084.藤原清輔朝臣 「永らへば またこの頃や しのばれむ 憂しと見し世ぞ 今は恋しき」
はーい、じゃあ次は藤原清輔朝臣くーん。
こっちに来て作った歌を見せてくださーい。
お、来た来た。
……って、また藤原かー。
ここは藤原組かよ。
それか、藤原建設? オフィス藤原? 藤原ホールディングス?
あれ、今日はゲップが出ないわね。
もしかして耐性が付いちゃったのかも。
耐毒、耐マヒ、耐藤原みたいな。
ところで、キミのお父さんの名前はなんていうの?
え? 藤原顕輔?
何か聞いたことあるわね。
……って、このクラスの左京大夫顕輔くんじゃないの。
たしか尿漏れの歌みたいなのを詠んでた気がするわ。
え? そんな歌じゃない?
そうだったかしら。
よく覚えてないわね。
ちょっと前までは、親子で同じクラスかー、なんて言ってたけど、もう親子耐性も付いちゃったわ。
何しろ校長のお父さんがこのクラスの生徒だからね。
どんだけ時空が歪んでんだって話よ。
でもキミ、お父さんと仲が悪いんじゃないの?
アタシがこの教室に入ってくる前に、キミと左京大夫顕輔くんとで取っ組み合いのケンカをしてたって聞いたわよ。
Wikipediaにも「顕輔と対立し」とか「父に疎まれ」って書いてあるし。
とにかく、親子ゲンカを教室でするのは止めてちょうだいね。
学校はケンカをする場所じゃないのよ?
ってか、そもそも親子で来る場所でもないんだけど。
ま、校長の父親が進んでドッキリを仕掛けるような学校だから、そんなの大した問題じゃないのかもしれないわね。
じゃ、さっそく作った歌を見せてちょうだい。
永らへば またこの頃や しのばれむ
憂しと見し世ぞ 今は恋しき
なんだよー。
さっきはシカの歌で、今度はウシの歌かよ。
え? そのウシじゃない?
そりゃそうでしょうよ、「憂し」って書いてあるんだから。
知ってて言ってんのよ。
「永らへば」ってのは何?
え? 「もし生き長らえるなら」って意味なの?
じゃあ「またこの頃や しのばれむ」は?
ふーん、「また今が懐かしく思い出されるだろう」ってことね。
「憂しと見し世ぞ 今は恋しき」はどういう意味なの?
え? 「ツラいと思っていた昔が今では恋しく思える」ってことなんだ。
「憂し」ってツラいって意味なのね。
そういえば「憂き」は「ツラさ」だって、道因法師も言ってたわ。
アタシは「憂鬱だ」とか「心配だ」って意味かと思ってたんだけど。
言われてみれば、牛も何かとツラそうだわね。
乳牛だったら、ひたすらお乳を搾られる毎日だもんね。
「オマエらに飲ませるための乳じゃねーよ」って、牛たちはきっと内心で思ってるわよね。
そのうち人間にも角やシッポが生えるかも知れないわ。
闘牛だったら剣を持った人間と闘わされて最後はメッタ刺しにされて殺されちゃうし、家畜として飼われている牛だって、最後は屠殺場で頭を撃たれ首を切られて逆さに吊られ、皮を剥がされ、お腹を割かれて肉として切り分けられる訳でしょ?
