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080.待賢門院堀河 「ながからむ 心も知らず 黒髪の 乱れて今朝は ものをこそ思へ」

はーい、じゃあ次は待賢門院(たいけんもんいんの)堀河(ほりかわ)さーん。

こっちに来て作った歌を見せてくださーい。


お、来た来た。

……って、アナタは女なのね。

なんか名前の見た目が堅いっていうかさー、どうにかなんないの? これ。


つか、「たいけんもんいん」って何なのよ。

体験入学でも募集してるの?

駅前留学?

何かそんなキャッチコピーでCMを打っていた英会話教室があったわよね。


ところで、アナタのお父さんの名前は何ていうの?

え? 源顕仲(みなもとのあきなか)


だぁれ、それ。

聞いたこと無いわね。

……ってことは、アナタはちゃんと一人でこの学校に通ってるってことかしら。

つーか、それが普通なんだけど。


でもこのクラスって、平気で親子だったり孫とかおじいちゃんおばあちゃんなんかと一緒に通って来る生徒が多いからさ、むしろ普通であることに感心しちゃったりするのよね。


こんな面倒臭いクラスの担任なんて、アタシには絶対無理だわ。

ま、アタシにとってはどうせ今日だけの仕事だし、別にどうでもいいけどさ。


じゃ、さっそく作った歌を見せてちょうだい。


ながからむ (こころ)()らず 黒髪(くろかみ)

乱れ(みだ)今朝(けさ)は ものをこそ(おも)


なぁに、これ。


つか、「ものをこそ思へ」ってどこかで見た気がするんだけど。

あー、そうか。

あのミディアムレアの大中臣(おおなかとみの)能宣(よしのぶ)くんが()んだ歌に出てきたのよ。


御垣守(みかきもり) 衛士(えじ)のたく火の 夜はもえ 昼は消えつつ ものをこそ思へ」だわ。

たしか、昼は警備員で夜は()えゲーマーの人が恋に思い悩んでいるような歌だったわね。


え? そんな歌じゃない?

おかしいなぁ。


「ながからむ」は、長くて(から)むってこと?

夜中に一人でシャワーを浴びてたら、あるはずの無い長い女の髪の毛が排水口にべっとりと(から)みついてる事に気付いて、サーッと血の気が引く、みたいな。

ホラーにありがちなパターンよね。


え? 「長からむ心」で「末永く変わらない心」って意味なのね。

えーっ! 何それー。

それって高2の冬に別れた彼女に対するアタシの気持ちと同じじゃないのー。

彼女に対するアタシの気持ちだって、末永く変わらないんだからねっ!


……って、またその話をアタシに書かせる気?

ま、でも今回はそれについては書かないことにするわ。

たまには自重しないとね。


「心も知らず」は見たことあるわね。

キノコ頭の紀貫之(きのつらゆき)くんが「人はいさ 心も知らず ふるさとは」って()んでたわ。

「心も分からない」って意味だったはずよ。


え? 紀貫之(きのつらゆき)くんはキノコ頭なんかじゃないって?

知ってるわよ、そんなこと。

ただ、思い付きで言ってみただけだわ。

そんなにムキにならなくてもいいじゃないの。


もしかしてアナタ、紀貫之(きのつらゆき)くんとデキてたりするの?

何だか怪しいわね。

夜な夜な彼の太くて堅いキノコを相手に乱れまくってるんじゃないでしょうね?

本当は太堅悶淫(たいけんもんいん)堀河の間違いなんじゃねーの?

