078.源兼昌 「淡路島 通ふ千鳥の 鳴く声に 幾夜ねざめぬ 須磨の関守」
はーい、じゃあ次は源兼昌くーん。
こっちに来て作った歌を見せてくださーい。
お、来た来た。
キミのお父さんの名前は何ていうの?
え? 源俊輔?
聞いたことないわねー。
アタシなんか、俊輔なんて名前を見たら中村俊輔しか思い浮かばないわよ。
フリーキックだけで言えば、後にも先にもこの人を越える日本選手はいないわね。
まさにレジェンドだわ。
この人を日本代表から外した監督がいるっていうんだから驚いちゃうわよね。
フランス人の考えることは理解に苦しむわね。
じゃ、さっそく作った歌を見せてちょうだい。
淡路島 通ふ千鳥の 鳴く声に
幾夜ねざめぬ 須磨の関守
なぁに、これ。
淡路島に飛んでくる千鳥の鳴き声で須磨の関守が眠れねーって感じ?
え? ちょっと違う?
ま、ちょっとくらいなら別に構わないわ。
ふーん、「淡路島から渡ってくる千鳥の鳴き声に、須磨の関守は幾夜、目を覚まさせられたことだろうか」って意味なんだ。
つか、ほとんど合ってんじゃねーか。
これほど分かり易い歌も珍しいわね。
解説とか、要らないくらいだわ。
早い話が「夜中に千鳥の鳴き声がうるさくて眠れねー」ってことでしょ?
ところで「関守」って何?
え? 関所の番人のことなの?
なるほど、関所を守る人ってことね。
ふーん。
でもさ、何で関所の番人の歌をキミが詠んでんのよ?
キミと何か関係があるの?
たとえばキミと須磨の関守とはズブズブの関係で、たっぷり賄賂をもらう代わりに何かと便宜を図ってあげたりなんかしてさ。
世の中、金に勝るものは無いってか。
兼昌だけに。
え? そんなことはないの?
変ねー。
だったら関所の番人が夜中に何度も目を覚ましたところで、別にキミにとっては無関係でどうでもいいことじゃないの。
キミがこの歌を詠んだ意図が分からないわ。
まぁアタシはもう恋の歌にはうんざりしてるところがあるから、恋の歌じゃないっていうことだけは好感が持てるけど、正直、歌の出来としてはどうかと思うわね。
べつに情感に富んだ歌っていう訳でもないし、技巧に長けている訳でもないし。
関所の番人の歌なんて、現代で言えば有料道路の料金所にいるジジイの歌って感じでしょ?
そんなの詠まれてもねー。
地味すぎて、コメントする気にならないわ。
……って、こんだけコメント書いてて何言ってんだって話よね。
まぁいっか。
ということで、この歌についてはこれ以上書くことが無くなっちゃったから、ここから先は前回の崇徳院くんのところで書いた、アタシが高校で部活を辞めた話の続きを書くわよ。
もはや、こっちの話がメインだろ説もあるわね。
つか前回、なーにが「また書きたくなったら書くわね」だよ。
「さっそく続きを書いてんじゃねーか」って自分でツッコんじゃうわ。
まぁでも、書きたくなっちゃったものは仕方が無いわよね。
……ってことで、アタシは高1の冬に部活を辞めたわけ。
当時、アタシは同じクラスのA子と付き合い始めていたわ。
高1の9月頃に彼女から告白された事がきっかけね。
(本当は正確な日付を覚えてるけど、まぁここでは9月頃とボカして書くわね)
アタシがこれまでに何回も書いている「高2の冬に別れた彼女」っていうのが、このA子なのよ。
A子はバスケ部で活動していたわ。
よく部活終わりに二人で一緒に帰ったりしてたわね。
ちょっとしたデート気分が味わえて、その時間は本当に幸せだったわ。
アタシ達は付き合っていたとはいえ、クラスの中ではあんまり話をしてなかったからね。
その分、部活の帰り道でいろんな話をしたのよ。
また話が前後するけど、アタシ達のクラスって理系選択のクラスだったから、男子が35名、女子が6名っていうバランスの悪い構成でね。
しかも途中で女子1名が転校しちゃったから、最終的に女子は5名になっちゃったわね。
まぁこんなのは理系のクラスにはどこにでも見られるような「理系あるある」だし、ましてや高校入学の段階から理系を目指す女子なんて希少種だから無理もないんだけどさ。
ちなみに、この男女比率のバランスの悪さは理系に進む人の宿命みたいなもので(薬学科なんかは数少ない例外ね)、どこまで行っても付き纏うものなのよ。
アタシは大学では数学科だったけど、そこでも似たような比率だったわ。
全国的に見ても、当時の理系の男女比率は7:1とか6:1とかじゃなかったかしら。