ツラいわー。
やっぱ、牛だけに「憂し」だわー。
けど、そんなこと言ったら、馬もツラいわね。
最近は興味が薄れてるけど、昔はアタシ、競馬が好きでよく見てたのよ。
府中競馬場にはよく通ってたわ。
帰り道で立ち寄ったゲームセンターには、オグリキャップやトウカイテイオーなんかの競争馬のぬいぐるみを景品としたUFOキャッチャーがあって、よく取って遊んだものよ。
座席の後ろのリアウィンドウに、UFOキャッチャーで取った競争馬のぬいぐるみをズラリと並べてる車が街中を走ってたりもしていたわね。
今となっては懐かしい思い出だわ。
つーか、年齢がバレるわね。
まぁ、もうとっくにバレてると思うけど。
こんな事を書いてると、きっとこれを読んでる人から「昭和ネタ全開」とかって、失笑を買っちゃうわね。
ま、一応、今回は平成ネタなんだけどね。
……さて、と。
唐突だけど、ここで一人、アタシのお気に入りのなろう作家様について書かせてもらうわね。
何で急に、と思っている人のために、ちょっと補足させてもらうわ。
「あらすじ」にも書いているんだけど、この作品は過去に別アカウントで投稿して削除したものを若干修正して、また投稿し直してるものなのよ。
アタシ、過去にこの作品を投稿した時に、「猫らてみるく」っていう作者様から、この作品のレビューを書いて頂いたりコメントを付けて頂いたりしてたの。
こんなエロネタや古いネタ全開の支離滅裂な作品を読んでもらえてるなんて、身に余る光栄だったわ。
これを読んでる人は、後で「猫らてみるく」様のマイページに飛んでみて欲しいんだけど、この人、凄い人なのよ。
自身の作品も多くて「366色の物語」は毎日欠かさず投稿して完結してるし、その間にも他の人へ作品レビューとか感想もたくさん書いてるし、おまけに企画の宣伝までこなしてたからね。
ここまで出来る人って、そうは居ないんじゃないかしら。
二刀流どころか三刀流、四刀流、下手すりゃ千手観音だわ。
さっき挙げた「366色の物語」なんて、それぞれのページがカラフルな写真入りのレイアウトになっていて、そのまま製本して出版できるレベルよ。
これはその日の「色」を題材にした掌編集になってるんだけど、話の切り口が本当に多彩で、その表現は簡潔で的確、毎回「上手いなぁ」って感心させられたのを覚えているわ。
短編小説を上手に書きたいと思う人は、毎日この「366色の物語」を丸暗記するくらいのつもりで読み込んだらいいんじゃないかしら。
たったこれだけで相当な実力が身に付くんじゃないかと思うわ。
アタシ、滅多に人を褒めたりしないんだけど、「猫らてみるく」様は本当に別格だったわね。
……って、さっきから過去形の表現になっているのは、残念ながら彼女がもう長い間、作品を投稿されていないからよ。
彼女の新作が読めないことは、とても残念ね。
それでも「猫らてみるく」様は、アタシの「心の師匠」なのよ。
いつか戻ってきてくれる日をアタシはいつまでも待っているわ。
あら、また話が逸れたわね。
どこまで書いてたっけ。
そうだ、思い出した。
馬もツラいって事を書きたくて、競走馬の話を持ち出したんだったわ。
競走馬の牡馬だって、種牡馬にでもならない限りは、ほとんどが馬肉にされちゃうのよ。
牝馬だったらそこそこの成績でも繁殖に上げられたりするけど、それでも用が済んだらやっぱり馬肉にされちゃうし。
馬も「憂し」だわー。
ニワトリなんか、もっとヒドいことになってるわよ?
ニワトリのヒヨコなんて、オスと分かった時点で、生きたまま砕機粉で粉砕されちゃうからね。
まさに「男はつらいよ」を地で行ってる感じがするわ。
家畜とはいえ「命って何なんだろう?」って考えさせられちゃうわね。
じゃあ結局、キミが言ってることは、
「もし生き長らえるなら、また今が懐かしく思い出されるだろう。ツラいと思っていた昔が、今では恋しく思えるように」
ってことかしら。
甘いわー。
甘すぎるわー。
お砂糖の分量、絶対間違えてるわー。
グラムをキログラムと間違えてんじゃないの?
大さじ一杯は、だいたい15gよ?
15kgじゃないのよ?
どんだけ甘いのよー。
「ツラいと思っていた昔が今では恋しく思える」とか、そんなのツラいうちに入らねーっつーの。
本当にツラいっていうのはね、どんなに時間が経ってもツラいものなのよ。
あとで恋しく思えるツラさなんて、そんなの本物のツラさじゃないわ。
もう何度も書いてるように、アタシは高2でツラい失恋を経験したけどさ、それが後になって恋しく思えるなんてことは一度だって無かったわよ。
キミは片腕を切り落とされて、それが後になって恋しく思える?
両目をえぐられて、それが後になって恋しい?
フザけるんじゃないわよ!
キンタマ潰して出直して来いっつーの。
じゃあ最後にアタシの感想を付け加えておくわね。
永らへば またこの頃や しのばれむ
憂しと見し世ぞ 今は恋しき
ウシの肉を食べ 「うま」とつぶやく




