057.紫式部 「めぐり逢ひて 見しやそれとも わかぬ間に 雲隠れにし 夜半の月かな」
はーい、じゃあ次は紫式部さーん。
こっちに来て作った歌を見せてくださーい。
お、来た来た。
……って、いきなり質問しちゃうけど、アナタのその「紫」ってのはどこから来てるの?
まさか産まれた時の顔が紫色だったから、とか言わないわよね。
悪いけど、それ、死んでるからね。
もしかしてゾンビなの?
ちなみに山部赤人くんは、産まれたときに体が赤かったから、赤人って名前になったらしいわよ。
え? 産まれたときは、みんな赤ちゃんだから体が赤いはずだって?
まぁそう言われればそうね。
じゃあきっと他の赤ちゃんとは比べものにならないくらい、赤かったんじゃないの?
つーか、産まれたときの顔が紫色のアンタに言われたくないわね。
え? 私が産まれた時の顔は紫色じゃないって?
そりゃそうでしょうよ。
紫色だったら、アンタ死んでるわよ。
冗談で言ってるに決まってんじゃないの。
やっぱりゾンビには、ヘッドショットでもかまさない限り、銃弾も冗談も通じないわね。
でも、じゃあなんでアナタは紫って呼ばれてるのかしら。
もしかして、「紫」は「村さ来」の間違いなんじゃないの?
アナタのお父さんって、安物のアルコールが好きだったりしない?
ウイスキーよりホッピーが似合うんじゃないかしら。
そう言えば、三国志のゲーマーだったアタシの友達は、居酒屋の「村さ来」を「そんさく」って呼んでたわ。
三国志には孫策っていう武将が出てくるのよ。
まぁアタシはアタシで居酒屋の「北の家族」を「ペーの家族」って呼んでたけどね。
アタシ、学生の頃は麻雀が好きで、レートの安いフリー雀荘に通ってたのよ。
当時アタシが通っていたフリー雀荘はJR代々木駅の近くにあった平和っていう点2のフリー雀荘で、麻雀好きの学生とか予備校生がよく集まってたわね。
何しろゲーム代が半荘1回200円っていう学生向けのお手軽価格だったのよ。
授業やバイトが無い日は、開店から閉店までぶっ続けで麻雀を打ってたこともあったわね。
つーか、普通に授業をサボってたわね。
他の大学生がサークル活動をしたり恋愛に現を抜かしてる間、アタシは麻雀とバイトに明け暮れてたのよ。
思い出すだけで懐かしくて、切なくて、涙が出そうだわ。
あら嫌だ、こんなところで泣いてる場合じゃないわよね。
ところでアナタのお父さんの名前って、藤原為時っていうのね。
そっかー、紫式部さんって、藤原一族の人だったのね。
……ゲフッ。
あ、ゴメンなさいね。
なぜかゲップが出ちゃったわ。
何かの持病かしらね。
え? どうしてアタシの父の名前を知ってるのかって?
そりゃ、Wikipediaを見てるからよ。
アタシ、気付いちゃったのよね。
最初からWikipediaを見てる前提で書きゃいいんじゃね?って。
毎回アナタたちに父親の名前を聞いてるフリをするのが面倒くせーっていうか、だんだん飽きてきたのよ。
……ほらねー。
なんだかんだ言って、アタシの書く小説ってさー、結局はこのパターンに落ち着くわけよ。
「小説家になろう」に投稿してる作者の中で、アタシほど「Wikipedia」っていう単語が文章中に出てくる作者は居ないと思うわね。
ま、アタシはこの「小説家になろう」のサイトで他の人がどんな文章を書いてるかなんて、ほとんど読まないから分からないんだけどさ。
何しろロクに下調べもせずに思い付きで書き始めちゃうタイプだから、最初から前提知識も何にも持ち合わせて無いのよ。
だからその都度、ネットで調べながら書くことになるんだけど、そうするとWikipediaを引用するのが一番早いし楽なのよ。
だってGoogleで検索すると、だいたい一番最初にWikipediaが出てくるじゃない?
で、苦し紛れに登場人物がWikipediaを調べてるっていう体で書き進めるもんだから、結果的にアタシが書く小説には「Wikipedia」って単語が何度も出てくることになるのよ。
実際には、Wikipediaをせっせと調べてるのはアタシ本人なんだけどね。
でもまぁいいの。
これがアタシの生きる道だわ。
気にしたら負けよ。
ちなみにアナタは、最初に藤原宣孝って人と結婚してるのね。
で、生まれた子が藤原賢子ちゃんっていうのね。
自分の子に「賢子」って名付けるなんて、ずいぶん大胆な事をしたわね。
今は行方不明のYUIMETALに「だいたーん!」って言われちゃうわよ?
