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ラジオ

作者: 葉沢敬一

毎週日曜日午後11時にショートショート1、2編投稿中。

Kindle Unlimitedでショートショート集を出版中(葉沢敬一で検索)

 いつの間にかAIスピーカーでFMラジオが聴けるようになっていたことに気付いた。民放の洋楽チャンネルを選んで聴く。音楽配信サービスだと聴く音楽が偏るし、最新のヒットチャートも聴いてみたい。


 昔は音楽雑誌のビルボードチャートを熱心に見ていたものだ。そう、昔のポップスやロックは今よりも魅力的でラップやヒップホップが流れ出してすっかり関心がなくなってしまった。


 仕事が終わって息抜きの時間ラジオを聴く。私はテレビは観ない派。時代とともに面白い番組が消え失せてしまい、NHKに高額の受信料を払うのも癪なのでテレビを捨てた。NHKは解約時にごねたが裁判に持ち込むぞと脅して、日本改革党に相談したら折れてきた。


 ある日、いつも通りラジオを聴いていたらノイズが入った。

――ガガッ、ガガッ


 なんなん? そういえばネットで太陽フレアによって電波障害が起きる予想があったことを思い出した。北海道やロンドンでもオーロラが見られるらしい。


――あ、熱いっ! 熱い! 助けてー!

 ノイズに紛れて叫び声がAIスピーカーから聞こえてきた。


 マジかよ……。なんだこれ。

――殺してくれー! ひと思いに殺してくれー! ガガッ。


 私はゾッとした。どこからの電波が混じってきているのか? そもそも、アナログの電波じゃ無くて、デジタルの暗号化されている通信に混線するなんてあるのか?


――良夫、早くこっちに来い。みんなお前を待って居るぞ……


 私の名前を呼ばれて固まる。過去行った悪事のことを思い出した。今は足を洗ったが昔はやんちゃという悪事をしていたのだ。嫌がらせして行方不明になった男のことを思い出す。


「か、勘弁してくれ。俺が悪かった!」


 私は震える声でAIスピーカーを停止するよう指示した。だけど、ノイズは消えない。

――俺は戻ってきた。復讐するためにな。ガガッ。


 私はAIスピーカーの電源を引っこ抜いた。

 AIスピーカーは沈黙した。ホッと胸をなで下ろした瞬間、どこからともなく声が聞こえてきた。


――もう逃げられないぞ、クズ野郎。


 彼の死体が見つかったのはハエが群がって異臭がすると苦情が近隣の住民から警察に入って大家共々、部屋に踏み入った時だった。大家は一目見て外で胃の中の物を吐いていた。検視の結果、外傷はなく、病死と診断された。

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