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仲間たち



 幽閉されていたはずのグレイス妃が姿を消したという事件を耳にして、ラウラは神殿へと急いで向かい、キャロルの下を訪れていた。


 ラウラはサイラスを頼り、グレイス妃を探し出す覚悟だ。両親に言えば流石に引き留められるだろうと思い、兄のセインにだけは伝えてマーベリック公爵邸を後にした。


「大変なことになりましたね」


 ラウラを出迎えたキャロルの表情にも、隠しきれない緊張感が漂っている。


「ええ。わたくし、グレイス妃の後を追ってみようと思うの。一刻も早く彼女を見つけなくては」


「このままでは、ゲームのプロローグで起こっていたような不審死事件が実際に起こってしまうかも知れませんよね。私も行きます!」


「待って、キャロル様。危険な目に合ってしまうかも知れないの。わたくしは以前から訓練しているから」


 キャロルは聖魔法の練習にひたむきに取り組んではいるが、まだあまりに日が浅い。聖女であるキャロルの助力が不可欠だとは分かってはいても、彼女を危険に晒すことは躊躇われた。


「私、ラウラ様と一緒に頑張るって決めたんです!絶対に一緒に行きます!」


 金色の瞳に決意を滲ませて、キャロルは力強く言い切り、ラウラは胸が熱くなる。


「ありがとうございます、キャロル様。とっても心強いわ」


「気合いだけは十分ですよ!急いで支度しますね」


 そう言ってキャロルは本当に短時間で支度を済ませて来た。


「サイラス先生に協力をお願いしようと思っているの」


「そうですね。私達だけじゃどうやってグレイス妃を探したらいいのかも分からないし。行きましょう!ラウラ様!」


「ええ」


 覚悟を決め、頷き合って歩き出した二人であったが、大きな荷物を背負ったキャロルの姿に驚いた神官達が何事かと集まって来てしまう。


 この場をどう切り抜けようかと一瞬慌てたラウラをよそに、キャロルは神官達を見渡すと、握った拳を高々と振り上げて宣言した。


「私、サイラス先生のところに行って、暫く修行して来ます!」


「おお!聖女様、なんという素晴らしい心掛け!ご健闘をお祈りしております!」


「はい!頑張って来ますね!」


 にこにこ顔の神官達に送り出される。キャロルの人徳だろうか?それに内容は省いてはいるが、一応嘘はついていない。ラウラが待たせていた馬車に乗り込み、二人は王宮へと向かった。


 そして王宮へと到着した二人は、サイラスのいる魔術師塔へと向かう。王宮内はグレイス妃の捜索で、慌ただしさを増していて、忙しなく騎士達や文官達が行き交っていた。


 見回りの騎士や衛兵達がぎょっとした顔をして、ローブ姿の二人と大きな荷物を持って後に続く従者の姿を見るが、リシャールの婚約者であり、公爵令嬢でもあるラウラに物申す訳にもいかず、皆見ない振りをしてくれているようだ。


「わー!お城ってやっぱり大きいんですね!すごーい!あそこがサイラス先生の職場ですか?ゲームで見た通りだー!」


「ええ、魔術師塔よ。キャロル様、今度来る時はゆっくり王宮を見て回りましょう」


「はい!」

 

 キャロルは初めてやって来た王宮に興味津々の様子で、あちらこちらに視線を向けている。そうして二人がサイラスの部屋の前まで来ると、ノックをするまでもなく扉が開いた。


「随分と元気な声がすると思ったら、お二人でしたか。さあ、どうぞ。お入り下さい」


 二人は従者から荷物を受け取ると背に背負い、サイラスの部屋へと入る。


「ご用件はグレイス妃のことですか?」


「ええ、グレイス妃をこのままにしてはおけません。早く見つけなければ。サイラス先生、どうかお力添えをお願い出来ないでしょうか?」


「サイラス先生、お願いします!」


 ラウラとキャロルは真剣な眼差しをサイラスに向ける。


「彼女を一刻も早く見つけなければならないというのは同意見です。そして、それにはお二人に力を貸して頂かなければなりません。交渉成立ですね」


「サイラス先生!ありがとうございます」


「やりましたね!ラウラ様!」


 ラウラとキャロルは顔を見合わせて喜び合う。


「でも、先に殿下とお話される必要があるようですね」


 サイラスが言い終わるのと同時にノックの音が響き、彼の返事を待って入室して来たのは、リシャールとベリルだった。


 グレイス妃を追うにあたって、リシャールは最も顔を合わせてはいけない人だ。リシャールがもし一緒に行くと言い出したら……?ラウラの顔から血の気が引いていく。


 しかし、リシャールは思わぬ反応を見せた。彼は全てを知り、その上でグレイス妃を追う覚悟を決めたのだ。ラウラは涙を拭う。ならば、ラウラはリシャールと共に立ち向かおう。それにキャロルもサイラスも一緒にいてくれるのだ。


 支度を済ませ、四人とベリルは王宮の外門へと向かう。必ずグレイス妃を見つけ出してみせるのだと四人の決意は固い。そして、この後セインと王宮を出たところで合流することになっている。


 しかし、外門の門扉の前にはセインだけでなく、もうひとりの意外な人物が待ち構えていた。


「リシャール、母上を探しに行くんだろう?私も同行させてはくれないか?」


「兄上!」


「ラウラ、ごめん。アルフレッド殿下に嘘つけなくて……」


「お兄様!」


 真剣な表情のアルフレッド王子と申し訳なさそうな顔をしたセインがそこにはいたのであった。


「ラウラ嬢、サイラス、聖女殿もどうか頼む!母上をなんとしてでも止めなくては!」


 そう、この世で一番グレイス妃を止めたいと望んでいる人、それはきっとアルフレッド王子だ。


「兄上、一緒に行こう!」


「そうですわ、グレイス妃もアルフレッド殿下のお言葉なら耳を傾けて下さるかも知れません」


「ラウラ嬢の仰る通り、アルフレッド殿下にご協力頂けるのであれば、有り難いことです」


「そうですね、頼もしくなっていいですよね!」


 四人はそれぞれに頷いて、アルフレッドに賛成の意を伝える。


「良かったね、殿下」


「ウォン!」


「ああ、皆ありがとう」


 アルフレッドは秀麗な顔に泣き笑いの表情を浮かべ、ひとりひとりの顔に視線をやると頭を下げた。


 そして一行は出立の時を迎える。乗馬経験のないキャロルはベリルと馬車に乗り、御者台にはサイラスが、残りはそれぞれ馬に跨った。


 こうして、ゲームストーリーの六人からは二人入れ替わった形となった新たな六人とベリルで、グレイス妃の追跡を行うことになったのである。

 

 

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