081.後徳大寺左大臣 「ほととぎす 鳴きつる方を 眺むれば ただ有明の 月ぞ残れる」
はーい、じゃあ次は後徳大寺左大臣くーん。
こっちに来て作った歌を見せてくださーい。
お、来た来た。
キミのその、後徳大寺っていうのは名前の一部なの?
昔、徳大寺有恒っていう、ちょっと勝新太郎に似た自動車評論家がいたんだけど、その人の顔が浮かんで来ちゃったわ。
え? 本名は徳大寺実定っていうの?
ふーん。
その、アタマに「後」って付くのは何の意味があるの?
え? 祖父の徳大寺実能が「徳大寺左大臣」で知られているからなの?
なるほど、そういうことね。
初代と間違えられないように「後」って付けた感じなわけね。
たしかに、同じ名前を何度も使い回してると紛らわしいもんね。
落語家なんかはそんな感じよね。
先代の名前を引き継いだりしてさ。
林家正蔵なんて、今でもう9代目よ。
まぁでも9代目林家正蔵なんて、何年経ってもこぶ平としか思えないから、紛らわしいって事は無いけどね。
もともと先代とは格が違い過ぎるのよ。
ってアタシ、先代を知らないんだけど。(笑)
この人、何よりもまず声が落語家の声じゃないのよね。
いつ聞いても「コイツ、ちゃんと修行してんのか?」って、こっちが心配したくなっちゃうような声してんのよ。
なんて表現したらいいのかな、声に重みが感じられないっていうか、品が無いっていうか、深みが無いっていうか、軽すぎるっていうか、聞いてて不愉快っていうか、聞きたくないっていうか。
え? あ、もちろんいい意味で。
で、何だっけ。
そうそう、アタマに後が付くパターンは、天皇とかでもよく出てくるわよね。
後醍醐天皇なんかは有名だけど、その前には醍醐天皇がいるし、後鳥羽上皇だってその前には鳥羽天皇がいるし。
後なんとか天皇って、よく出てくるイメージがあるわ。
アタシは日本史に詳しくないから、よく分かんないけどさ。
ちなみにアタシはゴダイゴって聞くと、タケカワユキヒデとかミッキー吉野を思い浮かべちゃうけどね。
ま、これを読んでる人には分からないわよね。
でもアタシはそんなの気にしないの。
100人目までには、数少ない読者を全員振り切っちゃうわよ。
ところで、キミのお父さんの名前は何ていうの?
え? 徳大寺公能っていうの?
もちろん、アタシが知ってるはず無いわ。
じゃ、さっそく作った歌を見せてちょうだい。
ほととぎす 鳴きつる方を 眺むれば
ただ有明の 月ぞ残れる
なぁに、これ。
まーた有明の月かよー。
たしか他にも何人か「有明の月」って詠んでいたわよね。
オリジナリティに欠けるんだよなぁ。
「有明の月」は「夜明けまで空に残っている月」の意味だったわね。
上級エロ坊主Jr.の素性法師くんが教えてくれたわ。
他の部分は分かり易いわね。
つまりこの歌って、「ホトトギスが鳴いた方を見たら、夜明の月がまだ残ってた」みたいな感じでしょ?
惜しいなー。
雰囲気は悪くないんだけどね。
でも、なにしろ81人目だからさー、今さら「有明の月」なんて詠まれても、陳腐にしか思えないのよ。
アタシ的には、もうちょっと攻めて欲しかったわー。
「月島の月」とか「芝浦の月」とかさー。
あ、でもキミの時代には、あの辺りはまだ海だったんだっけ。
もとは埋立地だからねー。
つーか、「有明の月」の「有明」は地名じゃなかったわね。
じゃあ、そうねー、思い切って「コミケの月」とか、どうかしら?
有明って、イベントでオタクを集めてるイメージがあるし、オタクっぽい感じが出て、インパクトがあると思うんだけど。
夏のコミケの時期になると、東京ビッグサイトの混雑ぶりとかをテレビで報じてるイメージがあるし。
「蒼天の月」とか「紅の月」なんてのもいいわね。
アタシはBABYMETALも好きなのよ。
かつては「ギミチョコ」とか「紅月」なんかをYouTubeでよく見てたわ。
去年は「RATATATA」が海外でバズって凄いことになってたわよね。
相変わらず、MOAメタルの笑顔は破壊力抜群だわ。
ちなみにアタシは貧乏だから、円盤なんて贅沢品は買えないのよ。
何せアタシは元契約社員、契約切れで転職して今は底辺社員だからね。
仕方なくYouTubeで我慢しているわ。
こんなはずじゃなかったんだけどなぁ。
前にアタシ、高2の夏休みは毎日17時間勉強したって書いたわよね。
そこまでの人生は割と順調だったのよ。
でも高2の終わりにA子がYと付き合い始めたじゃない?
