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過酷な運命



 あの後、誰にも見咎められることなく母と兄に合流したラウラは、帰りの馬車の中で疲れて眠ってしまったフリをしながらひとり考え込んでいた。


 ライゼン王国のリシャール第二王子は「レインフォールの乙女」のストーリーの中でのラスボスだ。


 王子として生を受けながらも、余りに過酷な環境で育ったリシャールは、愛を知らず、国を強く憎むその負の心に付け入られてしまう。


 ストーリーの終盤で闇の力を浴びせられ、その力を自身に取り込んだリシャール王子は魔王の眷属と化してしまうのだ。そして最後にはヒロインとヒーローに倒されるという悲し過ぎる結末が待っている。


 リシャール王子は国王フレドリック二世と隣国から嫁いで来た王女、リアーヌ王妃との間に生まれた。本来ならば王太子として厳しくも大切に育てられたはずだったのだろうが、リシャール王子は第二王子である。それが問題をややこしくさせた。


 結婚以来、仲睦まじく過ごしていた国王夫妻だったが、なかなか子宝に恵まれず、それが五年ともなれば側妃をと望む声が一部から上がり始めた。その中心的存在がグレイス妃の生家トレント伯爵家だった。


 王妃を愛する国王は側妃を立てることを拒み、王族内から王太子を立てる準備をしていたのだが、トレント伯爵とグレイスは決して諦めず、国王を欺く形で寝所に潜り込むというとんでもない手段を講じたのである。


 媚薬の使用が疑われたが、当時の検査では立証することが出来ず、また国王の子が宿っている可能性もあるために、トレント伯爵とグレイスの処罰は一旦保留された。


 そうして生まれたのがアルフレッド第一王子であり、グレイスは国王の側妃となることに成功したのだ。だが、皮肉なことにその一年後、国王と王妃の間に待望の王子が誕生することとなる。


 国王夫妻は大いに喜び、リシャール王子を慈しんだ。だが、王子が三歳を迎えた頃、体調を崩しがちとなっていたリアーヌ王妃が、病名も明らかにならないままにこの世を去ってしまうという悲劇が起こる。


 愛する妻を亡くした悲しみに暮れつつも、日々押し寄せる政務に追われる国王は、グレイス妃の申し出を受けて、彼女にリシャール王子の教育を一任してしまう。


 しかし、グレイス妃はリシャール王子をひとり離宮に押し込め、碌な教育も行おうとはせず、側仕えにも王子に対し粗末な食事を与え、最低限の世話をすること以外、決して許しはしなかった。


 グレイス妃が周囲の者達に手を回し、その虐待行為は秘匿されていたものの、王子が七歳になる頃、ようやく国王が息子の苦境に気づき救い出す。しかし、既にリシャール王子は暗い目をした、誰も信じることが出来ない少年に育っていた。


 怒った国王はグレイス妃を離宮に幽閉し、王子の後見を得るために有力公爵家の令嬢と婚約させることにするも、そのニ年後、元来身体が丈夫ではなかったその令嬢もまた、若くしてこの世を去ってしまうのだ。そして益々、リシャール王子はその心に根ざす孤独を深めて行く。


 ストーリーの進行と共にグレイス妃がこの世界では非常に稀な闇の魔力を持ち、それを駆使して自身の歪んだ願望を叶えていたことが明らかになる。国王の寝所に忍び込み、意志を奪う形で強引に子を設けたのも、王妃と王子の婚約者である公爵令嬢の命を奪ったのもグレイス妃の闇の魔力の力だったのだ。


 しかし、ヒロインと攻略対象キャラクター達と対峙することになったグレイス妃は自害することを選び、その闇の魔力をリシャール王子に対して解き放つ。そして前述の通り、魔王の眷属と化した王子は主人公達に討たれ、その人生の幕を閉じることとなる。


 このゲームはラスボス、リシャール王子にスポットを当てると、とんでもない胸糞ストーリーなのである。前世のラウラが一度プレイした後、二度と遊ぶことがなかったのはこれが理由だった。


 そして、お気づきだろうか?ストーリー中で出て来た、「元来身体が弱く、命が奪われてしまう王子の婚約者の公爵令嬢」って、もしかしてラウラ・マーベリックのことなのではないでしょうか?


 

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