男女の志向や意識、性質の違いを示す端的な例だわね。
最近は、もう少しマシになってるのかも知れないけど。
で、これだけクラスの男女比率がアンバランスだと、休憩時間だろうが昼休みだろうが、どうしたって女子は女子でグループを作って固まっちゃうのよ。
この環境で女子が男子と仲良くしてると、もうそれだけでその娘は女子のグループから爪弾きにされるんじゃないかしら。
これでクラスが男女同数だったら、男子と女子が自然と話せるような雰囲気にもなったんだろうけどね。
アタシ達がクラスの中であんまり話をしてなかったのは、そういう雰囲気だったせいもあるのよ。
話をしない代わりに、ふとした拍子に目が合ったときなんかはお互いアイコンタクトを取ったりはしてたけど。
で、クラスの中がこんな感じで、アタシとA子はほとんど話もしない状態だったから、部活終わりに帰る時間は二人にとって特別な時間だったのよ。
その頃には辺りも薄暗くなってて、自然といい雰囲気にもなるからね。
手を繋いだり腕を組んだりしてさ。
帰り道の途中で公園に立ち寄って、ベンチに座りながらいろんな話をしてたわね。
けど、前回書いたとおり、アタシは部活を辞めざるを得なくなったのよ。
アタシがA子に「部活を辞めた」って話したとき、彼女はすごく残念そうにしていたわね。
だって、それって部活終わりに二人で一緒に帰る機会が無くなるってことだからね。
A子からは「なんで部活辞めたの?」とか「辞めるなら一言相談して欲しかった」って言われたわ。
ちょっと不機嫌そうにね。
でも、部員がアタシ以外に誰も出てこないなんて、彼女に相談してどうにかなるレベルの話じゃないでしょ。
アタシだって限界まで部活を続ける努力をしたし、これ以上どうすりゃいいのよ。
それに、アタシは大好きな女の娘の前で愚痴をこぼすとか弱音を吐くなんてことは、したくなかったのよ。
そんなの男として格好悪いでしょ。
大好きな女の娘の前なんだから、そりゃ格好つけるわよ。
だからアタシは多くを語らなかったわ。
「ごめん。いろいろあって、部活を続けられなくなった」って伝えただけね。
後から考えれば、アタシのそういう言葉の足りないところが彼女を不安にさせて、不信感を抱かせる事に繋がったんだと思うわね。
そういうちょっとした不安や不信感が積み重なっていく度に、彼女の気持ちが少しずつ離れていったんだと思う。
これを読んでる人の中で、いま誰かと付き合っている最中だっていう男の子がいたら、アタシから忠告しておきたい事があるわ。
「特に何も言わなくても彼女は理解してくれてるはずだ」とか「アイツは黙ってても分かっていてくれるだろう」なんて思ってたら、いつか足元を掬われるわよ?
「女なんて、10伝えても1しか伝わらない」くらいに思っていた方がいいわ。
ホントに女って、ビックリするほど誤解する生き物だからね。
レディファーストとはよく言ったものだわ。
あれは男性が女性に敬意を払ってるとか、そんな理由じゃないのよ。
そのくらい丁寧に接してあげないと女はすぐにヘソを曲げちゃうから、男が苦肉の策で仕方なくそうしているだけだわ。
何かを説明する場合も同じね。
とにかく機嫌を損ねないように丁寧に説明しないと「これでもか」っていうくらい女は誤解しまくるし、そもそも機嫌が悪い時は聞く耳すら持たないからね。
それだけ面倒臭くて手が掛かる生き物なのよ、女って。
あ、もちろん、いい意味でよ、いい意味で(笑)。
ま、それはともかく、アタシは部活を辞めざるを得なくなったことで、貴重なA子との楽しい時間をも奪われる結果になったのよ。
部活を辞めることも残念だったけど、A子と一緒に帰れなくなったことはそれ以上に残念だったってことね。
これは今でも心残りだわ。
それもこれも、全部アタシからA子を奪ったYのせいよ。(八つ当たり)
もうイライラして「ウッキーッ!!」って叫びたくなっちゃうわ。
さてと。
それじゃあ今回はこのくらいにしておこうかしら。
つかアタシ、「今回は」なんて、続きを書く気マンマンだわね。
まぁ実際そうなんだけどさ。
こんなの読まされてる読者も災難ね。
せめて、ここから少しでも教訓みたいなものを感じ取って、読者自身の恋愛に役立ててもらえると嬉しいんだけどね。
ま、せいぜい頑張ってちょうだい。
じゃあ最後にアタシの感想を付け加えておくわね。
淡路島 通ふ千鳥の 鳴く声に
幾夜ねざめぬ 須磨の関守
睡眠不足は 昼寝で凌ぐ