このエロ(あま)が。


……あら()だ。

アタシったら、すっかり取り乱しちゃったわ。

こんなことばっかり書いてたら、R18指定しなきゃいけなくなっちゃうわよね。

つーか、読者がドン引きだわ。

自重とか、どの口が言ってんだか。


まぁでもアタシの読者にはきっと変わり者が多いだろうし、もともと絶対数が少ないから、このくらいなら問題無いはずよ。

この際だから、そういう事にしちゃうわ。


えーっと、つまり「ながからむ 心も知らず」は「末永く変わらない心なんて、本当にそうか分からない」ってことになるのかしら。

「末永く変わらない心なんて疑わしい」ってことが言いたいのね。


黒髪(くろかみ)(みだ)れて今朝(けさ)は ものをこそ(おも)へ」は簡単ね。


黒髪を乱して、今朝は思い悩んでいるってことだわ。

きっと「黒髪の乱れ」は、心の乱れも表しているのよ。


キングオブコントの昔のネタに「風紀委員からのお知らせ」ってのがあるんだけど、アタシは「心の乱れ」って聞くと、何だかそれを思い出しちゃうわね。


「服装の乱れは、心の乱れにつながりますっ!」

「その通りだよ」

「心の乱れは、服装の乱れにつながりますっ!」

「戻ってきたよ」

っていう、ゆるーいやりとりが好きだったわ。

片方が事件を起こして解散しちゃったのが残念ね。


じゃあアナタが言いたかったことは、

「末永く変わらない心なんて本当かしらと、黒髪を乱しながら今朝は思い悩んでいる」

ってことでいいかしら。


つまりアナタは、黒髪が乱れるほど激しいエッチをした翌朝に、ふと我に返って相手の男の気持ちに疑いを抱いてるってことね。

何だよ、やっぱエロ(あま)なんじゃねーか。

この状態は、男で言うところの「賢者タイム」ってヤツかしら。

()門院っていうだけのことはあるわね。


つか、男の場合は翌朝どころか、コトが済んだ直後が賢者タイムだけどね。

「なんで俺はこんな女と付き合ってるんだろう?」とか「早く他に、もっといい女を探さなきゃ」なんて、()に戻って考えてる男も居るんじゃないかしら。

賢者タイムとか言う割には、()にもつかない事を考えてたりするからね。


まぁでも、アナタがこの歌に()んだ状況は、男の賢者タイムとはだいぶ違ってるわね。

これって相手のことが大好きで、その相手の気持ちが変わらないかどうかを心配してるってことでしょ?


うーん……、それはよくない傾向ね。

人の気持ちなんて、疑い出したらキリが無いわよ?

そんな心配、するだけ無駄でしょ。


アナタがそういう心配をすることで相手の気持ちを引き留めておけるっていうんなら、いくらだって心配すりゃいいけどさ、相手の気持ちは相手のものなんだから、相手に任せて放っておく以外に出来ることなんて無いじゃないの。

相手の事が本気で好きなら、腹を(くく)って信じる以外に無いとアタシは思うけどね。


これはちょっと変な言い方かも知れないけど、信じるってことは(だま)されるってことなのよ。

あるいは、(だま)されていることに気付いてない状態を、信じているって言うのよ。


神を信じている人は、神に(だま)されているとも言えるわ。

人を信じている人は人に(だま)されているし、自分を信じている人は自分に(だま)されているのよ。


結局ね、人は信じたものに(だま)されるのよ。

信じたものにしか(だま)されない、って言った方がいいかしら。


すべては変化していくものだから、信じたものがずっと変わらないってことはあり得ないわ。

それに、信じたものが変化していくだけじゃなくて、信じた自分も変化していくしね。


そうすると、しばらく時間が()ってから過去を振り返ると「なんでアタシはこんな事を信じていたんだろう」とか「なんでアタシはこの人の言う事を信じていたんだろう」ってことになったりするわけよ。

そういう時に人は「(だま)された」って思うんじゃないかしら。

過去の自分を後悔しながらね。


とはいえ、何にも(だま)されないとか、誰にも(だま)されない、なんて最初から無理な話なのよ。

さっきも言ったけど、信じるってことは(だま)されるってことだから、そうしようと思ったら、何も信じず誰も信じないで生きていくしかないわ。


でも、そんな事は絶対に無理でしょ?

結局、何も信じないで生きていくことは出来ないし、信じたものにはいつか(だま)されるのよ。


「そんな事を言われたって、じゃあ一体どうすりゃいいんだよ」って思うわよね?

どうするもこうするも無いわ。

だって、もともと選択肢が無いんだもの。


アタシたちに出来ることはただ一つ、たとえいつか(だま)される事になろうとも、それを受け入れる覚悟で目をつぶって信じることだけよ。

アナタの場合で言えば、彼を信じて彼に(だま)されてあげるってことね。


いいじゃないの。

本気で好きなら(だま)されてあげなさいよ。

「彼になら(だま)されてもいい」って思えることが、本気で彼を信じるってことだわ。

「彼を愛してる」とか「彼を信じてる」なんて言葉を口にするのは、「たとえ彼に(だま)されたとしてもアタシは本望だわ」って思えるだけの覚悟を持ってからにして欲しいわね。


アナタがいつかそんな人に出会えるよう、祈ってるわ。

ぜひ頑張ってちょうだいね。


じゃあ最後にアタシの感想を付け加えておくわね。


ながからむ (こころ)()らず 黒髪(くろかみ)

乱れ(みだ)今朝(けさ)は ものをこそ(おも)

人を見たら 泥棒と思え

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