069.能因法師 「嵐吹く 三室の山の もみぢ葉は 龍田の川の 錦なりけり」
はーい、じゃあ次は能因法師くーん。
こっちに来て作った歌を見せてくださーい。
お、来た来た。
キミはこのクラスの伊勢さんに憧れて、彼女が住んでた場所の近くに引っ越したって聞いたわよ?
なかなか気合が入ったストーカーっぷりじゃないの。
もしかして、外で可愛い娘を見かけたら、その娘の家まで尾行しちゃうタイプ?
さすがにそれはちょっとマズイんじゃないかしら。
え? そんなことしない?
本当かなー。
グデングデンに酔っ払ってる人ほど「俺は酔って無ぇ」って大声で吠えるものよ?
キミもそのクチじゃないの?
え? 違う?
ならいいけど。
じゃ、さっそく作った歌を見せてちょうだい。
嵐吹く 三室の山の もみぢ葉は
龍田の川の 錦なりけり
お、ローキック系の歌ね。
つか、分かり易っ!
この歌の意味って、ほとんど読んだままの意味よね。
最後の「けり」が詠嘆なだけで、あとは現代文とほとんど変わらないじゃないの。
これなら、だいたいの意味はすぐに分かるわ。
意味は、
「嵐が吹いている三室の山の紅葉の葉は、龍田川の錦だなぁ」
よ。
錦っていうのは「カラフルな織物」を指すのよね。
つまり、「三室の山に嵐が吹くと、龍田川に色とりどりの紅葉の葉が落ちて、カラフルな織物のようだ」ってことよ。
どこまで正確かは知らないけど、まぁそんな感じの歌よね、きっと。
そういえば、前にも龍田川を歌に詠んでた子がいたような……。
あ、そうそう。
ありワロスくん、じゃなかった、在原業平朝臣くんの歌だわ。
「千早ふる 神代もきかず 龍田川 からくれなゐに 水くくるとは」
……だったかしら。
この歌は、「龍田川が紅葉でこんなにも赤く染まるなんて前代未聞だ」っていう歌だったわね。
一説には、もっとエロい意味があったとも言われてるみたいだけど。
ここで詠まれている龍田川に落ちた紅葉は、紅葉のシーズンが終わって自然に散った紅葉だから、どれも真っ赤な色をしているのよ。
だから龍田川が真っ赤に染まるのね。
でも能因法師くんが詠んだ紅葉は、紅葉のシーズンが終わる前に無理やり嵐で吹き飛ばされた紅葉だから、葉がまだ完全に赤くなりきってないのよ。
だから葉の色が色とりどりで、黄緑だったりオレンジだったり赤っぽかったりして、カラフルになるわけ。
そうやって龍田川にカラフルな紅葉が浮かんでいる様子を、キミは錦にたとえたのよ。
どう? 合ってる?
ふーん、だいたい合ってるんだ。
アタシもやるわね。
こういう分かり易い歌がアタシは好きなのよ。
でも、アタシは「たつた」って聞くと、何だか竜田揚げを連想しちゃうわね。
たぶん今は学校給食のメニューに無いと思うけど、昔アタシが小学生だった頃は、学校給食のメニューに「クジラ肉の竜田揚げ」ってのがあったのよ。
まぁ文字通り、クジラの肉を竜田揚げにしただけなんだけどさ。
味は……そうねぇ、激マズってほどマズくは無いけど、それほど美味しくもないって感じだったわ。
って、なんか昔そんな感じのコントがダチョウ倶楽部のネタにあったわよね。
料理の食レポか何かで、「甘くもなく、辛くもなく……かといって美味くもなく」みたいな。
はっきり言って鶏肉の竜田揚げの方が百倍おいしいわね。
まぁ、味はそんなふうに微妙ではあるんだけど、でも食感は魚とは全然違ってて、やっぱりちゃんとした肉なのよ。
例えばフィレオフィッシュなんかの魚のフライだと、身がペラペラしてるじゃない?
でもクジラ肉の竜田揚げは、そんな感じが一切しないの。
アタシたちの世代は、クジラが哺乳類だってことを、食べて理解していた世代ね。
あの味と食感は、魚となんて間違えようがないわよ。
でも日本は何年か前に国際捕鯨委員会(IWC)を脱退して、また捕鯨を再開し始めているから、そのうちまた学校給食に鯨肉の竜田揚げが頻繁に登場するかも知れないわね。
ひょっとするとマクドナルドから「チキンタツタ」と並んで「クジラタツタ」なんてメニューが出るかも知れないわよ?
味は一切保証しないけど。
つーか、絶対売れないと思うわ。
クジラナゲットならワンチャンあるかもね。
あ、やっぱ無いわ。
じゃあ最後にアタシの感想を付け加えておくわね。
嵐吹く 三室の山の もみぢ葉は
龍田の川の 錦なりけり
座って揚げても たつた揚げ
……なんてな。