こんな名前でもしもバカに育っちゃったら、いい笑い者じゃないの。
アタシの周りにも「美子」とか「恵美」とかいう名前の女の子がいたけど、何の因果か全員もれなくブスで失笑しか無かったわね。
つーか、これって藤原姓のアナタが藤原姓の男の人と結婚してるってことよね。
大丈夫なの? それ。
近親交配だったりしないの?
ちょっとアナタの家系図を確認していいかしら。
あー、アナタと旦那の藤原宣孝とは、4代前が兄弟の関係にあるのね。
競走馬で言うと、5x5のインブリードってことになるわね。
まぁ5x5のインブリードなら大して問題はないわね。
あんまりインブリードが強すぎると、「足元に少し疲れが見られたので運動は控えています」とか「ただ、ちょっと体質的に弱いところがあるようです」とか牧場長からコメントされちゃうから、注意が必要だわ。
え? ダビスタのネタが分からない?
ゴメンなさいね、ネタが古くて。
近頃は「ウマ娘 プリティーダービー」なんかが流行るような時代だもんね。
でもアタシはスマホでゲームをしない人だし、ましてやガチャだの課金だのなんて絶対嫌だからね。
それについてはコメントできないわ。
あれ?
アナタの旦那さんの藤原宣孝って、賢子ちゃんが生まれて2年後に亡くなってるのね。
アナタも苦労してるわねー。
あーなるほどー。
その悲しみを忘れるために書き始めたのが、あの有名な『源氏物語』なのね。
アタシも高2の彼女と別れた悲しみを吐き出すために、せっせと文章を書いて投稿してるようなものだったわ。
他にも理由があるとすれば、単なる夜勤のヒマ潰しね。
まぁ格調高いアナタの作品に比べたら、アタシの書いてる文章なんてゴミみたいなものだけど。
ふーん。
それから5、6年後に「一条天皇の中宮・彰子(藤原道長の長女、のち院号宣下して上東門院)に女房兼(現代でいえば)家庭教師役として仕えた」って書いてあるわね。
そうやって働きながら執筆を続けて、ついにあの『源氏物語』を完成させたのね?
偉いわー。
ところで中宮って何?
え? 天皇の妻を表す言葉なのね?
じゃあ今で言えば、皇后ってことかしら。
天皇の妻の女房兼家庭教師役なんて、凄い仕事をしてたのね。
女房って今で言えば家政婦ってことでしょ?
市原悦子が働き先の家の奥さんに勉強を教えてるようなものね。
あ、最近の子は、市原悦子の『家政婦は見た!』なんて知らないわよね。
その後に放送された「家政婦のミタ」とか「家政夫のミタゾノ」の元ネタとも言えるドラマで、昔そんなのがあったのよ。
そうそう、アタシ、ついてこれない読者はどんどん置いてくわよ。
え? 読者のニーズに合った作品を投稿しないとブックマークも付かないし、評価ポイントも上がらない?
知るかよ、そんな事。
読者のニーズ?
なに、それ。
アタシはアタシが書きたいことを書くのよ。
それにしても、アナタの人物評ってなかなか辛辣だわね。
何だかアタシと同じ匂いを感じるわ。
アタシも気に入らない作品とか人物に対しては、ケチョンケチョンにやっつけちゃうタイプなのよ。
似た者同士ってことかしらね。
案外アナタとは気が合うかも知れないわ。
清少納言に対するアナタのコメントもイカしてるわね。
「得意げに漢字を書き散らしているが、よく見ると間違いも多いし大した事はない」とか「こんな人の行く末にいいことがあるだろうか、あるわけない」とか、口が悪いにも程があるんじゃないの?
これじゃ、アタシと変わらないじゃないの。
もしかしてアナタ、ヤンキーっぽいから紫って呼ばれてるんじゃないでしょうね?
ひょっとして、着物の下に紫色の特攻服を着こんだりしてるんじゃないの?
