064.権中納言定頼 「朝ぼらけ 宇治の川霧 たえだえに あらはれわたる 瀬々の網代木」
はーい、じゃあ次は権中納言定頼くーん。
こっちに来て作った歌を見せてくださーい。
お、来た来た。
……って、キミは権中納言なのね。
アタシ、権中納言って聞くと、すごーく嫌な印象があるんだけど、どうしてかしら。
あー、思い出したわ。
思い出したくなかったけど、思い出しちゃったわ。
前に見た、権中納言敦忠くんの歌が最悪だったからよ。
童貞の恋愛感情なんてゴミみたいなものだ、とか言い放ったあの歌よ。
え? そんな歌じゃない?
うるさいわね、アタシにはそう聞こえたのよ。
ところで、権中納言定頼くんの本名はなんていうの?
え? 藤原定頼っていうの?
ゲフッ。
あらゴメンなさいね。
げっぷが出ちゃったわ。
じゃあキミのお父さんの名前はなんていうの?
え? 藤原公任?
ゲフッ、ゲフッ。
おかしいわね、こんなにげっぷが出るなんて。
……って、藤原公任って言ったらハム太郎…じゃなかった、このクラスの大納言公任くんのことじゃないの!
だから親子通学はヤメろって言ってんだろ。
もー、いったいこれで何組目よ。
もはや数える気力も無いわ。
親子で学割ってか。
どこの携帯電話のキャンペーンだよ。
まぁいいわ。
つーか、藤原定頼ってどこかで聞いた気がするんだけど……。
あー、思い出したわ。
ちょっと前に小式部内侍さんがグチってたのよ。
キミ、何かの歌会で小式部内侍さんに「母に代作を頼む使者は出したか?使者は帰って来たか?」なんて言って揶揄ったそうね。
腹が立ったから、とっさに「大江山いくのゝ道のとほければ まだふみもみず天のはしだて」って詠んだら、キミは返歌を返せずにそそくさと逃げ去ったそうじゃない。
まったく、何やってんのよ。
女を揶揄う男って、マジで最悪だから。
アタシ、女の言うことは半信半疑で聞き流すようにしてるけど、それでもキミみたいに女を揶揄ったりはしないわよ。
そりゃあ中学生までなら女を揶揄ったこともあったけど、高校入学以降はたぶん一度も無いわね。
あ、一応言っておくけど、これはリアルの話ね。
この作品の中では、アタシは女だろうが誰彼かまわずボロクソに言う女キャラって事になってるんだけど、リアルなアタシは女性にいつも優しく丁寧に接するダンディな中年キャラなんだからね。
リアルとごちゃ混ぜになった作品でゴメンなさいね。
でもま、アタシが書く作品なんて、大体いっつもこんな感じだわ。
ついて来てくれる読者は、ごくわずかよ。
それだけに、ブックマークなんか付けて読んでくれている人には感謝しか無いわね。
……って、さっき見たら、なんと2件のブックマークが付いてて、思わずヒデキ感激だわ。
どこの誰だか知らないけど、この場を借りてお礼をさせてもらうわね。
あと、これも誰だか知らないけど、この作品を10点で評価してくれた人が1人だけいたわ。
本当にありがとね。
貴方がいなかったら、たぶんアタシは投稿するのを途中で止めちゃうところだったわ。
アタシ、今夜のディナーはちょっと贅沢して、バーモントカレーにしちゃおうかしら。
あ、でもこのネタは今の人には分からないわよね。
思わず世代の断絶を感じちゃうわ。
ていうか、バーモントカレーが贅沢って、ふだん何食ってんだって話よね。
あら、また話が横道に逸れちゃったわね。
じゃ、さっそく作った歌を見せてちょうだい。
朝ぼらけ 宇治の川霧 たえだえに
あらはれわたる 瀬々の網代木
ふーん。
イヤミな歌を詠んでくるかと思ったら、案外あっさりした歌ね。
大袈裟な恋の歌でもないし、言葉遊びの度が過ぎて意味不明って感じでもないわ。
このシンプルさが、むしろ心地いいわね。
たとえるなら、ナルトが3枚くらい浮いてるだけのシンプルな醤油ラーメンって感じだわ。
ドロドロの恋を大袈裟に詠んだこってりスープの極太ラーメンとか、技巧を凝らし過ぎて意味不明な邪道ラーメンとかは、やっぱりアタシの口には合わないのよね。
こういうシンプルなのが一番いいのよ。
なんのヒネりもない、どストレートの細麵なんて、もはや絶滅危惧種に近いんじゃないかしら。
「朝ぼらけ」は「夜が明けてきて、ほのかに明るくなってくる頃」だったわね。
坂上是則くんが教えてくれたわ。
「宇治の川霧」はそのまま「宇治川にかかる霧」ってことね。
「たえだえに」は「絶え絶えに」でいいのかしら。
息も絶え絶えに、とか言うわよね。
きっと「途切れ途切れに」みたいな意味ね。
「あらはれわたる」って何?
「洗われ渡る」ってこと?
へー、「あちこちに表れてくる」って意味なんだ。
じゃあ「表れ渡る」ってことね。
「渡る」は「響き渡る」なんかと同じ使い方ね。
「瀬々の網代木」って何かしら?
「瀬」は、たしか「浅瀬」の意味で、川の浅いところのことよね。
「網代木」が分からないわ。
え? 「網代」は、魚を取る仕掛けのことなの?
で、「網代木」は網代を仕掛けた木の杭のことなんだ。
なるほどねー。
じゃあ結局、キミが言いたいことは、
「夜明け頃、宇治川にかかる霧が途切れ途切れになって、あちこちに表れてくる浅瀬の網代木」
ってこと?
いいわねー、このヒネりの無さ。
なーんにも掛かってないじゃない。
「だなぁ」とかいう詠嘆すら無いものね。
まるで、何の感動も無いけど見たまんまを詠みました、って感じね。
先生に無理やり書かされた小学生の作文みたいなところが逆に新鮮だわ。
いい意味で頭の中が空っぽじゃないと、こんな歌は詠めないわ。
え? アタシはキミの歌をけなしてなんか無いわよ。
褒めてるのよ。
え? いい意味で頭の中が空っぽってどういう事ですかって?
そういう事をいちいち聞かないでくれる?
例えば、ゴミ箱にゴミがあふれているよりは、空っぽの方がいいでしょ?
そういう事よ。
なぁに? よく分からない?
そんなの分からなくていいのよ。
アタシだって自分が何を言ってるのか、よく分からないんだから。
じゃあ最後にアタシの感想を付け加えておくわね。
朝ぼらけ 宇治の川霧 たえだえに
あらはれわたる 瀬々の網代木
旅館の朝食 アジの開き




