052.藤原実方朝臣 「明けぬれば 暮るるものとは 知りながら なほ恨めしき あさぼらけかな」
はーい、じゃあ次は藤原道信朝臣くーん。
こっちに来て作った歌を見せてくださーい。
お、来た来た。
って、うわー藤原3連続かよ。
きちーなー。
勘弁してくれよ。
何の拷問だよ、これ。
ところで、キミのお父さんの名前は何ていうの?
え? 藤原為光っていうんだ。
聞いたことないわね。
え? キミのお父さんは藤原師輔の九男なの?
藤原師輔って、あの19人も子供を作った子作りマシーンの「もろスケベ」じゃないの。
しかも、九男ってそれはないでしょう!
……あ、またこのネタをやっちゃったわね。
つーか、ここまでくると、むしろ藤原師輔の八男が誰なのかってことの方が気になるわね。
え? 藤原師輔の八男は藤原高光っていうの?
まるで聞いたことないわ。
ちょっとがっかりね。
聞かなきゃよかったかしらね。
まぁいいわ。
じゃ、さっそく作った歌を見せてちょうだい。
明けぬれば 暮るるものとは 知りながら
なほ恨めしき あさぼらけかな
なぁに、これ。
「明けぬれば」って何?
え? 「明けると」の意味なんだ。
「夜が明けると」ってことね。
「暮るるものとは 知りながら」は「暮れるものとは 知っているが」ってことね。
「なほ恨めしき」は「それでも恨めしい」だわね。
「あさぼらけかな」の「ぼらけ」は「ぼやけ」がだんだん変化して「ぼらけ」になった感じだったわね。
坂上是則くんがノリノリで教えてくれたわ。
つまり、「あさぼらけ」は「夜明け頃」のことね。
「かな」はもう何度も出てきたけど、詠嘆よ、詠嘆。
「だなぁ」ってやつだわ。
じゃあ、キミが言いたかったことは、
「夜が明けると、やがてまた日が暮れることは知っているが、それでも恨めしい夜明け頃だなぁ」
って意味かしらね。
つまり、朝が来るのが恨めしいってことね。
まぁ夜這いをしている身としては、朝になったら彼女のいる部屋から帰らなきゃならないもんね。
昼間っからそういう事を始めちゃう訳にもいかないから、事情はよく分かるわね。
これって、例えば風俗店で、お気に入りのお嬢とイチャイチャしているときに、時間終了10分前のアラームが鳴るようなものかしら。
全然違うわね、きっと。
まぁでも、終了時間になって帰らなきゃいけないのが恨めしい、っていう点では同じじゃないかと思うわね。
でもキミなんて、お金を取られないだけ、まだマシじゃないの。
アタシなんて、キッチリお金を取られるわよ。
しかも前払いで。
時間が3分でも過ぎようものなら、追加の延長料金まで発生するわ。
それに、前もってお店に予約も入れておく必要があるわね。
アタシいっつも思うんだけどさ、平日の午前中に電話してるのに、どうしてその日の予約が一杯になってるのよ。
お前ら、風俗なんて行ってねーで、ちゃんと働けよ。
……って、他人のこと言えないけど。
あとさー、なんでお嬢が服を脱いだり着たりする時間とか、シャワーを浴びたり体を拭いたりする時間にも料金が発生してんのよ。
その間、こっちは待ってるだけじゃねーか!
そんなもの、客を呼び入れる前後に済ませときゃいいじゃないの。
つーか、そもそもデリヘルでもない店舗型の風俗店なのに、いちいち服を着る必要ってあるわけ?
どうせ次の客が来たら、すぐに脱ぐんだろーが。
だったら、ずっと裸でいればいいじゃないの。
セコい時間稼ぎとかされると、イライラしちゃうわよね。
たまにフリーで入ってハズレのお嬢に当たると、「ちょっと一本タバコ吸っていい?」とか言って勝手に一服し始めたりするわよ?
そんな事を言われたら、まさか「ダメ」とも言えないじゃないの。
「ダメ」なんて言って機嫌を損ねられたら気まずい空気になるし、これから受けようとするエッチなサービスがそのせいで雑になっても嫌だしさ。
だから仕方なく余裕を見せて「あぁ、いいよ」とか口では言ってるけど、内心は怒りで燃えてるわよ。
なんで高いお金を払ってサービスを受ける客の立場のアタシが、お金をもらってサービスを提供する側のお嬢に気を遣ってんのよ。
おかしくね?
貴重なアタシのプレイ時間に一服してんじゃねーっつーの。
ま、だったらフリーで入らなきゃいいだけの話なんだけどさ。
つーか、文句を言うなら本人に直接言うか、お店に言うべきよね。
それは分かってるんだけど、どうせそんな店にはもう二度と行かないからさ、文句を言ってハズレお嬢のサービスが良くなっても、アタシはその恩恵に与らないじゃない?
それに、アタシだけがそのお嬢の被害に遭うってのもちょっと悔しいじゃないの。
それならアタシの次の客にも、ぜひアタシと同じ気分を味わってもらいたいわ。
だからアタシは文句を言わないの。
それにアタシはいつもダンディな男を目指しているのよ。
ダンディな男は細かい事にいちいち文句を言ったりしないものだわ。
でもここに書いちゃうけど。
え? 何の話って?
別になんでもないわ。
こっちの話よ。
……まぁ簡単に言えば、そんなキミが羨ましいってことよ。
アタシなんて、エッチな事をする時は条件反射でお金を払わないと、かえって落ち着かないくらいだわ。
パブロフの犬ってやつね。
恐ろしいわね、習慣って。
あ、でもキミは23歳くらいで若くして死んじゃうって、校長先生が言ってたわよ。
残された時間が長いとは言えないけど、せいぜい短い青春を謳歌してちょうだいね。
校長先生の言うことって、不思議と当たるのよ。
じゃあ最後にアタシの感想を付け加えておくわね。
明けぬれば 暮るるものとは 知りながら
なほ恨めしき あさぼらけかな
ってか昼ぐらい ちゃんと働け