この、あばずれ式部が。
まぁでも、そうやってハッキリものを言うところって、アタシは嫌いじゃないわよ。
アタシも持統天皇さんの歌とか、権中納言敦忠くんの歌とか、他にもいろいろとクソミソにディスっちゃってるし。
アナタとは、一度ゆっくりプライベートで話してみたいわ。
……って、すっかり前置きが長くなっちゃったわね。
じゃ、さっそく作った歌を見せてちょうだい。
めぐり逢ひて 見しやそれとも わかぬ間に
雲隠れにし 夜半の月かな
うん、うん。
そうかー、そう来たかー。
アタシこの歌、気に入ったわ。
見た瞬間にうんざりするようなゲスい恋の歌でもなければ、失恋の悲嘆に暮れてるだけの歌でもなく、さりげない日常の一コマをさらっと歌に詠んでる感じが、清々しくていいわね。
ムサい恋の歌ばっかり読まされてる中でアナタのこの歌を見ると、蒸し暑いさなかにふっと涼しい風が通り抜けていくような心地よさを感じるわ。
あと、ムダに技巧に走っていないところも好感度高いわー。
歌の中にいろんな言葉の意味を掛けることで技巧を誇示して仲間内でマウントを取ることだけが目的の、最初から大した意味なんて無い歌なのに、後から必死になって歌の意味をこじ付けて分かったフリで解説してるサイトとか見てると、いったい何の冗談かと思えるわね。
こんなの、西野カナが書いた歌詞を後世の学者が真剣に研究してるようなものだわ。
「めぐり逢ひて」は、久々に再会して、ってことね。
「見しやそれとも わかぬ間に」は「見たのがそれかどうかも判らない間に」って意味だわ。
「雲隠れにし 夜半の月かな」は「雲に隠れてしまった夜中の月だなぁ」ってことね。
なるほどねー。
つまりアナタが言っていることは、
「久々に再会したのに、それさえはっきりしないくらいの短い間に、貴方はあっという間にいなくなってしまったなぁ。まるですぐに雲隠れしてしまった夜中の月のように」
ってことね。
ふーん、久しぶりに再会した幼馴染の友達がすぐに帰ってしまった様子を、雲に隠れてしまった夜半の月に譬えているのね。
つまり、久しぶりに幼馴染の女友達と再会したのに、すぐに帰ってしまったことを残念がっているってことかー。
残念がっているというよりは、不満に思っているって感じかしら。
で、それを歌に詠んでストレス発散してるのね、きっと。
まぁでも女の友情なんて、所詮はその程度のものなんじゃないの?
だいたい、幼馴染の友達と大人になっても仲良くしてる、なんて、むしろ気味が悪いわよ。
それに、幼馴染の友達から見たら、アナタみたいに有名になっちゃった人と昔みたいに無邪気で対等な付き合いなんて、できる訳ないじゃないの。
たぶん嫉妬なんかもあったんじゃないかと思うわね。
だって、そんなふうに毎日キラキラ輝いてるような人生を送ってる人とずっと話なんかしてたら、どんどん自分が惨めになってくるじゃないの。
そりゃあさっさと帰るわよ。
アタシだってそうするわ。
アタシは不幸な人とは友達になりたくないけど、幸せ過ぎる人とも友達にはなりたくないわね。
どっちにしろ、そういう人と付き合うことは、アタシの精神的負担になるからね。
……っていうかアタシ、これまで生きてきて、まともな友達なんかいた試しが無いわね。
アタシに友達がいない理由はハッキリしているわ。
アタシが他人の幸せを素直に喜べない、心の狭い人間だからよ。
友達面した人から自慢話やノロケ話を聞かされることに、アタシの精神が耐えられないの。
だってアタシは、友達からそんな話を聞かされたら、どうしても羨ましく思っちゃうし、恨めしく思っちゃうからね。
極端に言えば、友達が楽しそうに話してるのを聞いてるだけでも、そのうちその友達が羨ましくなってきたり、妬んだり僻んだりする気持ちが生まれてきちゃうのよ。
もちろん、そんな気持ちを口にしたり態度に出したりすることは無いけれど、そういう気持ちを持っている自分に気付かされること自体がまず嫌だし、それを表に出さずに調子を合わせてる自分にも嫌気がさすのよ。
友達付き合いが、アタシにとっては精神的負担になるってことね。
結局アタシは、友達からそんなふうに自分の精神の安定を乱されるのが嫌なのよ。
逆に言えば、その程度のことで精神の安定を乱されるほど、アタシの精神状態は不安定だってことね。
アタシにとっては、むしろ女の人との方がかえって気軽に楽しく話せるわ。(一応言っとくけど、ここでいうアタシっていうのはリアルな男としてのアタシってことだからね)
なんで女の人となら気軽に楽しく話せるのかって?
