096.入道前太政大臣 「花さそふ 嵐の庭の 雪ならで ふりゆくものは 我が身なりけり」
はーい、じゃあ次は入道前太政大臣くーん。
こっちに来て作った歌を見せてくださーい。
お、来た来た。
ちょとぉー、キミの入道前太政大臣ってただの肩書じゃないのー。
以前は太政大臣をやってたけど今は入道、つまり坊主ってことでしょ?
住職元内閣総理大臣、って言ってるようなものじゃない? これ。
言っとくけど、肩書きだけが人生じゃないのよ?
たまに、どっかの会社の社長だからって威張ってる人がいるけどさー、会社の外に出たらそんなの関係無くね?
そりゃあ、その会社では社長かも知れないわよ?
けどさ、一歩外に出たら、その会社の社員以外の人にとっては、ただのオヤジでしかないわけじゃん。
別にアタシはそこの会社の社員じゃないんだからさー、アタシにとっては社長でも何でもないわけでしょ?
まったくの赤の他人だし、何の上下関係も無いし、何の従属関係も無いはずじゃないの。
それなのに威張られるとか、意味が分かんないわ。
社内での序列を社外に持ち出さないで欲しいわね。
お金持ちで威張ってる人についても同じ事が言えるわね。
そいつがどんなにお金を持っていようが、全然アタシには関係無いっつーの。
べつにアタシはそいつから給料をもらってるわけじゃないし、何の世話にもなってないんだからさ。
偉そうにされる謂れは無いし、アタシが引け目を感じなきゃならない義理や筋合いはどこにも無いじゃないの。
勘違いも甚だしいわよ。
むしろ金持ちなんて、他人からお金を大量に搾取してる証拠みたいなもんだわ。
どうせそのお金は、そいつが自分で働いて稼いだお金じゃなくて、他の誰かに働かせて不当にその対価を掠め取ったお金でしょ?
私腹を肥やしてるだけの金持ちなんて、軽蔑の対象でしかないわよ。
そんだけお金があるなら、ちょっとくらいアタシに寄こせっての!
賃貸アパート暮らしのアタシの身にもなってみて欲しいわ。
ところで、キミの名前は何ていうの?
え? もとは藤原公経で、今は西園寺公経っていうの?
ふーん。
きんつね、っていうのは面白い名前ね。
もしかして、油揚げとか稲荷寿司が大好物だったりする?
脂質の過剰摂取になるから、あんまり食べ過ぎない方がいいわよ。
ちなみにキミのお父さんの名前は何ていうの?
え? 藤原実宗?
誰? それ。
じゃ、さっそく作った歌を見せてちょうだい。
花さそふ 嵐の庭の 雪ならで
ふりゆくものは 我が身なりけり
お、ローキック系の歌ね。
「花さそふ」は「花が誘う」ってこと?
もしかして、またエロい意味だったりしないわよね?
茂みの奥にある花に誘われて、的なヤツ?
ちょっとさー、もうそういう歌を詠むのは止めて貰えないかしら。
またR18とか言われちゃうじゃないの!
こんなの、営業妨害だわ。
……って、営業なんてした事ないけどさ。
とにかく、これでもアタシ、一応はギリギリの線で踏み留まってるつもりなんだから、押さないでちょうだい。
え?
ここで言う「花」は桜の花で、「嵐が桜を誘って散らす」って意味なの?
何よ、それ。
「嵐が桜を誘って散らす」ってどういう事?
桜の花びらが、春風に誘われたかのように花から離れて、はらはらと宙を舞って落ちていく、っていうなら話は分かるわよ?
でも嵐って言ったら問答無用の強風で桜を散らすものでしょーが。
アタシには、誘うどころか無理やり引きちぎって持って行くイメージしか浮かばないんだけど。
まぁ、いいわ。
「嵐の庭の 雪ならで」ってのは何?
え? 「嵐が吹く庭の雪ではなくて」ってことなんだ。
あぁそっか。
「ならで」ってのは「ではなくて」っていう、notの意味だったっけ。
そういえば、「人づてならで 言ふよしもがな」って詠んだ歌があったわね。
たしか左京大夫道雅くんが、そんな風に詠んでいたわ。
じゃあこれと同じ使い方ってことね。
「ふりゆくものは 我が身なりけり」ってのは?
え?「年老いてしまったのは、この私なのだなぁ」ってことなんだ。
ふーん。
「ふりゆく」は「降りゆく」と「古りゆく」に掛かっていて、「桜の花びらが降りゆく」って意味と「古りゆくのは我が身」って意味とを繋げてるのね。
アタシ、やっぱりこんなふうに意味を繋げた表現って、あんまり好きになれないわ。
普通の人は「気が利いた表現だな」って感心するのかも知れないけど、アタシはヒネくれてるから「結局は技巧をアピールしたいだけで意味は後付けかよ」って思っちゃうのよ。
そうすると「うわ、ウソくせぇ」ってことになって、興冷めしちゃうのよね。
まったく、なーにが百人一首だよ。
デタラメばっか詠みやがって。
え? 何?
アタシは何も言って無いわよ?
じゃあキミが言ってることは、
「桜の花を誘って散らす嵐が吹く庭に降る桜ではなく、年老いてしまったのはこの私なのだなあ」
ってことでいいのかしら。
たぶん「降りゆく」っていう語感が、キミにとっては「古りゆく」としてイメージされたってことね。
ま、何を聞いてどう感じるか、どう聞こえるかは人それぞれだからね。
それについて、アタシがとやかく言うつもりは無いわ。
聞き間違いや勘違いなんて、誰にでもあるものだしさ。
ちなみにアタシは「夢をかなえて ドラえもん」の歌で「遠い国でもー」って歌ってるところが、何度聞いても「とわいくにでもー」にしか聞こえないわよ。
あれ聞くと、毎回心の中でツッコミを入れちゃうのよね。
「なんだよ、とわい国って」みたいな。
っていうか、ドラえもん自体がアタシは嫌いなの。
特に、のび太くん。
アタシ、のび太くんが大っ嫌いなのよ。
あの声って、聞いててイライラしない?
それに、だいたい行動パターンがこんな感じでしょ?
アタシの偏見だけど。
①ジャイアンにイジメられる or スネ夫に自慢される
②悔しくてドラえもんに泣きつく
③ドラえもんに未来の道具を出してもらう
④仕返しする
⑤そこで止めときゃいいのに、のび太が調子に乗る
⑥結局、痛い目を見る
こんなふうに、ドラえもんの道具に頼って仕返しするところとか、すぐに調子に乗るところとか、最悪なんだけど。
こんなアニメのどこがいいのかしら。
クレヨンしんちゃんの方が、遥かにまともだわ。
……って、また余計な事を書いちゃったわね。
じゃあ最後にアタシの感想を付け加えておくわね。
花さそふ 嵐の庭の 雪ならで
ふりゆくものは 我が身なりけり
庭が無いわよ アパートだから




