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王立学園への入学



「え!?グレイス妃は闇の魔力を封じられてるんですか?」


「ええ、もう九年近くになるかしら?」


「それでゲームとは違う展開になってるんですね」


 あの日からラウラはキャロルとすっかり打ち解けてきて、今日も王宮の帰り道に神殿に寄り、キャロルの部屋で二人で一緒に紅茶を飲んでいた。


 囚われた当初は、まだ幼かったアルフレッド王子の心理面を考慮して離宮の一室に幽閉されていたグレイス妃だったが、王子が成長してからは、王都から離れた北の塔へ幽閉場所を変えられている。


 過去の使用例から鑑みて、魔封じの魔導具の効力は最大に保ったとしても十年と言われていて、そうなると残る期間はあと一年と少し。でも、もういつその効力が失われたとしても不思議ではない時期まで来ている。


 グレイス妃に嵌められた魔導具は、その昔、遺跡から発見された古の時代の遺物で、代替品が用意出来るような代物ではない。


 魔術塔の魔術師達の研究によって、魔導具が身に着けた者の魔力を吸い取り、結果として魔力を封じる形になっているのではないか、という結論に達している。


 今の時代の魔導具も魔石に魔力を込め嵌め込んで作られているが、人ひとりの魔力を吸い続けて封じられる程の魔石は現代では見つかっていない。


 こうしている間にも、闇の魔力は魔導具に蓄積され続けている。そして、それが限界を迎えた時、恐らくグレイス妃は力を取り戻すことになり、彼女に闇の魔力を開放させないためには、それを浄化する力が必要になる。


 闇の魔力の相対属性と目される、光の魔力の所持者であるラウラは、サイラスの指導を受けながら、浄化の魔法を繰り返し何度も練習して来た。加えて、今は聖女キャロルという心強い味方がいる。


 キャロルも今、サイラスの指導の下で浄化の魔法の練習をしていて、ある程度形になったところで、共に北の塔へ出向き、浄化を試みていくになるだろう。


「私、レインフォールの乙女のヒロインに転生したんだって思ったら、そんなの無理だって思って、怖くて堪らなくて」


「分かりますわ。わたくしも幼い頃、グレイス妃の前に立った時、とても恐ろしかったもの」


「でも今は、同じ転生者で、光属性の魔法が使えるラウラ様も一緒にいてくれると思ったら、私も頑張れるんじゃないかって思えて」


「わたくしもですわ。キャロル様の存在がとても心強いのです」


 二人はフフッと顔を見合わせて笑う。


「ゲーム通りだと、王立学園入学直後に事件が起こるけど、その前に起こるはずの王国内の事件も起こってないから、可能性は低いかも知れませんね。でも警戒は怠りません!」


 ラウラは「レインフォールの乙女」のことは思い出しても、強く憶えているのはリシャールに関することだ。一度しかゲームを遊んでいないために、ストーリーの大まかな流れは分かっても詳細を知らない。


 今後のことを考えると、それでは心許ないと思い、先だってキャロルに詳しいゲームの内容を話してもらっていた。キャロルによると、ラウラの名前は出て来ないものの、セインの個別ルートのストーリーの中で亡くなった妹がリシャールの婚約者であったことに触れられているそうだ。


 恐らくラウラは、その個別ルートまで遊んでいない。友人が話しているのを聞いたくらいで、全く記憶にないからだ。リシャールの悲し過ぎる最期を見て憤り、きっとそこでゲームを辞めてしまったのだと思う。


 そして、キャロルの言う通り、ライゼン王国では大きな事件もなく、未だ平穏な日々が続いている。


「ええ、頼もしいですわ。キャロル様。わたくしもご一緒に入学出来たら良かったのに。でも兄にしっかりキャロル様のことをお願いしておきますね」


「わー!大丈夫です!セイン様に面倒みてもらったりしたら、ご令嬢達に睨まれちゃいますよ!私、学園では平和に過ごす予定なんですから。その代わりラウラ様に学園生活の報告はしっかりしますね」


「まあ!フフッ」


 キャロルは笑いながら拳を握って見せてくれる。初めて出会った日、仲間が出来たみたいで嬉しいと言ってくれたキャロルだけれど、ラウラのほうこそ話し合える仲間が出来て、本当に嬉しくて心強い。


 そうしてキャロルは、セインやアルフレッド王子達と共に王立学園への入学を果たしたのであった。


 キャロルは言葉通り、王立学園で平和で楽しい毎日を送っているようだ。心配していた事件も今のところ起こっていない。どうやらキャロルは、ゲームでの攻略対象キャラクター達と恋愛を繰り広げるような気は一切ないらしい。


 ラウラにはその理由の見当がついていた。サイラスが神殿を訪れる度、キャロルの金色の瞳はいつもサイラスを追っている。隠しているようだが、丸わかりである。


 どちらもかけがえのない大切な存在だ。どうかキャロルの恋が叶って欲しいと、心から願ってしまうラウラだった。

 

 

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