053.右大将道綱母 「歎きつつ ひとりぬる夜の 明くる間は いかに久しき ものとかは知る」
はーい、じゃあ次は右大将道綱母さーん。
こっちに来て作った歌を見せてくださーい。
お、来た来た。
……って、ついに母親まで出てきちゃったわよ。
今日は授業参観じゃねーって言ってるだろ。
え? 息子の道綱くんは、このクラスの子じゃないの?
ふーん。
だったらなおさら、こんなクラスに居る必要なんて無いじゃないの。
道綱くんのいる学校に行けばいいじゃない。
ま、この学校を運営する側に立てば、授業料さえちゃんと払ってくれるなら、来るなとも言えないんだろうけどさ。
つーかアナタ、家事はどうすんの?
ちゃんと家に帰ったら、炊事や洗濯、掃除くらいはしなくちゃダメよ。
ところで、アナタのお父さんの名前は何ていうの?
え? 藤原倫寧っていうんだー。
なんだか内緒で若い女と不倫したけど嫁にそれがバレて、許してもらうために必死になって丁寧にお詫びするところまでがセットになったような名前ね。
ある意味、用意周到って感じがしないでもないわね。
でもこれで、「ともやす」って読むのはアタシには厳しいわね。
「りんねい」でいいんじゃないかって思うわ。
そう言えば、三国志の武将に甘寧っていう孫権配下の武将がいるのよ。
三国志のゲームを孫権でプレイする時には、武力が高くて結構頼りになるのよね。
……って、またマニアックな話をしちゃったかしら。
じゃ、さっそく作った歌を見せてちょうだい。
歎きつつ ひとりぬる夜の 明くる間は
いかに久しき ものとかは知る
なぁに、これ。
ちょっと意味が分からないわ。
ながら系の歌だからアタシは基本的に好きだけど、でもアナタは女だからね。
ながら系男子だったらアタシの好物なのに。
……あ、言っとくけど、ここはリアルの話じゃないわよ?
このクラスの先生っていう設定でのアタシのセリフだから。
うーん、やっぱ、リアルのアタシと設定としてのアタシがごちゃ混ぜになっちゃうわね。
ちょっと前にも書いたと思うけど、これがアタシの悪いクセなのよ。
アタシが何か書くとね、どうしてもその設定にリアルな自分が出てきちゃうわけ。
最初はちゃんと設定を守って、リアルな自分を出さないように頑張って書き始めるんだけど、しばらく書き続けてると、いつの間にかその設定の中にリアルな自分が入り込んじゃうのよ。
前にアタシが書いてた「武知高ミステリー俱楽部」でも同じことが起きてたわ。
つか、アタシが書いたものは全部そうなっちゃってるわね。
たぶんこのクセは一生治らないんじゃないかしら。
「歎きつつ」は「嘆きながら」ってことでいいわよね。
アタシが「つつ」の付く歌を「ながら系」って言っているのは、そういった理由からよ。
次に出てくる「ひとりぬる夜の」っていうのは何?
塗るって何を塗るの? 美容液?
「ドモホルンリンクル」のお試しセットみたいなヤツかしら。
つーか、CM見てて毎回思うけど、ドモホルンリンクルって凄いネーミングよね。
ヴイックスヴェポラッブといい勝負だわ。
最近はあまりテレビを見ないから、今もCM出してるかは知らないけどさ。
昔はよく見たCMだったのよ。
アタシ的には、こういうパッと見た感じが意味不明の商品名って、案外嫌いじゃないわね。
「SK-II」なんて、もはや名前を通り越して、単なる記号になっちゃってるわ。
どんな化粧品だよ。
え? 「ひとりぬる夜の」は「ひとりで寝る夜の」って意味なのね。
じゃあ「ひとりぬる夜の 明くる間は」は、「ひとりで寝る夜が明ける間は」ってことね。
「いかに久しき」は「何とも久しい」ってことでいいかしら?
え? 「いかに長いものか」ってことなの?
なるほどー。
ここで言う「長い」は、時間が長いってことよね。
「久しぶり」の「久しい」と同じ意味ね。
「ものとかは知る」が分からないわ。
「ものと知る」だったら分かりそうなものだけど、間にある「かは」ってのは何なのよ。
え? 「やは・かは・めや」は反語なの?
反語って何?
名前の横に押したりするやつ?
あ、それはハンコだわ。
え? 「〜だろうか、いや、〜ない」っていう表現の言葉なんだ。
つまり、「ものとかは知る」は、「ものと知っているだろうか、いや、知らないだろう」って意味なのね。
じゃあ、アナタが言いたかったことは、
「嘆きながらひとりで寝る夜が明ける間が、私にとっていかに長いものか、貴方は知っているだろうか、いや、知らないだろう」
ってことかしら。
たぶん、「どうして会いに来てくれないのだろうと嘆きながら、ひとりの夜を明け方まで過ごす時間がどれだけ長く感じることか、貴方には分からないでしょうね」ってことが言いたいのよね。
なぁに、それ。
眠れないのは運動不足のせいじゃないの?
昼間くたくたになるほど体を動かせば、夜はぐっすりと眠れるものよ。
そういえば昔、アタシの元カノと一緒にラブホに泊まった時、彼女が一人で先にシャワーを浴びに行って、その後アタシがシャワーを浴びて出てきたら、すでに彼女が爆睡してた事があったわね。
なんだか起こすのも可哀そうな気がして、アタシも隣で一緒に横になってたら、結局二人とも朝までぐっすり寝ちゃったわ。
ここまでラブホの使い方を間違えるなんて、きっとこの日が最初で最後ね。
あ、一応言っておくけど、この話はリアルだから。
つーか、アタシがここに書いてる事って、ほぼほぼリアルだわ。
じゃあ最後にアタシの感想を付け加えておくわね。
歎きつつ ひとりぬる夜の 明くる間は
いかに久しき ものとかは知る
薬塗る夜の ヴイックスヴェポラッブ
って、これ読んでる人はそもそもヴイックスヴェポラッブを知らないよなぁ、きっと。




