った。
アリシアも一口食べ、少し顔が火照るのを感じた。
最初アリシアがカカオの効能を見た際に媚薬効果があると言っていたが、分析を進めるとどうやら媚薬というのは例えのようで、詳細な成分としては純粋な状態のカカオには「高揚感」や「幸福感」をもたらす成分が含まれていることがわかった。
ただし、加工して甘みや乳製品と混ぜることで、その作用はかなり弱まるため、口にしても「ちょっと気分がいい」程度に収まるらしい。
「面白いな。」料理長は目を輝かせた。
「この効果を活かして、癒やし系のスイーツを作れそうだ!」
料理長はさっそく試作に取りかかり、カカオを使ったケーキ、クッキー、アリシアの記憶から再現したトリュフなど、様々なチョコレート菓子を生み出していった。
「これはただの贅沢品じゃないな。心を癒すスイーツだ。」
アリシアも、その未来に胸を膨らませながら、次なる一手を考え始めていた。




