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098.従二位家隆 「風そよぐ ならの小川の 夕暮れは みそぎぞ夏の しるしなりける」

はーい、じゃあ次は従二位家隆(じゅうにいいえたか)くーん。

こっちに来て作った歌を見せてくださーい。


お、来た来た。

キミの名前は何ていうの?

え? 藤原家隆(ふじわらのいえたか)なのね。


まーた藤原かよー。

いったい、このクラスに藤原は何人いるんだよ、ったく。

あー、数えなくていいから。

今さら知りたくも無いわ。


じゃあキミのお父さんの名前は?

え? 藤原光隆(ふじわらのみつたか)

誰、それ。


じゃ、さっそく作った歌を見せてちょうだい。


(かぜ)そよぐ ならの小川(おがわ)の 夕暮(ゆうぐ)れは

みそぎぞ(なつ)の しるしなりける


お、ローキック系の歌ね。


「風そよぐ」はそのまま「風がそよぐ」って意味よね。

「ならの小川の」は「奈良の小川の」ってことかしら。


え?「ならの小川」は御手洗川(みたらしがわ)のことなの?

だったら最初から「御手洗川(みたらしがわ)の」でよくね?


まぁいいけどさ。

え?「風そよぐ ならの」は「(なら)の木に風がそよぐ」って意味と掛けているの?

どうりで「御手洗川(みたらしがわ)の」って書かないわけだわ。


「夕暮れは」はそのままの意味よね。


「みそぎぞ夏の しるしなりける」ってのは?

ふーん、「みそぎが行われているのが夏の証拠だなぁ」ってことか。

「みそぎ」っていうのは、「(みそぎ)」のことよね。


身体を清めて(けが)れを落とす行事だわ。

インドで言えば、ヒンズー教徒がガンジス川で沐浴(もくよく)する、みたいな感じかしら。

まぁ一口に沐浴(もくよく)と言っても、あっちの川は日本の川と違って川幅も異常に広いし、流れが(ゆる)やかだから水は(よど)んで汚いし、おまけに沐浴(もくよく)に来る人数が数十万とか(すご)い事になってて、むしろイメージとしては夏休み期間中のメチャ混みの屋外プールか海水浴場で、見渡す限りの芋洗い状態が延々と続くって感じなのよね。


自分で言い始めておいてアレだけど、やっぱ全然違うわね。

あんなドロドロに(にご)り切った川で沐浴(もくよく)って言われても、日本人の感覚で見たら、むしろバイ菌だらけの泥水で身体を汚しに行ってるように見えちゃうところがあるわよね。


私が思うに、ここで言う(みそぎ)は、夕暮れ時に水浴びに興じている若者的なイメージなんじゃないかしら。

そんな姿を見て「夏っぽい光景だなぁ」とか「オレも若い頃はあんなふうに川で泳いだり、水を掛けあって遊んだりしたもんだぜ」みたいに、(なつ)かしく感じたんじゃない?


夏だけに、夏が(なつ)かしい。

なんつって。


それで思い出したんだけどさ、アタシも大学一年の頃に、サークル活動の一環でみんなと近郊のキャンプ場までキャンプをしに行ったことがあったのよ。

昼間はキャンプ場の近くの川で、みんなで水浴びしたり泳いだりするの。

海で泳ぐような格好をして、川で泳ぐのよ。


男はトランクス風の海パンで、女は普通にビキニとか着てるわけ。

それが自分の中ではちょっと不思議な光景でね。

普段はごく普通で、どちらかといえば地味な感じの格好をしてる同じサークルの女の()が、川でビキニを着て泳いでるっていう光景は、どことなく奇妙でもあり、それでいて妙に(なまめ)かしいエロティックな感じもあって、今もアタシの頭の中に強烈な印象を残しているわ。


まさかキャンプに行って、川でビキニ姿の女の()を見るとは思わないでしょ?

何だかアタシの方がちょっとドキドキしちゃったりなんかしてさ。

だからアタシは、川で水浴びっていうと真っ先にその光景が浮かんできちゃうのよ。


話が前後するけど、実はアタシも大学入学後に半年くらいはサークル活動をしていたのよ。

ま、半年後には、アタシと一番気が合った同じ一年生のメンバーが辞めちゃったのと、当時していた居酒屋のバイトの方に力を入れ始めちゃったせいで、サークルから遠ざかることになっちゃうんだけどさ。


そのサークルは児童文化研究会っていう名目のサークルでね。

いわゆるジャリ研ってやつね。

そのサークルはアタシが通ってた大学の近くにある某女子大との合同サークルだったのよ。


どこでも大体そうだと思うけど、理系の学部って女子が少ないじゃない?

で、もちろん女子大には男子が居ないわけよ。

そういう状況を考えれば、こんな風に合同サークルを作るっていうのは、まぁ理に(かな)ってるというか、上手(うま)いことお互いを補完し合ってると思うわね。


もともとは女子大の中だけのサークルだったみたいなんだけど、アタシが大学に入学する10年くらい前に、サークルの先輩がその女子大に出向いて合同サークルにしようって直談判(じかだんぱん)を持ち掛けたらしいわ。

で、その場で話を付けてきたみたい。

大した勇者がいたものね。


話には聞いてるけど、そんな突然の直談判(じかだんぱん)が速攻でまとまったところを見ると、たぶんそこそこイケメンな顔をした先輩だったんじゃないかと思うわね。

当時はよく、このサークルが合同サークルになった経緯だとか、それにまつわる武勇伝の数々を、サークル帰りに先輩から聞かされていたわ。


桃太郎は鬼ヶ島へ鬼を退治しに行ったけど、その先輩は某女子大へ女子をゲットしに行ったのよ。

え? 全然関係ない?

そうね、なんでここで桃太郎の話を思い付いたのか、アタシにもよく分からないわ。

ま、そこはあまり気にしないでちょうだい。


じゃあキミが言ってることは、

「風が(なら)の葉にそよぐ御手洗川(みたらしがわ)の夕暮れは、(みそぎ)が行われているのが夏の証拠だなぁ」ってことでいい?


逆に言えば、「(みそぎ)が行われていなければ、夏っぽくない」ってことかしら。

(みそぎ)をすることで夏を演出する、みたいな。

そんな(わけ)ないか。


御手洗川(みたらしがわ)がどこにあるのかアタシは知らないけどさ、もしかしたら、鬱蒼(うっそう)とした山の中みたいなところを流れていて、見た感じあんまり夏っぽくなかったりするんじゃないの?

夏って言ったら強烈な日光がギラギラ照りつけてるイメージだけど、もしも御手洗川(みたらしがわ)が光の差し込まない山の中をひたすら流れてる川だったりしたら、さすがにビジュアルが地味すぎてコメントしづらいわね。


え? それも違う?

別にいいわよ。

アタシは100%の正解なんて、求めてないから。

歌の本当の意味を知りたいなら、他を当たれっての。


じゃあ最後にアタシの感想を付け加えておくわね。


(かぜ)そよぐ ならの小川(おがわ)の 夕暮(ゆうぐ)れは

みそぎぞ(なつ)の しるしなりける

夏のしるしは 「冷やし中華はじめました」

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