058.大弐三位 「有馬山 猪名の笹原 風吹ふけば いでそよ人を 忘れやはする」
はーい、じゃあ次は大弐三位くーん。
こっちに来て作った歌を見せてくださーい。
お、来た来た。
あれ? アナタ、女よね。
ゴメンなさいね、アタシ、男の名前かと思って「くーん」とか言っちゃったわ。
先入観って怖いわね。
ちゃんとWikipediaで確認しろよって話よね。
でも「大弐三位」って、なんか字面が凄いわね。
そのうち「二位じゃダメなんですか」って、蓮舫が質問しに来るわよ。
って、このネタは前にもやった気がするわね。
まぁアタシは平気で使い回すけど。
え? アナタが藤原賢子ちゃんなの?
紫式部さんの娘さんってこと?
まーた親子のパターンかぁ。
やっぱり百人一首って、オールスター家族対抗歌合戦みたいなとこがあるわね。
このクラスの親子って何組目かしらね。
いちいち数えてないから分かんないけどさ。
ふーん、そっかー。
どおりで顔が似てると思ったわ。
だってアナタが来る直前まで、お母さんの紫式部さんと話してたのよ。
まぁでも賢そうでよかったわね。
バカだったらどうしようかって、さっきアタシ、本気で心配しちゃったわよ。
じゃ、さっそく作った歌を見せてちょうだい。
有馬山 猪名の笹原 風吹けば
いでそよ人を 忘れやはする
なぁに、これ。
風が吹いたら記憶も吹っ飛ぶ、みたいな歌?
風が吹いたら桶屋が儲かる、っていう諺なら知ってるけど、それとは関係無さそうね。
何だかよく分からないわ。
「有馬山」はそのまま山の名前だわね。
「猪名の笹原」も猪名っていう地名にある笹の原ってことでいいかしら。
「風吹けば」は、そのまま「風が吹けば」って意味よね。
「いでそよ人を」ってのがわからないわ。
「いでそよ」って何? ゆきぽよ的な感じ?
え? 「さあそれですよ」って意味なの?
何それ。
つか、それって何だよ。
そういえば、昔のお菓子に『カール』っていうのがあって、♪それにつけてもおやつはカール♪ なんてCMソングがあったのよね。
これを聞いたときも、「それって何だよ」って思ってたわ。
あら嫌だ、また昔話をしちゃったわね。
ま、アタシはリアルじゃいい年齢したジジイだから仕方ないんだけど。
「忘れやはする」が分からないわ。
「はする」って何?
走るの? ジョギング?
え? 「忘れやは する」って区切れるの?
うんうん、「やは」は「かは」とか「めや」と一緒で反語なんだ。
そういえば右大将道綱母さんも同じ事を言ってたわ。
反語ってたしか「〜だろうか、いや違う」ってやつよね。
じゃあ「忘れやはする」で、「忘れるだろうか、いや忘れない」ってことね。
つまりアナタが言いたかったことは、
「猪名の笹原に風が吹けば、さあそれですよ、あなたをどうして忘れましょうか、いや、忘れません」
ってことね。
やっぱり「さあそれですよ」が唐突すぎるわね。
どうせ「いでそよ」の「そよ」が、風吹けばの「風」と掛かって、「そよ風」の意味にもなる、とか言い出すんでしょ。
きっと「有馬山 猪名の笹原」ってのも、そよ風から笹原を連想して、それっぽい地名を頭に持ってきただけよね。
こんなふうに技巧ばっかり先行して意味は後付け、っていう歌がアタシは大キライなのよ。
なーにが「さあそれですよ」だよ。
どれだっつーの。
だいたい「猪名の笹原に風が吹く」ことと「あなたを忘れない」なんて、全然関係ないじゃないの。
ただ、「そよ」の一言で意味を掛けて、無理やり繋げただけじゃない。
こんな調子じゃ「あなたを忘れない」とかいう部分も怪しいものだわ。
「風が吹いたついでに思い出したんだけど、あなたを忘れません」
なんて言われて、その言葉を信用できると思う?
そんなの、風が止んだら忘れちゃう程度の話でしょ。
三歩歩いたら忘れるニワトリかっつーの。
それでなくてもアタシは女の言葉を信用できないのに、こんなのそれに輪をかけて信用できないわ。
こんな薄っぺらい言葉を聞くより、ワンワン吠えてる犬の鳴き声の方が、よっぽど心に伝わるものがあるわよ。
世間じゃどう思われてるか知らないけど、こんな歌のどこがいいのか、アタシにはまったく理解できないわね。
アナタの表現で言えば、「いでそよ賢子を 褒めやはする」だわ。
お母さんの紫式部さんも、アナタがこんな歌を詠んで、きっとガッカリしてると思うわよ。
顔は賢そうに見えたんだけどねー。
歌を見てみたらこの程度で、アタシはガッカリだわ。
まぁでも世間は広いから、アナタの歌を絶賛する人も、もしかしたら居るかも知れないわ。
せいぜい頑張ってちょうだいね。
じゃあ最後にアタシの感想を付け加えておくわね。
有馬山 猪名の笹原 風吹けば
いでそよ人を 忘れやはする
3! 2! 1! ハッスルハッスル!




