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091.後京極摂政前太政大臣 「きりぎりす 鳴くや霜夜の さむしろに 衣かたしき ひとりかも寝む」

はーい、じゃあ次は後京極(ごきょうごく)摂政前(せっしょうさきの)太政大臣(だいじょうだいじん)くーん。

こっちに来て作った歌を見せてくださーい。


お、来た来た。

……って、呼び名が(なげ)ぇーよ。

(かみ)の句と同じくらい(なげ)ぇーよ。


(さきの)太政大臣(だいじょうだいじん)とか、昔の肩書は()らないでしょーが。

後京極(ごきょうごく)摂政(せっしょう)で良くね?

キミの名前だけ見てると、後なんだか前なんだか分かんねーっての。


キミの本名はなんていうの?

え? 九条良経(くじょうよしつね)


九条(くじょう)って今じゃ珍しい苗字(みょうじ)よね。

実家で九条ねぎでも生産してるわけ?

もしかして、戦争放棄のお題目を必死に唱えてたりするの?


……冗談よ。

そんなに怖い顔をしないでちょうだい。


じゃあキミのお父さんの名前はなんていうの?

え? 九条兼実(くじょうかねざね)

やっぱり聞いたことないわね。


九条だけに、一家(そろ)って苦情ばっかり言うクレーマーだったりして。


あ、ゴメンね。

さすがにキミの名前をイジりすぎだわね。

こういうの、リアルでやったら絶対ダメだからね。


え? ふーん、なるほどー。

実は由緒ある家柄なんだねー。

それで?

うん、うん。


ふぁー……。

あ、ゴメンね。あくびが出ちゃった。

自分にとって何の興味も無い話を延々と聞かされる時ほど、退屈な時間って無いわよね。


じゃ、さっそく作った歌を見せてちょうだい。


きりぎりす ()くや霜夜(しもよ)の さむしろに

(ころも)かたしき ひとりかも()


なぁに、これ。

ふーん「きりぎりす」って「こおろぎ」のことなんだ。

そうだったっけ?

アタシのイメージだと、きりぎりすは緑色で、こおろぎは焦げ茶色なんだけど。

もしかしてアタシ、別の虫と勘違いしてる?


そう言えば一時期、昆虫食とか言って無印良品のコオロギせんべいが話題になってたりしたわね。

コオロギパウダー入りの給食とかね。


「おろちんゆー」も変な虫を食べる動画をYouTubeに上げてるわ。


前に書いたかも知れないけど、アタシがこの「もしも百人一首の歌人が……」っていうシリーズを書こうと思ったきっかけは、「おろちんゆー」の話し方で登場人物のセリフを書きたいと思ったことがヒントになってるのよ。

あ、でもアタシはコオロギせんべいを食べたいとは思わないけどね。


霜夜(しもよ)」は「寒くて霜が降りる夜の」ってことでいいのかしら。


「さむしろに」って何?

え?「(むしろ)に」ってことなの?


(むしろ)って、針の(むしろ)とか言う、あの(むしろ)ね。

ゴザみたいなものかしら。


(ころも)かたしき」ってのは何?

着ている(ころも)が固いってこと?


え? 「かたしき」は「片敷(かたし)き」の意味なの?

ふーん、「衣かたしき」で「着物の片袖(かたそで)()いて」って意味なんだ。


「ひとりかも寝む」って何?

「一人かも、寝るのは」みたいな感じ?


え? 「独りで寝るんだろうか」ってことなんだ。

そう言えば、()()()()柿本人麿(かきのもとのひとまろ)くんが 「長々し夜を ひとりかも寝む」って()んでたわね。

それと一緒ってことね。


じゃあまとめると、キミが言ってることは、

「こおろぎが鳴く霜の降る寒い夜、(むしろ)の上に着物の片袖(かたそで)()いて、独りで寝るのだろうか 」

って感じかしら。


うーん、何だかよく分からないわね。

いったいキミは何が疑問なの?

何が不満なの?

いつも寝てるように寝りゃあいいじゃないの。


(むしろ)の上に寝るのが嫌なの?

着物の片袖(かたそで)()いて寝るのが嫌なの?

それとも独りで寝るのが嫌なの?

もしかして、そもそも寝るのが嫌なの?


アタシがそんなキミの疑問と不満に答えてあげるわ。

こんなの、答えは簡単じゃないの!

独りで起きてりゃいいのよ。


アタシ、別にふざけてなんかいないわよ?

これはね、アタシが高2の冬に彼女にフラれてから、ずっと悲しくて(さび)しい夜を過ごしてきた経験から言ってるのよ。


アタシ、どうしようもないくらい悲しくて(さび)しくなった時は、一日中寝ないでずっと起きていよう、って心に決めてた事があるの。

次の日は眠くて大変だけど、「眠気は悲しみに勝る」のよ。


当時のアタシにとっては、一日中悲しみに心を悩まされるよりは、一日中眠気に悩まされてる方がまだ楽だったの。

そう思えるくらい、アタシは毎日悲しみに打ちひしがれていたのよ。

今でも、あの時の感情が急に(よみがえ)ってきたりすることがあるわ。


そういうトラウマって、何かの拍子にフラッシュバックするのよね。

そんな時、アタシは寝ないでずっと起きてるわ。

頭がボーッとしてきたら、悲しみもボーッとボヤけてくるのよ。


……って、またアタシが高2の冬にフラれた話を始めちゃったわね。

もう分かってると思うけど、アタシは今でもこの時のショックがトラウマになってるのよ。


アタシが彼女の話を何度も繰り返し書いてる理由は、ここに繰り返し書く事で自分のトラウマが消えたりしないかな、っていう淡い期待を抱いてるからなの。

でもそのせいで何度も彼女を思い出すことになって、かえって逆効果になってる気がしないでもないわね。

つか、完全に逆効果だわ。


まぁでも、これを読んでる人も、こんな話ばっかり読まされてうんざりしてるんじゃないかしら。

それでもここまで読んでくれている貴方(あなた)は、もう立派なファンファンになってるわ。


じゃあ最後にアタシの感想を付け加えておくわね。


きりぎりす ()くや霜夜(しもよ)の さむしろに

(ころも)かたしき ひとりかも()

コオロギの色は ゴキブリの色

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