表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/27

リシャール救出作戦



 リシャールという名前を聞いた時、ラウラの心の中で渦巻いていた疑問が全て繋がった気がした。度々見るあの夢はリアーヌ王妃とリシャール王子だ。王子を救って欲しい、助けて欲しいと亡き王妃は訴えていたのだ。


 王宮を牛耳っているグレイス妃からリシャール王子を守るためには、国王に近く、且つ大きな権力を持つ高位貴族の協力が不可欠だ。正にマーベリック公爵が適任で、実際にストーリーでも名前は出て来なかったものの、国王は公爵令嬢を王子の婚約者に選んでいる。


 そして、王子の信頼を得やすいであろう同い年のその婚約者が王子の未来を知り、大人の心を持ち合わせていたならばどうだろう?きっと王子の手助けが出来るはずだ。


 きっとラウラはリシャール王子を救うためにラウラ・マーベリックとして生を受けたのだ。これはもう神の力としか言いようがない。リシャール王子を想う母リアーヌ王妃の願いを、神が聞き届けたのだろうか。


 闇の魔力を持ち、王宮で絶大な権力を握るグレイス妃は恐ろしい。関わらないでいられるのならそれに越したことはないだろう。でもリシャール王子のあの細い手足と不安に揺れる瞳……。あんなの見過ごせるわけがない。そしてあんな結末、あんまりじゃないか!


 マーベリック公爵家の大事な家族を巻き込んでしまうことになる。危険もあるだろう。でも、あやふやな記憶ではあっても、大まかには先の展開が分かっているのだ。先回りして最悪の事態を避けることが出来るかも知れない。


 そもそも、ストーリー通り進んだら、ラウラ自身だってその命を落とすことになるのだ。何としてもあの子を守るんだ!


 家族全員揃っての夕食の後、ラウラは覚悟を決めて口を開いた。今日のお茶会で出会ったリシャール王子のことを伝えるために。


 王子がグレイス妃に虐待されていること。ひとりぼっちでいる王子の力になりたいこと。グレイス妃は恐ろしい闇の魔力を持っているので、何らかの対抗策が必要なこと。


 話しながら涙がぽろぽろ零れてきたけれど、家族の目を見つめながら、ラウラは一生懸命伝えた。父も母も兄も馬鹿にしたりはせず、真剣な顔でその話に耳を傾けてくれた。


「ラウラ、よく教えてくれたね。とても勇気のいることだ。お父様は明日にでも国王陛下に内密に相談に伺う。もう大丈夫だよ、安心しなさい」


 父はラウラの頭を撫でて微笑み、母と兄は目を潤ませながら優しく抱きしめてくれた。大好きな家族に囲まれてラウラは幸せ者だ。


 そして言葉通り翌日の朝、父カイルは王宮へと向かい、事態は急展開を迎えた。国王フレドリックと父は即座に騎士達を率いて離宮へと乗り込み、無事にリシャール王子を保護。


 続いてグレイス妃を拘束し、王宮筆頭魔術師の鑑定により闇魔力の保有者であることを確認した上で、魔封じの魔導具を装着させて離宮へ幽閉した。グレイス妃の父であるトレント伯爵も捕縛され、投獄されることとなる。


 国王はリアーヌ王妃の死について疑念を抱いており、死因について探らせていた。その調査の中で闇属性の魔力の存在が記された文献も見つかってはいたものの、真偽が定かではない物と見做されていたそうだ。


 しかし、あくまで可能性のひとつとしてではあるが、魔術師達の研究は細々と続けられていたのだそうで、グレイス妃の幽閉までの流れはあっけない程に速やかなものであった。

 

 グレイス妃は生前のリアーヌ王妃に対して、一貫して王妃を立てる立場を崩さず、親しげに振る舞っており、その心を非常に上手く隠していた。王妃の死の際には、嘆き悲しみ、涙に暮れていたグレイス妃を国王が疑うことはなかったのだ。


 国王は日々の膨大な政務に追われながら、リアーヌ王妃の死の究明に躍起になっており、グレイス妃から定期的に事細かな報告もなされていたために、彼女にリシャール王子のことを任せていたそうだ。


 しかし、国王がいざ息子に会おうとすると理由をつけてはグレイス妃に面会を阻止され、おかしいのではないかと疑念を抱き始めていた矢先の今回の騒動だった。国王は愛息子の痛ましい姿に、涙を流して悔やんでいたという。


 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