リシャールの誕生日
マーベリック公爵領から戻った三ヶ月後、リシャールは六歳の誕生日の誕生日を迎えていた。まだ大勢の貴族達に囲まれることに慣れていないリシャールのため、内輪で誕生日を祝うことになっている。
国王陛下、アルフレッド王子、マーベリック公爵一家が集まり、口々にリシャールへの祝いの言葉を掛け、用意していた思い思いのプレゼントを手渡していく。リシャールは少しはにかみながらも顔を綻ばせ、とても嬉しそうだ。
ラウラはベリルとお揃いのペンダントをリシャールに贈ることにした。父に連れて行ってもらった城下町の魔導具店で購入したもので、防護の魔力が込められた透明な魔石が埋め込まれている。気持ち程度の効力なのだそうだが、お守りとして贈りたかったのだ。
「リシャール様、お誕生日おめでとうございます!」
「わぁ!ラウラ、ありがとう!嬉しいなー!ずーっと大事にするからね!」
「はい、リシャール様!それからこちらはベリルの分ですわ。ベリル、はい、どうぞ」
ラウラは身を屈めて、ベリルの首にペンダントを嵌める。いつもやんちゃなベリルだが、なんだか今日は少しおすまし顔だ。
「良かったね、ベリル!」
「キャンッ!」
首にペンダントをつけたベリルは、嬉しそうにラウラとリシャールの周りをくるくる駆けて回った。
「わたくしとお兄様の分もお揃いで購入したのですよ」
「皆でお揃いだね!嬉しいな!」
あれからベリルはすっかり元気になって、小さかった身体も一回り成長している。領地に滞在中、森に何度もベリルの親犬はいないか三人で探しに出掛けたが、見つかることはなかった。
結局、王都リベラへ一緒に連れて帰ることになり、誰よりもベリルのことを守ろうと懸命だったリシャールが、彼の主人となることに決まった。まだ王宮の暮らしに心細さの残るリシャールに、心強い味方が出来たのだ。
そして、元気いっぱいに飛び回るベリルの存在が、リシャールと国王陛下、アルフレッド王子の心の距離を縮めてくれている。遠回りすることにはなってしまったけれど、家族の絆はこれからどんどん深まっていくはずだ。
きっと母であるリアーヌ王妃が急逝するまでは、リシャールも両親の愛情を一身に浴びた幸せな誕生日を過ごしていたのだろう。けれど、それもたった三歳までのことだったのだ。リシャールがそれを憶えていなかったのだとしても不思議ではない。
だから、亡きリアーヌ王妃の分も、これからはこうして毎年毎年、ラウラ達が心を込めてリシャールの誕生日を祝っていこう。彼の中に幸せの記憶がひとつずつ積み重なっていくよう願いを込めて。
「今日は嬉しいことでいっぱいだったなぁ」
ベリルをぎゅっと抱きしめながらポツリと溢し、幸せそうに微笑むリシャール。
「リシャール様、来年も一緒にお誕生日のお祝いを致しましょうね」
「うんっ!」
領地で見た湖のようにキラキラと輝くリシャールの碧い瞳を見つめながら、ラウラは改めて思わずにはいられない。
リシャールをゲームのシナリオ通りのラスボスになんて、絶対にさせたりしない。あんな悲しい結末なんかじゃない、彼が幸せに笑っている未来をラウラは見たいのだ。だから、リシャールを守れる自分になるために、今はとにかく頑張ろう。




