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レインフォールの乙女



「王子様のお誕生日会?」


 家族揃っての夕食の席で、ラウラはきょとんと大きなラベンダー色の目を丸くして聞き返す。


「そうだよ。アルフレッド殿下の七歳のお誕生祝いの茶会だ。フローリアが付き添うから、セインと共にラウラも行っておいで?」


「はい!お父様!」


 アルフレッド王子はここライゼン王国の第一王子だ。ラウラの兄であるセインは王子と同い年で、毎年アルフレッド王子の誕生祝いの茶会に出席している。しかし、ずっと身体の弱かったラウラはこれまで一度も出席したことはなく、今回が初参加となる。


 ラウラの父カイル・マーベリック公爵は現国王のいとこで、セインとラウラは王子とははとこの関係に当たる。兄は王子の将来の側近候補として期待されているようで、度々王宮に招かれては、アルフレッド王子と親交を深めているらしい。


 ふと、あれ?っと思った。ライゼン王国……?アルフレッド王子にセイン・マーベリック公爵令息……?靄がかかったように朧げなままの記憶を、精一杯掘り起こしてみる。なんだか知っている気がする……。前世で……そう、前世だ!


 ライゼン王国の王立学園を舞台に、平民出身のヒロインが第一王子や貴族令息達と出会い、恋心を育てつつ王国の危機を救う、女性向け恋愛ゲーム「レインフォールの乙女」所謂乙女ゲーだ。


 確か前世で中学時代に遊んだことのあるゲームであるはずなのだが……これってもしかして、異世界転生というものなのだろうか?いや、前世の記憶を思い出した時点で異世界転生ではあるのだろうが、まさかここがゲームが舞台の世界だなんてラウラは全く思っていなかった。


 ドハマりしていた友人に勧められてサラリと遊んだだけで、ラウラ自身はやり込んでいたどころか、一度しかプレイしていなかった為にすぐに思い至ることがなかったのかも知れない。


 乙女ゲーム「レインフォールの乙女」のメインヒーローはライゼン王国の第一王子であるアルフレッド王子。彼は金髪碧眼のこれぞ王子様といった容貌の爽やかイケメンだ。


 そしてラウラの兄、セインもゲームの攻略対象キャラクターの一人である。母譲りの淡い金髪にラベンダー色の瞳、甘やかな容姿で令嬢達を虜にする美貌の公爵令息だ。


 ちなみに七歳現在の兄セインはというと……うむ、天使過ぎである!前世今生を通して思い返してみても、段違いに美しく可愛らしい。


 端正な顔立ちに金髪碧眼という王家の色合いを持つ父カイルも素敵だが、ライゼンの華と呼ばれた母フローリアの甘く華やかな美貌をラウラ達兄妹は受け継いでいる。


 兄であるセインが「レインフォールの乙女」における攻略対象者の一人であることは判明したが、そうなるとラウラの役どころが気になるところだ。


 だが、ラウラ・マーベリックという名前に全く聞き覚えがない。前世のラウラに対して、よくゲーム内容を熱く語っていたガチ勢の友人の口からもラウラの名前が出たことはなかったと思う。


 少なくともヒロインでも悪役令嬢役でもないのは確定だと言えるだろうが、そうなると名もなきモブ役なのだろうか?それともストーリーに絡むような立ち位置の存在ではない?


 ストーリーはアルフレッド王子やセインを含む攻略対象キャラクター達が、王立学園に入学時にヒロインと出会うところから始まることを考えると、二人より一学年下のラウラが登場しないのはそうおかしな話でもないはずだ。


 そう思うのにどうしてだろう?心に芽生えた小さな疑念をラウラは拭い去れずにいた。


 

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