もうそれが本当にショックでね。
これでアタシは完全に目標を失ったわ。
高校生活の目標も、人生の目標もね。
アタシは絶望したと同時にあらゆる気力を失ったのよ。
文字通り、なーんにもする気が無くなっちゃったの。
当然、勉強もしないわね。
そんなアタシを尻目にA子とYは大っぴらに付き合い始めるし、もうこの時点でアタシはクラスの中で腫れ物みたいな扱いになってたわ。
そりゃあそうよね、アタシはそれまで休み時間もずっと勉強してたからさ。
「そこまでして、いい成績が取りたいのかよ」なんて陰では言われてたみたいね。
さすがに面と向かって誰かにそう言われたことは無かったけど、周りはそんな感じだってA子が愚痴ってたわ。
アタシとA子が付き合ってることは当然A子の友達も知ってるから、彼氏のアタシがそういう状態だとA子への風当たりも強くなってたみたいね。
でもアタシには余裕が無いから「そんなのは好きに言わせておけばいいや」って思ってたわ。
部活の件もあって、アタシはA子を除いたクラスの全員に愛想を尽かしてたからね。
実際、このときのアタシは、「たとえクラス中のみんなに嫌われても、A子さえ自分を好きでいてくれたらそれでいい」って思ってたわ。
そんな状況でA子とYがくっついたのよ?
もうアタシの居場所なんて、どこにも無いじゃないの。
それに、もともとアタシはA子と結婚して幸せになるために必死で勉強してたのよ。
肝心のA子がYに取られたんじゃ、もう勉強する意味も無いわけ。
高3の一年間なんて、ただひたすら絶望の日々だったわ。
「もうアタシの人生なんて、どうでもいいや」って思ってたから。
言ってみれば、アタシの人生は高2の冬で突然終わりを迎えて、高3からはずっと余生を送ってるようなものよ。
少なくともアタシの感覚としてはね。
この失恋でアタシは完全に人生を棒に振ったわ。
きっとこれを読んでる人は、「そんな事でずっと立ち直れずに人生を棒に振るなんてバカじゃねーの?」って思うわよね。
それはその通りよ。
自分でも自分を「バカだなぁ」って思うわ。
でも、そう思っていてもアタシは無気力な状態から抜け出せなかったの。
仕方が無いのよ、バカだから。
バカの宿命だわ。
たとえリゼロみたいに何度も死に戻りを繰り返すことが出来たとしても、アタシは彼女と会えば絶対に彼女に対して恋愛感情を持つし、告白されればもちろん付き合うし、そしたら本気になって彼女と結婚しようと思うし、そう思ったらステ振りで勉強に全振りすると思うわ。
それがアタシの行動パターンなのよ。
そしてあの状況で、あのタイミングで彼女がYと付き合い始めたら、何回人生を繰り返そうがアタシには絶対立ち直れる気がしないわ。
そういう意味では、後悔は無いわね。
アタシにとっては変化の余地が無いから。
もうちょっと楽しいイベントを踏んどきゃよかったっていう心残りはあるけど、アタシとA子の恋愛シナリオは最終的には同じルートを辿ることになるだろうからね。
それがアタシという人間なのよ。
そうならないとしたら、それはアタシがアタシじゃなくなった時だわ。
そうねぇ、もしもアタシが過去のアタシに何か教訓を残せるとしたら、受験勉強と恋愛は両立しない、っていう、ありふれた教訓だけね。
でも仮にそれが分かっていたとしても、彼女から告白されたら、それを理由に断るなんてアタシには出来ないから、結局彼女と付き合うようになって、以下同様でやっぱり今のアタシみたいになっちゃうのよ。
それが両立できるくらい余裕を持って受験勉強ができるような人なら関係無いでしょうけど、要するに最初からアタシにはそんなの無理ゲーだったってことね。
……さて、と。
これまでいろんなところに分散して書いてきたけど、以上が高校時代にアタシとA子とYとの間に起こったコトの顛末よ。
結局、流れ流れて今は底辺社員だわ。
いい年齢して、給料は新入社員と同じくらいだからね。
それも自業自得よね。
ま、生きてるだけでも充分健闘してると思うわね。
その代わりアタシの精神はとっくに死んでるけど。
アタシがヒネくれた人間だってことは、アタシの作品を読んでくれてる人なら、もうとっくに気付いてるんじゃないかしら。
アタシがそうなった原因は、全てとは言わないまでも、その大部分はこの高校時代の失恋にあるのよ。
ずいぶん長々と書いてきたけど、ただそれだけの話だわ。
じゃあ最後にアタシの感想を付け加えておくわね。
ほととぎす 鳴きつる方を 眺むれば
ただ有明の 月ぞ残れる
コスプレ目当てで 有明に行く