理由は簡単よ。
アタシがもともと女の人とは友達になれないことを知っていて、最初から友達になるつもりが無いから気が楽なのよ。
アタシにとって女の人は友達の対象にはならないってことね。
アタシは男女の友情を否定しているから。アタシにとって女の人は、彼女として付き合う(付き合おうとする)対象か、性的な関係を持つ(持とうとする)対象か、単なる顔見知りか、大きく分けるとこの3通りにしか認識できないのよ。
もちろん家族は例外ね。
まぁ、この辺の事情については気が向いたらまたどこかで触れるわね。
約束はできないけど。
それに、女の人の話はアタシから見れば異性が語っている話になるから、自分が生きている男の世界とは違った世界を生きている人の話として客観的にそれを聞くことができるし、女の人の話は自慢話やノロケ話も含めて男のそれとは異質なものだから、たとえ自慢話であってもノロケ話であってもアタシの心には刺さらないのよ。
これが男の話すノロケ話だったらアタシはたぶんその人を羨ましく思ったりするんだけど、そうならないのは、女の人が話すノロケ話は女が男から愛される話であり、アタシは女からは愛されたいけど男から愛されたいとは思っていないから、それを聞いても羨ましいという感情が生まれないってことね。
同様に、女の人が話す自慢話は女の幸せを自慢する話であり、女の幸せは男の幸せとは別物だから、それを聞いても男のアタシには羨ましいという感情が生まれてこないのよ。
こんな感じで、女の人からは何を聞いてもアタシの心に刺さらないから、羨ましいとか妬んだり僻んだりする気持ちが生まれてくる事も無ければ、自分の精神の安定を乱されることも無く、結果的に女の人と話すことがアタシの精神的負担にはならないってわけ。
そもそもアタシは基本的に女の人が好きだから、女の人には優しく丁寧に接するし、よっぽどの事が無い限りは嫌ったりしないのよ。
ちなみにアタシがさっきからずっと「女の人」っていう書き方をしているのは、「女」っていう書き方をすることに抵抗を感じるからよ。
なぜ抵抗を感じるかと言えば、日頃からアタシは女性を「女の人」という呼び方で認識していて「女」という呼び方では認識していないからよ。
つまり何が言いたいかというと、アタシは日頃から女性に対して「女」ではなく「女の人」と呼ぶ程度には敬意を払って丁寧に接してるってことよ。
特にアタシは、女の人が小さくクスッて笑う顔を見るのが好きね。
やっぱり笑うと可愛いわよ、女の人って。
若い娘だったら、なおさらね。
そういう気持ちが根っこにあるせいかしら。
アタシ、女の人と話してると、ついクスッと笑わせたくなるのよ。
最初からここまで読んできてくれた人には分かると思うけど、基本、アタシってしょーもないことしか考えてないし、ダジャレとか冗談が好きでしょ?
さすがに爆笑させるのは厳しいけど、女の人をクスッと笑わせるくらいなら、それなりに出来たりするのよ。
クスッと笑わせるのも楽しいし、笑った可愛い顔を見るのも楽しいわ。
まぁ早い話が、アタシは女の人と話す事が楽しくて仕方ないってことね。
そのせいかどうかは知らないけど、アタシは女の人から嫌われたり避けられたりした経験がほとんど無いわね。
それに一応、アタシはこれでもダンディな男を目指してるからね。
もしかすると、自分が女の人から嫌われたり避けられたりしていることに気付いていないだけ、っていう可能性も無くはないけど、基本的にネガティブ思考で周りの空気に敏感なアタシがその事に気付かないっていうのは、ちょっと考えにくいわね。
逆に男からは、嫌われたり避けられたりしてるなぁって感じることがよくあるんだけど。
……なーんて、また余計な事を長々と書いちゃったわ。
アタシも暇よね。
じゃあ最後にアタシの感想を付け加えておくわね。
めぐり逢ひて 見しやそれとも わかぬ間に
雲隠れにし 夜半の月かな
会いたくて会いたくて 震える西野カナ
西野カナも、今じゃ昔の人扱いなのかしら?
時事に疎くて、世間の認識が分かってないのよね。




